2021年4月30日金曜日

レモンの島、プロチダのレモンのサラダ

レモンのデリツィエの考案者、サルバトーレ・アチェートさんが栽培していたのは、ストゥファート・ダマルフィという品種のレモン。
早朝に訪れる、アマルフィのレモンガーデンの旅をどうぞ↓
無農薬でコロコロに育ったレモンがたわわに実っている風景は、地中海に住んでいない人には楽園のような光景ですね。1日に1トンも収穫するそうです。

レモンを使ったリチェッタ、簡単な鶏肉のレモン煮なんてどうでしょう。


材料
鶏肉・・300g
小麦粉
レモン汁・・3個分
レモンの皮・・1個分
玉ねぎ・・1/2個
野菜のブロード・・350ml
EVオリーブオイル
塩、こしょう

1.鶏肉に小麦粉をまぶす。
2.玉ねぎのみじん切りを油大さじ4でソッフリットにする。
3.鶏肉を加えて炒め、レモン汁とブロードをかける。蓋をして弱火で20分煮る。
4.塩、こしょうしてレモンの皮のすりおろしを加え、2分煮詰めて煮汁にとろみをつける。

カンパーニア料理のお勧め本、グイド・トンマージ地方料理シリーズの『ナポリ』には

プロチダレモンのサラダのリチェッタが載っていました。
プロチダのレモンて・・・?
次はナポリ湾の島、プロチダへ行ってみましょう↓


プロチダはレモンの島と呼ばれているんですね。でも、観光地化が進んで、レモン畑は減っているそうです。それにしても、この地方はどうしてこんなに異邦人を惹きつけるのでしょうか。

本によると、プロチダのレモンは別名リモーネ・ディ・パーネlimone di pane。甘くて大きいのが特徴の特別なレモンで、特にサラダには最適なんだそうです。
リモーネ・ディ・パーネのサラダ。


本のリチェッタをどうぞ。
プロチダのレモンのサラダinsalata di limoni di procida

材料/4人分
リモーネ・ディ・パーネ・・2個
葉玉ねぎ・・2本
ミント・・1束
EVオリーブオイル
唐辛子、塩

1.レモンの白い部分を残すように皮をむく。
2.輪切りにしてさらに小さく切り、水に30分さらす。
3.ザルに開けて水気を切る。
4.サラダボールに移して葉玉ねぎの薄切り、ミント、唐辛子、塩、オイルで調味してすぐにサーブする。

特別に甘くて大きいというプロチダのレモン。
見れば見るほどチェードロに似てるけど、どんな味なんでしょうねえ・・・。
最後はグーグル・アースででも見て、行った気に。



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グイド・トンマージ地方料理シリーズの『ナポリ
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2021年4月29日木曜日

デリツィエのマエストロのニョーバージョン

今月の「総合解説」P.14に載せたレモンのデリツィアのリチェッタですが、
アマルフィのレモンを使った代表的な料理と言えば、もちろんデリツィア。
このドルチェのことを何も知らなくても、アマルフィで白くて美味しそうなこのドルチェに出あえば、かなりの確率で食べるはず。
逆に言えば、食べなかったら後悔します。
アマルフィ以外でも、カンパーニア中に広まってますが。
下の動画のパスティッチェーレのサルバトーレ・デ・リーゾはデリツィアご殿を建てたと密かに信じてますが、


デリツィエで有名なパスティッチェーレは彼だけじゃなかった。
下の動画はデリツィエのマエストロと呼ばれるカルミネ・マルジィッロ。
彼がデリツィエの考案者だそうで。デリツィアのおかげでソレント半島のレモンは生産量が増え、地元の経済を支えるまでに栄えました。
彼はコロナで89歳で亡くなったそうです。rip...


「総合解説」に載せたのは、彼のニューバージョンのデリツィエです。
レモンの形のレモン風味のソフトメレンゲにレモンのコンポートとレモン汁と皮入のクリーム・シャンティーを詰めてクランブルとバジリコのスプラウトの上に盛り付けます。
伝統的なのもいいけど、ご本家がオリジナルの発想で新しくしていくなんて、この方、想像力にあふれてますね。
オリジナルのデリツィエを発表している人もいました↓
やっぱり一番しっくり来るのはレモンを活かしたリチェッタですね。



アマルフィのドルチェのお勧め本、『ドルチ・デル・ソーレ

レモンの産地の人は美味しい食べ方を知ってるなあ。
電動レモン絞り機、始めてみました↓
レモンのグラニータ。



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2021年4月28日水曜日

私の体にはレモン汁が流れていると語るアマルフィの英雄、ジジーノ・アチェート。

今日のお題はアマルフィのレモンです。
記事は今月の「総合解説」P.13をご覧ください。

アマルフィはたしかにパラダイスのようなところだけど、急斜面の狭い段々畑でレモンを栽培するのは、きつい仕事。
でも、働いているのはみんな老人。

アマルフィのレモンを世界的に有名にしたジジーノ・アチェート(83)は、アマルフィの英雄と呼ばれている。↓
ジジーノ・アチェートの農園ではレモンの収穫体験や料理教室を行っている。
webページはこちら
レモン畑を中心にアマルフィを見ると、まったく別の姿が見えてくる。

この動画のリポーターはサルバトーレ・デ・リーゾ。
アマルフィを代表するこの地方の食文化の報道官でサポーターのパスティッチェーレ。

彼の本、『ドルチ・デル・ソーレ』にもアマルフィのレモンのことはたっぷり書いてある。
このレモンは、日本で口にすることができるレモンとは全く別のもの。その味は想像を超えているので、アマルフィに行ったら絶対食べておかなくては。

アマルフィのレモンの皮の下の白い部分を見ると、
チェードロに似ているなあ、と思う。
チェードロはカラブリアの特産柑橘果実でレモンとのハイブリッド種もあるが、地元以外ではあまり知られていない。
チェードロの主な品種↓
アマルフィのレモンとのハイブリッド、ヴェルデッロは残念ながら登場せず。

皮の下の白い部分は苦いので皮をむく時にこの部分はつけないようにするとどの本にも書いてあるが、アマルフィのレモンのワタは実と同様に扱って食べる。

代表的なレモンの品種

レモンのつぼみも添えながらの動画は、レモンの産地ならではのもの。
イタリアのレモンの品種の豊富さは驚き。



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2021年4月27日火曜日

バッサ・パルメンセはクラテッロと作曲家のベルディの故郷

クラテッロは料理に使うのはもったいなく、そのもの自体を味わうもの。パルマのミッカなどのパン、ニョッコ・フリット、マイルドなモスタルダなどを添えて食べます。パルミジャーノ、ブッラータ、ロビオーラなどのチーズ、いちじくやメロンも合います。
クラテッロ博物館↓高級ホテルのとても楽しそうなクラテッロのカンティーナ。
アンティカ・コルテ・ディ・パッラビチーナのwebページ
熟成中のクラテッロには、予約している有名レストランの札がついてますね。

動画の後半はバッサ・パルメンセの豚肉祭り。
霧で知られるバッサ・パルメンセ地方。
ランブルスコの栓は固くて開けるのが大変だけど、それをこんなにかっこよく開ける人もいるんですねー。
動画の最後にお椀でランブルスコを飲んでる姿が出てきますが、これはなかなか貴重な地元風飲み方。

パッラビチーニ家はこの地方の領主だった一族。
この地方を代表する有名人はオペラの作曲家で、『椿姫』や『アイーダ』などの代表作があるジュゼッペ・ベルディ。
もちろんベルディのクラテッロ好きは有名な話。
下の動画はこの地方の有名トラットリア・ラ・ブーカ。webページはこちら
4代に渡って母から娘へと女性のみが受け継いできた料理を出している。


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総合解説
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2021年4月26日月曜日

生ハムとクラテッロの切り落としから作る高級サラミ、ストロルギーノ

モデナ料理の話をする時。生ハムの話は避けては通れない。
ポー川沿岸で発達した豚ののもも肉を塩で保存する方法は、青銅器時代に考え出された。
パルマの生ハムの製造過程

ニューヨークのトレンディーな店サルメリア・ロージ。
パルマにもあってスシバーに疲れた最先端のグルメたちが伝統料理を求めて集まる。
店のwebページはこちら

イタリアでは、日曜日のプランゾはご馳走を食べる。
その料理は、パルマの生ハム、クラテッロ、コッパ、サラーメ・ストロルギーノ、サラーメ・フェリーノといったエミリア地方のサルーミの盛り合わせから始まる。
クラテッロと生ハムは、加熱しないように機械のスライサーで薄くスライスしてある。
クラテッロは生ハムより薄くスライスする。
パルマの生ハムは、言うまでもなく、世界で一番有名なイタリア産サルーミ。
ジベッロのクラテッロは最も高級なサルーミ。
ジベッロのクラテッロ

塩漬けした豚肉は寒さによってよく乾燥するようになるが、クラテッロの産地、バッサ・パメルンセ地方は霧の地方で、寒くなると霧で覆われる。
クラテッロを熟成させるカンティーナの霧で湿った空気は、豚肉にすっきりして甘くてマイルドな独特の風味を与える。
クラテッロには豚のももの霜降りの尻の部分だけを使う。
豚に粗塩、こしょう、にんにく、ワインをすりこんでブタの膀胱に詰め、最低12ヶ月乾かす。
30ヶ月以上の場合もある。
最初の2ヶ月は風通しの良い環境で、残りは湿度の高い霧の中のような環境で熟成させる。
最終的には重さが40%減る。
ワインとは全く違うクラテッロの熟成
ストロルギーノはパルマの名物サラミ。
クラテッロや生ハムの切り落としを使った小型で甘口の高級サラミ。

まだ食べたことないなあ。



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総合解説
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2021年4月25日日曜日

発酵させなくてオーブンを使わないピアディーナは、空腹になったらすぐに作って食べることができた。

ニョッコ・フリットgnocco frittoからストリートフードの横道に入って、クレシェンティーナcrescentina、ティジェッラtigellaと来ました。
ここで、エミリア・ロマーニャのストリートフードの王様の登場です。
ピアディーナpiadinaです。


上の動画は下の本と内容がリンクしています。
本で紹介している有名店のリチェッタを動画で見ることができます。



ラード入りの薄焼きパン。
初めてイタリアに足を踏み入れるよりも前に、ピアディーナを食べていたことは覚えています。
確かミラノの空港で、トランジットの間に口にしました。
思えばこれが、初めてのイタリアの食の体験だったかも。

もちろんピアディーナの詳しい知識は何もありませんでした。


材料/
《生地》
 小麦粉・・500g
 ラード・・100g
 塩・・8g
 重曹・・3~4g
 水・・200~240ml
《具》
 ルーコラ
 生ハム
 クリームチーズ
 パルミジャーノ
 ミニトマト

・小麦粉をフォンタナに盛り、塩、ラード、水(少しずつ)を加えてこねる。水を全部吸ったらこねてなめらかな締まった生地にする。
・100~150gに分けて丸め、布巾で覆って15分休ませる。綿棒で厚さ3mmの円形に伸ばす。
・生地が膨らまないようにピケし、フライパンで片面2~3分ずつ焼く。
・クリームチーズを塗り、ルーコラ、生ハムなどをのせる。スペック、プローボラ・アッフミカータ、温野菜、削ったパルミジャーノなどでもよい。

その見た目から、クレープやトルティーヤみたいなものだろう、と思い込んでいて、薄い生地の間に、エミリア・ロマーニャの特産物が挟まれているなんて、考えてみたこともなかったのでした。

パンより発酵時間が短く(元々は発酵させなかった)、オーブンでなくテストというテラコッタのホットサンドメーカーのような道具で焼くので気軽に作ることができました。
確かに上の動画ではイーストは加えていません。

ピアディーナのアレンジ各種。
4つ折りピアディーナ、一箇所をハサミで切り、4つの具を載せて四つ折りにする。
油を引いたフライパンで焼いてチーズを溶かす。


下の動画はピアディーナの上でフリッタータを焼いてピアディーナでサンドする、というアイデア。

ピアディーナに生ハムとルーコラをはさむのは、相性バッチリの組み合わせ。
この組み合わせがどこで生まれたのかはわかりませんが、生ハムは、エミリア・ロマーニャのポー河流域が発祥地。

生ハムはパルマの名産品と思いがちですが、モデナにも、モデナの生ハムがあります。

モデナの生ハムはパルマの生ハムに比べて生産量が1/100という少なさ。簡単にはお目にかかれないから、モデナで食べとかないとなあ。
モデナの生ハム↓

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2021年4月24日土曜日

ニョッコ・フリットはティジェッラの系列のフォカッチャに匹敵するイタリアの粉もの。

今日はニョッコ・フリットgnocco frittoのリチェッタをと思って調べてみたら、過去に度々訳していたことに気が付きました。ランブルスコが大好きなので、ニョッコ・フリットにも大いに興味があったようです。
ニョッコ・フリットは、別名トルタ・フリッタtorta frittaと呼んだりもするようですが、ニョッコ・フリットの楽しげな語感はいいですよねー。
ちなみにニョッコ・フリットはエミリア・ロマーニャのストリートフード。
その点からも、ピッツァやフォカッチャに匹敵する粉ものではないでしょうか。
イブレアのニョッコ・フリットの屋台↓

ストリートフードと言えば、お勧めの本は、『ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ

ニョッコ・フリットは他にも別名があり、その一つはクレシェンティーナcrescentina。
上記の本にはこの名前で載っています。
本によると、クレシェンティーナは、ティジェッレの一種。
ティジェッレと同じ型で焼いていました。
クレシェンティーナという名前は膨らむところからつけられました。
クレシェンティーナ↓

上の動画の“ケルセンタchersenta”のクレシェンティーナのリチェッタは本に載 っているので訳してみます。
材料/8~10枚分
 0番の小麦粉・・500g
 水・・230~250ml
 生イースト・・15g
 ラード・・40g
 塩・・8g

・水を温めてイーストを溶く。
・ふるった小麦粉、溶いたイースト、ラード、塩を10~15分こねて弾力のある生地にする。
・丸めて湿らせたふきんで包み、最低2時間発酵させて2倍にふくらませる。
・生地をガス抜きして10分休ませる。
・8~10個に丸めて打粉をした台で綿棒で厚さ0.5cm、直径10cmに伸ばす。
・電動のティジェッラの型かフライパンで200℃で3~5分焼く。
・熱いうちに厚さを半分に切り、定番の“ペースト”(にんにく、ローズマーリのみじん切りと一緒に叩いたラルド)、おろしたパルミジャーノをはさむ。

モデナの人が得意な、豚の脂身を味わう料理ですね。
ティジェッレ↓

明日はティジェッレです。

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2021年4月23日金曜日

ランブルスコのスプリッツ

今日のお題は、モデナのイタリアを代表する人気店、オステリア・フランチェスカーナの姉妹店、フランチェスケッタの店長兼ソムリエのエリーザさんのアペリティーボ、ランブルスコのスプリッツです。
まずはランブルスコ。
カンティーナ・キアルリのランブルスコ↓

ランブルスコは、地元のぶどうから作っていたワインに古代ローマ人が 改良を加えて生み出したワイン。
60年代に、イタリアのコーラというキャッチフレーズでアメリカに輸出されると大ヒットし、生産量が飛躍的に増大しました。
それ以来、最も多く輸出されているイタリアワインです。
現在のランブルスコは品質の見直しが進み、生まれ変わりつつあると言われています。
次はスプリッツ。北東イタリアの代表的アペリティーボ。

この2つをミックスしたのが、ランブルスコ・スプリッツです。

それではエリーザのリチェッタです。
・冷やしたワイングラスにビター15mlを入れて氷で満たし、ランブルスコ90mlを加えて静かにステアします。
・仕上げにソーダを加えてミント2、3枚で飾り、すぐにサーブします。

エリーザのお勧めランブルスコはカンティーナ・パルトリニエーリ
webページはこちら
作っている人たちはこんな風にランブルスコを楽しんでいます。

取り分けていたのはパンじゃなくてニョッコ・フリット。
ニョッコ・フリットとサルーミとランブルスコは鉄壁の組み合わせ。



モデナは美味しそうなものばかりでなかなか先に進めない。
リチェッタは次回に。

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2021年4月22日木曜日

ボットゥーラ・シェフのモデナ愛は底なしに深い。

今月の『クチーナ・イタリアーナ』はモデナとマッシモ・ボットゥーラシェフの特集でした。
総合解説」に収めきれなかった記事はまだあります。
例えば「カクテル」の記事は、マッシモ・ボットゥーラの店“オステリア・フランチェスカーナ”の姉妹店、“フランチェスケッタ”(webページはこちら)の店長でソムリエのエリーザのスプリッツ。
“バッサ”と呼ばれるモデナをフェラーラから切り離している地方の特産ワイン、ランブルスコのスプリッツです。

新しいメニュー、“アイ・ラブ・モデナ”を紹介するボットゥーラシェフ。

シェフの頭の中はモデナのことで一杯のようですね。
オステリア・フランチェスカーナのデリバリー料理もモデナの特産物が詰まってます。

料理の仕上げは家で各自がするんですね。
グランシェフの技を自分で再現できるなんて、面白そう。
シェフに負けず劣らずモデナ愛が強いエリーザのスプリッツは、
サルーミやニョッコ・フリットに合うランブルスコのアペリティーボ。
ランブルスコの話は次回に。

ボットゥーラシェフの本、マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ


業務連絡です。
連絡用メールアドレスが
creapasso4@gmail.com
に変わりました。
ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。
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2021年4月21日水曜日

トルテッリーニはボローニャとモデナがライバル同士。


さて今日は、今月の「総合解説」から地方料理の話題2つめ。

カステルフランコ・エミリアのトルテッリーニです。

カステルフランコ・エミリア?、聞いたことないですねー。

じゃ、トルテッリーニはビーナスのおへそを模したもの、て話は?
これはイタリア料理人なら知ってるよね。
店主がビーナスの入浴を覗き見してトルテッリーニを作り出した宿屋というのが、今もカステルフランコに実在する店なんだそうです。
店名はコロナだって。

トルテッリーニの誕生↓

カステルフランコ・エミリアのトルテッリ祭り

カステルフランコ・エミリアは、地理的にはモデナとボローニャの中間にあります。
ボローニャもトルテッリーニの発祥地と主張しているので、両者はライバル関係にあります。

カステルフランコ・エミリアには、強力な助っ人がいます。
地元出身で地元の食材の発展を後援していることでも知られるイタリアナンバーワンシェフのマッシモ・ボットゥーラシェフです。
シェフの地元の食文化愛が詰まった本、

なのでボローニャのトルテッリーニだけでは、正確にはビーナスのおへそのトルテッリーニを食べた、とは言い切れないのがみそ。ちょっと東に行って、カステルフランコのトルテッリーニと食べ比べてみるのも面白いかも。
ボローニャのトルテッリーニ↓


ボットゥーラシェフが教えるモデナのトルテッリーニ↓


モデナのほうがボローニャより若干小さいそうで。
上の動画のボットゥーラシェフの詰め物は
パルミジャーノ300g
モデナの生ハム200g
仔牛肉200g
豚ロース200g
モルタデッラ50g
と、モデナの美味しいものを全部入れた、クリスマスのご馳走にふさわしい豪華版。


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2021年4月17日土曜日

ベネチアとウイーンの顔を持つ街、トリエステのアサリのリゾット。

今月の地方料理、1つめはフリウリ=ベネチア・ジューリアです。
そして最初の料理はパラチンケ。クレープです。詳しいリチェッタは「総合解説」P.8。

このエキゾチックな名前、なんだか聞き覚え、ありませんか。
パラチンケはフリウリを代表する地方料理。夏になるとよく作られているようで、数回目の登場です。
イタリアを食べ歩き旅行で巡ろうとすると、南北の移動が中心になると思いますが、たまには東西に移動してみるのも新鮮な発見があって面白いかも。

フリウリの州都はトリエステ。
東の端の街です。
この街の魅力は東ヨーロッパの空気。
ベニスとウィーンの間にある街で、イタリアでもここでしか味わえない独特のもの。
アドリア海沿岸なのに南の人懐こい地中海の漁師町とは正反対のクールな雰囲気。
このクールさは、かつてこの街を支配していたハプスブルグ家、つまり中央ヨーロッパ由来のもの。

今月の「総合解説」のフリウリ料理の2品めは、アサリのリゾットですが、そのイタリア語名は“Risotto coi caperozoli”。
caperozoliはスパゲッティ・ボンゴレの話の時に登場した名前です。
覚えてますか?
正確にはcapezzoliです。ベネチアの国産アサリ(vongole veraci)のことでした。
トリエステとベネチアはアドリア海でつながってることを思い出します。
いつもと趣を変えて、今日はスパゲッティじゃなくてアサリのリゾットなんてどうでしょう。ちなみにリチェッタは「総合解説」P.9です。

リゾットもスパゲッティもシンプルな料理なので、アサリと米の質が全て。

ベネチアのリゾットについて、『ハリーズ・バー』の自伝的本には、こう書いてありました。
 
オリエントの国々には米を食べる偉大な伝統がある。蒸した米をシンプルなコントルノとして食べるが、イタリア人の想像力は、米を美食文化のベースとして無限の組み合わせを考えだした。
ハリーズ・バーで使う米は、マントバやクレモナで栽培されるヴィアローネ・ナノ・セミフィーノだ。リゾットやピラフには最適の米。
カルナローリの場合もあるが、これはヴェルチェッリ産で生産量が少なく、手に入れにくい。
レストランで米料理を出すときの最大の問題は待ち時間だ。
空腹の客が待てるのは18分が限度だが、ハリーズ・バーには名物カメリエーレがいた。
トルーマン・カポーティー(『ティファニーで朝食を』の作者)の担当で、みんなが彼に担当されたがる人気者だった。
彼の担当のテーブルに座りたがる客が多かったが、彼はあえてパンも出さないで待たせた。
ヴィアローネ・ナノ↓

アサリのリゾットはビアローネ・ナノで。
ヴィアローネ・ナノ・ベロネーゼはイタリアの米の傑作の一つだそうで。
米の話、次回に続きます。


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2021年4月16日金曜日

イタリア料理史に残るマルケージのポロック。彼は冷製パスタを初めて一流料理にした天才だった。

今日のお題は、今月の「総合解説」の中で最もインパクトが強かった料理、“ポロック”です。
リチェッタはP.5。
ジャクソン・ポロックの抽象画を思い起こさせるような、美しい料理でした。
ポロックの代表作。

彼の独特の画法はアクション・ペインティングとかドリッピング・ペインティングと呼ばれて、世界中の芸術家に大きな影響を与えました。
イタリア料理界では、グアルティエーロ・マルケージという天才が、彼の絵からインスピレーションを受けて、“ドリッピング・ディ・ペッシェ(魚の雫)”というイタリア料理史に残る傑作を創り出しました。そのあたりについては以前ブログでも取り上げています(こちら)。
マルケージの“ドリッピング”。

これ以来イタリアでは、ポロックといえば、ニューヨークの抽象画家ではなく、マルケージのこのカラフルなソースを散りばめた料理のことを意味するようになりました。
ポロックのことは知ってはいましたが、リチェッタをちゃんと訳したのは初めてのような気がします。
というか、天才の料理は、どうやってもかなり複雑なリチェッタになりそうで、リチェッタを読む気も失せていたのですが、今回訳したリチェッタはかなりシンプルで、応用範囲も広いかも。
この料理は、分解すれば、3色の色鮮やかなソース、詰め物、ベシャメル、じゃがいものベースの6つからできています。
マルケージが遺した料理。

パスタの歴史の革命をあつめた傑作、『パスタ・レボリューション

では、パスタをアルタ・クチーナに導いた人物としてマルケージを詳しく紹介しています。
レストランで山盛りのスパゲッティを出していた時代に、ペンネ8本をアスパラガスの穂先のように盛り付けた料理を出したり、パスタは火傷するほど熱い湯気がたっているものが当然な時代に、冷製パスタを前菜として、オマールとキャビアを添えてサラダ仕立てにしたのがマルケージです。

イタリア料理の価値を高めることを常に目指していたマルケージが作った一流料理人の団体、レ・ソステの本グランディ・リストランティ・グランディ・シェフ
ママルケージチルドレンの中でも若手、ダビデ・オルダーニのイタリア地方料理の本、メイド・イン・イタリー



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グランディ・リストランティ・グランディ・シェフ
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2021年4月15日木曜日

パッパ・アル・ポモドーロもパルミジャーノの皮のスプーマで華麗に変身。

今月の「総合解説」から、次の料理は“パッパ・アル・ポモドーロ”(P.4)。
訳した時は全然気が付かなかったのですが、先日、マッシモ・ボットゥーラシェフのパスタ・エ・ファジョーリの動画を見て、ようやく気が付きました。
これは、トスカーナの乾燥したパンで作る素朴な夏のズッパの、フェラン・アドリア風の、つまりヨーロッパの一昔前の最先端なアレンジだったのです。
そのポイントは、トッピングのパルミジャーノの皮のスプーマ。
パルミジャーノの皮の華麗な利用方法のヒントがここにもありました。
赤いスープにのせた真っ白なスプーマは、見た目にも美しいですねー。
油脂が少ないパッパ・アル・ポモドーロには最適のトッピング。
エスプーマよりスプーマという名称がイタリアでは広まった印象がありますが、
詳しいリチェッタは今月の「総合解説」P.4を御覧ください。
パッパ・アル・ポモドーロ

パルミジャーノのスプーマ

エスプーマもあっという間に過去のものになりつつありますね。
次回はさらに上級のテクニックを紹介します。
ボットゥーラシェフのクリエイティブな料理が詰まった本、マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ



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マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ
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2021年4月14日水曜日

初物の季節ですが、キリスト教には人類最初の殺人事件の動機になるくらい重い意味があるようです。

今月の「総合解説」のパスタ・エ・ファジョーリの次の料理は、“セッテ・ペル・セッテ・49”(P.3)という、ちょっとひねった名前のミネストローネです。
料理名にヒントがあります。
そう、日本語に訳すなら、“7×7=49”という料理名です。
さらに材料を見ると、豆や新物野菜やパスタや穀物を全部7種類ずつ入れます。
先月の料理に、アブルッツォはテーラモの5月1日に食べる伝統料理、ヴィルトゥvirtùというのがありましたが、この料理も7種類の豆、初物野菜、パスタなどが入るミネストローネでした。
ヴィルトゥ・テラマーネ↓

イタリアの春のこの時期のミネストローネのキーワードは7と初物です。
キリスト教ではヴィルトゥ(美徳)というのは7種類あると考えられている、というのが7種の根拠。
7×7(セッテ・ペル・セッテ)は、もっとストレートに7と言ってますね。
 ただし、料理の解説でも付け加えてますが、7種類に拘る必要はなく、食材はなんでもでもOK。 
このあたりの発想が今時。ただし初物にはこだわりがあるようです。
初物はプリミツィエ/primizie。
この言葉も、つきつめればキリスト教の教えにまたどりついてしまいます。
しかも、カインとアベルによる人類最初の殺人事件まで引き起こす、不吉な言葉。
とにかく、宗教が絡むと、ただ単に今年最初の実り、という程度の意味ではないもののようです。
なんのことかさっぱり理解できない仏教徒としては、深く掘り下げるのはやめておきます。
「総合解説」で初物野菜として挙げているのは、緑のズッキーニ、グリーンピース、ビエトラ、アスパラガス、ソラマメ、新ほうれん草、葉玉ねぎあたりです。
ヴィニャローラVinarolaも春の初物の料理。今時だとグリーンピースとソラマメでOK。

“グイド・トンマージの地方料理シリーズ”の『ローマとラツィオ』の表紙はヴィニャローラ。







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ローマとラツィオ
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2021年4月13日火曜日

昔は、パスタ・エ・ファジョーリのパスタの代わりにパルミジャーノの皮を加えた、というのがマッシモ・ボットゥーラシェフの説。

パルミジャーノの皮、今日は、パルミジャーノを愛してやまないシェフの話です。
そのシェフは、地元品種のバッケ・ビアンコ・モデネーゼのミルク100%のパルミジャーノ
の最初の顧客になった人。
地元の食文化を愛してやまず、モデナのトルテッリーニの保護普及活動にも取り組んでいます。
パルミジャーノ・レッジャーノマッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ

やアチェート・バルサミコというモデナの特産品の本も書いています。
世界で一番評価されているイタリア料理店のシェフで、イタリアの財産の一流のアルティジャナーレの製品を見極める目を持ち、オリジナルでクリエイティブな料理を作るミシュラン3つ星の無敵のシェフ。モデナのオステリア・フランチェスカーナのマッシモ・ボトゥーラシェフです。
発信力は絶大で、彼がミラノ万博でパルミジャーノの皮の料理の発表会をすると、これだけの人が集まります。


彼の何がこんなに評価されているのでしょうか。
例えば、彼のパスタ・エ・ファジョーリには、膨大な量の情報が詰め込まれています。
料理を作ることは作曲と同じだと言ってますね。土地の個性と個人の経験が料理を作る、とも言っています。彼のパスタ・エ・ファジョーリのベースにあるのはベネトのパスタ・エ・ファジョーリに、ロブション、つまりフランス料理のクレーム・ロイヤル(フォアグラ、豚皮、いんげん豆を95℃のオーブンで約1時間加熱して漉したクリーム)に、
赤ワイン風味のラディッキオのブリュノワーズの苦味と酸味、
モデナならではのアレンジ、パンチェッタ(小角切りのソッフリットから余分な脂を取り、火から下ろしてパルサミコ酢を加える)の甘みを加え、そこにパルミジャーノの皮をのせます。
そしていんげん豆のクリームをのせます。
ボットゥーラシェフによると、このパルミジャーノの皮(いんげん豆と一緒にゆでて薄くスライスしてマルタリアーティ風にする)は、彼のノンナのよると、パスタ・エ・ファジョーリのパスタの代わりになるものなんだそうです。
この説は初めて聞きましたねー。
斬新だけど説得力あるなあ。ある意味、彼の料理は、こういう発想で組み立てられているのかも・・・。
仕上げにのせるのは、フェラン・アドリアのローズマリーのアリア。


ロブションとアドリアでおばあちゃんを挟んで誰も作ったことがない料理を作ったと得意げに語る天才。

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マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ
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2021年4月12日月曜日

パルミジャーノの皮を捨てるなと有名なシェフが説教してます。

パルミジャーノの皮を使った料理の動画を探してみたら、色々ありました。
まずパスタ・エ・ファジョーリ。
これはパルミジャーノの皮がかなり存在感のあるおばあちゃんのパスタ・エ・ファジョーリ。

パルミジャーノの皮は冷凍して取っておきます。豆はクリーム状に煮崩れる品種。アメリカの豆だとそうならない場合も

これは焼きパルミジャーノの皮。
高温に熱したフライパンかグリルパンで焼きます。

次はパルミジャーノの皮のブロード。

材料/24ヶ月熟成のパルミジャーノの皮4片(ナイフで汚れを削り落とす)
にんじん3本
セロリ4本
玉ねぎ2個
粒こしょう
イタリアンパセリ
トマト3個
水2L
を全部鍋に入れて40分煮る。

次はフィレンツェのチブレオのシェフが、パルミジャーノの皮は捨てるなと怒ってます。

すごい迫力。聞き入ってしまった・・・。
フィレンツェの名物レストラン、チブレオ。

実は、彼以上にパルミジャーノ押しの有名シェフがいます。
詳しくは明日。

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総合解説
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2021年4月11日日曜日

国産牛のミルクを守るための試行錯誤の末に生まれたパルミジャーノは奇跡と呼ばれ、イタリアのナンバーワンシェフに愛されて価値が高められていった。 

パスタ・エ・ファジョーリのベース(これは言い換えればイタリアの農民料理のベースとも言えるのでは)は、香味野菜のソッフリット。
これにコクを与えるのは豚肉やその脂身、豚皮、生ハムの骨、そして今月のリチェッタ(今月の「総合解説」P.2)にもある通り、パルミジャーノの皮などです。
パルミジャーノの皮は、ゆで汁に入れるのかな、ぐらいに思っていたのですが、ゆでてから角切りにして仕上げに加えてズッパの具の一つにするのでした。しかもゆで汁は豆の煮汁に使います。
パルミジャーノの皮からはパルミジャーノの出汁がとれるんですね。
そこで今日のお題はパルミジャーノ。

「総合解説」は『ラ・クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』という2種類のイタリアの代表的料理月刊誌を中心に訳しているのですが、訳したい記事が多すぎると訳しきれず、もったいないなーと思いながらカットすることもしばしばです。

今月カットした記事の中に、パルミジャーノ・レッジャーノの職人を紹介する記事がありました。
40年間、1年365日、毎朝5時に起きてパルミジャーノを作っている58歳の職人の話でした。
モデナのカゼイフィーチョ・ロゾーラ・ディ・ゾッカというメーカーのパルミジャーノです。6軒ある協同組合の会員で、最高のパルミジャーノと評価されているパルミジャーノを作っています。
彼の仕事を紹介する動画がありました。↓

このパルミジャーノになるミルクは、ヴァッカ・ビアンカ・モデネーゼ↓と呼ばれる牛のミルク。


この動画で話をしているのはヴァッカ・ビアンカを飼育しているこの地域の代表的アグリトゥーリズモ、webページは(こちら)。
土着品種の牛ですが、近年、乳量の多い外国の品種に押されて消滅の危機にあり、現在では数百頭しか飼育されていないのだそうです。でも、地元が中心になってヴァッカ・ビアンカのミルク100%のパルミジャーノを作ってその価値を高めて、危機を乗り切ったそうです。手塩にかけて育てたビオのミルクから、一度の搾乳量を減らすなど、1日1万個作っていたパルミジャーノを1日1、2個にまで減らして各種の試行錯誤の末にそのパルミジャーノを作ったのがこの職人のいる製作所でした。
イタリアの奇跡と呼ばれているそうです。
そのミルクは“ヴァッカ・ビアンカの黄金”と呼ばれています。
こんなに子犬みたいに跳ね回っている乳牛初めて見ました。
この牛のミルクは甘いのが特徴で、タンパク質が多くて脂肪が少ないのだそうです。
ちなみに、この造り手の最初の得意客はマッシモ・ボットゥーラシェフでした。30ヶ月熟成のパルミジャーノを毎週1玉買っていたそうです。
世界一有名なイタリア料理人の彼は、モデナの食文化をバックアップしていることでも知られています。
この職人は、「パルミジャーノの本当の味わい方は、噛むのではなく、口の中で溶かす。そうすると、パルミジャーノのすべての香りが解き放たれる」と語っています。

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2021年4月10日土曜日

カンパーニアのパスタに直球で勝負しているマルケのパスタ・マンチーニ。

今月のリチェッタ2品目は、パスタ・エ・ファジョーリ(「総合解説」7/8月号p.2)。
一見、田舎風の素朴な料理ですが、実に奥の深い料理です。
まず、この料理の主役は、パスタか、いんげん豆か。
それによって、この料理がどの地方の料理なのかも変わってくるかも。
ただしこの料理は北から南までイタリア中で作られているイタリアの農民の生活を支える基本の料理なので、とりあえず出会ったら一度は食べておいたほうが、後で後悔しないかも。

まず、パスタが主役なら、パスタの本場、ナポリ風。
ナポリ風は白インゲンとパスタの切れ端のミックスで作るのが特徴。中部や南部では豆は小粒の白インゲン、カンネッリーニを使い、トマトで煮ます。
パスタは乾麺ならディタリーニなどの小型のもの、生麺ならラザニェッテやクアドルッチ。麺のでんぷんと豆のデンプンが溶け出て混ざり合い、クリーミーに仕上がるので生麺のパスタ・エ・ファジョーリは一味違います。
乾麺なら、パスタ・エ・ファジョーリ用のミックスパスタというのもカンパーニアでは売っています。
ナポリ風パスタ・エ・ファジョーリ↓

ちなみに、「総合解説」のリチェッタでおすすめしているパスタは、Manciniマンチーニのle Curve。
マンチーニは1938年に小麦の栽培から初めたマルケの家族経営のパスタメーカー。自社栽培の硬質小麦から、モダンなテクノロジーでアルティジャナーレのパスタを作るメーカーです。
パスタにはこの地域の自然と文化が詰まっている、と語る大力作。

le curveはhpによると(こちら)乾燥の過程で折れたロングパスタを集めたものだそうです。
高価なパスタですが、いわゆるアウトレット品ですね。
主役になれるパスタです。

次は豆が主役の場合。
「総合解説」では、トラジメノ、ゾルフィーノ、カンネッリーニの3種類の白いんげんをミックスしています。

ファジョリーネ・デル・トラジメノfagioline del Trasimeno。
黒目がある小粒の白いんげん。ウンブリアのトラジメノ湖周辺で栽培されている。

ファジョーリ・ゾルフィーノはトスカーナ特産の白インゲン。
皮がとても薄く、柔らかい豆なので戻す必要がない。

生のボルロッティ豆が出回る季節(夏)のベネチア人の大好物がパスタ・エ・ファジョーリ。
生ボルロッティのパスタ・エ・ファジョーリ↓

パスタ・エ・ファジョーリは香味野菜のソッフリットに豆と野菜や軽い鶏のブロードをかけて煮るのが基本。
これに豚の脂身でコクを加えますが、リチェッタではパルミジャーノの皮のゆで汁で煮ます。
パルミジャーノの皮の利用方法が初耳で面白そうなので、この話は次回に。


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総合解説
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2021年4月9日金曜日

ペースト・ジェノベーゼをレベルアップするには、若いバジリコと上質のリグーリア産オイルを用意すること。

総合解説」7/8月号を発売しました。
『クチーナ・イタリアーナ』から訳した最初の料理は、“ミントのペーストとパン粉のパスタ“。
定番のバジリコにミントと固くなったパンを加えたジェノベーゼのバリエーションです。
バジリコは品種によってミント風味の後味がある、というのは時々聞く話です。
それにヒントを得たリチェッタかも・・・。
そういえば、リグーリアの主婦は残り物やありあわせの材料の美味しさを最大限に引き出すことや美味しい食材にこだわるが、見栄えの良さは気にしない、なんて言われます。

ペースト・ジェノベーゼにもリグーリアの人のこだわりが詰まっています。
主役はバジリコ。
中でも、ジェノヴァのプラPraという地域で栽培された若くて小さなバジリコです。
もう一つ欠かせないのはリグーリア産オリーブオイル。
プラのバジリコにかける情熱は半端じゃありません。
ジェノヴァから近いので思い立ったらすぐに行けますが、バジリコしかない街。

バジリコは、ご近所が育ちすぎちゃったと言って持ってきてくれるものしか知らなかったけど、プラの段々畑のビニールハウスで大事に育てられているバジリコは、若芽と呼びたくなるほど新鮮で若い葉っぱでした。



チーズと同様、産地でできたてを食すと、味が知ってるジェノベーゼと全然違っていてびっくりします。
マイルドで、飛び出た風味がまったくなく、加えたオリーブオイルのデリケートな味を十分に引き立てます。

地方と強く結びついた伝統料理は、その地と同じ気候と土壌の元で栽培された食材が欠かせません。
加熱しないソース、ジェノベーゼは、食材の風味が直接出るので、食材の質が重要。
ペースト・ジェノベーゼに理想的なオリーブオイルは、リビエラ・リグレDOP。
オリーブを栽培することは、自分たちの土地、歴史、未来を守ることにつながると迷いのない目で語る生産者↓

最近では、乳鉢ですり潰すのではなくミキサーでさっと作るのが主流です。


オリジナルのリチェッタではチーズはラツィオ産のペコリーノ・フィオーレ・サルドと24ヶ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノ、松の実は地中海沿岸部産も用意します。
松ぼっくりから松の実の収穫↓
ひと粒ずつ殻を割って出すんですね。

ミキサーを使うときのポイントは、鮮やかな緑色を出すためにバジリコを加熱しないこと。道具は冷やしておきます。
乳鉢で作るペースト↓

ミキサーで作るペーストの本、ファッチャーモロ・ペスト



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ファッチャーモロ・ペスト
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2021年4月7日水曜日

パンケーキより初心者向け、リコッタケーキ。

そろそろリコッタのリチェッタの話に入ります。
まずはやっぱりカンノーリ、カッサータといったリコッタクリームを詰めたシチリアのドルチェ。
『ラ・クチーナ・シチリアーナ』にももちろん、カンノーリとカッサータがありますが、他に、クチアやミンネ・ディ・サンタガタというドルチェも紹介されています。
クチアcuccìaは小麦の粒入りリコッタクリーム。

ミンネ・ディ・サンタガタMinne di Sant'Agataは

はリコッタクリームをパスタ・フロッラで包んでアイシングで覆ったミニカッサータ。

イタリアの姑が嫁に料理を教えるような本、『マンマミーア』では、

稚すぎてクリームのケーキだと顔中ベトベトにする子供の誕生日ケーキに作るようにと教えていたリコッタケーキ。
リコッタのパンケーキが広まる前からリコッタはケーキに使っていました。
リコッタケーキtorta di ricotta

・卵4個約210gとブラウンシュガー200gをホイップする。
・オレンジ1個の皮のすりおろしで香りをつける。
・水気を切った山羊のリコッタ800g、コーンスターチ45g、チョコチップ200gを加える。
・型に流し入れて平らにし、170℃のオーブンで80分焼く。
歯ごたえはチーズケーキのようなケーキ。

クチアの説明には、まずサンタ・ルチアの説明が必要。
サンタ・ルチアといえばナポリの港街として有名ですが、聖ルチアはナポリの船乗りの守護聖人だけでなく、シラクーザの守護聖人や光や目の聖人としても知られています。
聖人は殉教した人がなるので、ルチアも喉を刺され、両目をえぐられるという悲惨な死に方をしています。以後、光や目の聖人として崇められてきました。
キリスト教では12月13日がサンタ・ルチアの日です。
1964年に起きた飢饉の時、小麦を満載した船がパレルモ(シラクーザという説も)に到着してパレルモ市民は飢えから開放されたのだそうです。
この奇跡を記念して、パレルモでは、この日はパンやパスタなど小麦製品を食べてはいけない日とされています。
そのため米でできたアランチーニと小麦入りのリコッタのクチアを食べるようになりました。
ベネチアに保管されているサンタ・ルチアの遺骸がシラクーサに里帰りした時は、この歓迎ぶり。

ドルチェのことを調べていたのですが、いつの間にか聖人の話になってしまいました。
明日に続きます。

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La cucina siciliana

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2021年4月6日火曜日

リコッタや生ハムの保存に南では海塩を使い、北では木でスモークする。ミルクと蜂蜜の地の恵。

リコッタの作り方を知ったら、次はリコッタを長期間保存する方法。
まずはリコッタ・サラータ。

リコッタに海塩をまぶしてホエイを抜き、短期熟成をして保存できるようにする方法です。
南イタリアのチーズで、南に一歩足を踏み入れるまでは、まったくお目にかかりませんが、一歩でも入れば、特に珍しくはないチーズです。
パスタのノルマ風など、シチリアの伝統料理やパスタに欠かせないチーズです。

リコッタ・サラータricotta salata
・リコッタを型に入れて24時間ホエイを出し、水分が抜けたら表面に塩を散らす。フォークやスプーンで塩を広げ、2日間水気を切る。
・オーブンシートに塩をまぶし、その上でリコッタをあけて側面に塩をまぶす。
・再び型に入れて24時間置く。
・板にあけて3週間乾かす。
・表面の塩を削り落とし、真空パックする。

次はリコッタ・アル・フォルノricotta al forno。
オーブンで焼いて乾かします。
表面には赤茶色の薄い層ができ、中は乳白色でクリーミーな生地です。
次はリコッタ・アッフミカータです。
スモークして保存します。

上の動画はフリウリのリコッタ・アッフミカータです。

そう言えば思い出すのが生ハム。
ハムを保存するために、塩が豊富な南伊では塩漬けにしました。
海はなくても山がある北では、スモークにしたのです。

・リコッタに塩を加え、型に詰めてホエイを出し、12日間プレスしてスモークします。

こういう大自然の中の暮らしを見ると、ミルクと蜂蜜、という言葉を思い出します。
ミルクと蜂蜜というのは自然の豊かさを表す言葉だそうです。
ミルクは牧草が生える大地の体系を崩さずに家畜を育てた結果の恵。蜂蜜は、蜜が採れる自然の生態系を保った結果の恵。
実は、ご近所が引っ越したりして緑が急激に減ったら、毎年楽しみにしていた花が実をつけなくなったことがありました。
その時一番思い当たったのは蜂蜜がいなくなった、ということ。
ミルクと蜂蜜は自然が与えてくれる恩恵の、もっともベーシックなものなのだと実感しました。
北伊のスモークして作る保存食の代表、アルト・アディジェのスペック。



自家製フレッシュチーズの本、

フォルマッジ・フレスキ・ファッティ・イン・カーザ





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フォルマッジ・フレスキ・ファッティ・イン・カーザ

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2021年4月5日月曜日

地震で破壊されたポッジョレアーレは、シチリアの羊の放牧の中心地、バッレ・デル・ベリチェの街。サグラ・ディ・リコッタも開かれている。

リコッタの作り方、わかった気になったけど。まだヤギのミルク、一度も味見したことなかったなあ。
山羊の搾乳

山羊からはミルク、肉、羊毛が採れる。
シチリアの山羊の放牧の中心地はヴァッレ・デル・ベリチェValle del Belice。

この地方の放牧地の草の味がリコッタの味を左右する。
この地方の名物チーズは珍品のバステッダVastedda。バッレ・デル・ベリチェの土着の品種の山羊乳のパスタ・フィラータのチーズ。
山羊乳のパスタ・フィラータはバステッダだけ。
テーブルチーズで、シャルドネ・シチリアやフレッシュな赤ワインが合う。
バステッダ
この地方のポッジョレアーレPoggioreale(トラーパニ県)は大きな地震で破壊されて住民が離れてしまったが、サグラ・ディ・リコッタが有名。

ブッラータもそうだけど、フレッシュチーズは産地で食べるとよそのものとは味がまったく違うことがある。
ポッジョレアーレのリコッタは、旅をする価値があるかも。
お薦めシチリア料理の本、

La cucina siciliana


シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ



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シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ

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2021年4月4日日曜日

ド素人向けの手作りリコッタの動画、探してみた。

調べれば調べるほど、カンノーリのおいしさは、リコッタ次第、という考えが強くなります。
そこで、リコッタを手作りする、ド素人の都会人向けの動画を探しました。


・材料は市販の牛乳2L。2Lからは約400gのリコッタができます。
シチリアの牛乳というのを売っているんですね。それとリンゴ酢45ml。
シチリアの山羊の放牧風景↓

   地中海は羊飼いの文化が生まれた地。
ペコリーノは古代ローマ人に愛されたチーズでした。

・牛乳を90℃に熱します。温度計がなければ、沸騰する直前に火から下ろし、沸騰させないのがポイント。
・リンゴ酢を加えて混ぜ、ミルクを固めます。
・カードから乳清(シエロ)を切ります。
・さらに冷蔵庫で2時間水気を切ります。牛乳のリッタの出来上がりです。
・甘いリコッタなので塩は加えていませんが、塩は牛乳を熱する前に加えます。

次はもう少し本格的。プリーモサーレというチーズの乳清からリコッタを作ります。
《プリーモ・サーレ》
・牛乳2Lを沸騰させ、レモン汁2個分と塩小さじ1を加えて木べらで5分かき混ぜます。
・火を止めて10分休ませます。
・布巾を敷いたざるに流し入れて乳清を切り、型に詰めます。
・バットに並べてさらに水気を切ります。

《リコッタ》
・プリーモ・サーレの乳清に牛乳1Lとレモン汁1/2個分、塩小さじ1を加えて15分沸騰させます。
・火を止めて10分休ませます。
・布巾を敷いたザルで乳清を切り(この乳清はもう集めません)、型に詰めます。
・冷めたら裏返して型から出し、湿らせたオーブンシートで包みます。冷蔵庫で長くて2~3日保存できます。
次はチェゼーナ(エミリア・ロマーニャ)のミルクの量産型リコッタ。

最後はヤギのミルク10Lとカードで作るリコッタ。温度計も用意します。

・山羊乳を濾して鍋に入れ、1Lはリコッタ用に別にする。
・山羊乳を30℃に熱し、火を止める
・カードを少量の湯で溶く。
・山羊乳を大きな容器に移し、カードを漉しながら加えて木べらで混ぜる。
・少量の湯を沸かす。
・カードを布巾で覆って休ませ、木べらで混ぜて砕く。
・容器の側面から湯を加えて混ぜ、手で抑えて水気を切る。ざるを入れて乳清を鍋に集める。
・粒こしょうやピスタチオを散らしながら型に詰めて水気を押し出す。
《リコッタ》
・乳清に塩を加えて混ぜ、10分置く。リコッタ用に別にした山羊乳を加えてかき混ぜる。
リコッタが固まってきたら混ぜるのをやめる。リコッタが浮かび上がってくる。
・火を止めてリコッタを型に入れる。

美味しいリコッタクリームができるまでの道は遠い・・・。


次はシチリアの山羊について。

手作りフレッシュチーズの本、

フォルマッジ・フレスキ・ファッティ・イン・カーザ



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フォルマッジ・フレスキ・ファッティ・イン・カーザ

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2021年4月3日土曜日

2千年前に古代ローマの政治家キケロも称賛していたカンノーリ。

この季節になると、リコッタクリームがみっちり詰まったカンノーリが食べたくなります。
そこで、今日のテーマはカンノーリの、クリームです。


なんと、古代ローマの政治家、キケロは、紀元前87年にカンノーリを食べて地元のスペチャリタの一つとして称賛している、という記録が残っています。
ただ、当時のカンノーリは、現在の物とは違っていたようです。
アラブ人が伝えたさとうきび糖などが、まだなかったのです。
これらの食材によって、カンノーリは洗練されていきます。
クリームにカンディートやチョコレート、リキュールを初めて加えたのもアラブ人でした。
ヨルダンの首都、アンマンのお菓子↓

中東の人気スイーツ。

カンノーリはシチリア中央部のカルタニッセッタで生まれたと言い継がれています。
元々はこの街の修道女がカーニバルのために作った神聖なドルチェだったそうです。
カルタニッセッタという名前はアラビア語ではKal El Nissa、女性の城という意味なんだそうです。
もともとはサラセン人のハーレムがたくさんあって、次女から愛妾まで、多くの女性が太守の寵愛を得るためにカンノーリ作りに携わっていたそうです。
そしてアラブの支配が終わった時に、悔い改めた女性が修道院に逃げ込み、サルタンの秘密のリチェッタは生き延びた、と伝えられています。
もちろん例によってどこまでホントだかは不明だけど、広く信じられている話。
カルタニッセッタのカンノーリ↓

カルタニッセッタのカンノーリが美味しいお薦めパスティッチェリア、マロッタMarotta(webページはこちら)。

カンノーリのクリームは、春のハーブの香りの新鮮なリコッタにチョコチップを加えたものが主流。
これにアーモンド、ピスタチオ、カンディートなどを各店が独自に加えたり、リコッタの代わりにカスタードやチョコレートクリームを詰めるなどのバリエーションが考え出されました。
ディナーに招待されたときのカンノーリの手土産は最低でも12個というのがシチリアのマナー。
リコッタクリーム↓

71歳のジュゼッペが毎朝作る山羊乳のリコッタ。

シチリアの山羊の放牧

結局、美味しいカンノーリを作るには、放牧地の環境がとても大切だということですね。


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パスティッチェリーア・シチリアーナ
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2021年4月2日金曜日

リコッタだと思うんだけど、ピエモンテ人が言うにはリコッタじゃないんだって。セイラス・ピエモンテーゼ

復活祭の食材の中から、今日のお題はリコッタです。
リコッタは羊の群れを象徴する繁栄を願う食材。

イタリア各地で作られていますが、代表的なのはリコッタ・ロマーナとリコッタ・ピエモンテーゼ。

リコッタ・ロマーナは羊乳のチーズの乳清から作られ、粒状で水気が少なめの締まった生地で、様々な料理に用いることができます。
リコッタ・ロマーナDOP


リコッタ・ピエモンテーゼは牛乳のチーズの乳清から作ります。牛乳を加えることもあり、リコッタ・ロマーナより柔らかくてクリーミーで甘く、クリームやケーキなどに適しています。

シチリアのリコッタ作り↓

ちょっと複雑なのですが、リコッタ・ピエモンテーゼには、乳清ではなくミルクから作るセイラスseirass(またはセーラス)というリコッタのような(リコッタと言い切れない)乳製品もあります。
昔は主に羊のミルクから作っていたのですが、今は牛乳から作ります。
それリコッタじゃないの、と思うのだけど、ピエモンテ人は違うと言い張る、どこかの芸人のネタパクったとしか思えない乳製品です。
有名なセイラス・デル・フェンseirasss del Fen↓はセイラスの一種だけどリコッタというよりカプリーノ。


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総合解説
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2021年4月1日木曜日

復活祭の時期になると南伊のパスティッチェリアに登場する超絶可愛いマジパンの子羊。中にはピスタチオペーストが詰まってます。

イタリアからカーニバルの話を聞かなくなって、季節感がずれている印象がありましたが、4月になって、今年の復活祭いつだっけ、もう終わったような・・・、なんて思っていたら、今年は4月4日なんですね。
ちなみに、今は来週の「総合解説」7/8月号の発売に向けてラストスパートの最中なので、気分はすっかり夏でした。
今日から4月。ボンゴレから、復活祭モードに切り替えます。
復活祭はもちろん、キリストの復活を祝うキリスト教の大イベントですが、春の訪れを祝う、という意味もあります。
春の訪れや再生を意味する食材で作る料理が復活祭の料理です。
春の象徴の食材とは、卵、プンタレッレ、発酵生地、リコッタ、子羊や小ヤギ肉、香草などです。
発酵生地は膨らむところが豊穣をイメージさせます。チーズは滋養の象徴です。
そして命の復活、春、希望を象徴するのが卵です。

個人的には、私にとって復活祭を象徴するのはドルチェです。
復活祭の時期の南伊のパスティッチェリーアはどこにいっても可愛い子羊のドルチェがあって、見るたびに持って帰りたい、と思ったものです。


私が見たのはプーリアでしたが、マジパン細工だけあってシチリアのドルチェなんですね。
ピスタチオのクリームを詰めたマジパンの子羊です。
子羊の型が必要だけど・・・。
背中につけている旗は、赤字に十字架が描かれています。
復活したキリストが持っているものと同じで、死に勝利したことを意味しています。

アグリジェントのファバーラという町の修道院のパスティッチェリアで生まれたと言われ、町の名物になっています。
主な材料はファバーラのピスタチオとパレルモのアーモンド、そして砂糖。
シチリアのエトナの恵も象徴するようなドルチェでもあったのですね。


ファバーラFavara↓

職人の腕次第で次第で信じられないくらい可愛くなる。
これを見たくてパスティチェリアを見かけたら片っ端から入っていたなあ。

シチリアのドルチェのミニサイズ本、

パスティッチェリーア・シチリアーナ


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パスティッチェリーア・シチリアーナ
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