2024年9月13日金曜日

ボローニャには存在しないスパゲッティ・ボロニェーゼ。今やイタリア料理の象徴になったこの料理は、実はトリノで生まれた。

ちょっとマイナーな料理が続いたので、次は、イタリアを象徴する料理の話です。
スパゲッティ・アッラ・ボロニェーゼ。こう聞いて、ん?と思うのがイタリア人ですが、どこが問題なのか、全然分からな~い、というのが外国人。だもんで、外国人をからかう時の代表的料理になっています。スパゲッティ・アッラ・ボロニェーゼという名前は、度々取り上げてきました。スパゲッティ・アッラ・ボロニェーゼは、ボローニャ風スパゲッティという意味。アッラ・ボロニェーゼと言われればミートソースだと外国人は思います。でも、ミートソースは英語。イタリア語で言うならミートソースはラグーRagùです。ちなみにragoûtはフランス語。

フランスの伝統的なラグー。

そしてイタリア語のラグーはスパゲッティではなく、タリアテッレにかけるソースです。

例のめんどくさいイタリア人のこだわり発動か、なんて思いますが、スパゲッティとボローニャをごちゃ混ぜにしてしまう行為は、ボローニャ人にとっては大きな冒涜。彼らにとってはスパゲッティ・ボロニェーゼは存在しないのです。

地方料理の純粋性にとてもこだわるイタリア人が、スパゲッティ・ボロニェーゼが世界中に拡散しているのを黙って見ているのは、かなり意外なこと。ナポリ人がナポリのピッツァを広めるのに費やしている努力と比べると、もう好きにしてくれ、と言っていると思うくらい、寛大です。

下の動画は、ボローニャ市長がスパゲッティ・ボロニェーゼは存在しない、と訴える動画。
スパゲッティもボローニャも確かに存在しています。up主はいったいなぜ、と思って調べてみたんだそうです。
その結果分かったのは、硬質小麦が育たない北部では、セモリナ粉から造るスパゲッティは作れないので軟質小麦粉から造るタリアテッレにかけるべき、つまり、北イタリアのソースラグーを南イタリアのパスタ、スパゲッティにかけるのが問題ということです。


まあね正直言って、みんなここまではたどり着くんですよ。でも、その先がうやむや。結局謎のまま放棄しちゃう
ところが、『クチーナ・イタリアーナ』誌は違っていました。今月の(CIRP.38)に詳しく載せましたが、この料理の疑問を、ジャーナリストらしく、歴史的に解明することを試みたのです。
多分、ミートソースのスパゲッティを作っている人も全然知らないと思われることでした。

マルケの硬質小麦

硬質小麦と軟質小麦の違い

小麦の栽培

パスタの話をする時、小麦の話を避けては通れません。そしてこの話になると、南イタリアと北イタリアは別々に考える必要があります。気温が違うだけではありません。歴史的にも、イタリアの北と南は、別々の文化や歴史がありました。

北と南の分断を解説する動画。すごく興味深い動画でした。

そうなんです。スパゲッティ・ボロニェーゼ問題は、この南北の分断を理解すると、より明確になります。

イタリアの州を27分で解説する動画。

イタリアの多様性、なんとなく分かりましたか。次はイタリア統一にについてです。

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(CIR)は『クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』という2冊のイタリア料理の月刊誌のリチェッタと記事を日本語に翻訳した約50ページの小冊子です。
価格は1冊\900(税・送料込)、1年12冊の定期購読だと15%引きの\9200(税・送料込)になります。紙版と、ネット上にupするPDF版があります。PDF版の価格は\800/号、定期購読は\7700/1年12冊です。料理雑誌も販売しています。

現在、2021年の号を販売中です。それ以前の号と、旧総合解説はシステムの変更のため販売を終了しました。
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スパゲッティ・ボロニェーゼは、いわばひと昔前の寿司。現代の寿司はイタリアの多様性の象徴。ピッツァに取って代わろうとしている。

今時のイタリアの地方の多様性や南北の分断が、あまりにも面白くて、かなり横道に逸れてしまいました。結果的にはひと昔前には、このテーマでいじられるのは圧倒的にナポリ人にピッツァでしたが、今は断然、寿司なのだと分かったのでした。寿司は今や異文化の象徴。寿司を食べることは異文化を理解して...