2021年10月31日日曜日

イタリア料理は北と南、東と西のミックスの料理で、その方法が秀逸、と語るのはマッシモ・ボットゥーラシェフ

パッサテッリはおろしたチーズとパンがベースのロマーニャ地方の質素なパスタをブロード・ディ・カルネでゆでたもの。
これが、ブロード・ディ・ペッシェや出汁が出る魚介のスープで煮れば、ズッパ・ディ・ペッシェになり、さらに、野菜とシーフードを組み合わせれば、マーレ・エ・モンティなスープになる。
ちなみに、パルミジャーノのアンバサダー的シェフ、マッシモ・ボットゥーラのパッサテッリkのリチェッタは、彼の本、マッシモ・ボットゥーラ・パルミジャーノ

を見ると、去勢鶏のブロード・ドッピオだそうです。
去勢鶏のブロードは他の料理でも使っていますが、ブロードが主役のシンプルな料理には去勢鶏、ホロホロ鳥、鳩のブロードのようなミックスの場合もあります。
ミネストローネのような質素な野菜のスープには欠かせない、チーズの皮のブロード。
パルミジャーノの皮のブロード

材料/
24ケ月熟成のパルミジャーノの皮・・4片
にんじん・・3本
セロリ・・4本
玉ねぎ・・2個
こしょう
イタリアンパセリ
トマト・・2個
水・・2㍑

・皮はナイフでこすって汚れを落とす。野菜は小さく切る。
・全部を鍋に入れて40分煮る。

質素なパルミジャーノの皮のブロードの対局にあるのが豪華な去勢鶏のブロード。
去勢鶏のブロードはクリスマスのご馳走。

材料/
去勢鶏・・1羽
ポロねぎ・・小1本
玉ねぎ・・1個
にんじん・・1本
にんにく・・1玉
ローリエ・・1枚
クローブと黒こしょう・・3個
ブーケガルニ(タイム、ローズマリー、セージ、ポロねぎ1枚)、海塩、粗塩
パルミジャーノ
バゲット

・去勢鶏は残った産毛を焼いて足を縛る。鍋に入れて水で完全に覆い、蓋をする。粗塩少々を加えて沸騰させる。
・ポロねぎは束にして縛る。玉ねぎはローリエを挟んでクローブを刺す。
・沸騰したらアクを取り除いて火を弱め、全部の香味野菜を加える。蓋はしてもしなくてもよい。約1時間ゆでる。時間は材料の大きさによって変わる。
・ブロードを皿に注ぎ、スライスしたバゲットににんじんの輪切りをのせてパルミジャーノを散らしてサーブする。

パルミジャーノ料理を紹介しながらイタリア料理は地方料理、あるいは北や南、東や西の料理のミックスで、そのミックス方法が秀でている、と語るマッシモ・ボットゥーラシェフ。

たとえば、モッツァレッラ・イン・カロッツァをモッツァレラのような溶けて糸を引くチーズではないパルミジャーノで作る時は、若いパルミジャーノ、トゾーネを使う。

今月の(CIR)のP.7の料理は、アサリ、きのこ、チーメ・ディ・ラパのズッパ。
アサリとチーメ・ディ・ラパの組み合わせはプーリア料理の代表的な食材。
かつ、イタリア料理が得意なマーレ・エ・モンティの1品。


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2021年10月30日土曜日

パッサテッリはパルミジャーノの故郷が生み出した残り物の有効利用の知恵が詰まった料理。

今日はミネストローネの続きです。
ミネストローネが、貧しい家計をやりくりして作る質素な野菜料理ということはおわかりいただけたでしょうか。
畑の残り物野菜の料理をどうやっておいしくいただくかは、イタリアの農民の大きな課題でした。
贅沢な肉な動物性タンパク質や脂肪を一切使わないで、料理にコクを出すにはどうしたらいいか。
その解決策の一つが、チーズの皮を加える、という方法。
豚の皮を加えたりもしました。
さらにすぐ考えつくのが固くなったパンを入れること。
このチーズと固くなったパンの組み合わせは、パルミジャーノの産地、エミリア・ロマーニャ地方では多用されました。
タリアテッレのふるさとロマーニャ地方では、この組み合わせのパスタも生まれました。
パッサテッリpassatelliです。
カルロ・クラッコシェフは、自らの経験と研究した地方料理を集めた力作、『カルロ・クラッコの地方料理』の中で、パッサテッリのことをこう説明しています。

passatelliパッサテッリは庶民が生み出したスペチャリタだ。元々はおろしたチーズがベースの質素な料理だった。確かに、パルミジャーノは決して安いものではなかったが、パルミジャーノの産地では家庭に広く普及していた。
伝統時なリチェッタでは、パン粉にパルミジャーノ(骨髄や小麦粉を加える場合もあった)、卵、ナツメグ、レモンの皮を混ぜて太くてきめの粗いベルミチェッリのような麺にし、シンプルにブロード・ディ・カルネでゆでた。
ロマーニャ地方の沿岸部では最近は、シーフードのスープでゆでるのがブームだ。
今月の(CIR)では、これを小さなボールにしてミネストローネに入れた(リチェッタはP.6)。
丸めるので型を使わないので、もっと簡単に作ることができる。さらに、地味な野菜スープが、この小さなボールで一気に楽しげな料理になる。
野菜が苦手な子供だって、喜んで食べそう。
他にも様々応用できそうで、なかなかの発明だったかも知れない。


パッサテッリ・イン・ブロードPassatelli in brodo

材料/4人分
おろしたパン・・200g
グラナ・パダーノ・・200g
レモンの皮
こしょう、ナツメグ

・上記の材料とこしょうを混ぜ、卵4個を1個ずつ混ぜ込む。ブロードをかけないでアッシュッタにする場合は小麦粉大さじ2を加える。台に移してこねる。堅い時はブロード、柔らかすぎるときはパン粉を加える。ラップで包んで30分休ませる。
・生地を少量ずつ丸めてポテトマッシャーに入れ、沸騰したブロードの上で押し出す。
ナイフでパッサテッリをカットしてブロードに落とす。
・パッサテッリが浮かび上がったらゆで上がり。ブロードごと皿に盛り付ける。

ダビデ・オルダーニシェフの地方料理の本、『メイド・イン・イタリー

には、型を使わない作り方が、クラッコシェフの本にはシーフードのズッパのパッサテッリのリチェッタが載っている。

ミラノで万博が開かれたのは随分昔のような気がするけど、確か2015年でした。
その際にモデナ出身でエミリア・ロマーニャ地方の食文化の広報官のように積極的に活動していたマッシモ・ボットゥーラシェフは、パルミジャーノの皮についても語っています。

パッサテッリのリチェッタもあります。


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2021年10月29日金曜日

ハリーズ・バーのジュゼッペ・チプリアーニの言葉は今読んでも深い。

今日のリチェッタは“冬のミネストローネ、パッサテッリボール入り”(P.6)。

素朴な疑問、その1。
冬のミネストローネってことは、ミネストローネには季節がある?

その疑問に答えるには、ミネストローネがどういう経緯で生まれてきた料理かを知る必要があります。
スープ料理の名物が多いトスカーナ料理の力作本、『ルフィーノのトスカーナ

には、こんな事が書いてありました。

「ミネストローネは質素で美味しい本物の料理だ。刻んだ野菜がベースの、主に冬に食べるミネストラ。風味づけにはチーズの皮を入れたりする。子供はあまりミネストローネが好きではないが、ミネストローネに入っている皮は人気があった・・・」
本ではさらに、ミネストローネ・ポーベロという、最初から質素な料理にわざわざ“貧しい”とつけた料理が紹介されていました。

どんな料理かと言うと、ただの残り物の野菜ではなく、多少傷んだ野菜を使うのだそうです。
特に、ビエトラ、ほうれん草、じゃがいも、さやいんげん、ズッキーニ、にんじんなど。

手に入る余り物野菜で作る素朴なミネストローネは、たしかに季節的にはそもそも最初から冬の料理です。
村のオステリアで女性たちがことこと煮て作るミネストローネを、地元のお百姓さんたちに囲まれて食べるのは、寒い冬の日がよく合いそうです。つまり、冬のミネストローネとわざわざ冬を強調したということは、冬野菜が入ってます、ということのアピールですね。

今回の料理がきっかけで調べてみて知ったのですが、ミネストローネにはポーベロという形容詞がよく使われています。
豪華で贅沢なミネストローネなんてないんですね。質素な食材をいかに美味しく料理するかがこの料理の醍醐味。


さらに、世界的人気レストラン『ハリーズ・バー』でもミネストローネを出しているようで、創業者ジュゼッペ・チプリアーニの自伝的本、『ハリーズ・バー

には、その背景にある考えが書かれていました。ミネストローネの本質を言い表す素晴らしい話でした。

「本物のミネストローネは水で作り、鶏のブロードは加えない。
濃くてドロッとしたミネストローネもあるが、ハリーズ・バーのミネストローネは軽くてさらっとしている。
その味はすべての食材一つ一つの味が混ざりあったもので、どの野菜からも素のままの自然な味を引出している」。

ハリーズ・バー


リチェッタを訳してみます。
ミネストローネMINESTRONE
材料/6人分
オリーブオイル・・30ml
バター・・30g
玉ねぎの小角切り・・1個
2〜3cm角の小角切りにしたセロリ・・大1本
ポロねぎの白い部分の細切り・・2本
2〜3cm角の小角切りにした皮むきトマト・・大1個
2〜3cm角の小角切りにしたズッキーニ・・小2本
粗く刻んだキャベツ・・1個
2〜3cm角の小角切りにしたじゃがいも・・1個
2〜3cm角の小角切りにしたにんじん・・1本
2〜3cmの輪切りにしたアスパラガス・・6本
ローリエ・・1枚
熱湯・・2㍑
トマトソース・・1カップ
おろしたてのパルミジャーノ
粗挽きこしょう、塩

・深い鍋に油を入れて強火で熱する。
・油とバター15gを加えて溶かし、玉ねぎを加えて弱火で10〜15分ソッフリットにする。
・他の野菜とローリエ、塩、こしょうを加えて15分ソッフリットにし、水とトマトソースを加えて沸騰させる。
・火を弱め、蓋をずらして載せて15分、コトコト煮る。
・ローリエを取り除き、濃すぎる時は熱湯少々を加える。
・残りのバターを加えて味を整える。おろしたパルミジャーノを散らして熱々をサーブする。

明日はパッサテッリの話。

2021年10月28日木曜日

淡水魚は養殖が盛んになり、回遊距離が長い海水魚より安全でサスティナブルな魚になった。

今月の(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)から2月のリチェッタの解説、今日はプリーモの一品めです。“ラバレッロのラビオリraviolli di lavarello ”(P.5)。
ラバレッロは比較的よく聞く名前ですが、サケ科の淡水魚で和名はシロマスとかホワイトフィッシュと、どんな魚なのか、いまいち不明。
唯一のヒント、淡水魚というワードをたよりに、魚といえば淡水魚だという、ミラノ=ロンバルディア料理の本、『クチーナ・ミラネーゼ
から、地中海とは全く違う北イタリアの魚料理を見てみます。

ガルダ湖は、トレンティーノ・アルト・アディジェ、ロンバルディア、ベネトなどにまたがるイタリア最大の湖

ガルダ湖の魚

淡水魚は海水魚と比べて味が弱く、泥のような後味があるのが欠点でしたが、養殖が盛んになり、状況はかなりの速さで大きく変わっています。淡水魚はよりデリケートでエレガントな魚になり、回遊距離が短く、安全でサスティナブルな魚として主に地元で消費されています。
温暖化の影響をもろに受ける海水魚より安心で安定した魚として、今後EUでは70%の消費量のアップが見込まれているそうです。

本にリチェッタが載っているロンバルデイアの淡水魚は、コイtincaやウナギanguilla、ノーザンパイクluccioなど。


パーチのラビオリ
パスタはほうれん草入り、パーチはガルダ湖のものをスモークして冬用に保存したもの。ソースはくるみとハーブのペースト。油はガルダ湖のオリーブオイル。

2021年10月27日水曜日

パニョッタとプンタレッレのサラダ。

今日は今月の(CIR)2020年2月号から2品目、アンティパストの“プンタレッレとアンチョビのサラダ”です(リチェッタはP.3)。
プンタレッレはローマの名物野菜。
プンタレッレはチコーリアの一種のカタローニャの中の芽の部分。
代表的な食べ方は、ローマ風。
細く切って氷水にさらしてカールさせてから、にんにく、オリーブオイル、アンチョビ、ビネガーで調味します。

プンタレッレのローマ風

この定番中の定番のサラダをアレンジしたのが(CIR)の一品です。
どうアレンジしたかと言うと、生のカタクチイワシを開いてセモリナ粉をまぶして揚げました。
プンタレッレはレモン汁、油、塩、こしょうで調味します。
これらを水平にスライスしたパニョッタ(大型の田舎パン)にのせます。
パニョッタはパーネに大きいという意味の接尾辞をつけたもの。

余談ですが、私のイタリア語の先生に、パオロという人がいました。
小柄で華奢でシャイな彼は、ある日授業で接尾辞の話になり、「僕の母親は僕のことをパオローネと呼ぶんだ」と、ちょっと楽しそうに話してくれました。
それ以来、ちっちゃいパオロを大きなパオロ=パオローネと呼ぶイタリアのマンマのイメージが強烈に出来上がりました。
大きいというイタリアの接尾辞には、深い親愛の情が込められているのです。
パンをパニョッタと呼ぶ時にも、ただ単に大きいだけではなく、特別なパン、という気持ちを感じてしまいます。
イタリアのパニョッタというと、プーリアのパン、アルタムーラのパン、シチリアのディッタイノのパンなどが挙げられます。
pane di Altamura

pane del Dittaino

これらの田舎パンをスライスしてアンチョビのフリットとプンタレッレのサラダをのせて豪快にいただく1品です。

魚をパンにのせるという食べ方は、私はプーリアで体験しました。
港のそばの屋台でウニを食べた時、ウニにスライスしたパンが添えて出されたのです。
ちょっと恐る恐るでしたが、プーリアの田舎パンにウニと白ワインはよく合って、いくらでもいけました。

ウニのフォカッチャ


今ではむしろウニにはパンのほうが自然。

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2021年10月26日火曜日

アルタ・イドラタツィオーネなローマのピッツァとボローニャのモルタデッラの組み合わせ。


今月のリチェッタ1品目は、“ココアパンとモルタデッラ”(リチェッタはP.2)。
ココアは焼いている間に重さの5倍の水を吸うそうです。
水分を多く加えることができ、その結果柔らかいパンになるそうです。
そう言えば、パンやピッツァの話で、alta idratazioneという言葉をよく目にします。
どういう意味なのか、辞書には高水和とあって、いきなりの化学用語の出現でますますわからなくなります。
どうやらパン職人さんやピッツァィオーロさんの専門分野のよう。
ド素人がいきなり手を出すのは危険と判断して、とりあえずはalta idratazioneの動画を探してみました。
下の動画は、alta idratazioneなパンは外側はこんがり、中は気泡の跡がたくさんあって、ふわふわで香ばしい、と説明しています。

さらにリチェッタではモルタデッラ、スプラウト、ベビーリーフ、マヨネーズを組み合わせてアペリティーボにしています。
モルタデッラとパンの組み合わせも、当たり前過ぎてあまり深く考えたことがなかったけど、下の動画では、イタリア料理の基本の食べ方、というスタンス。

ローマのピッツァ・ビアンカとボローニャのモルタデッラの組み合わせのパニーノ。

ローマのピッツァは今、どうなってるんでしょうか。

パン関係の本はたくさんありますが、かなり専門的なので、ご要望を詳しく聞いてから取り寄せます。興味がおありでしたらお気軽にお問い合わせください。

スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ・シリーズの『パーネ・ピッツァ・フォカッチェ』




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2021年10月25日月曜日

(CIR)2月号発売しました。

日本語解説(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)2020年2月号発売しました。
イタリアの月間料理雑誌『クチーナ・イタリアーナ』

『サーレ・エ・ぺぺ』

記事の日本語解説です。
表紙はCIがマリトッツィ、SPはデンマークのカーニバルの揚げ菓子、KLENÄT。
どう発音するのかもわからない、聞いたこともないデンマークのお菓子です。
なんでこんなマニアックな料理が表紙かというと、カーニバルにちなんだ“世界のフリット”というテーマの記事の料理なんです。

下の動画によると、クライナーと言うようですね。

イタリアでは毎年2月になると、カーニバルの揚げ菓子に突然注目が集まります。

毎年のことなので、あまり代わり映えもないのですが、今年は外国の揚げ菓子にも手を出したようです。
ざっと見た所、スペインのチュロスがかなり可愛いいです。
クライナーはイタリアのカーニバルの揚げ菓子、キアッケレにそっくり。その成形の仕方から、ツイスター・ドーナッツと呼ばれているタイプのフリットです。
手綱こんにゃくと同じねじり方です。

キアッケレ

カーニバルの揚げ菓子は古代ローマまで遡る歴史のある習慣。
キアッケレchiacchiereは地方によって名前は様々で、bugie, crostoli, frappe, cenci, galaniなどと呼ばれます。

定期購読分は今日の発送になります。
もう少々お待ち下さい。

2021年10月24日日曜日

ラモン豆とラディッキオ、ベネトの名物野菜の共演、ラディチ・エ・ファゾイはスープというよりサラダ。

今日はラディッキオのリチェッタ。
ラディッキオはベネトの宝のような野菜で、今ではメイド・イン・イタリーと形容される自慢のイタリア野菜の一つになっています。
クチーナ・ディ・ベネチア

には、ラディッキオの素朴な地方料理のリチェッタが載っていました。
“radici e fasoiラディッキオといんげん豆”という料理です。
標準語で言うとRadicchio trevigiano e fagioli。
この料理の信者会もある地元では人気料理です。
その魅力は、シャキッとしたラディッキオのほろ苦さとピューレ状のいんげん豆の甘みとの組み合わせ。

ラディチ・エ・ファゾイ

冬は豚肉の脂身を加えて、夏はオリーブオイルをかけていただきます。
そう言えば、ベネトは美味しいいんげん豆として知られる、ラモン豆の産地でした。
 
ラモン豆fagioli di Lamon

ラモン豆とラディッキオの組み合わせはベネトの名物野菜の共演だったのですね。
ちなみに、白インゲンはアメリカのものは潰してもピューレ状にならないのでイタリア産のカンネッリーニがお勧めです。
それでは本のリチェッタを訳してみます。

材料/4人分
ボルロッティ豆(ラモン豆)・・300g
セロリ・・小1本
玉ねぎ・・1個
にんじん・・1本
にんにく・・1かけ
ローズマリー・・1枝
アンチョビ・・2枚
EVオリーブオイル・・大さじ4、塩
ラディッキオ・タルディーボ・・3個
EVオリーブオイル、ビネガー、塩、こしょう

・前の晩に豆をたっぷりの水で戻す。翌日すすいで、セロリ、玉ねぎ、にんじんと一緒に大鍋に入れ、水で覆って弱火で1時間煮る。必要なら湯を足し、最後に少なめの塩を加える。
・豆を取り出す(ゆで汁は少量取っておく)。
・ソテーパンで油、にんにく、ローズマリーをさっとソッフリットにし、にんにくとローズマリーを取り除いてアンチョビを加えて崩す。
・豆をフォークで潰してソッフリットに加え、大さじ数杯の豆のゆで汁をかける。濃いスープにしたいので量は多すぎない。
・ラディッキオを小さく切って皿に盛り付ける。
・豆をゆで汁になじませて火を止め、ラディッキオにかける。塩、こしょう、油、ビネガーで調味する。

スープだと思ったら、生のラディッキオに豆のピューレをかけるという1品でした。

ベネト料理とラディッキオ料理のお勧めオステリア、今日紹介する店はトレビーゾの人気店、オステリア・アル・カステッレット Osteria Al Castelletto。


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2021年10月23日土曜日

ラディッキオとサルシッチャのタリアテッレ

今日のラディッキオ・ロッソ・ディ・トレビーゾ・タルディーボの話題は、
『サーレ・エ・ぺぺ』誌の2020年1月号

から、お届けしています。
今月の(CIR)に載せられなかった記事です。


ベネチア料理の本、『クチーナ・ディ・ベネチア

によると、ラディッキオは花のように美しい野菜で、たくさんの種類がありますが、中でも知られているのは、ラディッキオ・ロッソ・トレビジャーノ・タルディーボ。radicchio rosso trevigiano tatrdivo、時間と手間をかけて軟白栽培するので、美しさだけでなく、値段もスペシャル。最初の霜が降りるまで収穫してはいけないと、管理組合で定められています。

下の動画で紹介しているのは一番知られていない品種、ラディッキオ・バリエガート・ディ・カステルフランコradicchio variegato di castelfranco。ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレビーゾとスカローラの交配種です。“冬のバラ”とも呼ばれています。

ラディッキオ・ロッソ・ディ・キオッジャradicchio rosso di chioggiaは結球する一番おなじみのタイプ。主に生食用です。

『サーレ・エ・ぺぺ』の記事では、ラディッキオ料理のお勧め店として、トレビーゾのレストラン、レ・ベッケリエLe Beccherieを紹介しています。
webページはこちら
下の動画によると、トレビーゾの宝、ティラミス誕生の店を名乗っていますが、イタリア生まれの世界的な大ヒットドルチェなので、ライバルは世界中にいます。誕生の店を名乗るのは、よほどの自信があるはずです。


シェフはマニュエル・ゴッボさん。

彼は、生のラディッキオのほろ苦さとバルサミコ酢や熟成させないチーズの軽い酸味を組み合わせるのが好きだそうです。
例えば、ビネガーで下ゆでしてクリーミーなヤギのチーズ、ロビオーラを添えるといった具合。
伝統的なリチェッタなら、リゾット、ラザーニャ、鴨のタリアテッレ、ラビオリの詰め物、フライパンでブラザーレしてポレンタやアジアーゴなどのチーズを添える、グリルして肉や魚に添える、などの料理があります。
ラディッキオをグリルする前に油、塩と一緒にカルトッチョにすると柔らかくなるそうです。
ラディッキオのジャムというのもあります。


たくさんのリチェッタがありますが、今日は
ラディッキオとサルシッチャのタリアテッレTagliatelle radicchio e salsiccia


なんてどうでしょう。

材料
《パスタ》
小麦粉・・300g
セモリナ粉・・200g
卵・・6個
《ソース》
サルシッチャ・・2本
ラディッキオ・トレビジャーノ・・1個
にんにく、赤ワイン
バター・・30g
おろしたパルミジャーノ
オリーブオイル、塩、こしょう

・フライパンに油、薄切りにしたラディッキオ、にんにく、塩少々を熱し、腸を取って小さく切ったサルシッチャを加えて炒める。
・ラディッキオがしんなりしてサルシッチャに焼き色がついたら赤ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・パスタの生地を薄く伸ばし、巻いてタリアテッレに切る。
・パスタをゆでてサルシッチャのフライパンに加え、マンテカーレして水気を飛ばす。
・バターとパルミジャーノを加え、火から下ろしてマンテカーレする。
・皿に盛り付けて油をかけ、ローズマリーで飾る。

次回はベネトの伝統料理のリチェッタです。


2021年10月22日金曜日

ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレビーゾ・タルディーボの季節になりました。

今日のお題はラディッキオ・タルディーボ。
トレビーゾ県の冬を赤く染める野菜です。

トレビーゾ(ベネト)

収穫は、11月に最初の霜が降りた後。

チコーリアの一種で、光を遮って葉緑素を作らせない軟白という、ベネトの農民の叡智から生まれた技術で栽培される野菜。
軟白によって野菜は色と苦味、食物繊維がなくなる。
その結果、白く、甘く、柔らかくなる。
具体的には、収穫後、束ねて暗い場所で地下水に約15日間漬けて新しい柔らかくて赤い葉の芽を出させる。

ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレビーゾ・タルディーボの軟白
ラディッキオ・ロッソは生でも美味しいけど、様々な料理と相性が良い野菜。
リチェッタは次回。

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2021年10月21日木曜日

スポンジ生地、カスタード、アルケルメスというお約束の組み合わせがウィーン風になると、こんなにお上品に・・・。

クチーナ・イタリアーナ』2020年1月号

から、今日は地方料理の定番料理classici regionaliの話。
お題はトレンティーノ・アルト・アディジェ州のドルチェです。

アルト・アディジェ

この長い名前の州は、南チロルやドロミテという別名の方が身近かも。
家庭のドルチェの主役は、パン、じゃがいも、りんごという、典型的山の地方で、さらにオーストリアの影響を色濃く受けているのが特徴。
りんごのストルーデルが有名ですが、これもオーストリアのドルチェ。

クチーナ・イタリアーナが選んだトレンティーノの定番ドルチェは、ソッフィアータsoffiataです。
シロップを塗ったスポンジ生地とカスタードクリームを重ねるというベースは、よくあるパターン。
違うのは、アルケルメスを加えたピンクのメレンゲで覆うこと。
仕上げにオーブンでグリルします。
黄色いスポンジ生地がピンクのメレンゲで覆われるという、とってもかわいいケーキです。

オーストリアのシュトルーデル

それではリチェッタです。Soffiataソッフィアータ
材料/8人分
《クレーマ・パスティッチェリア》
牛乳・・500g
グラニュー糖・・80g
コーンスターチ・・40g
卵黄・・4個
バニラ
《パン・ディ・スパーニャ》
グラニュー糖・・75g
小麦粉・・75g
卵・・2個
塩、型用バター
《仕上げ》
グラニュー糖・・80g
ラム酒・・50g
アマレッテイ・・24個
アルケルメス

・カスタードクリームを作る。牛乳と開いたバニラ1/2本を熱する。
・卵黄と砂糖、コーンスターチをホイップし、熱い牛乳を濾しながら加える。鍋に入れて火にかけ、1/2分沸騰させて火を止める。クリームを冷ます。
・スポンジ生地を作る。卵、砂糖、塩少々をじっくりホイップする。振るった小麦粉を加えてさっくり混ぜ、直径18〜20cmの型(バターを塗って小麦粉をまぶす)に流し込む。180℃のオーブンで20分焼く。型から出して冷ます。
・ラム酒と同量の水を混ぜる。
・スポンジ生地を厚さ2cmにスライスし、オーブン皿の底に敷き込んでラム酒のシロップを塗る。クリームで覆う。
・アマレッティをシロップにさっと浸してクリームの上にのせ、残りのクリームで覆う。
・卵白を堅く泡立てて砂糖を加え、さらにアルケルメス大さじ2を加える。
・ピンクのメレンゲをスパテラで塗ってドルチェを覆い、オーブンの上火で6〜8分グリルする。

スプーンが添えられているので、スプーンで食べるドルチェですね。

そろそろ(CIR)2月号が発売になります。
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2021年10月20日水曜日

アブルッツォの名店、ヴィッラ・マイエーラの本、『サポーリ・デッラ・マイエッラ』

きのうのブログを見て、頭を抱えてしまいました。
アブルッツォのドルチェの話をしていたはずなのに、いつの間にか、シチリアのドルチェの話をしているじゃないですか。
実は、アブルッツォのシェフの本で、紹介し忘れていた本があったので、今日はそれを紹介しようと思っていたのです。
まあ、ありがちなので、ちょっと強引ですけど、話はアブルッツォに戻ります。
アブルッツォを代表するシェフ、ヴィッラ・マイエッラのアンジェラとペッピーノ・ティナーリ夫妻の本、『サポーリ・ディ・マイエッラ

です。
マイエッラ山地



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2021年10月19日火曜日

ホワイトチョコレートのサラミは、ピスタチオと赤いドライフルーツがポイント。

アブルッツォのドルチェ、今日はチョコレートのサラミです。
インパクトのあるこの名前は聞いたことあります。誕生日のドルチェの定番です。アブルッツォ以外でもイタリア各地で造られています。
シンプルで少ない材料でできて火も使わない、初心者でもできる家庭の手作りお菓子です。子どもたちに大人気の1品でした。
初心者向きの料理書と言えば、『マンマ・ミーア
チョコレートのサラミのリチェッタはもちろんありました。
地方料理のサラミ・ディ・チョッコラートを調べると、ピエモンテとシチリアにリチェッタがたくさん見つかります。
別名もあり、salame del papa, salame di turco, salame di vichingoサラメ・デル・パパ、サラメ・ディ・トゥルコ・サラメ・ディ・ビキンゴ、などと呼ばれています。
ランゲ地方ではこのドルチェにマルサラを添える習慣があったそうです。
なにやらシチリアの影響を感じますねえ。
今回のリチェッタの特徴は、ダークなチョコレートでなく、真っ白いホワイトチョコレートがベースなので、具のピスタチオやレッドカラントの色が鮮やかに映える、とても都会的な仕上がりになっています。


上の動画では、シチリアではブロンテのピスタチオ、ピエモンテではヘーゼルナッツ(ピエモンテ産)を加える、と言ってます。
ピエモンテのヘーゼルナッツ↓


最後にサラミとそっくりに縛ると一層完成度が上がります。
パンに乗せて食べるものとは知らなかった・・・。
シチリア風サラメ・ディ・チョッコラート(またはサラメ・ディ・トゥルコ)


それでは、『サーレ・エ・ぺぺ』2020年1月号から、ホワイト・チョコレートのサラミを訳してみます。
SALAME DI CIOCCOLATO BIANCOホワイトチョコレートのサラミ
材料/12人分
ホワイトチョコレート・・400g
干しあんず・・100g
刻みピスタチオ・・40g
ドライレッドカラント・・50g
ライスパフチョコ・・大さじ4
ショートブレッドタイプのバタービスケット・・4枚

・チョコレートを湯煎にかけて溶かす。
・干しあんずを小角切りにする。レッドカラントを崩す。ビスケットを崩してライスパフ、ピスタチオと一緒にチョコレートに加える。混ぜて固まりだすまで冷ます。
・オーブンシート4枚に4本の同じ長さの線を書き、混ぜたチョコを分けてのせてシートでサラミ型に包んで閉じる。冷蔵庫で固まるまで冷やし、冷蔵庫から出して最低3時間室温に置く。スライスしてサーブする。

ホワイトチョコレートにすると印象がガラッと変わる。ピスタチオはマストだが、その他、詰め物のドライフルーツの中に赤いものを加えられるかどうかもポイント。
ホワイトチョコレートのサラミ↓


2021年10月18日月曜日

アブルッツォ人に愛される誕生日や日曜日のケーキ、ピッツァ・ドーチェはたっぷりのクリームを挟んだレイヤケーキ。

1月のホームパーティーメニュー。
アブルッツォ出身の人がミラノでホームパーティーを開いた時のメニューというお題で、今日はデザートです。
メニューの候補は、アブルッツォの伝統的なドルチェ。
選ばれたのは、アブルッツォの家庭で重要な機会に登場するドルチェ2品。
ピッツァ・ドーチェpizza doce(またはpizza dogge)とサラメ・ディ・チョッコラートsalame di cioccolato。
どちらもイタリア中で造られているドルチェです。
新年のパーティーのような機会には、伝統の中にも新しさを取り入れるのがポイントだそうで、今回も、サラメ・ディ・チョッコラートは、定番のビターチョコレートやミルクチョコレートの代わりにホワイトチョコレートで作ります。

ピッツァ・ドーチェはアブルッツォで誕生日や結婚式など大事な機会に作る人気のドルチェ。スポンジ生地、クリーム、アルケルメスのシロップがベースのカラフルなレイヤーケーキ。
テーラモのドルチェです。
ピッツァ・ドーチェpizza doce↓
ピッツァ・ドルチェpizza dolceと言われることが多いよう。


下の動画ではテーラモのパスティッチェリアがクリスマスのケーキとして紹介しています。
つまりアブルッツォの人にとってはとびきり贅沢なケーキなんですね。

それでは『Sale & Pepe』のリチェッタをどうぞ。
“PIZZA DOCE”ピッツァ・ドーチェ
材料/8人分
《パン・ディ・スパーニャ》
卵・・5個
砂糖・・175g
小麦粉・・150g
バニラ風味のベーキングパウダー・・小さじ1
《クレーマ・パスティッチェラ》
牛乳・・1㍑
ノーワックスレモンの皮のすりおろし・・1/2個
卵黄・・7個
砂糖・・230g
コーンスターチ・・100g
ビターチョコレート・・150g
《シロップ》
アルケルメス
《トッピング》
生クリーム・・250g
バニラシュガー・・大さじ1
カラーチョコスプレー

・パン・ディ・スパーニャを作る。卵をホイップして砂糖を加え、リボン状になるまで泡立てる。振るった小麦粉とベーキングパウダーを加えてさっくり混ぜ、シートで覆った直径24cmの底が外せる型に流し込む。180℃のオーブンで40分焼く。冷ましてケーキクーラーにあけ、3段にカットする。
・クレーマ・パスティッチェラを作る。卵黄、砂糖、コーンスターチ他を混ぜて熱した牛乳で溶き、レモンの皮を加えて煮詰める。2つのボールに入れて片方には溶かして冷ましたチョコレートを加える。時々かき混ぜながら冷ます。
・スポンジ生地に水で2倍に薄めたアルケルメス少々をかける。
・型にベースのスポンジ生地を1段入れてチョコレートクリームで覆い、その上に中央の生地を重ねて残りのクリームを重ねる。上段の生地を被せて抑え、低温の場所で一晩休ませる。
・トッピングの材料を混ぜてケーキをたっぷり覆い、チョコスプレーを散らす。

ちなみに、クリームはカスタードクリームとチョコレートクリーム。ホイップクリームはいわばモダンなクリームで、伝統的なドルチェに使われることは少なかったそうです。

ドルチェのおすすめ本は、巨匠の本『イジニオ・マッサーリ』と、

レモンのデリツィアで知られるアマルフィの天才の本、『ドルチ・デル・ソーレ


2021年10月17日日曜日

エビのタルタルのキタッラはカーチョ・エ・ぺぺのスペシャル版アレンジ。

今日は1月号の(CIR)に載せきれなかった記事から、『1月のホームパーティーメニュー』です。
ミラノに暮らすアブルッツォ出身の今どきの女性が作る、モダンでおしゃれな、適度に伝統を取り入れた新年のホームパーティー向けの料理。
“出身地の伝統を取り入れながらも様々な出身の人が集まる大都会の料理”、というのが最近のトレンドのようです。
プリーモは、新年のちょっと豪華なメニューには欠かせない、甲殻類のパスタ。
エビのタルタルのスパゲットーニです。パスタはアブルッツォのキタッラを意識した断面が四角くて太いスパゲットーニ。
エビは甲殻類の中でも一番身近ですが、リチェッタによると、生食用のマザーラのエビと指定されていてます。
各地の特別な食材が手に入るのも大都会ミラノならでは。
ガンベロ・ロッソが有名なマザーラ(シチリア)ですが、他の種類のエビも採れます。
マザーラのガンベロ・ロッソはイタリア人にとって、特別なディナーに食べる特別なエビ。


さらに、キタッラは、メーカーによってはスパゲットーニ・クアドラーティspaghettoni quadratiとも呼ばれます。
カーチョ・エ・ぺぺとの相性が抜群のパスタ、スパゲットーニ・クアドラーティ。
量産タイプじゃなくてアルティジャナーレのパスタだと麺の美味しさと美しさが一段と際立つので完璧。
エビのタルタルはカーチョ・エ・ぺぺの豪華版アレンジ。
スパゲットーニ・クアドラーティ。

それではリチェッタを訳してみます。
Spaghettoni con tartare di gamberi/エビのタルタルのスパゲットーニ
材料/6人分
スパゲットーニ・クアドラーティ・・500g
バター・・200g
おろしたペコリーノ・ロマーノ・・400g
生食用の無頭のマザーラのエビのむき身・・250g
無農薬のライム・・2個
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・よく冷えたエビを刻み、ライムの皮のすりおろし、油、塩、レモン汁少々で調味する。
・スパゲットーニをゆでる。
・フライパンにレードル1杯のパスタのゆで汁とバターを入れて溶かし、ペコリーノを加えて均質のクリームにする。必要ならゆで汁少々で溶く。
・スパゲットーニを巣形に皿に盛り付ける。
・エビのタルタルをスプーン2本で6個のクネルにし、パスタにのせてサーブする。

ペコリーノであえたキタッラの淡い色にエビの赤い色がよく映える1品です。

セコンド・ピアットは“鴨の胸肉、ジンとジュニパー風味”

鴨の胸肉は年末年始にふさわししい特別な食材。隠し味はシェリービネガー。
ジビエと相性の良いジュニパーは、ジンの原料。
ジュニパーginepro

ジンの製法Gin

Petto d'anatra al gin e giepro鴨の胸肉のジンとジュニパー風味

材料/6人分
鴨の胸肉・・3枚
シェリービネガー・・大さじ4
ジン・・大さじ2
ブラウンシュガー・・大さじ1
ジュニパー・・8粒
皮付きの新じゃが・・400g
プラム・・4個
にんにく・・2かけ
野菜のブロード
バター、EVオリーブオイル
塩、こしょう

・胸肉の皮に包丁目を入れる。
・シェリービネガー、ジン、砂糖、塩、こしょう、潰したジュニパーを混ぜて胸肉に揉み込み、1時間マリネする。
・新じゃがを皮つきのままゆでて冷まし、半分に切る。
・新じゃが、潰したにんにくをバターと油で焼いてマリネ液をふき取った胸肉を皮を下にしてのせる。5分焼いて裏返し、3分焼いて取り出して保温する。
・鴨の脂の大部分とにんにくを取り除き、焼き汁をブロード少々でデグラッサーレする。プラムのくし切り、塩、こしょうを加えて3分熱する。
・胸肉をスライスして皿に盛り付け、プラムと焼き汁をかける。じゃがいもを添えてこしょうをたっぷりかけてサーブする。

付け合せはチコリのグラティナータ、バルサミコ酢風味。
この料理にもシェリービネガーを隠し味に使っている。
バルサミコ酢はパンに散らしてパン粉にし、オーブンで乾かして松の実、チーズと一緒に半分に切ったチコリに散らしてグラティナーレする。

チコリのパンチェッタ巻きグラティナータ

松の実はあるとないでは大違い。少量でも料理のボリューム感がかなりアップする。

地方料理のお勧め本、スローフードのイタリア・イン・クチーナ

マッシモ・ボットゥーラシェフの力作、『メイド・イン・イタリー

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2021年10月16日土曜日

トマトソースやボンゴレが一般的なイタリアのパスタだと思っていると、北イタリアのパスタは多分想像できない。

ランゲ料理やタヤリンの話になると、必ず登場する女王、ジェンマ・ボエーリシェフ。
正直言って、少々食傷ぎみなので、ピエモンテには別の女王がいないか探してみました。
そして候補に上がったのが、ルイザ・バラッツァシェフです。
情報源はデ・チェコの本、『パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア』。



イタリア各州のグランシェフを一人ずつ紹介するこの本でピエモンテ代表に選ばれたシェフです。
ちなみに、この本にはこんなことが書かれていました。

1798年に書かれた『La Cucina Piemontrese』という本には、ピエモンテの一番人気のパスタ、タヤリンは幅3mmの細いパスタで、バターとトリュフ、グレイビーをかけて食べる。
他の地方では、一番有名なパスタは、トマトソースのスパゲッティと、ラグーのタリアテッレだ。人気があるのはスパゲッティ・ボンゴレとペーストのリングイーネ。
イタリアの食文化のベースは米、ポレンタ、ズッパ、そしてその後がパスタ・シュッタ・・・」
ピエモンテから見るとトマトソースのスパゲッティは、全国区な料理ではないのですね。
ピエモンテのパスタの話をする時は、イタリア料理の一般論は置いとかないといけないのかも。

話を戻してルイザ・バラッツァシェフです。
彼女がシェフを務める店は、アル・ソッリーゾAl sorriso。
ルレ・エ・シャトーグループのピエモンテはノヴァーラの高級リストランテ・ホテルです。


ルイザのリゾット


それでは本のリチェタを訳してみます。
ブロッコリ、松の実、ザリガニのフェットゥチーネです。Fettuccine con broccoli, pinoli tostati e gamberi di fiumeです。
材料/4人分
卵入り麺のフェットゥチーネ・・200g
ブロッコリー・・1個
トーストした松の実・・40粒
ザリガニ・・小12〜14尾
オリーブオイル
塩、こしょう
トマトソース・・100ml
エシャロット・・1個
にんにく・・小1かけ
バジリコ・・4〜5枚
ザリガニのフメット・・500ml

・エシャロットとにんにくをみじん切りにしてザリガニと一緒に炒める。
・ゆでたブロッコリーを加える。トマトソースを加え、必要ならフメットをかけてて5分煮る。
・松の実とちぎったバジリコを加える。
・パスタを5分ゆでてソースに加え、なじませる。
・皿に盛り付けてバジリコ1房とザリガニで飾る。

ザリガニのパスタというだけで、もう別世界の食べ物ですが、下のザリガニ動画はちょっとえげつないかも。
ザリガニのスパゲッティ↓


ピエモンテの隣のロンバルディアは川魚の宝庫でリチェッタもたくさん。
それでもザリガニは減りつつあります。
ザリガニの下ごしらえの方法、訳しようがなかった・・・。

スローフードのパスタの地方料理の本、パスタ・フォルメ・デル・グラノ
に載っているピエモンテのパスタは、
agnolotti、biavetta、calhetas、dunderet、gobein・・・、となんのこっちゃなものばかり。

下の動画はLe Cajetteというじゃがいものパスタ。
ヴァッレ・ダオスタに近いのかも。

小麦が軟質小麦も硬質小麦も育たない、米もポレンタになるとうもろこしもない、となると、こんなパスタが生まれるんですね。

ルイザシェフはエビ料理が得意のようで、シチリアのガンベロ・ロッソを刻んでシートの間に挟んで薄く広げ、パスタ代わりに使ったエビのカネロニが名物料理。
で披露している。

下の動画のガンベロ・ロッソのインボルティーニと似た発想だが、ルイザのリチェッタは火を通さない、生のエビのカネロニ。


2021年10月15日金曜日

ランゲ料理の女王、ジェンマは、人口400人の村に世界中からお客を呼ぶ。

今日のお題はシェフ。
タヤリンと言えばこの人、と言われるシェフ、ジェンマさんです。
過去にも何度か取り上げられて記事を訳しているので、かなりおなじみの人。
最近ではほんの2ヶ月前、(CIR)の9・10月号の『タヤリン』の記事に登場しています。
どんだけ愛されているんだ、この人のパスタは・・・。
タヤリンはタリエリーニのこと。ピエモンテのパスタです。

下の動画でジェンマが語っている通り、ジェンマは、ピエモンテのランゲ地方のロッディーノという、人口わずか400人の村の地元民相手の素朴なオステリア・チルコロ・ディ・ロッディーノというランゲ地方の伝統料理を出す店を38歳で受け継ぎ、伝統料理の一品として母親から教わったタヤリンも出したところ、これが評判になり、店を買ってオステリア・ダ・ジェンマという自分の店を始めました。その後もさらに評判になり、店では毎週木曜日に村の7、8人の高齢の女性たちと一緒にタヤリンやラビオリを打っています。この仲間たちとは仕事の後、食事やカードをして1日を過ごしています。
麺を伸ばす麺棒も木製テーブルも、すべてタヤリンのための特製。
そしてジェンマのタヤリンを食べるために、人里離れたロンディーノまで、世界中から大勢の人が毎週やってきます。週末は3〜4ケ月前に予約が必要なほどです。

リチェッタは今月の(CIR)P.40〜。
リチェッタの中にはインサラータ・ルッサもありますが、ポテトは畑で育てたものだそうです。

ロッディーノのオステリア・ダ・ジェンマ


デ・チェッコが地方ごとに優れたシェフを紹介する本、パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア

でピエモンテのシェフとして取り上げられていたのは、ソッリーゾのルイザ・バラッツァシェフ。
シェフの最高の名誉であるイタリア功労勲章も受けています。

ピエモンテのシェフのリーダーの一人、ホテル・ソッリーゾのルイザシェフ

スローフードの地方料理のパスタの本『パスタ・フォルメ・デル・グラノ
にはタヤリンで知られる店の情報も。

グランシェフのグループ、レ・ソステのメンバーでもある。

2021年10月14日木曜日

美しい花とスーパーな栄養価のおかげで生き延びたザクロ。健康と豊饒と富のシンボルの縁起物。

さて、今月の食材は、年末年始の縁起物の食材として欠かすことのできない例のあれです。
いつもはほとんど陽の目を浴びないのに、年末年始になると、眩いばかりのスポットライトを毎年浴びせられています。
ザクロmelagranaです。
今年もザクロの話をする季節がきました。
念の為ですが、ざくろの記事の日本語訳は今月の(CIR)、つまり2020年1月号のP.29にあります。
私も年に一度、ザクロの記事を訳す度にザクロ食べたーい、と毎年思います。



古代ペルシャから地中海に伝わった植物、ざくろは、痩せた荒れた土地でも育ってジューシーな実がなりました。キリスト教の聖書でも、コーランでも、仏教でもザクロは言及されているそうです。
ざくろの特徴はその種の多さ。
これが豊かさや健康の象徴とされたのでした。
さらに富をもたらすとも信じられました。
ただ、粒を取るのが大変で、扱いにくいものとしてせっかちな現代人には敬遠されがちでした。
栽培量は次第に減って、ただ、その美しさから家庭の庭で生き残った植物です。
ざくろの花

たわわに実ったザクロ。トマトが木になってるみたい。


最近、ザクロが再び脚光を浴びるようになってきました。その理由は、スーパーフードと呼ばれるほどの栄養価です。



上の動画ではザクロの栄養価の注目点をこう説明しています。
ザクロの赤い色はポリフェノールの色。つまり抗酸化作用がある。赤ワインや緑茶と比べても3倍という多さ。
ザクロのポリフェノールはフリーラジカルを取り除き、細胞へのダメージや炎症を抑える効果がある。
フラボノイド、ポリフェノールなど血管を保護する成分が豊富。
さらにアンチエイジングの効果もあることが知られている。
ザクロ1 個には一日に必要なビタミンCの40%以上の量が含まれている。
さらに、最近の研究で癌やアルツハイマーの予防効果が見つかっていると、スーパーぶりはエスカスレートするばかり。

まあ、こんなにすごい食べ物なら、1年に1回ぐらいはたっぷり食べたいもんですね。

訳したリチェッタは、ホロホロ鳥のざくろとくるみ風味、サバとザクロのオーブン焼き、子羊肉のポルペッテのザクロ風味、スプマンテとザクロのリゾット、ザクロとチョコレートのクロスタータと、幅広い料理に使っています。
シチリアはザクロの栽培量が多いようなので。シチリアのドルチェの本、“ブランカート・クチーナ・シチリアーナ”シリーズの『パスティッチェリーア』を見てみたら

ザクロケーキのリチェッタがあったので訳してみます。
ザクロケーキtorta alle melagrane
材料/6人分
《生地》
小麦粉・・150g
砂糖・・150g
卵・・4個
バニラパウダー、塩
《詰め物》
牛乳・・250g
砂糖・・225g
小麦粉・・25g
卵黄・・2個
板ゼラチン・・3枚
バニラ
ざくろ・・3個
《飾り》
生クリーム・・150g
ざくろの粒

・卵、砂糖、バニラを軽くなるまでホイップし、塩少々、振るった小麦粉を加えてさっくり混ぜる。
・直径24cmの底の外せる型にバターを塗って小麦粉をまぶし、生地を流し入れる。170℃のオーブンで35分焼く。型から出し、ケーキクーラーにのせて冷ます。・その間にクレーマ・パスティッチェリアを作る。牛乳とバニラを熱する、卵黄2個、砂糖75gをホイッパーで混ぜ、振るった小麦粉と熱した牛乳を加えてかき混ぜながら煮詰める。
・火から下ろし、鍋を冷水につけて冷ます。
・ゼラチンを作る。ゼラチンを水でふやかす。ザクロ2個の粒を取り、裏漉しして汁を集める。濾して鍋に入れ、水200mlを加える。砂糖150gを加えて5分沸騰させ、絞ったゼラチンを加えて弱火で溶かす。濾して粗熱を取る。
・スポンジ生地の中を取ってくぼみを作り、残りのザクロの粒(飾り用に少量別にする)の上にのせる。その上にクリームを塗って固まり始めたゼラチン液で覆い、完全に冷やす。生クリームを泡立てて星口金を付けた絞り袋に入れ、ケーキの上に絞り出す。ざくろの粒で飾ってサーブする。
ケーキを透き通ったザクロのゼリーで覆うので、とても華やかなケーキ。

ザクロのグラニータ

毎日ザクロを食べていたら永遠の若さと美が手に入っちゃうかも。


2021年10月13日水曜日

日本の国鳥雉は森に棲む野鳥。ホロホロ鳥のリチェッタで応用できる。

イタリア版シャンパン、フランチャコルタと組み合わせる料理、最後は“雉のテリーヌのパイ”。
ジビエのパイ、という、年末料理にふさわしいゴージャスで特別感のある1品。
リチェッタの日本語訳は(CIR−P.27)です。
パイの具は雉肉と豚肉のロースト、挽肉、ピスタチオ、アルマニャック。
これをパスタ・ブリゼで包んだテリーヌです。
メトド・クラッシコのフランチャコルタは瓶の中で長期間二次発酵させるワインで、ジビエのテリーヌのような複雑で強い味の料理によく合います。
そもそも、雉がどんなジビエなのか、恥ずかしながら全く知りません。
イグレス・コレッリシェフの本、“カッチャジョーネ

は、ジビエを潟、池、平原、森、丘陵地と、生息地で分類しているのですが、雉はどこに棲んでいるのかも知らなかった。
答えは森でした。
本には雉についてこんなことが書かれています。


雉はアジア原産で、生まれた土地からほとんど移動しない鳥。地上で暮らし、畑や森など様々な環境に馴染んで、果実、草、芽、豆、小型の蛇、蜘蛛、みみず、昆虫などなんでも食べる。夜は外敵から隠れることができる木の上で過ごす。
雉の肉はマイルドだが風味が良く、特に森に棲む雌の雉が美味しい。若いものなら熟成の必要がない。寝かせるときは羽をつけたまま長くて2日熟成させる。
雉料理は鶏やホロホロ鳥のリチェッタも応用できる。

雉は日本の国鳥だそうですが、容赦なく料理の話をさせていただきます。
な〜む〜。


下の動画のシェフもホロホロ鳥のリチェッタが応用できる、と言ってますね。ジビエの雉は肉が硬いので熟成が必要だが、最低48時間冷凍してから解凍して使うとよいそうです。



・雉を切り分け、セージ、ローズマリー、にんじん、玉ねぎ、セロリ、にんにく、白ワイン1/2本、ジュニパー、黒こしょう、唐辛子で冷蔵庫で12時間マリネする。
・フライパンにバター15〜20g、潰した皮つきにんにく1かけ、セージを熱し、雉を皮を下にして入れる。マリネ液少々、塩、こしょうを加えて肉を裏返し、強火で5分熱する。
・雉は赤身の肉なのでパンチェッタで覆って脂を足す。肉はもう裏返さない。蓋をして10分熱し、煮汁が煮詰まったら白ワイン250mlをかけてアルコール分を飛ばす。
・トマトソースと水1カップを加える。蓋をして沸騰させ、弱火で1.5時間煮る(ホロホロ鳥の場合は50分)。肉にパンチェッタの脂が行き渡ったら裏返し、強火で15〜20分熱して煮汁を煮詰める。ポレンタやじゃがいものピューレ、フェットゥチーネを添えてサーブする。
・雉の胸肉をほぐして煮汁に加える。
・パスタをゆでる。
・バターとセージを熱し、ほぐした胸肉を入れてなじませる。パスタのゆで汁とパスタ、おろしたパルミジャーノを加えてなじませる。


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2021年10月12日火曜日

スカンピのグラティナーティには辛すぎないワインを。

フランチャコルタに合う料理、次はスカンポーニのグラティナーティです。
日本語のリチェッタは今月の(CIR-P.26)。
金柑とピスタチオ風味のパン粉をかけて焼きます。
スカンピ・グラティナーティ↓。
シンプルな料理ですが、家庭のクリスマスの1品だそうです。


そう言えば、今月のリチェッタは1月号でした。
年末年始の豪華な料理を食べるシーズンの名残を感じる季節。
そもそもフランチャコルタもイタリア版シャンパンのようなワインで、ゴージャスと贅沢を象徴するワインでした。

スカンピのグラティナーティscampi gratinati
・スカンピを洗って開く。
・パン粉に塩、ガーリックパウダー少々、オイル少々、イタリアンパセリのみじん切りを加える。
・天板にスカンピを並べ、パン粉を詰める。油をかけ、180℃のオーブンで10分焼く。

スカンピのグラティナーティ、ガーリックムース添えScampi gratinati conm mousse all’aglio

・ガーリックムースを作る。にんにく2かけは皮をむいて熱湯で2分ゆでる。油200mlを加えてハンディミキサーで撹拌する。卵黄1個、塩、こしょうをホイッパーで混ぜながら油を少しずつ加えてつなぐ。
・ホイップクリーム50gを加えてさっくり混ぜる。
・スカンピを半分に切って塩をし、殻の面から油少々を引いたフライパンで1分焼く。
・スカンピを天板に並べてムースをのせ、最高温に熱したオーブンでグラティナーレして焼き色を付ける。

※甲殻類にはセッコすぎない、塩気の軽いフランチャコルタが合う(後味に金属臭が加わるため)。
シチリアの魚料理の本、ミニミニサイズのシチリア料理シリーズ、”ブランカート・クチーナ・シチリアーナ・シリーズ”の『ペッシェ』