2022年1月14日金曜日

ビットリアの創設者か小作人に与えた土地からこの地方のワイン造りが始まり、数世紀後にはローマ以南で唯一のDOCGワインも誕生した。

シチリアワイン、“チェラスオロ・ディ・ビットリアcerasuoolo di Vittoria”の話、続けます。
このワインの名前、チェラスオロというのは、ぶどう品種の名前ではありません。
使用されているぶどうはネロ・ダーボラ50~70%とフラッパート30~50%。
明るいルビーレッド色とチェリーのようなジューシーさが感じられ、セッコでコクがあるソフトな味のワイン。
このワインは、モディカの伯爵夫人で街の創設者の、ビットリア・コロンナ・エンリケスが、ブドウを植えた農家に特権を与えて領地のワイン生産を奨励したのがきっかけで造られるようになったと伝えられています。
具体的には、1607年の街の創設時に、75人の小作人に1ヘクタールの土地を与えたのです。
その結果、この地域の隅々までブドウ栽培が広がり、この地方のワインは地中海中に知れ渡る産物となったのでした。
今ではシチリア南東部はワインのふるさとともみなされています。神話によると、シチリアにワインをもたらしたのは、ディオニーソス(ギリシャ神話のワインの神)からワインの造り方を学んだギリシャの農民で、シチリアに移り住んだと言い伝えられている。

この話を知ってからヴィットリアの街を見ると、新たな発見が・・・。


ワインに使われる2種類のぶどうのうち、ネロ・ダーボラは、
シチリアワインの質が飛躍的に向上するきっかけとなった品種です。
かつてシチリアワインはブレンド用ワインとみなされていました。
ところが、ドゥーカ・ディ・サラパルータの“ドゥーカ・エンリコDuca Enrico”のようなネロ・ダーボラ100%のワインが世に出ると大成功を収めて、シチリアのネロ・ダーボラは、一種のトレンドワインになりました。

ドゥーカ・ディ・サラパルータ

市場が白より赤ワイン寄りになったのと、シチリアワイン全体の向上の時期が重なったため、と分析する専門家もいますが、今では、ネロ・ダーボラはシチリアで一番重要な赤ワインになりました。
ネロ・ダーボラは南のワイン、特にシチリアワインの特徴をあれこれ併せ持つ飲みやすいワインで、名前を隠してテイスティングしても、ほてんどの人がシチリアのワインと当てる、と言われているほどです。
このシチリアらしさが成功の要因とも考えられています。
さらに、ネロ・ダーボラは他のブドウを加えても個性を保つことができる品種だそうです。
トスカーナでサンジョベーゼをカベルネやメルローとブレンドしたように、ネロ・ダーボラをインターナショナルな品種と組み合わせたワインも作られるようになりました。
そこで、コピーが出回って品質が低下するのを避けるために、その土地ならではの土壌や気候条件、つまり“テロワール”にこだわったワイン造りが行われるようになります。
シチリアワインの作り手たちは、ネロ・ダーボラはこれからも発展すると信じています。

1607年にヴィットリアの街ができ、1973年にチェラスオロ・ディ・ヴィットリアはシチリアで最初のDOCGワインになります、というか、ローマより南ではただ1つのDOCGだそうです。
これはシチリアのワイン関係者にとっては大きな出来事でした。
わずか数世紀の間の出来事です。
すべてはビットリア・コロンナ・エンリケ女伯の先見の明から生まれたんですね。
1693年の大地震でこの地方の街は壊滅的に破壊されますが、その後、見事に復興しています。
チェラスオーロの語源は、この地方に生える、ケセソスと呼ばれる赤い実がなる低木ではないかと考えられています。
ネロ・ダーボラは、深いルビーレッド色、マラスカチェリーの香り、果実の香りといった上質ワインに必要な要素をすべて持っているワインだそうです。

フラッパート種のぶどう



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