2019年7月8日月曜日

スパゲッティのフリッタータの歴史はナポリや南イタリアの歴史と繋がっていた

今日は、知ってるようでよく知らない料理、スパゲッティのフリッタータの話です。
総合解説」5/6月号P.14に載っています。
『サーレ・エ・ペペ』の記事でした。

記事の冒頭、ニューヨーク・タイムズが選ぶ“行きたい場所52選、2017年版”(web版はこちら)が話題になっていました。
毎年発表されているランキングですが、日本では、この年は大阪が15位に選ばれたということが話題になりました。
さらに52位が琉球諸島と、日本からは2ヶ所が選ばれていました。
その陰で、イタリアは、なんと1箇所しか選ばれなかった、ということにえらく憤慨しています。
その1ヶ所はカラブリアで、37位でした。
しかも、カラブリアの手付かずの自然の美しさが評価されたのではなく、食文化で選ばれたというのがイタリア人のみなさんのプライドをちょっとさかなでしたようです。
ちなみに大阪もおすすめポイントは食文化でした。
1位はカナダです。
このことからもわかるように、アメリカ目線の、まだアメリカ人に知られていない場所を選びがちな、とてもクセの強いランキングです。

ニューヨーク・タイムズが選別理由として掲げたカラブリアのレストランの1軒、ristorante Dattiloのシェフを呼んでさっそくTV番組に。
それにしても、アメリカ人どころかイタリア人もカラブリアの食文化はあまりよく知らないのでした。

総合解説」では、この謎の多いカラブリア料理を、他の地中海の街と同様、硬質小麦粉のパスタが基本の食文化、と定義しています。
パスタのセコンダ・コットゥーラ(ゆでたパスタにもう一度火を通す調理方法)も伝統だそうです。
そしてこのスパゲッティのフリッタータは、マルテディ・グラッソやパスクエッタのピクニック料理や、日曜日の夕食として作る伝統があるそうです。
マルテディ・グラッソはカーニバルの最終日、パスクエッタは復活祭の翌日の月曜日。
どちらもキリスト教の祝日で、特別な日。

スパゲッティのフリッタータはナポリ料理として知られていますが、この料理の歴史は南イタリアの歴史そのものです。
19世紀、南イタリア全域が両シチリア王国の領土だった時代に、ナポリはその首都でした。
そのため、ナポリ料理が南イタリア全域に広まったのです。
キーワードは両シチリア王国。
忘れがちですが、ナポリは一国の首都だったこともありました。
ナポリのすごいところを知る動画

当時のナポリはパリに次ぐ大都市だったんですね。
王国の主役はブルボン家。

このスパゲッティのフリッタータは、ティンバッロのバリエーションの一つです。
ティンバッロは9世紀にシチリアを支配したアラブ人が作り出して、ブルボン家に受け継がれた料理。
両シチリア王国はシチリア王国とナポリ王国が合体してできた国。
南イタリアの歴史は、ノルマン、アラブ、ブルボン、スペイン、ハプスブルグあたりが入り乱れて、ぐちゃぐちゃなので、すべて繋がっていると思っておけば間違いない。

ティンバッロといえばシチリアの貴族料理の代表ですが、最近ではおしゃれな惣菜店でも見かけるようになりました。
貴族料理版のティンバッロは豪華で派手なパーティー向き料理ですが、それに農民料理をミックスさせて、手軽な僅かな食材で作ったのが、シチリアの地方料理のティンバッロ。

シチリアの貴族料理なら、この本がお勧め。
シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ


今回は、カラブリアのパスタの話のはずが、気がついたらナポリとシチリアのパスタの話をしてました。
カラブリア、不憫すぎる。
続きは次回。


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“スパゲッティのフリッタータ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2017年5/6月号P.14に載っています。
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