2020年10月1日木曜日

クラテッロのキーワードはバッサ・パルメンセ

クラテッロは、高級、美味しい、という話はよく聞くけれど、あまり口にする機会がないので、妄想ばかりたくましくなってしまいがち。
過去の「総合解説」から、イタリアの人はクラテッロについてどう考えているのか、過去に訳した記事を見てみました。
まず、風味については、「赤く、脂身がなく、柔らかい、タンニンのような独特の香り、脂身を含んだスライスが舌の上で温まると甘みを感じる、カンティーナの貴腐風味も感じられる」
だそうです。

お勧めの組み合わせはバターとミッカ(パン)、マスカルポーネとミルクパン
ニョッコ・フリット、マイルドなモスタルダ、ブッラータやロビオーラなどのチーズ、イチジクやメロンでもよい。料理に使うのはもったいない。
相性の良いワインはフォルターナやランブルスコだそうです。
フォルターナ↓

フォルターナは地元(バッサ・パルメンセ)の微発泡の赤ワインで、製造過程でクラテッロを膀胱に詰める前に肉に揉み込んで香りをつけています。
コマッキオのうなぎにも合うそうです。
スプマンテやタンニンの強い赤など、間違ったワインと組み合わせるとデリケートな風味が金属の不快な味になりかねない。
お勧めは軽いフリッザンテで、後味をさっぱりさせるもの。

クラテッロを知るにはバッサ・パルメンセ地方を知る必要が。

バッサ・パルメンセBassa Parmenseはパルマとピアチェンツァの間に広がるポー河右岸の肥沃で穏やかな平野。
冬は霧に包まれ、夏は猛暑で蚊と湿気が多い土地
イタリアでも最高のサルーメの産地として知られる地方。
この地方に君臨するのはポー河。気候も歴史も、苦しみも豊かさも、全てポー河によってもたらされてきた。
クラテッロのベースは豚。
そして少量の塩を時間をかけてまぶし、豚の膀胱に詰めた後にすべて人手で縛る。
この作業にも職人の腕が問われる。

上の動画に登場した“アンティカ・アルデンガ”のことも、昔の「総合解説」で紹介していました。
店のwebページはこちら
それによると、上の動画にある通り、クラテッロを1個ずつハンマーで叩いて締まり具合を確かめ、馬のスネの骨で造った針を指して香りをチェックし、状態を確かめるのだそうです。
アンティカ・アルデンガ↓

クラテッロの製造所に入ると、まず香りが押し寄せてきます。
甘く、やや塩気のある、柔らかくて乾いた、年代を感じさせる香りです。
そして次に梁にぴっちりと吊るされた無数のクラテッロが目に入る。
まるでクラテッロの森にいるかのよう。
クラテッロは18ヶ月寝かせて造る。
生ハムより薄くスライスする。
口の中でクラテッロが溶ける時、その素晴らしさがわかる。

クラテッロは食べる前の下ごしらえ↓も大変。

昔の「総合解説」の記事によると、まず乾いた布で皮をこすり、カビを取り除く。
次にきれいな布を白ワインに浸して軽く搾り、これでクラテッロを包んで1~2日冷蔵庫に入れておく。
食べる部分の皮をむいたらスライサーかナイフで薄く切る。
残りは湿らせた布で包んで冷蔵庫にも戻す。
布は常に湿らせておき、3~4日ごとに取り替える。

うーん。かなり面倒。
やっぱり最高のものを食べたいと思ったら、バッサ・パルメンセに行くのが一番ですね。

ジベッロのトラットリアでお勧めは、カンティーナからクラテッロの香りが漂ってくるトラットリア・ラ・ブーカ。
店のwebページはこちら


シェフは4代に渡って母から娘へと女性のみに受け継がれた料理を出している。
料理はどれも150年前に受け継いだリチェッタ。
作曲家のヴェルディがパッラヴィチーノ公の晩餐で食べて大いに気に入ったと伝えられている料理、パスティッチョ・ディ・マッケローニは、当時館で料理人をしていたシェフの祖母が作ったものだそうですよ。
バッサ・パルメンセはヴェルディの故郷なんですね。

これだけ下調べしたら、もう舌が完全にクラテッロ。
とりあえず、ランブルスコでも買ってくるか。

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総合解説
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