今日はボッタルガbottargaの話。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。
ボッタルガとは、ご存じの通り魚の卵巣を塩漬けして干したもの。
ボッタルガを最初に作ったのはフェニキア人、名前の語源はアラビア語で魚卵の塩漬けという意味のbatārikh、というのが有力な説。
代表的な産地はイタリアのサルデーニャや地中海沿岸の一部ですが、南米でも作られています。
また、サルデーニャ産のボッタルガと言っても、魚の原産地が必ずしもイタリアという訳ではありません。
↓ブラジル産のボラとボッタルガ
イタリア産のボラを使ったボッタルガは、そう大量には生産されていません。
国産ボラの中でも、サルデーニャのカブラスという潟で獲れたボラのボッタルガは最上品とみなされます。
原材料がカブラス産と明示されていないものは、輸入品のボラの卵巣を使った可能性大。
ただし品質的には、輸入品でも上質のものはカブラス産に引けを取りません。
カブラスのボッタルガには、“ウンギア”がついているものがあります。
ウンギアとは“爪”という意味ですが、実際には、2つの卵巣をつないでいる部分にかぶさっている、なすのヘタのような白い部分のこと。
卵巣を切り離す時に、卵巣の先端に続く皮や身の一部も一緒に切り取るとウンギアができます。
これは卵巣を傷付けずに取り出すための方法で、ウンギアが付いていると、伝統的な手法で作られたカブラスのボッタルガのあかし。
ウンギア付きボッタルガ
↓カブラスのボッタルガ。
04:33あたりを見ると、ウンギア付きの取り出し方がわかります。
マグロのボッタルガの場合は、“トンノ・ロッソtonno rosso”、つまりタイセイヨウクロマグロのものが最上品とされますが、これは数が少なく、実際にはほとんどが、“ピンナ・ジャッラpinna gialla”と呼ばれるキハダマグロの卵巣です。
ところが、そもそもキハダマグロは地中海では獲れません。
ボラやマグロだけでなく、ある程度大型の魚であれば、どんな魚の卵巣もボッタルガにすることができます。
比較的知られているのは、タラやスズキの一種のボッタルガ。
様々な魚の卵で作ったボッタルガ
この写真のボッタルガを作った人によると(webページはこちら)、手作りボッタルガの第一段階は、卵巣を岩塩で覆って重石をのせ、水分を出すこと。
塩が水でぬれたら新しい塩に換えながら、水分が出なくなるまで、数日から一週間程度塩漬けます。
次は乾燥。
昼間はガーゼで覆うなどの虫よけをして天日で干し、夜はキッチンペーパーに包んで板ではさんで型押しします。
釣った魚の卵巣をボッタルガにする時は、開いてみるまで卵があるかどうかわからないのが難点なんだそうです。
↓こちらは自家製のボラのボッタルガの作り方。
新鮮な卵巣を洗い、水1リットルにつき塩15gを加えた塩水に約1時間漬けます。
これを布の上に並べ、虫よけの網をかぶせて天日干し。
毎日裏返しながら4~6日乾燥させます。
重さが約40%減ったらでき上がり。
最後に油を塗って食品用の蝋で2~3回コーティング。
イタリアでは真空パックにしますが、そうすると一度開けたらそれきり。
でも蝋だと、使う分だけ蝋をはがせばいいので便利、と説明しています。
教えているのはユダヤ系の人。
ボッタルガの話、次回に続きます。
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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年5月号
“ボラのボッタルガ、ベスト10”と“マグロのボッタルガ、ベスト10”の解説は、「総合解説」'08&'09年5月号に載っています。
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