イタリアのクリスマスの主役はパネットーネやパンド―ロ。昔は、クリスマスのドルチェはどれも、小麦粉と手に入る中で上等のもの。蜂蜜、ドライフルーツ、レーズンがベースの特別なパンのようなものだった。地元の名物食材と外国の食材を使った特別なパン。
例えば最初はオリエントから伝わった貴重なスパイス。次はコルテスが新大陸から伝えたミステリアスなカカオなど。
パネットーネはイタリアのクリスマスのドルチェとして広く知られるようになりましたが、その誕生の話は、様々ありすぎてどれが本当なのか判断できないほど。
今日はパネットーネのライバル、バンド―ロの話なんてどうでしょう。
卵、バター、砂糖のリッチな生地をこねて、長時間発酵させる作業を繰り返すバンド―ロは素人には手を出しにくいドルチェ。その誕生はヴェローナの街と結びついています。ルーツはヴェローナの伝統的なドルチェ、ナダリン。またはヴェネチアの裕福な階級の食卓に上っていたパン・デ・オーロという説もあります。
ヴェローナのアルティジャナーレのバンド―ロ。
目をつぶっていても発酵と焼成の過程で漂う香りをかげばすぐに分かるクリスマスのドルチェ、パネットーネとバンド―ロ。パネットーネはミラノ、バンド―ロはヴェローナで生まれましたが、今ではイタリア中に広まっています。
パネットーネを生み出したのはアンジェロ・モッタとジーノ・アレマーニャというライバルの二人。
子供に人気があり、角が8つある星形が特徴で、シンプルでリッチなバンド―ロは、ルネサンス時代ヴェネチアと富を競い合った街、ヴェローナの家庭で作られていたふんわりとした軽いドルチェ、ナダリンが原型。公式にはドメニコ・メディガッティがバンド―ロの形を考え出した1884年に誕生したことになっています。その後、パウリなどが大量生産を始めて広まっていきます。
バンド―ロの成功の理由は天然酵母。ゆっくりと大きく発酵させることによって、長期間保存可能で、軽く、香りのよいドルチェになる。似たタイプのドルチェは、主に北イタリアの各地にある。そのルーツはキリスト教の誕生とともに作られてきたパン。古くから、クリススマスのミサには豊作を祈願して、蜂蜜とフルーツ入りのパンを焼く伝統がありました。深夜にミサから戻ったら、そのパンを最年長者が切り分けて家族にふるまいました。
なんとここにきて、クリスマスはキリスト教の祝日だったことを、にわかキリスト教徒にがつんと突き付けてきましたねー。ひょっとしたら、クリスマスケーキのルーツは、豊作祈願のパンとも考えられる説登場。
ここで登場するのが、フェラーラ生まれの中世のクリスマスのドルチェ、パンペパートです。
フェラーラのパンペパート。
どう見ても発酵させたふわふわのドルチェとは別物。15世紀の修道院で生まれたとされるドルチェです。フェラーラの黄金時代に生まれたドルチェですが、17世紀以降、イタリアに広まり出したカカオが秘密の食材として加えられています。カカオが生み出す洗練さが、裕福な人たちのドルチェとして認められたのでした。
クリスマスのドルチェがチョコレートで覆われるようになったのには、ミラノのパティシエでフェラーラに来る前はスイスのショコラティエだったグイド・ゲッツィのおかげ。
ミラノという名前はチラホラ登場しますが、修道院や教皇、ルネサンスという言葉も登場する世界中の影響を受けているドルチェなんです。しかも1908年のパリ博覧会やロンドン、ブリュッセル、トリノで開かれた博覧会にも出されて名誉賞まで受賞しています。
万博で名誉賞を受賞したオッドーネ・ディ・カ―ロのバンド―ロ。
豊穣を願ったパンの進化版。
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