今日はチーズの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。
クレアパッソで現在配本中の『ラ・クチーナ・イタリアーナ』では、アウリーナ渓谷を紹介しています。
アウリーナ渓谷(ヴァッレ・アウリーナ)は、アルト・アディジェにあります。
もしイタリアの地図があったら、一番北の端を探してください。
そこがアウリーナ渓谷。
周囲は2,000~3,000m級の山に囲まれています。
こんな風景
山小屋ではこんな音楽が流れていたりして、チロルですねえ。
今回取り上げるのは、この地方の名物チーズ、グラウケーゼ Graukäse。
以前にもちょっと書いたことがあるので2度目の登場です。
こんなチーズ。
またはこんな、あるいはこんなチーズ。
かなり変わったチーズですねえ。
スライスして玉ねぎの輪切りをのせて・・・
photo by Florian Seiffert (F*)
またはこうやって食べたり・・・
ねぎを散らしてオイルをかけることが多いんでしょうかね。
“グラウケーぜ”とは、ドイツ語で「灰色のチーズ」と言う意味。
イタリアだけでなく、オーストリアなどチロル地方の山間部で作られているチーズです。
それにしても独特ですねえ。
中身の白い部分はまるでカッテージチーズのようにフレッシュそうなのに、外側は硬そうで、粒々で緑色の筋が入っています。
灰色と呼ぶほど灰色には見えませんが・・・。
このチーズ、いわゆるサワーミルクチーズです。
つまり、凝乳酵素ではなく、酸によって固めるチーズ。
元々、貧しい農民は牛乳からバターを作ってそれを売り、自分たちは、残りの脂肪分がなくなったミルクが自然に固まってできたサワーミルクチーズを食べていたんだそうです。
だからグラウケーゼも、脂肪分が極端に少ないチーズです。
固形分中の脂肪分は2%以下。
現在のヴァッレ・アウリーナのグラウケーゼは、まず、牛乳から脂肪分を取り除き、凝固用の酸を加えて2日間置きます。
これをゆっくりと55度に熱し、布に取って吊るして水気を切ります。
30分ほど経ったら手で崩して塩を加え(こしょうを加えることもあります)、型に詰めます。
大きさは500gから7kgまで様々。
そして自然の湿度の中、約25度の部屋で2~3週間熟成させます。
中には、10日ほど経ったところでもっと低温の場所に移し、最高で12週間熟成させるものもあります。
グラウケーゼ作り
素朴な手作りが基本のグラウケーゼですが、最近では大手のメーカーが酵素を加えて作っているものもあるようで、ヴァッレ・アウリーナのあるボルツァーノ県では、伝統的な製法のグラウケーゼの保護も行っています。
さて、グラウケーゼの味ですが、酸からくる強烈な刺激のある香りで、苦味もあるんだそうです。
これっておいしいっていうことなんでしょうか?
チーズの美味しさの基準は複雑だからなあ。
こんなグラウケーゼの定番の食べ方は、玉ねぎの薄切りを少量添えて、油(最近ではオリーブオイル)とビネガーをかけるのだそうです。
ライ麦パンを添えてもOK。
なんだか全体的に、匂いが強くて酸っぱそうなものばかりですねえ。
でも、癖があるところがなんだか面白そう。
イタリアはチーズも色々ありますねえ。
アルト・アディジェに行ったら、ぜひグラウケーゼを味見して、どんな味だったか教えてくださーい。
-------------------------------------------------------
関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年1月号
“ヴァッレ・アウリーナ”の記事は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.2に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
=====================================
登録:
コメントの投稿 (Atom)
南チロルはドイツと南イタリアが融合した面白い地方。ワインの収穫後の新ワインを味わう時は、ご近所みんなでパーティー!
今日のお題は、アルト・アディジェの料理です。 イタリア最北の州、アルト・アディジェ、別名南チロルsud tirolは、海だけじゃなく、山もあるイタリア料理を象徴する地方。最近では、アルプスへの注目度も上がっています。 南チロルのトルゲレンの祭り。 下の動画のタイトルは、“ビギナー...
-
グラナ・パダーノの話、その2です。 イタリアで流通しているハードチーズの50%近くを占めるグラナ・パダーノ(AC Nielsen調べ)。 2008年の生産量は、435万5347個でした。 平均的な販売価格は11.05ユーロ/㎏。 イタリアの硬質チーズの平均価格は12.70ユーロな...
-
今日はブラザートの話。 『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。 バローロのブラザート, photo by Silvio 記事によると、 ブラザート brasato は、イタリア語で「炭」という意味の“ブラーチェ brace ”の古い呼び方、“ブラーザ brasa ”が...
-
軽い気持ちで手にとった本、『 スーゴとソース 』 ところが、考えれば考えるほど、わからなくなってきました。 スーゴって何?ソースって何? “スーゴ”は、イタリア料理の基本の言葉の一つ。 スーゴ・ディ・カルネsugo di carne、 スーゴ・ディ・ポ...
0 件のコメント:
コメントを投稿