2019年6月14日金曜日

ジェノヴァの食文化に深く根付いたフォカッチャ

リグーリアの発酵生地』は、大雑把に言えばリグーリアのパンの本ですが、まずフォカッチャの章から始まります。

今回は、章の冒頭の、「フォカッチャとは」、という部分をざっと訳してみます。

focacciaとは、パン生地に各種の材料を、トッピングする、生地に練り込む、生地ではさむなど様々な方法で加えて味付けしたもの。
その歴史はパン同様古く、語源はfocus(fuoco/火)で、火で焼いたものという意味。
紀元前5世紀にかまどが発明されて、熱した石の上か灰の下で焼くようになるまでは、挽いた穀物の粒と水を混ぜた生地を焼いて食べていたが、それがフォカッチャの前身だ。
カルタゴではファッロや硬質小麦の粉に卵、チーズ、蜂蜜を加えた生地で作っていて、ローマのフォカッチャより美味しいと言われていた。
やがて時と共にフォカッチャはあらゆる階層、地方へと広まっていく。
フォカッチャは、夜通し働いたパン屋が、空腹と暇を持て余してまだ発酵していない生地を少量取って直接かまどに入れて焼いたパンとか、かまどの温度が適温か見るために生地からつまみとった小片を型に入れずに直接かまどの底に載せて焼いたもの、と言われている。
リグーリアにはこの種のパンがたくさんあり、書物に残る最古のものは、ルネサンスの時代に遡る。
薄い詰め物入りトルタもfocacceフォカッチェと呼んでいたので、スキアッチャータタイプの薄焼きパン全般を意味したのだろう。
ジェノヴァのフォカッチャは、all'olio/オイル風味が多い。
フォカッチャの典型でいちばん有名なものといえば、これだ。
ベースは軟質小麦粉、イースト、水、オリーブオイル、塩で、
これにセージ、ローズマリー、オリーブ、玉ねぎなどを加える。
すでに16世紀のジェノヴァでは広く普及していて、パン屋では早朝から売っていた。
バールではカップッチーノに添えた。
昼の軽食、学生の間食、ビーチで食べる夕食など、一日のあらゆるタイミングでフォカッチャを食べた。
リグーリアの最も古いストリートフードでもある。

なるほど、この歴史を無視すれば、フォカッチャのライバルはハンバーガー、と言い切ることもできますね。

本では、粉、酵母、発酵、焼成と、さらに詳細な内容へと続いていきます。
あの美味しさを生み出すには、この部分が重要。


上の動画の職人さんたちは14歳からパンを作っているそうですよー。
完璧な手作業で、若手でも手慣れたもの。
年配の親方風職人さんは、フォカッチャも女性もきれいに化粧した美人がいい、と言いながらフォカッチャにオリーブオイルを塗ります。
この手の話は、うんざりするほど必ず聞かされますが、レポーターの女性は初めて聞いたみたいにニコニコ笑ってますねー。
この対応。素晴らしい。
焼き立てフォカッチャのかっこいい食べ方もありました。

ジェノヴァのフォカッチャもフォカッチャ・ジェノヴェーゼとしてのブランド意識に目覚めたようです。

この奥手な感じがリグーリア人ですねー。




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