今日は鶏肉のマレンゴ風の話。
この料理をイタリア料理と呼ぶのには賛否両論だとは思いますが、一応、マレンゴというのはイタリアの地名(ピエモンテ)なので、イタリアの要素も少しは入っている、ということでよろしいでしょうか。
ナポレオン由来の料理のため、注目を浴びやすく、歴史的な逸話が多い料理、というわけで、後世にいろんなエピソードを生み出した面白い料理です。
とにかく、劣勢だったナポレオン率いるフランス軍が、オーストリア軍に逆転勝利したとたんに、ヨーロッパ中のあらゆる料理書がこぞってこの料理のエピソードを取り上げたようで、その大部分が、フランス目線で描かれています。
ブログで以前とりあげたことがあります。
その時の内容はこちら。
7年も前のことでしたが、昔からイタリアではイタリア目線の歴史が伝わっていたようです。
今回は『サーレ・エ・ペペ』の記事から、その一部をご紹介。
まず、食材は戦場であり合わせのものをかき集めて作った、というのがフランスの一般的な説。
ところがイタリアでは、容赦ないです。
ナポレオンの料理人デュナンが、各国の軍隊に蹂躙されてひどい食糧難だった地元の農家を急襲して、鶏を徴収していった、と伝わっています。
さらに塩がなかったので、鉄砲用の硝石の粉で調味したんだそうです。
これ、食べ物?
というレベルですが、なんとこんな料理をナポレオンがえらく気に入ったんだそうです。
ひょっとして、これ、ナポレオンの味音痴をバカにしてる?
確かに、ナポレオンは料理に興味がなかったというのは有名な話。
イタリア目線だと、この料理の質素なところが気に入ったのだろう、という解釈になっています。
うん、バカにしてるね。
しかも、世界中に広まったのは、この料理を有名な戦いのシンボルにするために、エスコフィエが考案した料理だとでも言いたそうな結論。
イタリアとフランスでは、ナポレオンの業績の解釈にも違いがあるようで、隣の国でも正反対のイメージがあったりするんですね。
ところが面白いのが、この料理、アメリカではナポレオン抜きでチキン・マレンゴと呼ばれて、家庭料理としてやたら人気があるみたい。
チキン・マレンゴ
↓
プーレ・マレンゴ
↓
ポッロ・マレンゴ
↓
なるほど、どの国の食文化に属するか、厳密に分類できない料理なので、アレンジの幅も広い料理なんですね。
-------------------------------------------------------
“鶏肉のマレンゴ風”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年3月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
=====================================
登録:
コメントの投稿 (Atom)
南チロルはドイツと南イタリアが融合した面白い地方。ワインの収穫後の新ワインを味わう時は、ご近所みんなでパーティー!
今日のお題は、アルト・アディジェの料理です。 イタリア最北の州、アルト・アディジェ、別名南チロルsud tirolは、海だけじゃなく、山もあるイタリア料理を象徴する地方。最近では、アルプスへの注目度も上がっています。 南チロルのトルゲレンの祭り。 下の動画のタイトルは、“ビギナー...
-
グラナ・パダーノの話、その2です。 イタリアで流通しているハードチーズの50%近くを占めるグラナ・パダーノ(AC Nielsen調べ)。 2008年の生産量は、435万5347個でした。 平均的な販売価格は11.05ユーロ/㎏。 イタリアの硬質チーズの平均価格は12.70ユーロな...
-
今日はブラザートの話。 『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。 バローロのブラザート, photo by Silvio 記事によると、 ブラザート brasato は、イタリア語で「炭」という意味の“ブラーチェ brace ”の古い呼び方、“ブラーザ brasa ”が...
-
軽い気持ちで手にとった本、『 スーゴとソース 』 ところが、考えれば考えるほど、わからなくなってきました。 スーゴって何?ソースって何? “スーゴ”は、イタリア料理の基本の言葉の一つ。 スーゴ・ディ・カルネsugo di carne、 スーゴ・ディ・ポ...
0 件のコメント:
コメントを投稿