前回は聖人の話をしましたが、キリスト教のおかげで広まった食材、というのもありました。
金曜は肉を食べない、というキリスト教のおきてのために、肉の代わりとして普及したもの、バッカラです。
そこで今日は、バッカラの話。
『サーレ・エ・ペペ』の解説です。
クーネオの市場のバッカラ。
カンパーニアの内陸の町の市場
こちらもカンパーニアのバッカラ屋さん
バッカラbaccalàはかなり個性的な食材ですよね。
イタリア産ではないのに、イタリアにすっかり溶け込んで、もはや外来の食材とは気がつかないくらいです。
魚なのに山の上の地元料理になっていたり(上の写真も、クーネオと言えば海のないピエモンテの標高534mの町)、干物なのに、新鮮な魚が獲れる海辺の名物料理になっていたりと、とにかく国中に根を張っています。
海辺の町でも悪天候の時や不漁の時は新鮮な魚は手に入らないし、何より昔はバッカラの値段が安かったので、庶民も買いやすかった。
余談ですが、ここで素朴な疑問。
バッカラは主に大西洋産のタラ(メルルーサ)を北欧で干物にしたものですが、そうすると、たらこはどこに行ってしまったのでしょうか。
これだけタラを食べているイタリアで、たらこ料理というのはあまり見たことがないような・・・。
やっぱり、卵は全部日本に来るんですかね。
ノルウェーのバッカラ工場
こちらのwebページでは、バッカラ料理の代表的なものをずらっと紹介しています。
シチリア風やローマ風など、ご当地料理も色々ありますねえ。
地方料理の中でも有名なのは、ヴィチェンツァ風やリヴォルノ風あたり。
ヴィチェンツァなどヴェネト地方やその周辺では、塩漬けしていない干しダラ、ストッカフィッソstoccafissoのことをバッカラと呼ぶ習慣があります。
そのため、バッカラという名前の料理でも、元をたどればそのほとんどがストッカフィッソの料理です。
バッカラのヴィチェンツァ風も、伝統的にはストッカフィッソの料理です。
イタリアには、本物の地方料理を守ろうと言う人たちがコンフラテルニア(信者の会)というのを結成して、伝統を伝えていく活動があります。
バッカラのヴィチェンツァ風にもコンフラテルニアがあります。
webページはこちら。
それによると、ヴィチェンツァではストッカフィッソのことをバカラbacalàと呼ぶのだそうです。
標準語の“バッカラbaccalà”はcが2つですが、ヴィチェンツァの“バカラ”はcが1つ。
ヴィチェンツァでは、cが2つのバッカラは、生のタラを塩漬けしたもののことなんだそうです。
へ~え。
下の動画は、コンフラテルニアのメンバー、ヴィチェンツァのダ・レーモのシェフが作るヴィチェンツァ風バッカラ。
確かに、動画のタイトルや着ている黄色いコック服の胸のマークを見るとcが1つだし、バカラと言っていますねえ。
バッカラの話、次回に続きます。
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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年11月号
“バッカラ”の地方料理のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年11月号に載っています。
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2011年3月8日火曜日
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