リボッリータの話、その3です。
今日は、リボッリータに使われるトスカーナの名物食材の1つ、パーネ・トスカーノの話。
パーネ・トスカーノ, photo by fugzu
形は、ボッツァ(円形)、フィローネ(バゲット形)、チャバッタ(長方形)のタイプがあります。
写真で見ると、まあ典型的な田舎パン、ぐらいにしか見えない。
でも、食べてみればすぐに分かるんですよね、あの味。
塩気がない。
パーネ・トスカーノは、別名、パーネ・ショッコとも呼ばれます。
ショッコとは、「まぬけな」とか「あほな」という意味。
だから、あまりフォーマルな席では、パーネ・ショッコと言うのはやめといたほうが無難ですよ~。
「塩気がないパン」をフォーマル(笑)に言うなら、パーネ・シャーポ pane sciapo ですかね。
まぬけな味のパーネ・トスカーノも、慣れてしまうと、逆にバターたっぷりのパンに抵抗を感じるようになるから不思議なもの。
たとえて言えば白いご飯のようなもので、「ご飯にバターをのせたりするのは邪道だあ」という感じと似てますかね。
でも、塩気のないパーネ・トスカーノは、「塩気があるのは邪道」という考えから誕生したわけではないんですねー。
しょうがなく塩気がなくなってしまったんです。
その原因となったのが、フィレンツェとピサの戦争。
時は12世紀。
フィレンツェのライバルのピサは、海辺の町です。
一方、フィレンツェに海はありません。
そこでピサは、港に入った塩をフィレンツェには流さないという戦略を取ったんですねー。
その結果、フィレンツェでは塩の値段が跳ね上がりました。
あまりに高価になったので、とうとうパンに入れることができなくなってしまったんです。
こうして生まれたのが、塩気のないパン、パーネ・トスカーノでした。
塩が安く手に入るようになっても、パーネ・トスカーノは残りました。
フィレンツェの食生活との相性が相当良かったんでしょうね。
リボッリータだけでなく、パッパ・アル・ポモドーロやパンツァネッラから、クロスティーニや朝食のパンに至るまで、あらゆるものにパーネ・トスカーノが使われています。
それどころか、最近では健康のための減塩を意識する人も増えて、理想的なパン、と言わることもあるようです。
パーネ・トスカーノは、0番の小麦粉、天然酵母、水が材料。
一度発酵させてから、再び小麦粉と水を加えて発酵させます。
このパンのもう一つの特徴は、薪で焼くこと。
塩気がない分、薪の香りが重要なポイントとなるんですね。
パーネ・トスカーノ作りの動画
薪で200度に熱した窯で焼きます。
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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年3月号
“リボッリータ”のリチェッタは「総合解説」'07&'08年3月号、P.5に載っています。
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2 件のコメント:
そういうエピソードがあったんですか、今回も大変勉強になりました、
塩が断ち切れてしまうとこれも大変ですね、
塩無しと言えば
アルザスにいた時、オーナーがパティシエでは有名な方で、日本にも講師として教えに行ってました、帰って来ると必ず日本のことを…「日本は魚も肉も野菜も一緒にグリルするんだー、あれは良くない、おまけに白飯に味がついてない、パンだって、チャーハンだって、鮨飯だってちゃんと塩がきいているんだこれも良くない…ヴィトは半分フランス人みたいなものだから、それらは食べないよなぁー」
と言うものですからはっきりと
「食べます、日本人ですから、最初のやつは、日本のバーベキューってわつで一緒に焼いちゃう所もそれぞれあるんですよ、それにせっかく日本に行ったのだから箸ぐらいは覚えて帰ってきて下さい…」
と言ってしまったことがありました(笑)
そのパティスリーではパイ場を任されていたのですが、
しばらくして私のセクションの見習いがブリオッシュのデトランプを作る時になんと塩忘れてしまったんです、ヒェーー全部パーでした。
私はオーナーにかなり怒られて「白飯じゃーないんだから」とよく言われました(笑)
Vittorioさん
さすがは体験談の宝庫。
塩の話まであったんですね。
フランスの有名なパティシエさんでも、白いご飯の美味しさを理解するのは難しいとは、面白いものですねー。
そのオーナーさん、白いご飯を見るたびにVittorioさんのこと思い出しているかも(笑)
私は何年も胚芽米ばかり食べているので、たまにピカピカ輝いた白いご飯に出会うと、その繊細な甘さに感動してしまいます。
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