きのうの続きで、今日はシチリアのチーズの話。
カステルヴェトラーノがある地方は、ヴァッレ・デル・ベリチェValle del Beliceと呼ばれています。
町の東側を南北に流れるベリチェ川に由来する名前です。
カステルヴェトラーノのエキストラバージンオイルも、“ヴァッレ・デル・ベリチェDOP”。
このヴァッレ・デル・ベリチェ地方は、羊の放牧も盛んです。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』今月配本号の記事にもあるように、様々な羊乳のチーズが作られています。
シチリアの羊農家の放牧とチーズ作りの動画
この動画でも分かるように、羊のチーズと言えば、ペコリーノとリコッタが代表的。
でも、ヴァッレ・デル・ベリチェの名物は、そのどちらでもありません。
ヴァステッダvasteddaという名前の、パスタ・フィラータ・タイプのチーズなんです。
DOPチーズです。
管理組合のサイト
パスタ・フィラータとは、モッツァレッラにも用いられる製法で、生地を湯の中で伸ばしながらこねて弾力をつけていく方法(フィラータとは糸のように引き伸ばすという意味)。
南イタリアの牛乳のチーズは、このタイプが中心です。
ところが、これは牛乳のチーズに用いられる技術で、羊乳に同じことをするのはとても難しいんだそうです。
ヴァステッダは、おそらく世界でも唯一の、とても珍しい羊乳のパスタ・フィラータチーズなんだそうで。
地元の人たちは、ベリチェ地方の羊のミルクでないと糸引き生地にはならない、と胸を張っています。
スローフードの後援食材にも指定されています。
シチリアには、ヴァステッダという名前のパンもあります。
このパンに形が似ているのでヴァステッダという名前になった、という説もあります。
チーズのヴァステッダとパンのヴァステッダ
↓
prodotti-tipici-siciliani.it
じゃあパンのヴァステッダの名前はどこから来たかというと、ネット上では、フランス語でフォカッチャという意味の“ガステル”とか言う言葉が語源で、それが“グアステッダ”になって、さらに“ヴァステッダ”になった、という説をよく見かけますが、真偽の程は定かではありません。
今ではスープ皿の型を“ヴァステッダ”と呼ぶので、この型を使っているものは全部ヴァステッダと呼ばれるようです。
きのう紹介したパーネ・ネロも、形によってはヴァステッダとなります。
スローフードのサイトでは、ヴァステッダとは、「損なった」という意味の“vasta”という言葉が語源と紹介されています。
失敗したペコリーノを使って別のものに作り変えたチーズ、という訳です。
このチーズは、元々は夏に作っていました。
夏は乳の量が少なくなるのですが、その貴重な乳が暑さで傷みやすくなります。
少しでも傷んだものが混ざると、出来上がったペコリーノは売り物にならなくなってしまいます。
そこでそんなペコリーノの再利用法として考え出されたのが、このチーズだったわけです。
ヴァステッダは、直径15~17㎝、高さ3~4㎝の平らなフレッシュチーズ。
作り方は、羊乳にレンネットを加えて固め、細かく砕いたら容器に入れて24~48時間寝かせます。
これを薄くスライスして(下の動画はここから始まります)桶に入れ、リコッタを作った時に出た乳清か湯をかけながらこねてモッツァレッラのような生地にしていきます。
これをちぎって丸め、皿に入れて平らにして冷まします。
仕上げに塩水に漬けて乾かして出来上がり。
ヴァステッダは、かすかに酸味のあるデリケートな味なんだそうです。
テーブルチーズとして食べたり、小角切りにしてインサラータやパスタに入れたりします。
作り立てが一番おいしいく、3日以内に食べるチーズ。
ということは、やっぱり地元に行かないと最高のものは味わえないというわけですね。
どんな味なのか、気になるなあ。
セリヌンテやカステルヴェトラーノ方面に行く人は、ヴァステッダとパーネ・ネロとヴァッレ・デル・ベリチェDOPのエキストラバージンオイルの味見をお忘れなく!
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2006年4月号
ヴァステッダ、パーネ・ネロを含む「グルメ紀行~シチリア西部」の解説は「総合解説」P.3に載っています。
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Volendo potete fare anche video e metterlo on line per visura.
Regolamento .
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La giuria saremo noi stessi.Alla fine dell’evento ci sarà un
commento esclusivo relativo alla manifestazione di Stefano Buso
Inzio Giocogara 10/Aprile/2008 scadenza invio foto il 10/maggio/2008
Valutazione vincitore giorni 5.
risultato e verdetto del vincitore .20/maggio / 2008
Il vincitore avra' diritto ai segenti Premi:
Il Blog Baol scriverà un post ispirato e dedicato al vincitore del "concorso"
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