2020年6月30日火曜日

ジャルディニエーラの漬け汁をお隣におすそ分け。ジャルディニエーラの漬け汁のサーモンのカルピオーネ。

昨日のブログでさっと紹介したモーガン・パスクアルについて、もう少し詳しく。
ヴィチェンツァのマーロという場所でリストランテ・チンクエ・センシのオーナーシェフとして6年過ごした後、家族や仲間ともにアルティジャナーレの工房を始め、イタリアで最高のジャルディニエーラの作り手という評価を獲得した。
ジャルディニエーラに囲まれるモーガンさん↓
この姿を見る限り、ジャルディニエーラに生涯を捧げたようですね。

彼のジャルディニエーラの秘密は、あらかじめ野菜を別々に30秒蒸してから漬け汁に漬けて、鮮やかな色や固さ、元々の風味を保つのだそうです。
モーガンのアグロドルチェな漬け汁のベースはビネガー、水、砂糖、塩。バージョンによってはさらにEVオリーブオイルとスパイスを加えます。
そう言えば昔、料理人をしていた知人の家で、裏山に生えていたポルチーニをオイル漬けにしていた時のことです。
匂いが届いたのか、隣の若い奥さんが鍋を持ってやってきたことがありました。
ど田舎の山の中ならではだと思うのですが、お隣さんは、ポルチーニのオイル漬けに使う漬け汁を分けてもらいたかったのです。
料理のおすそ分けの習慣がない都会っ子としては、ちょっと衝撃的な出来事でした。
家庭の味が広まっていく瞬間を目撃したのですから。
それと同時に知人の料理の腕、まじリスペクトでした。

ポルチーニのオイル漬け。↓
この動画のように裏山はポルチーニが至るところに生えていました。確か採るには許可証が必要だったはず。
保存食作りは田舎の食生活の基本。


モーガンのリストランテでは、ジャルディニエーラを添えるのは子豚の肩肉のボイル、熟成チーズ、青魚など。
エミリア地方のジャルディニエーラはオリーブオイルや酸味がきいているので、サルーミやコテキーノなどが合うそうです。

ジャルディニエーラにはタルタルなどのピエモンテ料理がよく合う。

ジャルディニエーラの漬け汁のサーモンのカルピオーネ。



・漬け汁を鍋に移し、沸騰したら火を弱めて皮を引いたサーモンの切り身を入れ、6~7分煮る。中はロゼに仕上げる。シートに取って水気を切る。
・皿にジャルディニエーラの野菜(最低10分前に瓶から出す)を皿に盛り付ける。
・サーモンを切り分けてジャルディニエーラと一緒に皿に盛り付ける。仕上げにマルドンの塩を散らしてEVオリーブオイルを回しかける。砕いたとうもろこしのチップスを添える。
ジャルディニエーラのリチェッタは「総合解説」2018年7/8月号p.35。
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2020年6月29日月曜日

ジャルディニエーラは農家の暮らしから生まれた、余った野菜の保存食。

今日のお題はジャルディニエーラ。
ミックス野菜の酢漬け程度の知識しかなかったけど、記事を訳して初めて、これが農家の伝統的な暮らしと知恵から生まれた保存食だったと知りました。

夏の終りに畑にたっぷり実って余った野菜を、冬の間に料理の付け合せにして食べるために生まれたものだったんですねー。
農家のおばあちゃんの料理の象徴のような保存食だそうですよ。

ピエモンテ料理の前菜としても知られています。
ジャルディニエーラのリチェッタは「総合解説」2018年7/8月号P.35。

上の動画は

オステリエ・ディ・イタリアのリチェッタを再現したものでした。

探してみたら、ありました。
ブレッシャのオステリア・デッラ・ヴィッレッタの料理でした。
店のwebページはこちら
フランチャコルタの丘にある自家菜園の野菜をふんだんに使う家族経営のオステリア。
現シェフは4代目で人気料理はトリッパとポルペッテ。
ジモティがテレビを見に集まるたまり場のような店で、木曜日はトリッパ、金曜はバッカラ、土曜と日曜はぶどうのつる棚の下にテーブルを出して、ご馳走を味わう日でした。
料理は旬の上質の食材を厳選したブレッシャの昔ながらの純粋な伝統料理。
デザートのジェラートはオリジナルの特別なもの。
世界的なアーティストのミケランジェロ・ピスレットが考案しました。

メインの牛肩肉のオイル焼きにジャルディニエーラの小さな盛り合わせ、ミートボールとロールキャベツ各1個が添えられた料理は、とても素朴です。
ジャルディニエーラ以外のリチェッタは
牛肉のオイル焼きManzo all'olio
材料/
アンチョビ・・大3尾
 にんにく・・2かけ
イタリアンパセリ
パン粉・・大さじ3
ブロード・ディ・カルネ・・約1L
おろしたパルミジャーノ・・大さじ1
EVオリーブオイル・・2カップ、塩

・鍋にオイル、にんにく、塩抜きして骨を取ったアンチョビを入れ、肉を約30分、じっくり焼く。
・ブロードをかけて(肉は覆わない)、弱火でさらに2時間半熱する。
・パン粉とパルミジャーノを加えて火を止める。
・肉を取り出し、鍋に残った焼き汁をミキサーにかけてソースにする。
・肉を厚さ約1cmにスライスしてソースをかける。イタリアンパセリのみじん切りを散らして油を回しかける。
・ポレンタを添えてサーブする。

ジェラート・ラブ・ディファレンスGelato love difference
材料/
牛乳・・1L
生クリーム・・1L
卵黄・・20個
グラニュー糖・・320g
デキストロース・・140g
ハルバ(胡麻のペースト)・・250g

a.牛乳と生クリームを沸騰させる。
b.その間に砂糖とデキストロース、ハルバ、卵黄をジェラートメーカーに入れて均質になるまで混ぜる。
・aが沸騰したらbにかけて混ぜ、火にかけて、85℃に熱する。
・冷めたらジェラートメーカーでマンテカーレする。

モーガン・パスクアーレシェフはイタリアで一番美味しいと言われているオリジナルのジャルディニエーラを製品化。↓

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オステリエ・ディ・イタリア

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2020年6月28日日曜日

オリエントの食文化を伝えて人々の食を変えた港のオステリアの人気メニュー、カ・ドーロのポルペッテ


今日のお題は、ベネチアのオステリア。
最初の動画はスカルドバリの対岸、サンタ・ジュリアのオステリア・アルカディアの料理。
ムール貝にビゴリと、潟の料理のオンパレード。
ベネチア料理とのつながりを感じます。

ベネチアと言えばチケッティに代表されるオステリア天国。

一節によると、ベネチアはオステリアの発祥地。
オリエントから戻ってきたベニスの商人は、スパイスだけでなく、東ローマやアラブの食生活や調理方法も伝えました。
それまではゲルマン人の料理の肉の串焼きや大きなパンを食べていた人々の食が、大きく変わっていきます。
そもそもベネチアは、ゲルマン人の侵略から逃れるために潟の上に作った街でした。

新しい食文化の発祥地となったのが、港の近くのオステリアでした。
商人だけでなく、仕事帰りの勤め人や、日曜のミサの帰りの市民もやってきました。
港のオステリアは、文化の重要な交流点だったのです。
ベネチアの市場とオステリア巡りは観光の目玉。


ベネチアの歴史は、スペインの登場でおなじみのナポリやシチリアとはちょっと違います。
ベネチア共和国の後、18世紀にその支配者となったのはナポレオンでした。そして次はオーストリアです。
オステリアの客にも各国の兵隊が増えました。世界各国の兵隊がつまみを前にワインを飲み交わす奇妙な風景が展開されていたのです。
そしてイタリア統一。イタリアはオーストリアと戦争してベネチアを取り戻しました。
統一後のオステリアは、田舎に暮らす人々が大移動して街に出て、休日を過ごす場所になりました。
店や人々を取り巻く環境は変わっても、常にオステリアで出していたのは地元の伝統料理とワインでした。
毎週金曜日は熱々のポレンタを添えたバッカラ。トリッパ入りブロードやゆで卵、ミートボール、コテキーノ、イワシのフリット、シャコといった、いつものメニューでした。

チケッティのいつもの料理。

ベネチアの潟料理ならの本。“グイド・トンマージ・クチーナ・レジョナーレ”シリーズの『クチーナ・ディ・ベネチア

今日のリチェッタは、この本から、ポルペッテPOLPETTE
ミートボールは、残り物を有効利用した世界中で人気の惣菜。
ベネチアではバカリやオンブラの定番料理。
中でも、ストラーダ・ヌオバのオステリア・ベドーバ(カ・ドーロ)のシェフ、アダが毎日作るポルペッテは大人気。

材料/牛挽肉・・500g
モルタデッラ・・70g
じゃがいも・・2個
卵・・3個
おろした硬質チーズ・・大さじ2
パン粉
イタリアンパセリ
にんにく
塩、揚げ油

・じゃがいもを皮つきのまま水からゆでる。柔らかくなったら皮をむいて熱いうちにマッシャーで潰す。
・細かく刻んだモルタデッラ、潰したじゃがいも、にんにくとイタリアンパセリのみじん切り、卵、チーズ、塩をこねながらパン粉を少量加える。
・手に水をつけて小さく丸め、パン粉をまぶしてたっぷりの高温の油で数分揚げる。すぐにサーブする。

ゆで卵や卵サンドがやたら美味しそうな写真で紹介されている面白い本。


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クチーナ・ディ・ベネチア
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2020年6月27日土曜日

ポーデルタの黒い黄金、スカルドバリのムール貝、ムール貝のマリナーラ、ムール貝のグラタン

今日はムール貝料理のリチェッタです。
イタリア料理と食材の百科事典、1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ


によると、スカルドバリのムール貝はポーデルタの黄金と呼ばれ、塩分が少ないので甘く、肉厚なのが特徴。
養殖は地元の漁師が家族単位で行い、その技術は父から息子へと受け継がれてきた。
一番シンプルな調理方法は蒸す方法。
またはパスタやリゾット、伝統的なズッパ・ディ・ペッシェの具にする。
シーフード養殖の先進国フランスは、スカルドバリの大手輸出先で、スカルドバリのムール貝はポーデルタの黒い金とも呼ばれる。

一般的なのは、ムール貝のマリナーラことオリーブオイル、にんにく、白ワイン、レモン、イタリアンパセリ風味。

地元のレストランの名物はポーデルタのシーフード。↓

スカルドバリのムール貝DOP管理組合の動画から、基本のリチェッタ、ムール貝のマリナーラCozze alla marinaraは2:40から


・にんにくをオイルでソッフリットにし、ムール貝を加える。
・貝が開いたらワインをかけて熱し、こしょうとイタリアンパセリのみじん切りを加える。

新入荷のシチリアの魚料理の本、“ブランカート・クチーナ・シチリアーナ”シリーズ『ペッシェ』から

“ムール貝のスコッピアーテ”Cozze scoppiateは
材料/4人分
ムール貝・・2kg
にんにく・・2かけ
イタリアンパセリ・・1房
こしょう

・よく洗ったムール貝とにんにく1かけををソテーパンに入れ、こしょうとイタリアンパセリのみじん切りを散らす。
・強火にかけて開くまで熱し、閉じた貝を取り除いてサーブする。
シンプルな料理ですが、山盛りに高さを出して盛り付けるとかなりゴージャス。

ナポリ料理の本、『リチェッタ・ディ・ナポリ

には、ムール貝のインペパータImepat di cozzeが。


名前は違うけど、リチェッタはどれもほとんど同じ。
あえて言うなら、ナポリ風はこしょうがたっぷり。


次はムール貝のグラタンCozze gratinate
をどうぞ。

材料/4人分
ムール貝・・500g(汁も)
パン粉・・100g
おろしたグラナ・パダーノ・・大さじ1
にんにく・・1かけ
イタリアンパセリのみじん切り・・大さじ1
レモンの皮のすりおろし・・1個分
こしょう
EVオリーブオイル・・30g

・ムール貝を開けて漉した汁を集める。殻は1枚ムール貝を入れたまま残す。
・パン粉、おろしチーズ、イタリアンパセリ、レモンの皮、マッシャーで潰したにんにく、粗挽きこしょう、(貝に塩気があるので塩は加えない)、オイル、ムール貝の汁を混ぜるてムール貝に詰める。
・油をかけ、200℃のオーブンで12分、仕上げに最高温にして3分グリルする。

シーフードのマリネとグリルの盛り合わせが揃ったら、パーティーの始まりだあ。

総合解説」2018年7/8月号P.30にはムール貝のラグーのビゴリのリチェッタを訳しました。

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リチェッタ・ディ・ナポリ
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2020年6月26日金曜日

地中海とは別世界のポー河デルタの名物、スカルドバリのムール貝

今日のお題はメイド・イン・イタリーの食材。
スカルドバリのムール貝です。(「総合解説」2018年7/8月号P.29)

聞き慣れない名前ですが、ポー河デルタ地帯にある地名です。
ポー河デルタ地帯というのは、イタリアでは重要な地方。
イタリアの自然の最も貴重な環境を作り出している場所です。

見慣れた地中海とはまったく違う海岸線。
ここは、南伊とか北伊とかいうくくりではなく、ポー河沿いという世界。


その主役はもちろん、ポー河。

そして今日の主役はスカルドバリのムール貝。

唯一の環境で、ほとんど人の手で養殖されるムール貝。
イタリアで唯一のDOPに認定されている貝。

ムール貝の味や柔らかさは環境に左右される。
海水がポー河の淡水と混ざるスカルドバリでは塩分がかなり低くなり、浅いので水温が海水より高くなる。
海流や潮流によって酸素もよく混ざり、プランクトンがよく育つので、ムール貝は肉厚で成長が早い。
果肉はとても柔らかく、とろけるようで、脂肪酸を豊富に含む。

こんないいことだらけのスカルドバリですが、河での養殖は、水害との戦い。
洪水や高潮で、繰り返し被害も受けています。
スカルドバリのムール貝漁。

個人的にはムール貝の養殖と言うと、プーリアだと思ってましたが、イタリア中で養殖されているんですね。
次回はムール貝のリチェッタを探してみます。


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総合解説
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2020年6月25日木曜日

シチリアの魚のパスタ、エビのラグーのペンネ、なすとメカジキのカゼレッチェ

今月の「総合解説」のパスタのテーマは、“魚のソースのパスタ”です。
ソースにシーフードの香りを漬けただけのパスタではなく、ガッツリ魚を食べるパスタです。
魚は小ヤリイカ、サバ、マグロ。
リチェッタはP.19~にあります。

ちょうどシチリアの魚料理の本も入荷したので、

本から魚のパスタを訳してみます。

まずはエビのラグーのパスタPasta al ragù di gameri
材料/4人分
ペンネ・・400g
無頭のエビのむき身・・300g
玉ねぎ・・1片
トマトソース・・500ml
白ワイン
にんにく・・2かけ
バジリコ・・1房
イタリアンパセリ・・1房
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・潰したにんにく、玉ねぎとイタリアンパセリのみじん切りを油で炒める。ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・にんにくを取り除いてトマトソース、塩、こしょうを加え、沸騰させる。
・エビを加えて数分煮る。
・ペンネをアルデンテにゆでてエビのラグーであえる。

バリエーション(イタリアンパセリとサフラン風味のエビのラグーのペンネ)


メカジキとなすのカゼレッチェCaserecce con pesce spada e melanzane
材料/4人分
カゼレッチェ・・400g
トマト・・500g
メカジキ・・400g
にんにく・・1かけ
バジリコ・・1房
なす・・1本
白ワイン
ミント・・1枝
EVオリーブオイル、塩

・なすを小角切りにして塩水にさらす。
・油少々ににんにくを入れて熱し、にんにくを取り除く。刻んだトマトとバジリコを加えて塩、こしょうし、10分煮詰める。
・メカジキを小角切りにして油で炒める。ワインをかけてアルコール分を飛ばす。ミントを加えて弱火で15分熱する。
・なすをたっぷりの油で揚げる。
・パスタをゆでてスーゴに加え、なすを加える。

ナスとメカジキのパスタ

カザレッチェ

フジッリにそっくりだった。動画はこちら


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2020年6月24日水曜日

新入荷『ペッシェ・アッラ・シチリアーナ』から、ツナのパテのブルスケッタ、アンチョビのクリスペッレ

今日は新入荷の本のご案内。
ペッシェ・アッラ・シチリアーナ』です。

このシリーズは、とにかくミニサイズ。
いかに経費を削って料理書を作るか、をつきつめたような、その割には載せたい料理と写真が多すぎて、わずかなページにギュウギュウに詰め込んじゃった、という作り手の意図が丸わかりの、愛すべきシリーズです。
ん?これはひょっとすると、シチリア料理の特徴にも言えることかも。
とにかくシンプルで経済的で、お母さんが毎日家で作っているような料理ですが、伝統に裏打ちされていて、すごく考え込まれています。
シチリアの海岸は、カンパーニアのアマルフィのような華やかさはなくても、ビーチ、岩場、遺跡と、スケールが大きくてバリエーションが豊か。
海の先が神話の世界とつながっているような感覚。
豊富な自然と伝統が背景にあり、とにかく広いシチリア↓

これはシチリアの魚料理にも言えること。
島の西と東では食文化も捕れる魚の種類も違う。

それにしてもこのシリーズ、基本は『シチリア・イン・ターヴォラ

という本。
シチリアの基本的な伝統料理を集めた本で、魚料理もある。
多分、最初にこの本から作り始めて、小さくしすぎて載せきれなかった料理の中から魚料理を集めて「ペッシェ」を作ったんだろうと、想像できちゃう(www)。
『ターヴォラ』はパスタとディープな伝統料理が充実した本。

シリーズは全4冊で、どれもお手軽な読みやすい本なので、イタリア語はちょっと・・・という人にもお薦めです。

その中から、お手軽そうな料理のリチェッタを訳してみます。
まずはツナのパテのブルスケッタ/Bruschetta al pate di tonno
ツナのムースやパテはシチリアではポピュラーな前菜のようで、バリエーションも豊富です。
下の動画ではツナ400g、ゆで卵4個、リコッタ150g、ブランデー(好みで)大さじ3、殻剥きピスタチオ40gをミキサーにかけてトーストしたパンに塗り、クロスティーニにしています。



ツナのパテのブルスケッタBruschetta al pate di tonno
材料/4人分
オイル漬けツナ・・200g
塩漬けアンチョビ・・1尾
イタリアンパセリ・・1房
にんにく・・1かけ
塩漬けケッパー・・大さじ1
EVオリーブオイル
フィロンチーノ(細いバゲット)・・1本
こしょう

・アンチョビを塩抜きして骨を取り、にんにく、イタリアンパセリと一緒に
乳鉢ですりつぶす。
・油を切ったツナ、塩をすすいだケッパー、アンチョビのペースト、油をミキサーにかけてこしょうを散らす。なめらかなクリーム状にする。
・パンをスライスしてトーストし、ツナのパテを塗る。

料理の写真を見ると、トマトとレモンの薄いくし切り、パセリの小房をのせて飾っています。

おまけの1品。

アンチョビのクレスペッレCrispelle con le acciughe
材料/4人分
小麦粉・・500g
イースト・・25g
塩漬けアンチョビ・・5尾
ラードかEVオリーブオイル、塩

・振るった小麦粉、崩したイースト、ぬるま湯350mlをボールに入れてこね、柔らかい生地にする。
・塩一つまみを加えて数分こねる。布巾で覆って1.5時間発酵させる。
・アンチョビを塩抜きして骨を取り、小さく切る。
・たっぷりのラードかオイルを熱し、スプーンをさっと油に浸す。
・生地を1杯すくい取り、アンチョビを1片埋め込んで閉じる。
・油できつね色に揚げる。
・シートに取って油を切り、熱々をサーブする。

この料理はカラブリア料理としても知られている。
ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ』によると、村の収穫祭には欠かせない1品で、できたての新ワインと一緒に食べる。
カラブリアではクリスマスイブの料理でもある。
ドルチェ版もある。




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2020年6月23日火曜日

再入荷『クチーナ・ディ・ナポリ』、パスタのフリッタータ

今日は新入荷と再入荷の本のご案内です。

まず、再入荷は“グイド・トンマージの地方料理シリーズ”の『クチーナ・ディ・ナポリ

地方料理の真髄を、美しい写真で紹介する地方料理書の秀作シリーズ。
料理上手な知人を訪ねて食べ歩きしているような感覚で、料理と街の空気を知ることがでできる本。
実際、料理の写真もそうして撮影しているようで例えばパスタのフリッタータは、ナポリ湾に浮かぶ船の上で、手づかみでフリッタータをパクつくおしゃれなおじさんの写真。
彼がフリッタータのリチェッタを提供したエミディオだ。
料理のコメントは、
「ナポリでは、残り物を料理する時も真剣だ。それがパスタならなおさらだ。
パスタのフリッタータは誰にでも思い出がある料理だ。そこで、パスタと伝統なら彼だ、と、我々はエミディオを選んだ。」

エミディオの話しは、唐突に終わる。
いったい何者なのか謎のまま読者は放置されるが、巻末の謝辞のページに彼の名前は再び登場して、パスタの製造過程を見せてくれてありがとう、と言っている。
推測ですが、多分、彼はグラニャーノのパスタメーカーじゃないでしょうか。
この本は、すべてこんな調子です。
深く入り込んでいくと、謎が解明されるシステムなので、読み込むことが要求されます。

パスタのフリッタータ

リェッタはエミディオのフリッタータをどうぞ
FRITTATA DI MACCHERONI DI EMIDIO

材料/4人分
残ったスパゲッティ(ソースであえたもの)・・300g
卵・・2個
おろしたチーズ(あるものなら何でも)・・一握り
塩、揚げ油

・卵を溶き、塩少々とチーズを加える。
・スパゲッティを加えてよく混ぜ、数分休ませる。
・フライパンに油を熱し、熱くなったらパスタを入れて表面を平らにする。
・弱火で数分焼き、焼き色がついたら皿か蓋を使って裏返して反対側も焼く。
・焼きたてを、または冷ましてサーブする。

動画ではモルタデッラとプローボラ・アッフミカータを挟んでいました。



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総合解説
クチーナ・ディ・ナポリ
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2020年6月22日月曜日

イタリア料理に取り込まれた東欧料理、パラチンケ(クレープ)、トリエステ風グーラッシュ(ビーフシチュー)

今日のお題は、珍しいフリウリ料理のクレープ、“パラチンケ“。
何語だこれは、と思って調べてみたら、アルバニア語、オーストリア・ドイツ語、ボスニア、クロアチア、スロベニア、チェコ、ブルガリア、ポーランド、ルーマニア、ハンガリーと、東欧の国がズラーと出てきて、それぞれ1文字違う程度の違いで、結局、どこの国の料理かもわからない。
そこで、フリウリの州都トリエステに一番近そうな東欧の国、スロベニアに勝手にロックオンしました。

何言ってるか一言もわからないけど、間違いなく、パラチンケpalačinkeを作っている。

čなんて文字を使ったのは初めてでした。
何をするにもいちいち大変。
でも、出来上がりはクレープですね。
ちなみに日本語のリチェッタは「総合解説」2018年7/8月号P.18にあります。
具は東欧ではプラムのジャムが一般的なようですが、「総合解説」の桃のコンポートも夏らしいしゴージャス。

フリウリ料理でもう1品、有名な東欧系料理がありました。
グーラシュです。
グーラッシュはハンガリー料理ですか?
じゃあフリウリ料理に取り込まれたビーフシチュー、ということでOK?
ハンガリー風グーラッシュ/GULASH UNGHERESE、フリウリではトリエステ風グーラッシュ。


材料/

煮込み用部位の牛肉・・1kg
じゃがいも・・450g
緑のピーマン・・3個
にんにく・・1かけ
クミンシード・・5g
塩・・10g
ブロード・ディ・カルネ・・1.5L
玉ねぎ・・1個、230g
トマト・・1個
粉のパプリカ・ドルチェ・・20g
EVオリーブオイル・・30g


・肉から筋と脂身を切り取り、1.5~2cm角に切る。底の厚い鍋に油を入れ、玉ねぎのみじん切りを10分ソッフリットにする。トマトを1cm角の小角切りにする。
・玉ねぎがしんなりしたら肉を加えて10分炒める。
・肉に焼き色がついたらパプリカ、クミンシード、潰したにんにく、塩、トマト、熱して塩を加えたブロード・ディ・カルネを加えて肉を完全に覆い、混ぜる。蓋をして約1.5時間中火で煮る。
・幅1.5cmの斜め切りにしたピーマン(ハンガリーの品種だと本格的)と1cm角に切ったじゃがいもを加える。
・グーラッシュはスープ状の煮込みで、伝統的には小麦粉と卵のニョッキやスペッツレを添える。蓋を取って約30分煮る。

言葉のとっつきにくさに反して、料理は日本人にもおなじみの料理。バリエーションが豊富な料理で、チキンでも作れるから、バターチキンカレー用の材料でパプリカを作るのもありかもと、密かに考え中。

スロベニアの食材と料理↓

ちなみにスロベニアの首都はリュブリャナ。

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総合解説
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2020年6月21日日曜日

トリエステでコーヒー注文する時の言い方、独特すぎてナポリ人に教えるレベル。

今月の「総合解説」、次の地方料理はフリウリです。
アブルッツォとはガラッと趣が変わって、今度は中央ヨーロッパと東ヨーロッパ、スラブとの国境地帯です。
近隣で強い影響力を持つ国は、オーストリアやベネチア、旧ユーゴスラビア。
こんな地方↓

イタリア料理の入門編の料理書、

によると、フリウリ料理の名物といえば、サン・ダニエーレの生ハムやグーラッシュ。
肉は豚肉とジビエです。魚はアドリア海から。
イタリアの中でも、料理にドイツやスラブの影響が強い地方。
パスタよりはポレンタ、ニョッキ、リゾット。

コーヒー豆で有名なイリーはトリエステに本拠地がある企業。
エスプレッソマシン用のコーヒーポッドの特許も持ってます。

フリウリの名物↓

フリウリに行った気分になるなあ。

トリエステの女性が、同じく独自のコーヒー文化を誇るナポリの女性に、トリエステの老舗カフェでトリエステ流のコーヒーの注文の仕方を伝授する動画。
コーヒーに独自の名前がありすぎでかなりめんどくさい。

例えばエスプレッソ1杯はウン・ネロun nero。
デカフェはウン・デカun deca。
デカフェをグラスに入れてもらうとウン・デカ・イン・ビun deca in B。

そもそもエスプレッソをグラスに入れるように注文することが、主にローマより南のここ数年の流行だなんて、まじか。


次回はフリウリ料理の1品め

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クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ

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2020年6月20日土曜日

アブルッツォの羊飼いの料理、アッロスティチーニ。ぺーコラ、アニェッロ、カストラート、モントーネが区別できたら、あなたは立派な牧羊豚。

総合解説」のアブルッツォ料理2品目は、子羊肉の串焼き、アッロスティチーニです。昨日紹介した動画(こちら)で陽気なアブルッツォ人が言っていますが、アッロスティチーニは、ペーコラの肉で作るのだとか。
恥ずかしながら、初めて気が付きましたよ。
ペーコラはアニェッロじゃないと。
どちらも子羊だと思ってたのに、今さらです。
しかも、慌てて見直すと、どのリチェッタにも、ペーコラと書いてあるじゃないですか。
牧羊豚を目指す子豚が超可愛い映画『ベイブ』では、子豚でさえ、ペーコラとアニェッロの違いを知ってました。そのシーン↓



さらに動画の口調からして、ペーコラとアニェッロは、アブルッツォ人なら当然のように区別しているようです。
しかも便利な串刺し製造機まであって竹串つきで通販で売ってます。
需要が半端ないってことでしょうか。

この道具を買ってこの動画を見ればアッロスティチーニの作り方も完璧。
100本作れます。

子豚ちゃんはペーコラとアニェッロの他に、モントーネとも言ってました。3種類の区別ができるようです。
オーストラリアでは、ラム、マトン、ボゲットの3種類があるようですね。
そういえばベイブはアメリカとオーストラリアの合作でした。
やっぱり羊飼いの文化のある国は、羊肉にも細かいなあと思ったけど、イタリアでは山羊肉も食べるから、かなり複雑。
さらに去勢して太らせたカストラートも出回ってます。
ペーコラについては、農産物の情報を集めたデータベースの(こちら)のページを参考にしました。

それによると、雄羊のモントーネmontoneに対して雌羊はペーコラpecoraで、どちらも1歳以下。羊の雌は主にミルク用に飼育される。
肉は子羊肉に似た味だが、もっと強い。

アニェッロは12月齢以下のペーコラかモントーネ。
肉は、大人のペーコラ、カストラートの順で上質とされる。
ペーコラ、モントーネ、カストラートの肉はアニェッロよりマイルド。

何度も言ってますが、そもそも、アッロスティチーニは、アブルッツォの羊飼い文化の中心地、マイエッロ山地で生まれた料理ですが、ストリートフードとしても広まりました。
ストリートフードのお手軽でお勧め本、『ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ


には、こう書いてあります。
移牧のシンボル的料理のアッロスティチーニは、テーラモの山からペスカーラやプーリアを目指して移動する羊の群れの、年老いて歩けなくなった羊の肉の炭焼だ。
アブルッツォの山の羊肉料理は、これが原則でした。
高く売れるagnelloを自分たちで食べるわけなかったですね。

この本では、ピエルイジ・ディ・ピエトロというこの道25年のベテラン肉屋さんのリチェッタを紹介しています。

手作りのペーコラのアッロスティチーニ(リチェッタとは別人)

ブランド子羊肉、グラン・サッソIGP





アッロスティチーニ・アブルッツェージ/Arrosticini abruzzesi
材料/6人分
ペーコラの肉・・1kg
EVオリーブオイル
塩、こしょう
パン・・6枚

・肉は赤身でよく寝かせたものを買い、2cm角に切る。
・長さ約25cmの木串に6片ずつ刺して刷毛でEVオリーブオイルを塗る。
・熱した網かグリル版にのせて片面2分ずつ焼く。
・最適なのは香りがつく屋外の炭火のバーベキュー。
・仕上げに塩、こしょうし、油を塗ったパンを添えてサーブする。



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ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ
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2020年6月19日金曜日

カストラートのラグーの山のキタッラとシーフードの海のキタッラ。

アブルッツォ料理には、山(マイエッラ)の料理と海(アドリア海)の料理があります。
キタッラは、マイエッラの農民の料理、という意味で山の料理に分類されます。
断面が四角い、形だけならそばにそっくりの麺、キタッラのソースも、山の農民が手に入れやすい食材で作り、カストラート(去勢羊の肉)のラグーなどが代表的。

カストラートのラグー/ragù di castrato

・EVオリーブオイル大さじ2で粗く切った玉ねぎ1個、にんにく2かけ、ラルド50g、唐辛子1本の輪切り、ローズマリー1房をソッフリットにし、小さく切った去勢羊肉1kgを加えて馴染ませる。
・白ワイン1/2カップをかけてアルコール分を飛ばし、ローズマリーを取り除く。
・トマトのパッサータ700gとトマトペースト大さじ1を加えて塩味を整え、1時間煮る。

ちなみにカストラートは、中部イタリアの一部の地方でのみ流通している珍しい去勢羊肉。
去勢した1歳以下の羊の肉は、普通の子羊肉より大型で脂身で覆われていて、放牧地の中部イタリアの香草を食べて育つので風味のよさが知られている。
さらに、魚が美味しいアドリア海沿岸の地方なら、キタッラに魚のソースを組み合わせる。

シーフードのキタッラ


上の動画はリチェッタの説明がないので、2005年4月号の「総合解説」P.3で訳している
魚のソースのキタッラのリチェッタを訳します。

・にんにく2かけをEVオリーブオイル大さじ3でソッフリットにし、小ヤリイカ200gを加えて数分炒める。
・白ワインをかけて刻んだトマト300g、塩、赤唐辛子2本を加える。
・ムール貝300gとアサリ200gを別のフライパンで開けて加える。

次は、今月の「総合解説」でも紹介している肉料理、アッロスティチーニ。

この料理は、有名レストランチェーンのメニューに登場して人気が出すぎて(アブルッツォ料理が!?)品切れになるというセンセーショナルな出来事のおかげで注目を浴びましたが、正真正銘、アブルッツォを代表する料理です。

人気なのは世界的現象。


下の動画ではアブルッツォ人がアッロスティチーニとアブルッツォ料理を熱く語っています。
ちなみに、現在の私の一番の疑問、pecoraとagnelloの違いは何なんだ、の答えは見つからず・・・。
アッロスティーチーニはagnelloより若いpecoraで作るらしいですね。

pecoraのばら肉のアッロスティチーニに豚肉と仔牛肉のパッロッティーネ(小粒のミートボール)、テーラモ風クレープのティンバッロと、このブログでも紹介した料理をアブルッツォの典型的な料理として紹介していますよ。下の動画、高感度爆上がりです。↓



子羊可愛すぎる。
この中にペコレッラとアニェッロとペーコラがいるらしい。


アッロロスティチーニの話しは次回に。


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2020年6月18日木曜日

バリバリアメリカンなスパゲッティ・ミートボールをイタリアンにするには。

今月の「総合解説」で、アブルッツォ料理として紹介しているのは、ミートボールのキタッラと、アッロスティチーニ。どちらもアブルッツォの代表的な料理。
というか、正確には、ミートボールのパスタは、アメリカで大人気の家庭料理です。

ディズニー映画『わんわん物語』の有名なシーンでわんこたちが食べている料理です。

多分、大手のメーカーがお手軽にできるように製品化してアメリカ中に広まったんだろうなあ。
なので、スパゲッティ・ミートボールとミートボールのキタッラを混同しないように、
この料理のルーツ、アブルッツォの食文化を知っとくことは、案外大切かも。
アメリカンなスパゲッティ・ミートボール

イタリアンなミートボールのキタッラ

リチェッタは「総合解説」p.14。
両者の大きな違いは前者はパスタがスパゲッティで後者がキタッラ。
ミートボールは牛肉でパロッティーネpallottineと呼ばれ、ヘーゼルナッツ大の小粒。
小粒なおかげでアメリカンな雰囲気はかなり薄まる。
肉は牛・豚・子羊のミックス。
羊の移牧で知られるマイエッラ山地の農民の料理がルーツなので、子羊の首や肩の肉は欠かせません。

小粒のミートボール、パロッティーネのキタッラは、テーラモの料理。
この町には、同じくパロッティーネを使ったスクリッペッレのティンバロというご馳走があります。リチェッタは2012年5月号の「総合解説」P.2に訳しました。

アブルッツォ版ティンバロはクレープのティンバロ。

キタッラで、アブルッツォの食材を活かしたリチェッタは他にもあります。
その一つが、ラクイラ名物のサフランのキタッラです。
ラクイラのサフラン。

サフランを練り込んだ麺は黄金色のとても美しい麺です。

リストランテ・サンタ・キアラ(Ristorante Santa Chiara:Guardiagrele)のリチェッタをどうぞ。
Chitarine allo zafferano/サフランのキタッリーネ
材料/4人分
パスタ;
小麦粉・・300g
卵・・3個
ブロード;
にんじん・・1本
玉ねぎ・・1個
セロリ・・1本
トマト・・1個、塩
ソース;
じゃがいも・・300g
エシャロット・・1個
生クリーム・・大さじ3
パルミジャーノ・・80g
バター・・50g
サフラン・・数本とナベッリの粉サフラン20g

・小麦粉をフォンタナに盛り、卵を加えて10分こねる。
・なめらかな弾力のある生地になったらラップ包んで30分休ませる。
・生地を2つに分けて麺棒で薄く伸ばし、布巾にのせて乾かしてキタッラにカットする。
・野菜のブロードの材料と水1.5Lを沸騰させてて半分に煮詰め、ブロードを取る。ここにサフランを浸す。
・じゃがいもは皮をむいて薄切りにする。
・エシャロットのみじん切りをバターでソッフリットにし、じゃがいもを加える。ブロードで覆って煮て、柔らかくなったら生クリームを加えて撹拌し、塩味を整える。
・口の広いフライパンにブロードとサフランのソースを入れて3~4分なじませ、アルデンテにゆでたパスタを入れておろしたチーズでマンテカーレする。

キタッラは手打ち感が強い麺で、スパゲッティとは明らかに違う。
この料理はシンプルなじゃがいものソースでツルツル感も薄く、麺を味わう料理。


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パスタ・フォルメ・デル・グラノ
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2020年6月17日水曜日

アブルッツォのトランスマンツァとトラボッキ

今月の地方料理、まずはアブルッツォです。
「総合解説」P.14
最近、アブルッツォ料理の魅力に気が付きだして、個人的に注目度アップ中の地方。

イタリア料理の基本情報が充実している本、『クチーナ・レジョナーレ・ソフィー・ブレイムブリッジ』によると、


アブルッツォは地理的には中部イタリアに属していますが、その料理は南イタリアの味に近いそうです。
アブルッツォには気温の低い山も、広い平野も、国立公園も、アドリア海に面した海岸線もあります。
美しいアブルッツォの風景

綺麗なビーチに与えられる称号、バンディエラ・ブルーを多く獲得しているビーチと、魚が豊富に取れる海があり、漁に出なくても海岸から網を投げれば魚が捕れた。
網打ち小屋はトラボッコと呼ばれ、この海岸はトラボッキ海岸と呼ばれるようになった。
トラボッキ海岸

アブルッツォ生まれの作家、ダヌンツィオはこの小屋を“巨大な蜘蛛”と呼んだ。
代表的な漁師料理はズッパ・ディ・ペッシェのブロデット。



さらには、羊の群れを、牧草地から夏の間は山の放牧地に移動させる移牧の伝統も息づいています。
アブルッツォのトランスマンツァ

トラスマンツァの本拠地、マイエッラ国立公園は山の世界。


アブルッツォ料理の南イタリアとの共通点の1つが、パスタをよく食べること。
アブルッツォはパスタメーカーが多く、イタリア最大のパスタメーカー、ディチェコのお膝元でもある。

デチェコの本拠地、ファラ・サン・マルティーノ。

そしてアブルッツォを代表するパスタがキタッラだ。
キタッラは、アブルッツォのパスタ打ち名人の女性たちによって作り出される手打ちで太く、断面が四角で表面がザラザラしたパスタ。


もともとは、アブルッツォの子羊文化の中心地、マイエッラ山地の農民が昔から作っていたパスタだが、今ではアブルッツォの食事付には欠かせないパスタになった。
ソースは子羊肉は首や肩などの軟骨が多い部位を煮込んだコクのあるソース。

次回はキタッラのリチェッタです。

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2020年6月16日火曜日

桃の旬の季節が一番美味しいカクテル、ベリーニ

イタリア語の名前のカクテルで、有名なもの、まだありました。
例えば、ベリーニ。
以前ブログでも取り上げていました。こちら
それによると、本家のハリーズ・バーでは、このカクテルは白桃が旬の時期にしか出していなかったそうです。
つまり今頃期が一番美味しいカクテルです。

そういえば、ハリーズ・バーの全てが記された創業者の自伝的本、『ハリーズ・バー』には、こんなことが書かれていました。

ハリーズ・バーの常連客にセべーリというエンジニアがいた。
厳格という意味の名前とは正反対の、とても気さくな人柄の彼は、毎晩7時頃になるとハリーズ・バーにやってきて、その日の出来事を話しながら、アメリカーノを飲んでエビのサンドイッチを食べた。
知り合いと出会うと、夕食を店で食べない時は、8時頃に食事に出ていった。
7月のある晩のこと、彼は「今日はベリーニを初めて飲みたい気分だ。
と言ってベリーニを注文した。
出てきたベリーニを一息に飲み干すと、
「うまい、もう1杯」と追加を注文し、その後の3時間で19杯を飲み干した。

“ビーノ・ベリタス”(酔うと本音が出る)のことわざ通り、彼が変わっていく様子を見るのは楽しかった。
彼の中から喜びが弾けだしているようだった。
まるで彼自身がプロセッコのボトルになったようだった。
知的なユーモアが次々に飛び出した。
内側に硬く扉を閉ざして閉じ込めていた姿が解き放たれた記念すべきこの夜のことは、その後も時々思い出した。

ベリーニは私の父、ジュゼッペ・チプリアーニが考え出したカクテルだ。
フルーツのデリケートな甘さとプロセッコの酸味の組み合わせで、桃が美しいバラ色に染まる7月のカクテルだ。店では桃の旬の季節にしか出していなかった。
桃はマッシャーで皮ごと潰す。
ジューサーは使っても汁に空気が入るミキサーは使わない。
桃は黄桃ではなく白桃。小型で皮がバラ色のものがよい。
ワインはいつもプロセッコ・ディ・コネリアーノを加えたが、上質の他のスプマンテやシャンパンでもよい。

ジェイミー・オリバーの破天荒ベリーニ


ベリーニBellini/6人分
白桃の果汁・・1/4
プロセッコ・ディ・コネリアーノかスプマンテ・・3/4

バリエーション・・uva fragolaで作るとティツィアーノ
いちごで作るとロッシーニ


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ハリーズ・バー
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2020年6月15日月曜日

去年、世界で最も飲まれたクラシック・カクテル、ネグローニ。

今日のお題はカクテルです。
バカンスの季節が近づいて、もうウキウキ感が止まらくなってるなー。
今月の「総合解説」の『サーレ・エ・ペペ』の記事、
“編集長のエッセイ”(P.11)のビジュアル解説です。

質問。去年、世界で最も飲まれたクラシック・カクテルは何でしょうか?
ヒントはイタリアで一番有名でシンプルなアペリティーボです。
去年は誕生して100年でした。

まあ、イタリア語の名前の有名なカクテルといえば、アレぐらいしかないですよね。
そう、ネグローニです。




国際バーテンダー協会のイタリア人名誉会長の本で、アマチュアイタリア人向けのカクテルの本、マニュアル・デル・バーマン


によると、1919年にフィレンツェのカフェ・カソーニで、カミッロ・ネグローニ伯爵の注文で、バーテンのフォスコ・スカルセッリが、アメリカーノのジンが多めのバージョンとして作った、とのこと。
ちろん、そのあたりの話は「総合解説」にばっちり訳してあります。
本には、ジンの代わりにウオッカで作るとネグロスキー、とあります。
この手法(ダジャレ)で作ればいくらでも楽しいカクテルができそうだなあ。
ジンの代わりにスプマンテを加えたものは“ズバリアート(間違い)”たそうです。
ネグローニ家は、トレヴィーゾに蒸溜所を作ってオリジナルのネグローニの製造販売まで始めたそうです。

ネグローニ・ズバリアート


こちらのページによると、
残念ながらスパッラ通りとトルナブオニ通りの間にあった歴史的カフェは、カフェ・ジャコーザに変わった後、数年前になくなったそうです。
閉店した時はニュースに。


記事では、他に、マンハッタン、ダイキリ、サイドカー、モスコミュールのエピソードも紹介しています。
なんだか、昔居酒屋でよく飲んだカクテル、だいたい入ってるなあ。

マリリン・モンローが有名にしたのは『お熱いのがお好き』のカナディアンウイスキーの代わりにバーボンを加えたマンハッタン。
『お熱いのがお好き』トレーラー。

わざわざ間違えたバージョンを再現するファンも多い。

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マニュアル・デル・バーマン
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2020年6月14日日曜日

高級リゾート地と女優の組み合わせが生んだサントロペケーキ

今日は今月の「総合解説」から、バカンスの雰囲気をたたえたドルチェの話。
その名も、トルタ・トロペジエンヌ。
なんのこっちゃな名前ですよね。
分かったらフランス人です。
イタリア語から日本語に訳すと、サントロペケーキ。
イタリア統一直後のイタリア料理のベースはフランス料理だったという説を裏付けるような、フランスの海辺のリソート地の名物の素朴なケーキです。
写真とリチェッタはホームページの「総合解説」(P.9)のページにあります。
サントロペ↓


サントロペはフレンチ・リビエラのかなりスノッブなリゾート地。
ドルチェの見た目からは高級リゾート感はあまりないので、サントロペというフランスの高級リゾート地の名前が価値を高めているドルチェです。

トルタ・サントロペ


イタリア語でサントロペはサントロペですが、このトルタの名前は思いっきりフランス語のトロペジエンヌ。
サントロペの女の子、て意味かな。
というか、正確にはブリジット・バルドーのこと。
なんでも、サントロペを訪れたブリジット・バルドーに惚れたポーランド人のオーナーパティシエ、アレクサンドロ・ミカが考案して彼女に捧げたドルチェだそうです。

サントロペが舞台でブリジット・バルドーがブレイクした映画『素直な悪女』。
映画でブリジット・バルドーが歩いた通りは、聖地になってるそうです。
以来、サントロペと言えばブリジット・バルドーという関係。
彼女もサントロペが好きで、今でも住んでいるのだとか。
『素直な悪女』トレーラー↓

まさにこの映画の撮影中に、パティシエは恋に落ちちゃったんだって。
パティシエだけでなく、出会う人をかたっぱしから虜にしていったと思われる、ブリジット・バルドー。


ブリジット・バルドーのことは探せばいくらでも情報が見つかるけど、アレクサンドロ・ミカについては、残念ながらよくわからない・・・。

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2020年6月13日土曜日

貝や甲殻類の出汁をよく吸うパスタ、フレーゴラ

総合解説」7/8月号のリチェッタの解説。
プリーモの2品目は、フレーゴラ(p.5)です。
今月のプリーモの中では一番印象に残る色合いが美しい料理。
写真は「総合解説」のページをご覧ください。

サルデーニャのクスクスとも呼ばれるパスタですが、日本で目にすることは、多分皆無。
でも、サルデーニャより海外のでの方が人気なんだそうです。
作り方は、陶器の容器に入れたセモリナ粉に塩水を振りかけながらこすって水を吸わせます。↓
粒の直径は2~6mm。クスクスよりやや大きめ。これを乾かしてオーブンで黄金色にトーストするので独特のアロマがあります。

代表的な料理はトマト入りのアサリのミネストラ↓や、

マグロやナス入りのミネストラ。湯でゆでるのではなく、直接スーゴで煮るのが特徴。リゾットと同じです。
出汁がよく出る貝や甲殻類と相性がよいパスタです。

アサリとムール貝のフレーゴラ

出来上がったフレーゴラごった煮的な印象が、「総合解説」の料理は、仕上げに散らしたエディブルフラワーの紫色でキリッと締まり、上品なグランシェフの料理に姿を変えています。

リチェッタの解説、次回はドルチェです。

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総合解説
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2020年6月12日金曜日

「総合解説」は夏休みが待ちきれない7/8月号、今年は前倒しになっちゃったけど・・・

総合解説」2018年7/8月号発売しました。
前回の5/6月号から2ヶ月しか経っていないのに、世界が激変してあたふたしましたが、イタリアからの荷物も無事に届いて一安心。
今月の総合解説は夏の号です。

海の幸の注目度が急に上がって、早くもバカンスのウキウキ気分が始まる、長い休みの前の、一番楽しみな時期に突入しました。

最初の記事は、『クチーナ・イタリアーナ
のリチェッタ。
それではさっそく突っ込ませていただきます。

1品目のアペリティーヴォは、フォカッチャに地中海風のペースト3種を添えた、ビーチやプールサイドで食べたら美味しそうな1品。“フォカッチャとペースト3種(P.2)”
地中海風ペーストは、アーモンド、セロリ、トマト、松の実や、パプリカとアンチョビなど。

2品目はズッキーニ、フェタ、リコッタの具のストゥルーデルに、カレー風味のマヨネーズを添えた1品、“ズッキーニのストゥルーデルとカレー風味マヨネーズ(P.3)”。
マヨネーズは卵が入らないビーガン向けで、アーモンドミルクで作ります。黄色い色はサフランで。
さりげなく、ちょいちょい地中海の味が入ってるのがポイント。
アーモンドミルクのマヨネーズ

その次はひよこ豆のクリームのファゴッティーニ(p.3)。
クミンやカルダモン入りのひよこ豆のクリームという時点で十分に地中海料理ですが、これにトマトペーストを加えて、ほんのりイタリア風に逆アレンジ。
ひよこ豆のクリーム

プリーモの1品目は、カルボナーラ・ディ・マーレ。
この便利な言い回し、◯◯・ディ・マーレdi mareとつけると、なんでもシーフードの料理に変わります。カルボナーラだって例外ではありません。
カルボナーラ・ディ・マーレ

カルボナーラにもシーフードを加えちゃうのが、夏を待ちきれないこの時期のウキウキ気分。シーフードの旨味を卵で閉じる料理。 

今日はこのくらいにしとくか。
明日に続きます。

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総合解説
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2020年6月11日木曜日

世界共通語のアルデンテは、ナポリ人好みの乾麺のゆで具合を表す言葉。

パスタ・フォルメ・デル・グラノ』のパスタの話、続けます。
一般的なイメージとは逆に、イタリア人はいつもパスタを食べているわけではない。
と言うか、パスタは現在の主食のイメージとは違う食べ物だ。
ピッツァと共にパスタがイタリアの国民食になったのは、19世紀になってからの話。
この現象が無数のイタリア人移民によってもたらされた、というのも、他の国とは事情が違う点だ。
パスタは常に最もポピュラーな国民食ではなかった。
イタリア統一直後の17世紀以降、統一イタリアの料理を象徴するのは、パリの宮廷から生まれたフランス料理だった。
2分で知るイタリア統一↓


それとは対象的に、イタリアの伝統料理は18~19世紀末まで、無数の地方料理と結びついていた。
料理の統一は南から北へと伝わった。
ペレグリーノ・アルトゥージは、統一イタリア料理のベースにはパスタがあった、と主張している。
18世紀以降、パスタ・セッカの品質が向上し、裕福な階級の間に広まりだして、地方料理の枠を超えだした。
特に味に対するこだわりの強い地方、ナポリでは、パスタは独自の食文化として発展し、20世紀の始め、特に1936年から1954年の間に、消費量が増大して、パスタはイタリアを象徴する最初の食べ物となった。
ナポリ流派のキャッチフレーズ、“アルデンテ”は外国語に翻訳できない言葉として言葉ごと広まった。
料理人の腕を試す言葉としても使われる。

パスタとソースは引き離すことができない組み合わせだ。ソースもパスタと共に発展した。
一番シンプルな、チーズをかけたマカロニから、ナポリの伝統的ソースの最高峰、アントニオ・ラティーニの“サルサ・アッラ・スパニョーラ”(ビンチェンツォ・コッラードが1773年に出版した本『Cuoco galante』に登場する最初のトマトソース)までは、あっという間だった。
19世紀半ばになると、ブオンビチーノ公、イッポリート・カバルカンティが、基本的なトマトソースのパスタのリチェッタを発表する。

大衆化と高品質化を繰り返しながらパスタは広まってきた。
空腹を満たすためのパスタは、グランシェフによってスペチャリタに生まれ変わり、メーカーの研究によって小麦の品質から改良された。
最近は、小麦の研究が一段と進んで、硬質小麦に関する知識も広まっているようです。

考えてみれば、何気なく使っている言葉、アルデンテは、パスタのゆで具合を示すナポリの概念から生まれた言葉。
それが世界共通語になっちやうなんて、すごいことだー。

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2020年6月10日水曜日

スローフード的視点の現代のパスタとは。

パスタについて、イタリア料理アカデミーとは違う視点でまとめたスローフードの大力作の本、パスタ・フォルメ・デル・グラノ』。

イタリア料理の歴史的な研究にかけては、右に出るものがいないほど、徹底的に研究し尽くすイタリア料理アカデミー。
そして、地方料理や地方の特産物など、地方の暮らしや社会との結びつきの知識なら、唯一無二のスローフード。

まず、イタリア料理アカデミーの会長の本を紹介しましたが、
スパゲッティ・アモーレ・ミオ』が、会長が好きなパスタのリチェッタを集めたとても小さくて手軽で読みやすい本で、その一方でイタリア料理史に残る歴史的なリチェッタの紹介もさりげなくあり、とても勉強になる本です。
それに対して、スローフードの『パスタ』は、大型で、情報や知識がたっぷり詰まった、装丁も立派な、一生モノの本です。
膨大な情報が詰まった本ですが、例えば、こんなことが書いてあります。

世界中の人がもっとも多く食べている食物は、2016年のGoogleの調査によると、パスタ、肉、米、野菜、果物で、複数の国でパスタは1位だったそうです。
イタリアは世界一のパスタ生産国で、一人あたりの消費量も世界一。

パスタが1国の主食になるには、パスタ製造業が確立して大量生産が可能になっている必要があります。
そのためには多額の投資が必要で、それが製品の値段に反映とされると価格もそれなりに高くなり、それを買うことができる経済力も必要です。

産業の市場は世界規模ですが、19世紀半ば以降は、規模が縮小し、メーカーごとの品質の差が大きくなる傾向が見られます。
貧しい大衆の食べ物だったパスタは、近代的な洗練された食べ物として、役目が大きく変化しました。
地方の小さなパスタメーカーの市場は、世界的な大企業に移りました。

かつて一般的だったアルティジャナーレなパスタメーカーは、イタリア産の有機栽培の硬質小麦を厳選し、ブロンズのダイスを使い、コントロールの行き届いた生産をしていましたが、徐々に忘れ去られていきました。
80、90年代に、市場は、早くてかんたんな製品の生産に舵を切りました。
調理時間ももったいない。
広告などを通してこうした考えが定着します。
パスタだけでなく、米も同様でした。
こうして、小さな造り手と一緒に、イタリアの素晴らしい伝統が消えていきました。

そんな時代、90年代始めに誕生して、食品生産に一つの指針を示したのがスローフードです。
パスタの世界では、小さな造り手が、既存の販路を徐々に広げるようになりました。
消費者が望む製品を作るという革命が起き、価値のあるタンパク質を含み、アルデンテにゆで上がるパスタが開発されました。
しかし、生産量は限定的でした。

もっと大きな変化は、ダイスがテフロン製からブロンズ製へと変わったことです。パスタの質は大幅に向上しました。
ゆっくり時間をかけて製造することで生地の痛みが減りました。
こうして機械化からアルティジャナーレな製法への明らかな回帰が起き、40~60℃だった乾燥温度は一時100℃以上まで上がっていましたが、もっと低温で乾燥させることによって栄養価や風味も増加しました。
質の高くないセモリナ粉を使うと、高温の乾燥によって、麺の色は濃くなり、ゆでても煮崩れしにくくなります。
ところが多くの研究の結果、タンパク質が失われることがわかりました。
セモリナ粉に含まれる必須アミノ酸、リシンは、最大40%減少します。
アルティジャナーレのパスタはゆで時間が長くても、ソースをたっぷり吸い込む事ができるという利点もある。

アルティジャナーレのパスタメーカー

ピサのアルティジャナーレのパスタメーカー、アンティコ・パスティフィーチョ・モレッリ

プーリアのベネデット・カバリエーリ

パスタイ・グラニャーノ協同組合

アブルッツォのジュゼッペ・コッコ

どのパスタメーカーも、興味深いですねー。
スローフードの『パスタ』の翻訳、次回にづきます。
 
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スパゲッティ・アモーレ・ミオ
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2020年6月9日火曜日

パスタの品質の違いは何から生まれる?

スパゲッティ・アモーレ・ミオ』から、今日訳すのは
“パスタの品質”についての章。
パスタの基本の基本だけど、案外知らない人は知らない話。

パスタ・セッカの原料は、硬質小麦粉(セモリナ粉)と水だけ。
これらをこねた生地を成形して乾かす。
現在は、すべて工場でのみ作られている。
だが、EUの法律では軟質小麦粉のパスタや、硬質小麦粉と軟質小麦粉のミックスのパスタも認められている。
なので、これらのパスタを購入する時は、ラベルをよく読んで、信頼できるメーカーのものを購入することが必要だ。

工場製のパスタには、卵入りのものもある(タリアテッレ、フェットゥッチーネ、パッパルデッレ、ラザーニャなど)。
法律では卵の量は最高4個とされている(粉末の場合は小麦粉1kgあたり200g未満)。
パスタの質と味は、メーカーによってかなり違う。
その違いは、

・小麦の品種
・セモリナの粒の大きさ、粗さ
・使用する水の品質
・生地に加える水の温度
・ダイス(生地を押し出して麺にする型)の品質(一般的なのはテフロンだが、最高と考えられているブロンズのダイスを通すと表面がざらざらした薄い黄色の麺になる)
・乾燥の種類(伝統的な方法は、45~50℃の低温で20~40時間、またはそれ以上)。
現在の工場では一般的に75℃以上と高温で8~10時間が主流だが、もっと高温で短時間(約4時間)が多くなっている。

などの違いから生まれる。
上質のパスタとは、表面はややざらざらしているが艶があり、色は暖かい黄金色、軽く琥珀色がかっている。
白や琥珀色が濃いパスタはあまり上質ではない。
ゆでても湯で汁が濁らないパスタは品質が劣ることの証明だ。
有名メーカーの高価なパスタは信頼できる。
出来上がりの味がかなり違うはずだ。

デチェコの品質の高さを訴えるCM。
18時間乾燥させた12番のスパゲッティ・デチェッコが、完璧にアルデンテにゆであがって登場・・・↓

下町ロケッ◯的なブロンズ製ダイズの誕生物語

イタリア産小麦の生地をブロンズのダイスを通して成形し、ゆっくり乾燥させるのがイタリアの伝統的パスタの製法。

グラニャーノのパスタができるまで



パスタについてもっと詳しいことが知りたい人にお薦めの本は、スローフードの『パスタ・フォルメ・デル・グラノ


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パスタ・フォルメ・デル・グラノ
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