2016年5月2日月曜日
ラザーニャのお焦げとゆでないボッリート
過去の「総合解説」を見直していて、10年前の、マッシモ・ボットゥーラシェフのリチェッタに目が留まりました(06/07年5月号、販売は終了しています)。
彼は、モデナの大人気店、オステリーア・フランチェスカーナのシェフで、当時は創業10年でミシュラン2つ目の星を獲得した直後。
店のwebページはこちら。
さらにこの6年後には、店はイタリアで4番目の3つ星店になりました。
その料理は、“La parte cocccant delle lasagne”。
「ラザーニャのお焦げ」と訳していました。
「焼きたてのラザーニャが家庭の食卓に登場するといつも取り合いなる部分」
なんだそうですよ。
この言葉が魔法を解く呪文であったかのように、突然、10年前にこのリチェッタを訳した時のことが蘇えってきました。
訳しながら、いったいどんな料理なんだろう、食べてみたい、と思ったものです。
こちらのwebページによると、シェフの代表作、ヒメジのリヴォルノ風と共に、オステリア・フランチェスカーナの人気料理ベスト3に入る1品だそうです。
もちろん、ただのラザーニャではありません。
パスタはエルベッテ入りの緑のパスタで、生ハムの脂身でカリッと焼きます。
パスタにかけるのは、
コロンナータのラルド、パンチェッタ、子牛のテール、豚の頬肉、サルシッチャ、骨髄、去勢鳥のブロードで作ったラグーと、
生クリームを加えてサイフォンでムース状にしたベシャメル、
その上にはおろしたパルミジャーノを薄く焼いたガレット。
パルミジャーノのチャルダのリチェッタはたくさん訳してきましたが、彼のチャルダはパルミジャーノ90g、室温のバター15g、コーンスターチ5gです。
さらにトマトはアガーを加えてゼラチン状にして添えます。
なんと、シェフがトマトが苦手なのであえてラグーには加えなかったそうです。
何一つ、凡人の頭では思いつかないものばかりを組み合わせて、料理を作り上げるのですねー。
イタリア料理を変えた100人のシェフを紹介する本
『100×10』によると、
ボットゥーラシェフは、今では、現代イタリア料理のアイコンと呼ばれています。
また、偉大な伝統を通して未来を見せてくれる料理を作る彼は、世界の最も偉大なシェフの一人と考えられています。
もっとも愛している材料は“文化”で、文化と情熱がない料理に感情移入はできない、と語っています。
そしてこの本で彼が披露している料理は、“Bollito non bollito”。
「ゆでないボッリート」。
子牛のテール、子牛の頬肉、子牛の舌、キアニーナのバラ肉、ファッソーネ子牛の頭肉、モデナのコテキーノいう個性の違う6種類の肉を1つずつ、去勢鳥のブロード少々、香味野菜と一緒に真空パックして湯煎にかけ、それぞれ違う温度で違う時間加熱した肉が主役で、さらにパプリカのゼリー寄せやイタリアンパセリの泡、玉ねぎのジャム、リンゴのモスタルダという面白げな付け合わせが添えられています。
ボッリート・ノン・ボッリートを語るシェフ
↓
アルタ・クチーナの料理は訳しているとストレスがたまるようなものが多いのですが、彼の料理は、この先どうなるの、という好奇心が先に立って、高視聴率の連続ドラマのように楽しめました。
こういうリチェッタは、知ってから料理を食べると料理がより一層楽しめます。
ちなみ、現在販売中の「総合解説」では、ドー(ダヴィデ・オルダーニ)、カッシーニャ・クッカーニャ、ピッツェリーア・プルチネッラ、タヴェルナ・エスティアのシェフという、いずれも現在イタリアで注目されているシェフたちのリチェッタを訳しています。
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