2019年12月29日日曜日

アルタ・クチーナとパスタ

家庭料理と地方料理から生まれたイタリア料理は、地元の作物を使って親から教わったリチェッタで作る料理で、どう考えても今の時代には逆行しています。

パスタもそうで、家族と強く結びついていますが、アルタ・クチーナや貴族の食生活との結びつきは、とても弱いのでした。
歴史を見ると、富裕層の料理というのが生まれましたが、パスタは小金持ち層ぐらいでとどまって、大金持ちには、あまり関心を持たれなかったようです。
貴族料理としてフランス料理が花開いたのとは大きな違いです。

イタリア料理は、世界の富裕層から、アルタ・クチーナがない、と見られていたのです。
でも、思うに、地方の農家の家庭の親子の関係は、レストランのグランシェフと弟子たちの関係に似ていないでしょうか。
シェフの中には、ずば抜けた才能やカリスマ性を持つ人がいて、そのシェフを中心に流派が生まれます。

イタリアのグランシェフたちの師匠は貴族の家庭のサボイア家の料理人たち、つまりフランス人料理人でした。
イタリアはヨーロッパの人々にとっては憧れの地でした。
富裕層の人々の間では、イタリア旅行が大ブームでした。
観光客が求めたイタリア料理はガイドブックにでてくるような、赤と白のチェックのテーブルクロスにこもかぶりのワインボトルがあるような店の料理でした。
でも、アルタ・クチーナへの関心と需要は十分にあったのです。
そんな時代に、ヌーベル・キュイジーヌが伝わります。

イタリアの若いシェフたちは尊敬してやまないフランス料理人のもとで学び、フランス語を流暢に話し、伝統にとらわれずに短時間で調理することや軽いソースを学び、食材のルーツや栄養価にも注目する必要があること、そして何よりもオリジナリティの価値を知りました。
彼らがイタリアに戻って作ったパスタは、イタリアのアルタ・クチーナにパスタを登場させる結果になりました。マルケージシェフの作った8個のペンネの料理は、山盛りのゆでたてのパスタより、話題になりました。
これまで何度も紹介してきた、
フェデリコ・フェリーニ監督のバリラの傑作CM「上流階級」

このCMは、当時パスタが上流階級ではまだ受け入れられていなかったことを物語っています。

パスタのアルタ・クチーナで成功すれば、イタリア料理の世界では、きっと英雄になれます。

でも、そのハードルの高さは、イタリアのパスタメーカーはよく知っています。
これは、ディチェコの本、『パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア
イタリア有数のパスタメーカーが、イタリア各州のよりすぐりのグランシェフに造らせた乾麺のパスタ料理の本です。

パスタの歴史を知れば、これがいかに画期的な計画か、よくわかります
次回からはこの本のリチェッタを訳してみます。

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パスタのお薦め本
パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア
パスタレボリューション
パスタ・フォルメ・デル・グラノ
パスタ ; サポーリ・エ・プロフーミ・ダル・スッド
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