まずはアンドリアのブッラータの話。
プーリアのヒーロー、フェルデリコ2世に愛された町、アンドリアからスタートです。
プーリアの名物チーズ、ブッラータが生まれた町です。
作り立てが一番美味しいフレッシュチーズは、やっぱり産地で味わわなくては、と思っていたので、この町の有名チーズ製造所の情報を仕入れて、とにかくまず訪れたのです。でも、よく考えれば、ブッラータはモッツァレラの一種ぐらいに考えていて、正直言って、どうやって作られるのかも知らなかったのでした。
有名チーズ店に行くより、まずブッラータの基礎情報を知っとくべきでした。
ブッラータはモッツァレラと同じ、パスタ・フィラータに分類されるチ―ズですが、パスタ・フィラータの袋の中に生クリームとバターの風味を持つ柔らかいストラッチャテッラが詰まったとてもリッチなチーズ。19世紀初めにモッツァレラの切れ端の有効利用方法として考えた出されたチーズです。
プーリアの高地ムルジャ地方に異常な降雪があって道路が封鎖された時、パドヴァ平野の農場の、すでにマンテケというバターを詰めたパスタ・フィラータの熟成チーズメーカー、ロレンツォ・ビアンキ―ノが、モッツァレラをストラッチャテッラの袋として使い、アスフォルデや地元の植物の葉で包んで独特の辛味を加えたモッツァレラに似たチーズを考え出しました。ビアンキ―ノ農場で切れ端と生クリームを混ぜてパスタ・フィラータのチーズに詰めてブッラータが誕生したのは偶然でしたが、すぐに大ヒットして世界中に知られるようになります。
主な原材料の一部はムルジェ地方の牧草を食べた牛のミルクで、独特の香りが特徴。ただ、
地元産の牛乳だけでは需要に追い付かないために、他の産地のものも使っています。
ミルクを固めた生地を湯の中で引っ張り(フィラータ)、袋型にする。または小さくほぐして生クリームと混ぜて詰め物にする。そして手でつまんで閉じ、サラモイア(塩水)に浸す。これをアスフォデルの葉などで包んで出来上がり。
丸くて乳白色のブッラータは、外側は柔らかくて弾力がある。切るとクリーミーで濃厚な詰め物が流れ出てくる。香りはデリケートで生クリームやバターのよう。味は甘い。食べると2種類の歯ごたえがミルクの味と溶け合う。しかし、ブッラータは長持ちしない。作ってから24時間以内に食べるチ―ズだ。この時間が過ぎると酸味が出てくる。一番美味しい味わい方は室温で味付けせずに食べる。
地元でも有名でニューヨークやシンガポールに顧客がいる世界的にも知られるチーズ製造店に行く前に、最低限これくらいは知っておきたかった・・・。
このブッラータ誕生の話に登場するポイントの言葉は、ストラッチャテッラとムルジェ。
ブッラータ造り。
ムルジェ地方。
ちなみに、モッツァレラのフィラトゥーラの作業はアヴェルサとカプアの間の修道院の修道士が考え出したと言われています。職人が親指と人差し指で1個ずつ球形にモッツァ―レする(切り離す)という動作からこの名前がつきました。
ブッラータの管理組合のマークにはチーズを作る2つの手が描かれていて、モッツァレラのパッケージの管理組合のマークは、水牛の頭と緑の平野とその上から照らす太陽がデザインされています。
なんだか基本情報もたっぷり仕入れて、準備万端整えて期待に満ちてアンドリアの超優秀な職人たちがいる有名店に行き、いよいよ私が注文をする番になりました。ブッラータ1つと言えばいいんだから、楽勝です。と思ってました。ショーケースにブッラータがないのはちょっと気になりましたが、店の奥から取り出してくるんだろう、くらいに考えてました。そして私は、超無愛想な南イタリアのチーズ職人との初めての出会いに果敢に突入していきました。ブッラータ1つと言った私に、おっかないまでに無愛想な職人が返した言葉は、何g?でした。へ?なんですと?ブッラータ買いに行って重さを聞かれるとは、想定外です。言葉を失った私の戸惑った表情に、無愛想な職人も、ずらっと並んだ好奇心に満ちた地元民の常連客たちも、次に私が発する言葉を待ち受けています。詰んだ~。重さを聞かれるなんて想像もしてなかったので、心の準備が間に合いません。そこで助け舟を出してくれたのは、あの、超おっかない職人でした。何人分?と聞いてくれたのです。さ、三人です。その時は、友人2人と計3人でプーリアを巡っていたのでした。私の答えを聞くと、職人はさっさと店の奥へ消えていきました。私はどうやらブッラータの注文を無事成し遂げたようです。
これは、ブッラータはモッツァレラの袋にストラッチャテッラを詰めたチーズという基本を把握していれば、すぐに想像できそうなことです。チーズ専門店のショーケースにブッラータが並んでいないという疑問も解決です。店の奥でモッツァレラの袋に希望の量のストラッチャテッラを詰めているのです。すべての疑問が解決しました。職人は、ブッラータが入った袋を持って出てきました。料金を支払って、ブッラータを受け取って、さあ解決です。と思ったら、ブッラータの袋を持ったまま、職人がにこりともせずに、こう言いました。冷蔵帰庫に入れたらだめですよ。へ?正直言って、これからアンドリアを観光するので、ホテルに戻ったら、まず最初にブッラータを冷蔵庫に入れようと思っていました。ところが、私がまた固まっていると、職人の言った言葉が分からなかったと思った地元のおじちゃんやおばちゃんたちが全員口々に、冷蔵庫に入れちゃダメ、と私に言い聞かせるのです。ここで冷蔵庫に入れますなんて答えたら、ブッラータを渡してくれないと思った私は、何のことやらさっぱり分からないまま、入れませんと答えました。するとようやく職人は私にブッラータを渡してくれました。もちろんその日は1日中ブッラータの入った袋を持って、カステル・デル・モンテなどアンドリアをあれこれ巡りました。
ホテルに戻って、ブッラータの袋を開けてみると、3人分のストラッチャテッラが詰められている超小さいブッラータが1個入っていました。チーズを切り分けると、中からとろーっとしたいい具合に溶けかけたストラッチャテッラが流れ出てきました。一口食べてみると、こ、こんなバターみたいなチーズ、生まれて始めて食べた。なにこれ超美味しい。それ以来、ブッラータは冷蔵庫に入れない、という鉄の掟が刻み込まれました。
アンドリアでブッラータを買った店。ただし10年以上昔の話。店の情報を仕入たのはクチーナ・イタリアーナ誌2013年3月号。
プーリアが大好きになった貴重な体験でした。
プーリアの旅の面白い話、まだあります。
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週末はクレアパッソのお薦め本の紹介。
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『スッド・グランデ・クチーナ(南伊・山・海)』
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