2023年1月13日金曜日

かつてパスタは南イタリアの産物だったが、北のパスタメーカーが気候や地形に左右されない安いパスタの大量生産を始めるとパスタの中心地は北に移った。

 今日は今月のリチェッタから、パスタの2品目。
“ブリーとジーティのティンバロ”です(リチェッタの日本語訳はP.5)。
スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズのパスタの本、『パスタ・エ・スーゴ

によると、歴史的には、イタリアのパスタ製造の中心地は、ナポリとシチリアです。そしてパスタ製造の技術を確立してパスタをイタリア中に広め、イタリア最初のパスタの都になったのは、アラブの影響を受けたシチリアでした。
 シチリアのパスタは海を伝わってジェノバや北アフリカりも広まりました。
パスタの歴史は普通小麦の歴史から始まります。小麦を粉にしてこねて麺にし、それを保存、輸送するために乾燥させたものが当時のパスタでした。そしてこのパスタ製造の中心地がパスタの乾燥に適したシチリアでした。

 16世紀になると各地にパスタの製造所ができて地方料理に伝統的な地元のパスタが取り込まれていきます。そして生産の機械化が進み、保存と輸送が容易になり、大量生産が始まると、グラニャーノやトッレ・アンヌンツィアータといった山の麓で水車の動力源となる水が豊富で大きな港があり、労働力も豊富な大都市ナポリに近い街が、パスタの街として台頭していきます。

 ところが、19世紀末から20世紀にかけて、パスタの都はバリラがあるパルマに移っていきます。グラニャーノやトッレ・アンヌンツィアータといった南のパスタ造りで知られる街は、その伝統と恵まれた気候を過信して、アリとキリギリスのキリギリスになっていました。ところが、北に住むアリたちは、徹底的に大量生産の技術を磨き、天候や地形に恵まれない地方でもできるパスタを作り出し、安い価格で販売するようになったのです。
 この頃になると、シチリアがパスタの都だったことはみんな忘れてしまいました。
アラブ人やギリシャ人、はてはマルコ・ポーロまで登場する世界中が舞台の食べ物がパスタでしたが、アラブ人が何をしたか、もうみんな忘れてしまったことでしょう。
でも、デチェッコの本、パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア
によると、かつてパスタは肉より高価な、シチリアから輸入される食材だったとあります。
シチリアのパスタは高級食材の路線を進んでいたのですね。

 シチリアのパスタがイタリアのパスタとして表舞台に立つとき、その代名詞となるのがティンバロです。今月の(CIR)P.32にもあるように、ティンバロはフランスの宮廷で生まれ、モンス―によってフィレンツェ経由でナポリやパレルモなど南イタリアの貴族の間に伝わった料理でした。

モンスー。

徹底的な庶民路線のナポリ料理に対して、豪華なエレガントさを追求したシチリアのパスタ。
シチリアのティンバッロに使われるパスタは指輪のような小さなリング型のアネッレッティ。

今回のリチェッタはティンバッロのもう1つの定番パスタ、ジーティのティンバロ。

ジーティはアネッレッティとは正反対のブカティーニに似たナポリの太い穴あきロングパスタ。折ってゆでて、ラグーであえてオーブン焼きにするティンバロスタイルのベイクド・ジーティがアメリカで大人気。
どうやらイタリア系マフィアの姿を描いたのテレビドラマ・ソプラーノで、ソプラノ家の名物料理として登場したのがきっかけらしい

ジョルジョーネのジェノベーゼのティンバロ。ジェノベーゼはナポリ風ラグーのこと。
ジーティを折る音をご堪能ください。シェフは1本を3つに折ります。

ナポリ風ジーティ・ラルディアーティZITI LARDIATI
材料/4人分
ジーティ・・320g
サン・マルツァーノのホールトマト・・800g
コロンナータのラルド・・140g
玉ねぎ・・80g
ペコリーノ・ロマーノ
バジリコ、EVオリーブオイル、塩

・玉ねぎをみじん切りにする。コロンナータのラルドを薄く切って刻む。これらを油でソッフリットにする。
・トマト、バジリコ、塩を加えて蓋をして煮る。
・ツィーティを折ってゆで、トマトソースに加えてなじませる。
・皿に盛り付けてペコリーノを散らし、バジリコで飾る。

ナポリでは、米を使ったサルトゥー・ディ・リーゾが生まれた。

サルトゥを始めとするナポリのシンプルな伝統料理を出すトラットリア・ダ・カルミネ。




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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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