2019年3月4日月曜日

レズドーラとロールパスタ

今日はエミリア風ロールパスタの話。
12月号の「総合解説」に、毎年必ず登場するパスタは、トルテッリーニなどの詰め物入り手打ちパスタが定番ですが・・・、
今年は趣向を変えたのか、ロールパスタが登場しました。
ロールパスタって、考えてみると最近では珍しいパスタです。

下の動画は「総合解説」のロールパスタと同じではありませんが、とりあえず。


「総合解説」のエミリア風ロールパスタは、典型的なロールパスタだと思いますが、この動画が一番近いかも。

このパスタのリチェッタが写真付きであった本は、お勧め本の1冊、『イル・グランデ・リーブロ・デッラ・パスタ


人気のロングセラーの本ですが、表紙のデザインを何度も変えながら重版をしているので、どの表紙の本が手に入るかは、注文してみないとわからないという、かなりイタリア式マインドが必要な大型本です。
扱っているパスタと写真の多さが特徴。

生パスタの基本は、麺棒で伸ばす板状の生地です。
イタリアでこの作業のマイスターとみなされているのが、エミリア地方の主婦たちです。
このブログでも度々登場していますが、彼女たちはレズドーラrezdoraと呼ばれています。
家事は料理でもなんでもバリバリこなすスーパー主婦のことですが、もちろん生麺を薄く均一に伸ばせる男性も普通にいます。

パスタは乾麺と生パスタで、別々の道を歩んできました。
主材料はどちらも粉と水。これが、工場での大規模生産か、人手によるアルティジャナーレな製品かによって、明確に2つでに別れました。
乾麺のパスタは、製品の保存と輸送を確実にして世界中に広まりました。
そうなるためには、大都市などの人口の多い大きな消費地と、鉄道や船などの輸送手段が発達していることが必要です。
大量生産によって価格が下がり、ゆでるだけという簡単な調理方法のおかげで、特別な技術がなくても、裕福でなくても、忙しい人でも、誰でも食べることができるとても民主的な食べ物になり、世界中の人々に受け入れられました。

一方、生パスタは、スローな道を選びました。
その製造技術は母から娘へと口伝で受け継がれ、人や場所によって様々な形が考え出され、どんどん個性的で複雑になっていきました。
北イタリアで栽培が広まった軟質小麦triticum aestivum またはvulgare)は、硬質小麦triticccum durumまたはtrugidum)より白くて細かい粉になり、なめらかで人の手による細かい細工がしやすい小麦だったのも幸いでした。

レズドーラはエミリア地方だけではなく、北イタリア各地の家庭を切り盛りするベテラン主婦の呼び方ですが、エミリア地方では生パスタを薄く均一の広い板状に伸ばす女性職人の名前として広まりました。
農家のレズドーラはその家で一番早く起きて家族が畑に出かける準備をし、家族が出払ったら今度は家畜の世話をします。
ある意味、農家の女性の暮らしは男性よりきつかったかも。

薄い布にのせたパスタをソフトに巻くのは、熟練が必要な技ですが、レズドーラのパスタの秘密は、全部口伝で伝えられてきました。
量もきっちり図るのではなく、目分量。
例えば、パスタを麺棒で伸ばすと、パスタマシンで伸ばしたときより表面がザラザラになって、ソースが絡みやすい麺になります。
打ち粉をセモリナ粉と軟質小麦粉のミックスにするのも同じ効果が得られます。

下の動画はボローニャで開かれたパスタ打ち教室。
麺棒でパスタを伸ばす教室です。
今時のイタリア人女子と男子が受講しています。


今月の「総合解説」のロールパスタのリチェッタは、P.16です。

生パスタのことを詳しく知りたいなら、スローフードの『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』がお勧め。


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“エミリア風ロールパスタ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年11/12月号に載っています。
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