2022年6月6日月曜日

スぺイン語ではバターはマンテカ。これはリゾットに欠かせないマンテカーレのテクニックがスペインから伝わったことを意味している。

それではサフランのリチェッタです。
ヨーロッパ料理的には、フランスのブイヤベース、スペインのパエリヤ、イタリアのリゾット・ミラネーゼが、サフランを使う三大料理。

リゾット・ミラネーゼ。

この料理にリゾットが入るようになったいきさつは、有名な言い伝えとなって残っています。それは、16世紀にミラノのドゥオモのガラス工の親方が、ガラスの色づけのためのサフランを、うっかりお米のミネストラの中に落としてしまった、というもの。この話はかなり有名で、イタリアに初めて行った時の私でも知っていました。
だから、ミラノのドゥオモに行ったときは、壮大なステンドグラスを見上げながら黄色を探して、これがサフランの色かあ、なんて思ったものです。

ミラノのドゥオモのステンドグラス。

でも、見てるうちに、この教会の荘厳な雰囲気とガラスから差し込む光によって、ステンドグラスの黄色は神々しく輝いているということに気が付きます。
さらに、ミラノの街で初めてオッソブーコを食べたとき、横に添えられているリゾット・ミラネーゼの存在感とミラノのリゾットのおいしさに気が付きました。軽いショックを受けるくらい気に入って、それ以来、私にとってこの料理の主役はリゾット、となり、ミラノに行くたびにミラノ風リゾットを食べ歩いたのでした。


ミラノ風リゾットの主役はもちろん、米。
イタリア料理界のリーダーはミラノのリーダーでもあることが多いですが、最近の若手のリーダー、ダビデ・オルダーニシェフはミラノ出身。
彼はミラノ風リゾットの誕生について、下記の本でこう語っています。
米とサフランの組み合わせは、ミラノを長いこと支配していたスペイン人から伝わった。スペインからはマンテカトゥーラmantecaturaの技術も伝わった。スペインでは“manteca”は“バター”の意味だ。
これはミラノ人がリゾットの極意を発見する前にリゾットが伝わったことを証明している。
リゾットのマンテカトゥーラ。

今月の(CIR)は、マッシモ・ボットゥーラシェフに続いて彼の特集です。
さらに、彼のイタリア地方料理の本、メイド・イン・イタリー

には、
“リゾットを造るには主役の食材、つまり米の品質が重要だ”とあります。
乾麺のパスタは北イタリアでは第二次大戦以降に広まった食べ物で、それ以前は米が主役でした。つまりミラノ風リゾットは、戦後に普及した、ということですね。
さらに、昔はアルボーリオArborio米が一般的だったが、これは現在のアルボーリオ米とは違う。スーパーで売っているような米ではなく、粒が締まってもっと腰があった。ともあります。
少し前から、アルティジャナーレなカルナローリCarnaroli米が普及するようになったが、ビアローネ・ナノVialone Nanoも品質がよい米だ。ミラノではこの米をリゾット用、と呼んでいる。と書かれています。
どうやら、カルナローリ米が普及する前と後では米の品質も違っていたようです。
昔はイタリアでは米は粒の大きさで分類していて、味の特徴はあまり明確になっていなかったようです。
アルボーリオはビアローネとアメリカの品種の米を交配して作りだされました。
そして大資本によって宣伝され、広まっていきます。

それでは本から、彼のリチェッタを訳してみます。

材料/
スーペルフィーノ・カルナローリ米・・300g
玉ねぎ・・1/2個
牛の骨髄・・40g
野菜のブロード・・1ℓ
バター・・60g
サフラン・・1袋
白ワイン・・1/2カップ
EVオリーブオイル

・油とバターで玉ねぎのみじん切りと骨髄をソッフリットにし、焼き色が付いたら米を加えて2分炒める。
・レードル1杯の沸騰したブロードでサフランを溶き、米にかける。米がブロードを吸ったらブロードをかけて混ぜながらリゾットに煮る。(約18分)
・バター少々と下したパルミジャーノでマンテカーレして熱々をサーブする。

オルター二シェフの超オリジナルなミラノ風リゾット。
彼のぶっ飛んだ感性を理解するのは、かなり難しい。
サフランは乾燥させないように冷蔵庫で保存する、と言ってます。
ちなみに(CIR)の記事(P.14)にもありますが、彼が使っているサフランは、地元ロンバルディアのコモ湖のほとりのメーカーのもの。
このメーカーのサフランはおしべが3本根元でつながっていて、サフランを傷めないアルティジャナーレな製品であることがわかります。ホイッバーやフォークで混ぜると崩れるので使いません。鍋をゆすって混ぜます。色は溶け出すけど、サフランは美しい姿のままです。
下の動画のリゾットに渦巻き状にかかっている黄色いソースが、サフランのソース。水とサフランだけで作ってコーンスターチでつなぎます。しかもサフランは長いまま。彼のリゾットは、玉ねぎのソッフリットもバターも使いません。
サフランのこんな使い方、初めて見ました。
・サフランのソースの材料は、水15ml、塩少々、砂糖少々、サフランの雄しべ0.5g、コーンスターチ10g。
・湯を熱してコーンスターチを少しずつ溶き、火から下して粗熱を取る。70~65℃程度。
・サフラン、砂糖、塩を加える。

次はリゾットですが、米は18か月熟成させた上質のカルナローリ米です。

オルダーニシェフが使っているのは下の動画のサフラン。2013年にコモ湖畔でイタリアで最初の135本のクロッカスを栽培したところ、気候と土壌に恵まれて翌年には8000個の球根ができたという、サフランの品質はイタリアやスペインでも最高という評価。イタリアンドリームを実現させたメーカー。

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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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