2024年10月22日火曜日

ブルーノ・ムナーリ、この多才なデザイナーの思想は、50年代の料理を過去のものにした。

イタリアの70年代は、トラットリアで上質の料理を味わうという最初の兆候が表れた時期。
やがて、登場するのは、ブルーノ・ムナーリというデザイナーです。
彼は工芸品としての芸術や洗練された料理を提唱したのです。

ブルーノ・ムナーリをイタリアン・デザインの巨匠と呼ぶ人もいます。
彼が提唱したものの一つが“工芸品としての芸術”。


多才な人で様々な分野に影響を及ぼし、新進気鋭な思想の持主でした。技術の大衆化こそ素晴らしい未来だと信じていたようですが、その思想はかなり難しくてとっつきにくい。
でも、彼の思想は国中に強く影響を及ばし、広まっていきました。トラットリアで毎日食事をする人たちが彼の考えをどれほど理解するかは疑問ですが、かなり明確なのが、50年代の料理が過去のものになっていった、ということ。
このような天才の出現は、イタリアの大衆の食文化にも影響を及ぼしました。

そしていよいよ、料理の世界にも天才が登場しました。彼はヌーヴェル・キュイジーヌをイタリア中に知らしめます。

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2024年10月21日月曜日

トラットリア・カンタレッリはまだ田舎があった時代の地方主義の最後のきらめき。

トラットリアで上質の料理を味わう時代の象徴になったのが、(CIR6月号)によると“お米のサヴァラン”だそうです。あまり食べたことない料理かもしれませんが、こんな料理です。

パルミジャーノ風味のお米のサヴァラン。
サヴァランというフランス語の型を使う料理ですが、これをイタリア語でいうと、“ボンバ爆弾”となります。
ボンバ・ディ・リーゾ

名前をサヴァランからボンバにしただけで、なにこの親しみやすさは。
トスカーナのルニジャーナ地方の料理だそうです。
さらに、ナポリではサルトゥと呼びます。

ナポリのサルトゥ・ディ・リーゾ。
なんだかかなり派手で賑やかでお祭りムードがある料理ですね。どこから見ても南イタリアの料理ですが、実はその原型はフランスの宮廷で生まれた料理。それがモンズー経由でナポリ、パレルモなど、南イタリアの貴族たちの間に伝わりました。
モンズーというは、あるフランス語のイタリア語なまり。正確に言うと、イタリア語、フランス語、ナポリ方言をミックスした言葉で“ムッシュー”という意味です。
実は、このナポリなまりのフランス語について、ある事実を知ってしまいました。
この不思議ななまりを生み出した犯人がわかったのです。
その人は、ナポリ料理のもっとも権威のある歴史的な本として知られる『Cucina Teorico Pratica 』の著者、ブオンビチーノ公、イッポリート・カヴァルカンティ(1787〜1860)です。

この本の序文で、カヴァルカンティはフランス語の発音をイタリア語に当てはめて、新しい言葉を作りだしたことを告白しています!しかも、読者の大部分はフランス語を理解しないだろうから、とも書いています。彼の目的は、当時貴族や富裕層の間で流行していたフランス風料理を、分かりやすく紹介することにありました。

彼が発明したナポリ風フランス語は、チャルロッタ(シャルロット)、グラッテ(グラタン)、セッレーリ(セロリ)、ガトー(ガットー)などです。

イタリア料理の百科事典、『グランデ・エンチクロペディア・イッルストラータ・デッラ・ガストロノミア』

によると、18~19世紀のナポリやシチリアの貴族の家の料理人のことで、フランス人じゃなくてもモンズ―と呼んでいたようです。当時、フランス料理は
やその食文化は憧れの的だったとあります。それは現在まで続いているようです。

次回は80年代。
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2024年10月19日土曜日

イタリアの歴史的トラットリア・カンタレッリがあるのは海辺でも山の上でもない、ポー河右岸の肥沃で穏やかな平野。バッサ・パルメンセ地方。

(CIR6月号)は、イタリア料理のシンボルとなった歴史的イタリア料理の話から始まります。
その中で、食料品店が併設されたトラットリアでありながら、ミシュランで2つ星を獲得し、イタリア料理の象徴となった店、“トラットリア・カンタレッリ”。

下の動画は今や伝説となった国営放送のガストロノミー番組に登場するトラットリア・カンタレッリ。店のスペチャリタ、ホロホロ鳥の粘土包みを紹介しています。

現代人が作るホロホロ鳥の粘土包み

店があるのはエミリア・ロマーニャ地方のバッサ・パルメンセと呼ばれる地方。
ポー河右岸のクラテッロの産地です。肥沃で穏やかな平野、冬は霧に包まれ、夏は猛暑、という地。

この地方の主役は、地中海でも、アルプスでもなく、ポー河です。
ポー河で河下りを楽しめるクルーズ船。

ポー河の周囲はでは草や牧草が良く育ちます。それを食べて牛がたっぷりミルクを出します。当然、酪農が盛ん。そしてチーズを造り、残りは豚の餌になります。なので養豚業や肉の加工業も盛んです。やや湿気の多いこの地域は、サルーミの王様、クラテッロの熟成には完璧な地です。

クラテッロの造り手、アンティカ・アルデンガAntica Ardenga。
この地方は、イタリアのアルティジャナーレの伝統が深く根付いています。


この地方、そしてクラテッロの産地ジベッロを象徴するトラットリア・ラ・ブーカTrattoria La Buca。この地方の人はサルメリーアの店員さんもトラットリアの経営者も同じくらい深く地元の食材を理解してる。

ブルーノ・バルビエリ/ビア・エミリア
エミリア地方出身のシェフが、子供時代の経験と食文化を美しいイラストで語る本。
この地方の家庭で飼う豚の話は、衝撃的すぎてちょっとトラウマ。

バッサ・パルメンセはヴェルディの故郷なので、地元の人は、この偉大な作曲家も当然クラテッロが大好きだったと信じている。

なぜクラテッロは重要なのかを説明する動画。当然BGMはヴェルディ。

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2024年10月18日金曜日

美食の地、エミリア・ロマーニャのポ―河流域の伝説のトラットリアが現代イタリア料理の重要な転換点。

(CIR6月号)のリチェッタは、現代イタリア料理史のシンボルとなったイタリア料理です。
まず最初に、現代イタリア料理の歴史は、70年代の70年の歴史です。それ以前は地方料理主義の時代。最初に登場するのはミレッラ・カンタレッリのトラットリア。パルマ平野のサンボセートの霧に包まれたオステリアだって。知ってる?私は初めて聞きました。

下の動画は、1957~58年にライで全国放送された“viaggio nel valle del po”という、作家のマリオ・ソルダーティによるイタリアの地方の食文化のルポ番組。
その中に、当時のカンタレッリの姿が映っていました。フランスワインが並び、クラテッロを売っている食料品店が併設されたトラットリアです。イタリアの食の旅番組は、とても高度な地方料理の知識とそれを説明する文章で言いたいことを言える知的なレポーターが登場します。
このトラットリアは、とても庶民的で親しみやすい人たちが経営している割には、サービスは高級レストランのよう。

トラットリア・カンタレッリ

現代のポー川流域のアルタ・クチーナを代表するシェフ、マッシモ・ボットゥーラがミレッラ・カンタレッリのことを語っています。上の動画では電話しながら登場した女性。店はミシュラン2つ星だって。どうやらレジェンド級の店なんですね。ボットゥーラシェフは、ミレッラ・カンタレッリ風ホロホロ鳥を紹介します。カンタレッリ風ホロホロ鳥は、食通の間では有名な料理なんですね。

トラットリア・カンタレッリを紹介する動画がもう1つ。この店のことを文化の集積地と呼んでいます。さらにイタリア料理の歴史を作った、とも言っています。フランス人がワインを買いに来たってことがニュースになってる。さらに1970年にミシュランの2つめの星を獲得して、トラットリアとしてはあり得ない栄誉を獲得すると、店には国内外からvipの客たちが押し寄せるようになります。美食文化の象徴、本格的でありながら革新的な料理を出す店だそうです。その一方で、有名な卵23個入りの生地は、夫婦喧嘩の後でイライラしてたまたま卵をたくさん入れちゃったらすんごく美味しくなった、なんて暴露してます。
店の閉店は1982年、イタリア料理界に大きな穴が開きました。そして80年代になると、田舎はもうない・・・、だって。


次は店の料理の話。

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2024年10月17日木曜日

現代イタリア料理史入門、まずは地方主義の70年代。

(CIR6月号)もうすぐ発売です。


6月号の注目記事は、6月の料理。
リチェッタよりも、イタリア料理の現代の歴史がよく分かる貴重な記事。
まずは、トラットリアで上質の料理を味わう、という最初の兆候が表れた70年代からのイタリア料理の変化をイタリア人が振り返ります。

当時は地方主義の時代でした。

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2024年10月16日水曜日

アメリカでの販売を見越して英語の名前になったファイブ・ローゼスは、イタリアのロゼワンの代名詞。


サレントのロゼの話、続けます。
イタリアで最初のビン入りロゼ、レオーネ・デ・カストリスのファイブ・ローゼス。前回はビン入りロゼの歴史的な意味を解説しました。第2次世界大戦と南北の分断から生まれたこのワインは、イタリアのロゼワインの代名詞になるほど有名になりました。
でも、冷静に考えてみると、このワインの名前は英語です。5つのバラという意味ですが、イタリア語ならチンクエ・ロ―ゼあたりでしょうか。英語になったのはデ・カストリス家では何代にもわたって5人の息子がいたことから、こう呼ばれていたそうです。ローゼはもちろんロゼにかけてます。
ぶっちゃけると、このワインを見出してアメリカに輸入したアメリカ人将校が、アメリカでの流通を見込んで英語の名前を希望したんだそうです。

最初は14%あったアルコール度は、現在12.5%。ぶどうはネグロ・アマーロとマルヴァジア・ネラ。誕生50周年の1993年のビンテ―ジからは、もっと組織のあるファイブ・ローゼス・アンニヴェルサーリオの生産も始めています。

逸話と物語に満ちたこのワインは、ガンベロ・ロッソの2013のオスカー受賞。

ワインの格付けガイドブック『ガンベロ・ロッソ』
2023年のプーリアのワインの中ではファイブ・ローゼス・アニヴェルサーリオ2021が2位。プーリアの15€以下のトレ・ピッキエーリは9種類も選ばれています。
1位になったのは、ススマニエッロです。(CIR5月号“ロザーティ・デル・サレント”)の記事の中にも、出てきたので覚えていました。プーリアのロゼの変化の可能性を表したワインだそうです。記事の中でススマニエッロと組み合わせている料理は、メカジキとナスのポルペッテ、ドライトマトとケッパーのソース(リチェッタはP.48)。複雑な味の各種の食材とも組み合わせることができるワイン。

ジョルジョーネのプーリア風なすのポルペッテ


サレント地方以外でも様々なロゼワインが造られています。プーリアなら、世界遺産のミステリアスなお城でも知られるカステル・デル・モンテ。あのお城の中でワインのテイスティングするなんて最高。

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2024年10月15日火曜日

ギリシャ語とラテン語で「黒」という意味のぶどう、ネグロアマーロ。これをバルクで売っていたサレント地方では、戦争によって瓶が手に入らなくなり、新しい習慣への転換に成功する。

前回は、ネグロアマーロがギリシャ語とラテン語で「黒」という意味だと説明しました。まあイタリア語の黒“ネロ”がついているぶどうはたくさんありますが、
例えばピノ・ネロ

ネロ・ディ・トロイアはプーリアのぶどう。

プーリアのサレント地方を代表するぶどう、ネグロアマーロ

ワインの色は皮などの絞り粕をモストに浸漬させることによって生まれます。なのでぶどうの品種が重要です。プーリアのぶどうは北伊やフランスのワインの色を濃くするために使われていました。よっぽど黒かったんですね。

プーリアのぶどう農家にとって大切な収入源だった黒いぶどう。ところが瓶入りワインの需要が増えて、北伊の瓶詰業者がプーリアのぶどうのバルク買いをやめると言い出して、農家のぶどう離れが加速します。

サレントワイン復活のリーダーとなったのは、レオーネ・デ・カストリス、コジモ・タウリーのなどの旧貴族の新世代、北伊から参入したカンティーナなどでした。
レオーネ・デ・カストリスはイタリアで最初の瓶入りロゼワイン、ファイブ・ローゼスを発表します。
レオーネ・デ・カストリス

このワイン誕生の話はとても有名。第二次大戦時、連合軍のアメリカ人物資補給将校が、レオーネ・デ・カストリスのロゼワインを気に入り、それを瓶詰めするように依頼したことがきっかけで生まれました。1945年にアメリカに向けて最初に出荷されたのは1943年のビンテージのリゼルヴァ。アルコール度は14%程度ありました。
当時のイタリアは、北部をドイツ軍によって占領されていました。
ドイツ軍は何十にも防衛線を張っていたため、北と南は分断状態にあったのです。
ところがワインの瓶メーカーはすべてドイツ軍の占領地内にありました。
新しい瓶が手に入らない。
そこで取られた解決策は、地中海のひらめきとアメリカの実用主義が合体したものでした。
今では笑い話だそうですが、それはビンのリサイクルです。
集められたビンの中にはビール瓶を初めとする様々な飲み物の瓶がありました。
ワインは12000本以上のビンに詰められて、“ファイブ・ローゼス”のラベルが貼られて出荷されました。
ファイブ・ローゼスのPV

2015年のレオーネ・デ・カストリス

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イタリアの新しいマスター・オブ・ワインが選ぶコンテンポラリーな赤ワイン。

イタリアの新しいマスター・オブ・ワイン、アンドレア・ロナルディが提案するPinosophyの概念。イタリアの食の分野のカリスマたちは、深い哲学への造詣がある人が多く、言ってることの意味が分かるまで、かなり苦労します。マスター・オブ・ワインも例外ではありません。なので、それなりにか...