このところ、硬質小麦の話を読むことが多く、つくづく、イタリアは硬質小麦がよく育って、水が豊富で粉を挽く水車小屋がたくさんあったおかげで、パスタが生まれて、ひいてはイタリア料理が世界中に愛されることになったのだなーと強く感じています。
硬質小麦だけでなく、パスタ、ピッツァ、パン、ドルチェへと広がるイタリアの小麦粉の世界。
でも、イタリア料理が世界的になったことには、もう一つとても大きな要因があると思います。
それは職人魂です。
今月の「総合解説」の“パンとテロワール”の記事は、私の中で、その印象を決定的にしました。
『ガンベロ・ロッソ』のこの記事は、こう始まります。
「昔はもっとシンプルで簡単だった。
主役は3人。
農民が種をまき、粉屋が粉にして、パン屋がパンにした。
それが70年代頃から、何かが変わった。
集約農業の到来だ。
種は研究所で交配して掛け合わされ、粉はパン用、ピッツァ用、ドルチェ用にミックスされ、酵母は化学的に作られて冷凍乾燥し、2時間程度で発酵した・・・
幸いなことにここ数年、パンの後ろで何が起こっているのかを理解しようとする傾向が生まれてきた。
それは市場の流通の外にあるような小さな業界だが・・・、
例えるなら、小麦畑に面したかまどがある農場、大地に足をつけたパン屋、匠たちを結びつける粉屋、すべての断片を管理する協同組合だ」
小麦を育てる農民がいて、それを粉にする粉屋がいて、焼き上げるパン屋がいて、彼らがどんなに腕が良くても、大量生産して化学的、機械的、効率的に処理されていくシステムでは、画一化されていくだけです。
この環境から抜け出せるのは、確かに、小麦畑の中に粉ひき小屋を建てたと胸を張る粉屋のような、既定の流通の外にある存在に違いありません。
農家とシェフを結びつける粉屋、小麦がどのように栽培されるのかや栽培している農家のことをもっと知りたいと語る、メディアにも注目される巨匠、スーパーの小麦粉より安い値段で有機栽培小麦粉を販売する革新的メーカー。
イタリアのパン業界は、小さな職人のヒーローたちが支えているんですね。
小麦畑の中の粉屋として挙げたムリーノ・マリーノと、古代小麦のエンキル。
↓
イタリアのパン業界の巨人、ガブリエレ・ボンチは、カットピザの店に次いで
イタリア最高の小麦粉と天然酵母のパン屋も始めた。
↓
今も現役のウンブリアの石臼で挽く古い水車小屋の小さな粉屋。
ムリーノ・マリーノ、ラツィオの小麦の有機栽培農家、シチリアのムリーノ・デル・ポンテと共同で小麦粉の新製品の開発に取り組んでいる。
紹介しきれない興味深い粉屋さんやパン屋さんが、イタリアにはくさんあります。
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“パンとテロワール”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年5月号に載っています。
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2016年3月28日月曜日
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