2009年2月26日木曜日

オスカーワイン

今日はワインの話。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。

映画の世界では『おくりびと』がオスカーを獲った!と盛り上がっていますが、イタリアワインの世界にも、“オスカー”と呼ばれる賞があるんですねー。

それは、ガンベロ・ロッソのワインのガイドブック、『アルマナッコ・デル・ベーレベネ』で、品質と価格のバランスに優れたワインに与えられる称号です。

ガンベロ・ロッソは『ヴィーニ・ディ・イタリア』というワインの格付け本で知られていますが、もう1冊、『アルマナッコ・デル・ベーレベネ』というのも出しています。
これは8ユーロ以下のワインだけを集めた本で、いわば「安くておいしいワイン」のガイドブック。

8ユーロと言うと、'09年2月25日現在の為替相場で、約1000円。
2日前の相場だともっと安くて、約960円!
これだけ円高になる前でも1150円ぐらい。

本で取り上げているこれらのワインは4000種類以上。
その中からオスカーに選ばれるのは600種類以上。
そしてさらに、毎年ベストカンティーナとベストワインが選ばれます。


2008年版の『ベーレベネ』でベスト赤ワインに選ばれたのは、プーリアのワインでした。

ピルーナ Pilùna 2006

こちらのサイトでは、2007年のヴィンテージが6.25ユーロ。
約780円!

造り手は、カステッロ・モナチ(モーナチ) Castello Monaci 。
hpはこちら
長靴形のイタリアのヒール部分あたり、サリチェ・サレンティーノにあります。

カステッロ・モナチは、年間総生産量が220万本で、75%が輸出向け。
グルッポ・イタリアーノ・ヴィーニのメンバーだというのだから、しっかりした大手なんですね。
グルッポ・イタリアーノ・ヴィーニというのは、イタリアワインの有名ブランド15社が統合した大企業。
他にどんなブランドが加わっているかと言うと、
フォロナーリ、メリーニ、ビジ、ラピタラ、マキャヴェッリ、ニーノ・ネグリ、ランベルティなど。
詳しくはこちら
何年か前の決算報告では、カステッロ・モナチは順調に売り上げを伸ばしていて、『ガンベロ・ロッソ』が言うように「プーリアで注目のカンティーナの一つ」のようです。

ピルーナは、プリミティーヴォ・サレンティーノIGT。
“ピルーナ”とは、ギリシャ語で「凝灰岩の壺」という意味なんだそうです。
この地方の土壌を象徴的に言い表した名前ですね。
ぶどうはプリミティーヴォ100%。

エノロゴのフランチェスコ・バルディ氏によると、マロラクティック発酵まではタンクで行い、その後25%だけを短期間バリックに通しています。
そして仕上げに全部をタンクで熟成。

『ガンベロ・ロッソ』の評価によると、2006年のピルーナは、

伝統と現代性がきれいに溶け合ったワイン
澄んだルビーレッド色
熟した果実の香り
甘いスパイスの軽い気配
広がりのある汚れのない味
なめらかで心地よい味

なんだそうです。

なんだか、イタリアで買えば800円のワインだということを忘れてしまいそうですねえ。


2008年版『ベーレベネ』赤ワイン部門で2位になったのは、プーリアから一転して北のアルト・アディジェのワイン。

アルト・アディジェ・サンタ・マッダレーナ・クラッシコ A.A.Santa Maddarena Cl. 2006

カンティーナ・プロドゥットーリ・ボルツァーノ(hp)のワインです。

こちらのサイトでは2007年が7.9ユーロ。

少し前まではもっぱらドイツ向けで、イタリアの市場は関心も示さなかったというアルト・アディジェの赤ワイン。
今ではドイツよりイタリアでよく売れているんだとか。


3位はサルデーニャのワイン。

カンノナウ・ディ・サルデーニャ・ヴィーニャ・イザッレ Cannonau di Sardegna Vigna Isalle 2006

造り手はカンティーナ・ソチャーレ・ドルガーリ(hp)。

こちらのサイトでは6.2ユーロ。

生産量の75%がサルデーニャで消費されていて、輸出はごくわずか。


オスカーワインの話、次回に続きます。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年11月号
“オスカー2008”の解説は、「総合解説」'06&'07年11月号、P.37に載っています。


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2009年2月23日月曜日

テルニのマルモレの滝

今日も、バレンタインデーゆかりの町、テルニの話。

イタリアの真ん中に位置するウンブリア州。
美しい自然に囲まれているところから、「イタリアの緑のハート」なんて呼ばれてますね。
海はない州ですが、数々の山と川が、美しくて時に迫力のある景観を生み出しています。

そんなウンブリアの南西部にあるのがテルニ。

日本人にはあまりなじみのない町かもしれません。
観光スポットとして一番有名なのが、バレンタインデーにゆかりの聖ヴァレンティーノ教会でしょうか。

夕暮れ時の聖ヴァレンティーノ教会

バレンタインデーの夜、テルニでは花火で恋人たちを祝福


そしてもう一つ有名なのが、町から7㎞のところにあるヨーロッパでもっとも落差のある滝、マルモレの滝
ウンブリアを代表する観光名所の一つです。


マルモレの滝, photo by Andrepax

滝は古代ローマ時代の紀元前271年に、人工的に作られました。
3段に分かれていて、落差は計165m。
一番大きな落差は最上段で、83m。
ちなみに、華厳の滝は落差97m。

umbriatravel.comによると(翻訳 by ポモドーロさん)

テルニの領域は訪れる人にとって最高のものが満ちた場所で、自然がその持てる力全てを見せてくれます。
その良い例がマルモレの滝。
テルニから7キロしか離れていない場所にある、本物の国の記念物です。

昔、ヴェリーノ川の水の石灰性沈殿物がネラ川の流れを阻止し、地域を頻繁に沼化しました。
その為紀元前271年、ローマの執政官、マンリオ・クリオ・デンタートは土地改良事業を行った際、ここにも工事を施工。
水の流れを変えるべく溝を掘り、そこを流れた水がマルモレの一番高い崖淵から落ちるようにし、結果人工的な滝ができたのです。
この工事は問題のすべてを解決しなかったものの、何世紀にもわたって世界に自然のスペクタクルを見せてくれました。
そして、数え切れないほど多くの見学者が訪れたばかりか、作家や画家、詩人、小説家に格好の題材を与えてきました。

その時からヴェリーノ川の水は、総高度差165メートルを、信じられないほど美しい水と光の効果を見せながら驚くべき跳躍を続け、ネラ川の河床に落ち込んでいます。

マルモレの滝では見学用に敷設された散策路をたどり、異なった角度からその美しさを満喫することができます。
下の広場からは滝がネラ川の水に流れ込んで穏やかになるまで、3段階に跳ねながら落ちる膨大な滝を下からみることができます。 マルモレのカンパッチ公園を通って行く上の見晴らし台は滝が一番高くに落ちる岩壁にあり、そこからは至近距離で滝の魅力を味わえます。

その他、追加料金を払わずに、更に滝に近づくことができます。
登山道を行くと実質的に滝の“中”に入れるのです。
谷と山をつなぐ数多くのルートでは、忘れがたい経験ができるでしょう。
道の中程には有名な恋人達のバルコニーがあります。
滝が中間で跳ねる場所に突き出ており、そこからの眺めは本当に印象的です。
何よりも、この場所からは自然のスペクタクルの力を味わえます。
滝の轟音は自然の口蓋から発するそれと良く似ていて、力強く至高な声は、それを耳にする幸運を得た人を魅了し続けることでしょう。

良く知られているように、巨大な水源は発電に利用されているので、滝は週のうち何日かは閉まっています。1954年より、マルモレの滝の満開時間は1年間で770時間と決められています。
出発する前に、開く日にちと時間を確認することが必要です。



なるほど、滝に水を流す時間が決まっているんですね。
時間によって水の量が違うから、迫力の滝を観たい人は、事前に時間をチェックしておいた方がいいかも。

放流スケジュール

滝へはテルニ駅からバスやタクシーで10分ほど。


マルモレの滝の動画。
見ているとしぶきがかかってきそう。





今日のおまけ
甘い気分になりたい人向け。
テルニのバレンタインデーの夜の花火を、スイートな歌と共にどうぞ。






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2009年2月19日木曜日

バレンタインデーの故郷テルニ市と聖ヴァレンティーノ

今日は久しぶりにポモドーロさんからのイタリア便りです。
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2月14日はバレンタインデーでした。 
そこで、そのゆかりの地、テルニ市とその保護聖人 聖ヴァレンティーノを紹介します。


テルニ市はウンブリア州テルニ県の県庁所在地。
ローマから北の内陸部に向かって120キロの所に位置します。

ローマ帝国の重要拠点として発達、近代には豊富な水資源を用いて鉄鋼の街として栄えた為、第2次世界大戦では爆撃によって大きな被害を蒙りました。 
その為、歴史ある町であるにもかかわらず、町は近代的な様相を見せています。

この街の保護聖人が、バレンタインデーの元となった聖ヴァレンティーノです。


サン・ヴァレンティーノは3世紀に生きたテルニの司教で、ローマの元老院によって迫害され、273年2月14日殉死しました。 

恋人達の守護神となる伝説は色々あります。

その一つは、 聖人は異教徒のレギオン兵士とキリスト教者の娘の結婚を祝福したと伝えられている為。

また、サン・ヴァレンティーノ教会のパンフレットによると、サン・ヴァレンティーノは教会を訪れる若者に庭に咲く花を贈る習慣がありました。
その中の若い二人の間に愛が芽生え、この司教のもとで結婚します。
彼らはとっても幸福だったことから、多くのカップルが司教の祝福を受けて結婚したいと申し出るようになりました。
あまりの要望に、1年に一回、日を決めて結婚の祝福をするようになりました。 

テルニの民間伝承では、ケンカばかりしていた夫婦が司教のお陰で和解し、その後はずっと仲良くらしたのを知って、多くの人が司教の祝福を受けたいと申し出るようになった、という事です。

伝説はそれとして、このタイトルを与えられた真の理由は、司教の温かい人間性の表れであり、司教の、若者に対するキリスト教徒としての夫婦のありかたの、熱心な教育にあります。
それが司教の死後、17世紀にわたってなお敬愛されている理由です。
サン・ヴァレンティーノの遺骸は、テルニの中心地から少し離れたところにある、同名の教会に安置されています。



サン・ヴァレンティーノ教会



サン・ヴァレンティーノの遺骸



毎年テルニでは、聖人の殉教した日に、聖人の生涯やそのメッセージに関わる様々な催しや行事が行われます。
そしてサン・ヴァレンティーノの日とその前後の週、聖人の教会では、多くの若いカップルがその愛を誓って結婚の準備をします。
今年は、2月5日に各地から選ばれた100組の若いカップルが、2月15日には結婚25年、同じく50年の夫婦が祝福を受けました。



祝福を受けるカップルの列


2月14日、テルニの守護聖人サン・ヴァレンティーノの日、テルニは休日となります。
公共の役所はもとより、ほとんど全てのお店が閉まり、営業しているのはバール、お菓子屋さん、そして花屋さんだけといった感じです。
その為、街の中心地はシーンと静まり返っていますが、サン・ヴァレンティーノ教会とその周りは多くの人で賑わいます。

聖人の遺骸は、教会の祭壇の下部に安置されていますが、教会の規模が小さいので多くの人々を収容することができません。
その為今年は、すぐ横の空き地に大きなテントが設置され、荘厳なミサが執り行われました。
一方教会では、祭壇にある聖人の遺骸に、順々に祈りを捧げる人々の長い列が出来ます。 

教会の横に接続している会堂では、慈善くじ引きが行われます。
一回1ユーロでくじを買うと、中に数字が書いてある券をくれます。
その数字によってもらえる品物が決定。
生活雑貨、おもちゃ、飾り物、手芸品、サラミなど景品は全て寄贈品、枕をもらっている人もいました。



慈善くじ引き


教会裏の大通りを渡ると、約1地キロ半にわたって市が開かれています。 
一番手前は、この日の名物、チャンベッラとポルケッタ(豚の丸焼き)を売る店がズラリ。

チャンベッラはドーナッツ型の物をさします。
直径15-20センチくらいの、味付きドーナツパンといったところで、ちょっと硬めです。
チャンベッラ・グラッソとチャンベッラ・コン・アーニチェの2種類があり、グラッソはパン生地にチーズ、パンチェッタが入った塩味の効いた物。
一方アーニチェは、同じくパン生地にアニスがたっぷり入っています。
その為香りが良く、塩も押さえてあるので、サラミなどと一緒に食べるのには、こちらの方が合っているようです。
ポルケッタをこれらのチャンベッラと一緒に食べるのでしょうが、その場で食べる人は皆、普通のパンにポルケッタを挟んでもらっていました。
このパニーノ、もちろん一つでお腹が一杯になります。



チャンベッラ。左がアニス入りで右がグラッソ



市をさらに進むと、乾燥イチジク、ピスタッキオ、乾燥栗(実だけを乾燥させたのも)、皮付きピーナッツなどを扱うドライフルーツ屋、オリーブや乾燥トマトなどの乾物屋、アーモンドやヘーゼルナッツを砂糖で加工したクロッカンティーノを売る店などの食ベ物屋のあとは、日用雑貨、衣類、靴、植え木屋など、何でもあり、といった感じの市が続きます。



クロッカンティーノ



ドライフルーツ屋



テルニの保護聖人を祝う休日。
家族連れが、サン・ヴァレンティーノ教会で祈りを捧げたあと、多くの人でごった返す市に繰り出す様は、いかにも平和で、聖人にふさわしい雰囲気でした。

by ポモドーロ



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2009年2月16日月曜日

オリーヴァ・テーネラ・アスコラーナ・デル・ピチェーノDOP

今日はアスコリのオリーブの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

アスコリ(マルケ州)のオリーブについては、以前(2008.10.1のブログ)に一度書きましたが、今日はちょっと情報を追加です。

アスコリ名物のオリーブ料理、“オリーヴェ・アッラ・アスコラーナ olive all'ascolana (アスコリ風オリーブ)”は、塩水漬けのグリーンオリーブに挽肉のラグーがベースの具を詰めて、小麦粉、溶き卵、パン粉をつけて揚げたもの。

オリーブを一回り大きくしたサイズで、指でつまんで食べる典型的なストリートフード。
一度食べると誰もがやみつきになってしまう味。

アップで

ロスティッチェリーアのアスコリのオリーブ

オリーヴェ・アスコラーネを5ユーロ分買う動画
 ↑
ずいぶん美味しそうに食べてますねー。


このアスコリ風オリーブに最も適しているオリーブ、と言われるのが、オリーヴァ・テーネラ・アスコラーナ・デル・ピチェーノ Oliva Tenera Ascolana del Piceno という品種です。

“テーネラ”とは、「柔らかい」という意味。
その名の通り、果肉が軟らかいのが特徴。

アスコリ種のオリーブはイタリア各地で栽培されている食用オリーブで(オイル用にもなります)、実の大きさが普通のオリーブの2倍ぐらいあり、果肉が厚いのが特徴。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事にもある通り、3つのタイプがあります。
“ドゥーラ(ハード)”、“セミドゥーラ(セミハード)”、そして“テーネラ(ソフト)”の3種類。
中でも“テーネラ”は最上質のオリーブとみなされています。
さらに、“テーネラ”はDOP製品。
つまり、産地がアスコリ・ピチェーノ周辺に限定されている品種です。


アスコリ風オリーブは外国にも知られている代表的なイタリア料理の一つですが、“テーネラ”タイプのアスコリのオリーブを使った生粋の本場の味は、実は、地元以外では滅多に味わうことができないんだそうです。
その最大の理由は、オリーヴァ・テーネラ・アスコラーナは生産量が少なく、地元以外にはほとんど出回らないから。

“テーネラ”は、皮が薄いためにデリケートで傷みやすく、収穫に機械を使うことができないので、作るのが大変。
スローフードの後援食材にも指定されています。


本物のアスコリ風オリーブを食べるなら、アスコリ・ピチェーノに行くしかない。
でも、せっかくアスコリ・ピチェーノまで行って、“テーネラ”タイプではないオリーブのアスコリ風オリーブを食べても意味がないですよねえ。

とは言っても、ロスティッチェリーア(揚げ物やローストなどの総菜屋)やレストランでは、どんな品種のオリーブを使っているかまでは表示していないだろうなあ。
一番確実なのは、塩水漬けのオリーブを買うことでしょうかね。
もちろん、DOP製品のoliva tenera ascolanaであることをしっかり確認して。


塩水漬けのオリーヴァ・テーネラ・アスコラーナ




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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』'06年11月号
“オリーヴァ・テーネラ・アスコラーナ”の記事は、「総合解説」'06&'07年11月号、P.27に載っています。


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2009年2月12日木曜日

ボッコンディヴィーノ(ブラ)

今日はレストランの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の連載記事、グルメ紀行で今回(クレアパッソで配本中の号のことです)取り上げているのは、ピエモンテのロエーロ地方。

ロエーロと言うと、ワインの名前として知られていますよね。

ロエーロ地方はクーネオ県の北西部にあって、ターナロ川の左岸に広がっています。
ちなみに、ターナロ川の右岸はランゲ地方。

ロエーロとは、この地方を代々治めていた領主の名前だそうです。


ロエーロとランゲ地方のグルメ旅は、こんな感じ




高貴なワイン、かしこいトリュフ犬が一生懸命掘った白トリュフ、濃厚なチーズ、おとぎ話のような中世の町と城、静かにゆっくり流れる落ち着いた時間・・・・・・。

うーん、いいなあ。
地中海の強烈で鮮やかなイメージとはまた違った、枯れた渋さも魅力的ですよねえ。


ロエーロ地方のレストランの中でも特に観光客に人気なのは、ブラのボッコンディヴィーノ Boccondivino 。

ブラは“スローフード”の発祥の地。
1984年に、この町のオステリーア、ボッコンディヴィーノに集まった人たちによって、スローフードは設立されたんだそうです。


店のhpはこちら

ボッコンディヴィーノの料理

グリッシーニ

ダヤリン

ラザーニャ

トリッパとポレンタ

ブラザート?

チーズ

ボネ?

パンナ・コッタ


ご存じのように、スローフードでは貴重な伝統食材を救おう、という運動もやっていて、様々な食材が後援食材として認定されています。

ボッコンディヴィーノでは、それらの食材を使った料理も出しています。
このメニュー(pdf)にカタツムリのマークがついている料理がそうです。

たとえば
・Lardo, salsiccia di Bra e carne cruda battuta al coltello
 『ラルド、ブラのサルシッチャ、生肉の叩き』
・Vitello tonnato
 『ヴィテッロ・トンナート』
・Brasato di vitello al Barolo
 『子牛肉のバローロのブラザート』
・Bollito misto con salsa verde, rossa e aioli
 『ボッリート・ミスト、サルサ・ヴェルデ、サルサ・ロッサ、アイオリ添え』
にカタツムリマークがついていますねえ。
これらはおそらく、スローフードの後援食材であるピエモンテ牛を使っているのでしょうね。

・Tonno di cappone all’aceto balsamico
 『去勢鶏のトンノ、バルサミコ酢風味』
・Coniglio “Grigio di Carmagnola” all’arneis
 『グリージョ・ディ・カルマニョーラ種のうさぎのアルネイス風味』
は、去勢鶏とうさぎがそうです。

店に行く機会があったら、これらの食材を使った料理を味わってみたいものですね。
お値段もなかなか手頃で、人気なのもうなずけます。


※これまで「こんな雰囲気の店」と紹介していたボッコンディヴィーノの動画はまったく別の店でした。
ご指摘いただいて発覚しました。
本家のブラのボッコンディヴィーノさん、大変失礼しました!


ちなみに、イタリアにはボッコンディヴィーノという名前のレストランが各地にあります。
boccondivinoとは、“boccone”と“divino”が組み合わさってできた言葉のよう。
“boccone”は、「一口」とか「美味しいもの」という意味。
“divino”は、「神の」とか「神聖な」とか「超人的」という意味。
だから直接訳すと、「神の美味なるもの」とか、「神々しい一口」とか、「超美味」とか、なんだかすごく仰々しい言葉になっちゃうんですよねー。
「神の一口」なんて言うと、最近ドラマ化で話題のマンガの二番煎じみたいだし・・・。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』'06年11月号
“グルメ紀行~ロエーロ”の解説は、「総合解説」'06&'07年11月号、P.2に載っています。


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2009年2月9日月曜日

イタリア風じゃがいも料理

今日はじゃがいもの話。
『サーレ・エ・ペペ』の記事の解説です。

以前にも書いた気がするのですが、イタリアのじゃがいも料理って、あまりピンとこないんですよねー。
まあもちろんニョッキはじゃがいも料理ですが、ジャーマンポテトとか、フレンチフライ(正確にはフランスが発祥地じゃないようですが)のように、イタリアンポテト!と呼べる料理は・・・・・
思い浮かばないなあ。



ベーコンの香りがたまらない!ジャーマンポテト“Bratkartoffeln”
photo by adactio


それなのに、『サーレ・エ・ペペ』では、敢えて「パターテ・アッラ・イタリアーナ~イタリア風じゃがいも料理」という記事を企画したんですねえ。
いったいどんな料理があるものなのか、ちょっと面白そうじゃないですか。

そして読んでみると・・・

なるほど、そうきたか~。


まず1品目は、ヴェネト料理。

“じゃがいもと玉ねぎのパデッラータ、ヴェネト風 Padellata di patate con cipolle alla veneta”。




この“パデッラータ”というのがミソですねえ。
いや~なるほどー、恐れ入りました、という感じです。

“パデッラータ”とは、「フライパン(padella)で調理した」という意味で、フライパンで焼いたり、ローストしたり、炒め煮にしたりすること全般を意味します。
だから実は、ジャーマンポテトもフライパンで作ったものなら、“じゃがいものパデッラータ、ドイツ風”となる訳です。
つまり、どんなものでも“パデッラータ”と言えば、あっという間にイタリア風に聞こえてしまう、とても便利な言葉なんですねー。

“じゃがいもと玉ねぎのパデッラータ、ヴェネト風”は、ゆでたじゃがいもと玉ねぎをバターで焼いて(炒めるのではなく)、塩、こしょうをするというシンプルなもの。


きのことじゃがいものパデッラータ

じゃがいもと豚肉のパデッラータ

野菜のパデッラータ



記事には、このパデッラータを“シチリア風”にしたものも紹介されています。
ジャーマンポテトはベーコン入りですが、シチリア風だと何が入ると思いますか?
多分、イメージ通りですよ。

答えは、ケッパーとオリーブ。
さらに砂糖とビネガーも加えて、煮て仕上げます。

“じゃがいものシチリア風”というのは定番のリチェッタがなく、トマト入りやペコリーノ入りなど、様々なものを見かけます。
つまり、シチリアの食材や、シチリアをイメージさせるものを加えれば、立派にじゃがいものシチリア風となるわけですね。

と言うことは、ケッパー、オリーブ、アンチョビー入りや、パルミジャーノと生ハム入りで、“イタリアンポテト”と呼んだって、全然ノープロブレム、と個人的には思っています。


記事で紹介されている料理でもう1品、なかなかおもしろいのが、カルボナーラの変型版です。

“じゃがいも、卵、ペコリーノのカラプリア風パスタ Pasta con uova e pecorino alla calabrese”




使っているパスタは、ショートパスタのトゥベッティ・リッシ。
ペコリーノ入りのカルボナーラに、小角切りにして揚げたじゃがいもを加えた一品です。
素朴でボリュームがありそうで、しかも立派にイタリアン。
フレッシュな赤ワインが合いそうなパスタです。


この他に、イタリア料理でじゃがいもを使ったものと言えば、じゃがいものフリッタータや、じゃがいもとムール貝と米のティエッラなどが有名。

イタリア料理のバイブル、『グランデ・エンチクロペディア・イッルストラータ・デッラ・ガストロノミア』(長い名前ですが、要は図解と写真付きイタリア料理辞典です)には、イタリアのじゃがいも料理のリチェッタがいくつか載っています。
その中に、“丸ごとじゃがいものオーブン焼き Patate al forno intere ”というのがあります。
丸ごとのじゃがいもをアルミ箔で包んで220度のオーブンで1時間焼き、バターかサワークリームを添える、という料理です。

その解説に、「これは、じゃがいもに暖炉の灰をかぶせて焼く“patate cotte sotto cenere”の現代版、都会版」とあるのを見て、思い出しました。
以前ウンブリアのトラットリーアで、前菜に、じゃがもいが1個、皮つきのままどーんと皿にのって出てきたことがあったんです。
これがその、“灰かぶり焼きじゃがいも?”でした。
味もさることながら、暖炉に馴染みのない都会っ子にとっては、なんだかすごく特別なものを食べているような気がしたのを覚えています。
その時初めて、焼きいもも灰で焼けば、立派にレストランの一品になるということを知りました。
でもその時は、灰をかぶせて焼くには1~2時間かかるなんてことは知りませんでした。
知っていたら、もっとご馳走に思えただろうなあ。



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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』'06年11月号(クレアパッソで販売中)
“イタリア風じゃがいも料理”のリチェッタは、「総合解説」'06&'07年11月号、P.7に載っています。


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2009年2月6日金曜日

フィロ生地

今日はフィロ生地の話。

前回は、オーストリアから伝わったストゥルーデルのそのまたルーツは、トルコのバクラヴァという菓子らしい、という話をしました。
そのバクラヴァに使われているのがフィロ生地
イタリア語では pasta fillo パスタ・フィッロ。

バクラヴァ


フィロ生地は、イタリアでは比較的浸透している食材で、料理書にもよく登場します。



アスパラガスの具のフィロ生地のカンノリッキ、チーズのサルサ
photo by frabattista


フィロ生地のミッレフォーリエ、タイとじゃがいもの詰め物

マンゴーとパイナップルのフィロ生地パイ

鶏肉ときのこ詰めフィロ生地パイ

フィロ生地の挽肉巻き


フィロ生地はトルコ辺りが発祥地のパイ生地の一種。
紙のように薄いのが特徴で、名前の語源もギリシャ語で「葉」や「紙」という意味の言葉。
中東だけでなく、欧米にも広まっています。


冷凍フィロ生地ができるまでの動画、その1(英語)
3:39あたりから始まります。
ちなみに前半は鶏の孵化場の様子。
動物残酷物語系が嫌いな人は見ないように。





この動画の説明によると、材料は、小麦粉60%と水40%。
小麦粉はたんぱく質の量が違う2種類の粉をミックス。
手作りの場合と機械で作る場合の両方を紹介しています。
手作りの場合は手で2.5m四方に伸ばしながらティッシュペーパーの薄さ!に伸ばします。


冷凍フィロ生地ができるまで、その2
1:20まで。






小麦粉と水がベースの中東系の生地で、イタリアでたまに見かけるのが、カダイフ
イタリアではカタイフィ kataifi と呼ぶようです。
小麦粉と水の生地を麺状にした、ビーフンのような食材です。
シュレッデッド・フィロとも呼びます。
これを使ったお菓子もカダイフという名前。

カタイフィ


カダイフ作り




以前、2008年5月15日のブログでも、カダイフを使った料理を紹介したことがあります。
プーリアの、オステリーア・ジャ・ソット・ラルコ Osteria già sotto l'arco という店の一品でした。

「ブッラータのカダイフ包み、トマト、マルティーナ・フランカ産カポコッロ、オリーブのクレーマ、ドライトマト添え」


現在配本中の『V&S』誌にも、カダイフを使った料理が紹介されています。
やはりプーリアの、パンタグルエーレ Pantagruele という店の料理です。



「空豆のピューレ、カタイフとビエトリーネ添え」

空豆のピューレもビエトリーネも、プーリアの典型的な食材。

カダイフとプーリアの関係も、なくはないんですよね。
カダイフは、パレスチナ地方が発祥地なんだそうです。
パレスチナは、かつてヨーロッパから十字軍が渡ってエルサレム王国を築いた地。
その十字軍の中継地となったのがプーリアでした。
プーリアには、今でも十字軍関連の遺跡がたくさん残っています。

この店があるブリンディジは、ギリシャとイタリアとを結ぶ港のある場所。
昔からプーリアは、イタリアより東のギリシャやトルコ、パレスチナと交流があった地方。
そんなことを考えると、この料理に、何か壮大な歴史を感じたりして・・・。


パンタグルエーレ Pantagruele:Salita di Ripalta 1/5, Brindisi
tel.0831.560605
土曜昼と日曜定休



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関連誌:『V&S』'07年11月号
パンタグルエーレが紹介されている記事、“サレント半島の店”の解説は、「総合解説」'06&'07年11月号、P.31に載っています。


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2009年2月2日月曜日

ストゥルーデル

今日はドルチェの話。
『サーレ・エ・ペペ』の記事の解説です。


どう見てもイタリアのドルチェらしくない名前のパイ菓子、ストゥルーデル strudel 。


ストゥルーデル, photo by pandemia


まあ、これがオーストリアから伝わったドルチェだということは、イタリア人でも異存はないですよね。
でも今ではすっかりイタリアの中に溶け込んで、立派な伝統料理の一つ。

オーストリアのstrudelとイタリアのstrudelを見分けるポイントの一つは、発音ですかねえ。
ドイツ語だと“シュトゥルーデル”で、イタリア語だと“ストゥルーデル”。
ついでに英語だと“ストゥルードル”。

イタリアの中でもストゥルーデルが地元の定番ドルチェとして定着しているのは、昔、オーストリア=ハンガリー帝国の一部だった地域で、特にりんごの産地。
トレンティーノ・アルト=アディジェ、ヴェネト、フリウリ・ヴェネチア・ジューリアのあたりです。


今ではイタリア中に広まっているストゥルーデルですが、“ストゥルーデル”ってどういう意味か、知ってました?
正確には、ドイツ語の“シュトゥルーデル”の意味ですね。
「渦巻き」とか「ぐるぐる巻き」っていう意味なんですねー。
最近節分の時期に人気の「恵方巻き」なんて、さしずめ、寿司版ストゥルーデル。


そしてさらに、「ストゥルーデルのルーツはオーストリア」ではなかったんですねー。
知らなかったなあ。

なんとトルコだったとは。


これがストゥルーデルの元祖、トルコのバクラヴァ。


バクラヴァ, photo by Scott MacLeod Liddle


オーストリアで売られていたバクラヴァ


バクラヴァがどんな菓子かと説明すると長い話になるので、詳しくはWikiの説明をご覧ください。


これがどうしてオーストリアの名物菓子に生まれ変わったかと言うと、16世紀に、トルコのスルタンがハンガリーやウイーンに攻め込んで、一時占領したことがあったからなんですねー。

結局、スルタンはウイーンを手に入れることはできなかったけれど、スルタンと一緒にやってきたバクラヴァの方はウイーンを手に入れてしまった、というか、逆にウイーンの方がバクラヴァに夢中になって、自分のものにしてしまったという感じでしょうか。

バクラヴァは「木の実」という意味の言葉が語源だそうですが、その名の通り、詰め物はくるみやピスタチオ、アーモンドなどのナッツ類が主体。
オーストリアの人たちは、ナッツ類よりもっと自分たちに身近な食材、りんごを使ってシュトゥルーデルを作ったわけですね。
生地も、バクラヴァは薄~いフィロ生地を何枚も重ねますが、シュトゥルーデル生地はもう少し厚め。
見事に中央ヨーロッパのお菓子に生まれ変わりましたね。

そしてさらに、イタリアだけでなく世界中に広まって、りんご以外の各地の様々な食材を使ったストゥルーデルが作りだされている訳ですねえ。


スペックとチーズのストゥルーデル
(マスタードと蜂蜜を混ぜてパイ生地に塗り、スペックとスライスチーズで覆って巻いて白ごまを散らす)




今日のおまけ

5分で作るりんごのストゥルーデル



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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』'06年11月号(クレアパッソで販売中)
“りんごのストゥルーデル”の解説は「総合解説」'06&'07年11月号、P.14に載っています。


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