モーディカは、シチリア南東部の“ヴァル・ディ・ノート”と呼ばれる地方にあります。
このヴァル・ディ・ノートは、シチリアに5つある世界遺産の1つです。
この地方の町々は、死者6万人以上という1693年の大地震の後、奇跡的なまでに見事に再興されたのだそうです。
後期バロック様式の美しい建築物や芸術が、この地方の特徴です。
そんなヴァル・ディ・ノートにあって、モーディカは、個性的なチョコレートの産地として知られています。
ただ、イタリアでも外国でも、このモーディカのチョコレート、実は知名度はそれほど高くないかも・・・。
その最大の理由は、おそらく生産量の少なさです。
2003年に管理組合ができましたが、所属するメーカーは約20軒。
1990年には、チョコレートを作っている店はわずか3軒だったそうです。
そしてもう一つの理由が、見た目の地味さ。
外見も味も、素朴で控えめ。
タオルミーナなどシチリア東部の観光地では大々的に売っていますが、インパクトは中程度。
でも、一度食べれば、人によっては大好きになるかも。
モーディカのチョコレート
photo by Monica Arellano-Ongpin
普通チョコレートは、カカオ豆からカカオバターを抽出したカカオマスに、砂糖やカカオバターを加えて作ります。
モーディカのチョコレートは、カカオバターを抽出しないカカオマスから作り、カカオマスにはカカオバターは加えません。
また、普通のチョコレートは約80度に熱してカカオバターを溶かしますが、モーディカのチョコレートは、砂糖を加える時もその他の作業も、すべて45度以下で行います。
そのため、砂糖の結晶は最後まで溶けずに残ります。
これが、モーディカのチョコレートのじゃりじゃりした独特な舌触りの理由です。
さらに、カカオの香りのエッセンスも飛ばずに残ります。
この製法は、スペインによってアメリカ大陸が発見された当時の、アステカの家庭で行われていたのと同じものなのだそうです。
当時、モーディカはスペインが支配していました。
また、今でこそモーディカはラグーザ県の一部ですが、13世紀から19世紀までは、独立した行政区の中心地でした。
独自の文化が形成される下地があったのですね。
モーディカにアステカ人の製法のチョコレートを広めたのは、1880年創業のボナイユートという店です。
ボナイユートは、元々スペインのバレンシア出身の一族で、トリノやスイスの流派のチョコレートではなく、アステカからスペイン経由で伝わった製法を選んだのでした。
1990年、モーディカでチョコレートを作っていたのはたった3軒。
ボナイユートと、その弟子たちの店でした。
下は、モーディカのチョコレートの製造過程の動画。
面白いエピソードが1つ。
第二次大戦が終わると、イタリアにもアメリカ兵はチョコレートを持ってやってきました。
「ギブ・ミー・チョコレート」ですよ。
ところがモーディカでは、兵隊が子供にチョコレートをあげようとすると、「持ってるもーん」とばかりにモーディカのチョコレートを見せびらかす、という仕打ち・・・。
モーディカのチョコレートの話、次回に続きます。
-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================
2010年1月21日木曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
南チロルはドイツと南イタリアが融合した面白い地方。ワインの収穫後の新ワインを味わう時は、ご近所みんなでパーティー!
今日のお題は、アルト・アディジェの料理です。 イタリア最北の州、アルト・アディジェ、別名南チロルsud tirolは、海だけじゃなく、山もあるイタリア料理を象徴する地方。最近では、アルプスへの注目度も上がっています。 南チロルのトルゲレンの祭り。 下の動画のタイトルは、“ビギナー...
-
グラナ・パダーノの話、その2です。 イタリアで流通しているハードチーズの50%近くを占めるグラナ・パダーノ(AC Nielsen調べ)。 2008年の生産量は、435万5347個でした。 平均的な販売価格は11.05ユーロ/㎏。 イタリアの硬質チーズの平均価格は12.70ユーロな...
-
今日はブラザートの話。 『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。 バローロのブラザート, photo by Silvio 記事によると、 ブラザート brasato は、イタリア語で「炭」という意味の“ブラーチェ brace ”の古い呼び方、“ブラーザ brasa ”が...
-
軽い気持ちで手にとった本、『 スーゴとソース 』 ところが、考えれば考えるほど、わからなくなってきました。 スーゴって何?ソースって何? “スーゴ”は、イタリア料理の基本の言葉の一つ。 スーゴ・ディ・カルネsugo di carne、 スーゴ・ディ・ポ...
4 件のコメント:
そういう歴史があったのですね、チョコレートの独自の製法も勉強になりました、確かに砂糖は全部はとけませんね、
ラグーザだぁ~、私ここに行ったことがありました、10数年ぶりにそのまま倉庫に眠っていたイタリアから送った荷物を整理してたら、ここの写真が出てきました、モーディカって言うんですね、友人のクラウディオに連れってもらって聞いたと思うんですが忘れてしまいました、たぶん旧市街?古街?とか言っていたと思うのですが…(反省)。
5年前、クラウディオが結婚した時、結婚式のDVDとモーディカのチョコレートと赤ワインを送って来たのを思い出しました
、しかし赤ワインは木っ端みじんに割れてました、国際郵便規定?でボトルは送ってはいけないそうで弁償はできないとのことで郵便局関係者が謝罪に来てくれました、
赤ワイン漬けになったモーディカのチョコレートも美味しかったです(笑)。
Vittorioさん
ラグーザやモーディカのあたりは、世界遺産だけあって美しい街並みですねー。
私も次にシチリアに行く時は行きたいんですよー。
いつになるやら。
ワインが割れてたんですか。
それは悲惨。
私は航空便で、上に積んであったオリーブオイルのビンが割れて、下の私の荷物の雑誌類が油まみれになって到着したことがあります。
それ以来、厳重梱包ですよ、たかが雑誌なのに(笑)。
ボナユートでこのチョコレートを食べた時、私もざらついた食感から一度溶けて再び固まったものかなと思いました。モディカには、チョコに挽肉が入ったビスケットもあり、食文化的にも面白かったです。チョコとシチリアの歴史が重なって、味わい深いですね。(チョコが写っているテーブルセンターが家のと同じだったのにびっくり)Italiamama
italiamamaさん
同じ柄のクロスなんですか。
すごく素敵な青ですねえ。
モーディカは、いつか行ってみたいです!
私が初めてこのチョコレートを食べた時は、町のことは何も知らなくて、夏でも溶けないすごく古い製法のチョコレート、という宣伝文句に釣られました(笑)。
偶然ですが、挽肉入りのドルチェのこと、「モーディカのチョコレート、その3」で書きました。
地味であか抜けないけど面白そうなドルチェですね。
コメントを投稿