2011年9月29日木曜日

タコのパスタ

タコの話、今日はパスタのリチェッタです。

タコのパスタというと、トマト煮をスパゲッティのソースにする、というのが定番。
さらに、オリジナルのタコのパスタも色々あります。

↓ヴェローナのリストランテ・アッラ・フィエーラRistorante alla Fieraは、新鮮な魚がスペチャリタ。
動画で紹介しているのは、タコの肝のフジッリ。
オリーブオイルに塩少々を加えて熱したところにタコの肝を入れて溶き、これでパスタをあえます。
パスタはブロンズのダイスに通して作ったフジッリ。
パスタの上にはタコのカルパッチョをトッピング。
タコのカルパッチョはタコをミンサーで挽き、-20度で24時間冷やし固めてからスライス。
仕上げにパルミジャーノの柔らかい部分を散らします。




後半のイカ墨のパスタは、墨と刻んだイカのワタを混ぜて玉ねぎのソッフリットに加えています。


次は、“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズの『パスタ』から、タコのコルゼッティ。
ジェノヴァのトラットリーア・バリゾーネTrattoria Barisoneのリチェッタです。

タコのコルゼッティ Corsetti al polpo
材料:6人分
 コルゼッティ・・500g
 タコ・・1杯
 トマト・・500g
 にんにく・・2かけ
 ローリエ・・3枚
 イタリアンパセリ・・1枝
 タッジャスカオリーブ・・50g
 松の実・・50g
 辛口白ワイン・・1カップ
 バター・・50g
 EVオリーブオイル
 塩、こしょう
 砂糖・・小さじ2

・にんにくのみじん切り、松の実、ローリエ、オリーブをオリーブオイルでソッフリットにし(しんなり炒める)、ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・タコは小さく切る。トマトは小角切りにする。
・ソッフリットにタコ、トマト、水500mlを加えて蓋をし、とろ火で約1時間煮る。
・タコが十分柔らかくなっていない時はさらに煮る。必要なら水を少量足す。
・柔らかくなったら塩、砂糖、イタリアンパセリのみじん切り、バターで調味する。
・コルゼッティをアルデンテにゆで、タコのソースのフライパンに加えてソースをしっかり吸わせる。
・仕上げにオリーブオイルを回しかけてこしょうを散らす。



コルゼッティはリグーリアの伝統的なパスタですが、タコのソースとの組み合わせはオリジナル。


↓コルゼッティの型職人。






次はサルデーニャの伝統料理の本、『La cucina sarda di mare』から。

タコのマッロレッドゥス Malloreddus con il polipo
材料:4人分
 マッロレッドゥス・・400g
 タコ・・500g
 塩漬けアンチョビ・・1尾
 EVオリーブオイル
 イタリアンパセリ・・1枝
 玉ねぎ・・2個
 完熟トマト(ポモドーリ・サルディ種)・・250g
 塩、こしょう

・タコは輪切りにする。玉ねぎも輪切りにする。
・鍋にタコ、オリーブオイル1/2カップ、玉ねぎ、イタリアンパセリのみじん切りを入れて煮る。水や塩は加えない。
・トマトを薄い輪切りにし、オリーブオイル大さじ2で強火で焼く。塩抜きして骨を取ったアンチョビを加えて溶かす。
・タコをトマトのフライパンに加えて10分なじませる。
・パスタをアルデンテにゆでてソースに加え、なじませる。皿に盛り付けてイタリアンパセリのみじん切りを散らす。



↓マッロレッドゥス。
時々音声が消えてます。





同じ本からサルデーニャ料理をもう1品。

タコのラグーのリングイーネ Linguine al ragù di polipo
材料:4人分
 リングイーネ・・400g
 タコ・・1杯
 にんにく・・1かけ
 白ワイン(ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ)・・1/2カップ
 EVオリーブオイル・・大さじ4
 塩漬けアンチョビ・・1尾
 チリペッパー・・少々
 トマトのパッサータ・・1/2カップ
 白ワインビネガー・・大さじ2
 塩

・タコはたっぷりの水で柔らかくなるまでゆで、粗く刻む。
・オリーブオイルににんにくのみじん切り、チリペッパー、塩抜きしたアンチョビを入れて炒め、タコを加えて8~10分炒め煮にする。
・ワインをかけてアルコール分を飛ばし、トマトのパッサータを加えてビネガー少々をかけながら煮る。
・パスタをアルデンテにゆで、ソースに入れてなじませる。



最後はカラプリアのタコのスパゲッティ。
カラプリアの伝統料理の本、『La cucina calabrese di mare』から。

タコのスパゲッティ Spaghetti al sugo di polpo
材料:4人分
 スパゲッティ・・400g
 タコ・・1杯(600g)
 トマトソース・・500ml
 玉ねぎ・・1個
 イタリアンパセリ・・1束
 辛口白ワイン・・1/2カップ
 EVオリーブオイル
 塩、こしょう(またはチリペッパー)

・タコは小さく切る。
・玉ねぎのみじん切りをオリーブオイル大さじ5でしんなり炒める。タコを加えて弱火で炒め、水気がなくなったらワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・トマトソース、イタリアンパセリ1枝のみじん切り、こしょうかチリペッパーを加え、蓋をして約1時間煮る。途中でレードル1杯の湯を加える。
・塩味を調えて火から下ろす。
・パスタをアルデンテにゆでてソースであえる。皿に盛り付けてイタリアンパセリのみじん切りをたっぷり散らす。







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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
“イカ、タコ”の記事の日本語解説は、「総合解説」08&09年3月号に載っています。

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2011年9月26日月曜日

タコのアッフォガート・アッラ・ルチャーナ

モスカルディーニの話をしたついでなので、今日はタコの話。

タコは歯ごたえがあるので自然とよく噛んで食べることになり、そうすると満腹中枢が刺激されて、食事の量が減るんだそうですねえ。
しかもカロリーが低い。
血圧を下げて肝臓の働きを助けるタウリンや、コラーゲンも豊富と、かなり魅力的な食材です。


100_1344.JPG
シチリアのゆでダコ


Polpo candito e insalata di panee pomodori ciliegino
フィレンツェのホテル・ブルネレスキのレストラン、サンタ・エリザベッタの“タコのカンディート”



イタリアのタコ料理の代表的なものは、タコのサラダInsalata di polpoや、タコのアッフォガートPolpo affogatoといったところでしょうか。
サラダにする時は、じゃがいもやセロリが定番の組み合わせ。

このブログでもタコ料理は、こちら(ゆでダコとタコのカッチャトーラ)やこちら(タコのサラダとカルパッチョ)で紹介しています。

ちなみに、以前『タコ』のブログで吸盤が1列の砂場のタコについて書きましたが、これはモスカルディーニの一種のモスカルディーノ・ビアンコ(moscardino bianco/Eledone cirrosa)のこと。
写真
いわゆる普通のモスカルディーニ(ジャコウダコ)は、Eledone moschataという種類。
モスカルディーノ・ビアンコをマダコ(ポルポ)と間違えるケースも多いそうですが、そんな時は吸盤の列をチェック。


タコのアッフォガートは、ポルポ・アッラ・ルチャーナPolpo alla Lucianaとか、ポルポ・アッフォガート・アッラ・ルチャーナとも呼ばれます。
ルチャーナとは、ナポリの漁師町、サンタ・ルチーア地区のこと。


Polpo alla Luciana
ポルポ・アッラ・ルチャーナのスパゲッティ


実は、伝統的なタコのアッラ・ルチャーナとは、タコの蒸しゆでの一種で、トマト煮ではありません。
でも、タコのトマト煮、つまりタコのアッフォガートのことをアッラ・ルチャーナと呼ぶ人が増えて、今ではトマト煮としてほぼ定着しているようです。

“タコのルチャーナ”はその名前からしてナポリ料理ですが、タコのアッフォガートは南イタリア各地にあります。
リチェッタも様々。
基本は、生のタコをタコから出た水分とトマトで蒸し煮にする、というもの。
アッフォガート(溺れた)という名前の通り、蓋をする前は溺れていないのに、料理が出来上がって蓋を取ったらタコが溺れていた!


↓タコのアッフォガートAffogato di polpo。
材料を鍋に入れてとろ火で3時間蒸し煮。





↓こちらのタコのアッフォガートは、まずオイルとにんにくでタコを炒めてからトマトを加え、35~45分煮ます。





↓そしてこちらは、アッラ・ルチャーナという名前のアッフォガート。
にんにくとプレッツェーモロをオリーブオイルでソッフリットにしてトマトのパッサータを加え、そこにタコを入れて30分煮ます。






タコのアッフォガートは煮汁も大切。
あぶったパンを添えてもいいし、スパゲッティのソースにしても美味しいですよね。
次回はタコのパスタのリチェッタです。




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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
“イカ、タコ”の記事の日本語解説は、「総合解説」08&09年3月号に載っています。

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2011年9月22日木曜日

モスカルディーニ料理

今日はタコの話の続き。

地中海固有のタコ、モスカルディーニ。
イタリア沿岸では、アドリア海を中心に、北から南まで各地で獲れます。
イイダコにそっくり。

その名前はジャコウの香り(モスカート)のタコ、という意味で、生きているモスカルディーニは実際にジャコウの香りがするんだそうです。
料理も、この香りを消さないようにシンプルに調味します。

料理には、軟らかい小型のものが好んで使われます。
ゆでるとリアルタコさんウインナー。


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モスカルディーニのマファルデ(パスタ)


モスカルディーニのスパゲッティ


真っ赤なトマト煮のモスカルディーニとあざやかなポレンタの黄色が食欲をそそるモスカルディーニのジェノヴァ風


同じグリーンピース入りトマト煮でも、あぶったパンを添えると一段と地中海風



↓モスカルディーニの下ごしらえの仕方






↓モスカルディーニのサンタ・ルチア風(ナポリ料理)。






↓フラスカーティのレストランの“モスカルディーニのネロ風”






モスカルディーニ・アッラ・ピッツァイオーラ

ケッパー、オリーブ、トマト、オレガノ入り。
付け合わせはチーメ・ディ・ラーパ。




“リチェッテ・ディ・オステリーア・ディ・イタリア“シリーズの『ペッシェ』から、モスカルディーニのリチェッタをどうぞ。


まずは、アドリア海に面したアブルッツォ州ヴァストという町の料理。

漁師のモスカルディーニ Moscardini del pescatore
材料:4人分
 モスカルディーニ・・800g
 にんにく・・2かけ
 玉ねぎ・・1/2個
 イタリアンパセリ・・一握り
 トマトソース・・大さじ1弱
 白ワイン・・1/2カップ
 オリーブオイル
 塩、こしょう

・モスカルディーニは掃除する。
・にんにくと玉ねぎをみじん切りにしてオリーブオイルで炒める。色が付いたら溶いたトマトソースを加える。
・モスカルディーニを加え、中火で蓋をせずに煮る。
・塩、こしょうで調味してイタリアンパセリのみじん切りを散らす。
※モスカルディーニは10cm以下の若いものが最適。




次はナポリ料理。
リストランテ・ア・リドッソ(webページはこちら)のリチェッタ。

モスカルディーニのトマト煮 Moscardini in cassuola
材料:4人分
 モスカルディーニ・・800g
 ミニトマト・・12個
 にんにく・・2かけ
 イタリアンパセリ・・1枝
 赤唐辛子・・1片
 ブロード・・レードル1杯
 EVオリーブオイル・・1カップ
 塩

・モスカルディーニは掃除する。
・にんにくと唐辛子をみじん切りにしてオリーブオイルで炒める。
・モスカルディーニを加え、にんにくが焦げ付かないようにブロード少々をかける。
・半分火が通ったら(約7分)半分に切ったミニトマトを加えてイタリアンパセリを散らし、塩とオイルを加えてさらに約7分煮る。
・まだ柔らかければブロード少々をかけて数分煮る。
・あぶったパンのクロスティーニを皿に置き、その上にモスカルディーニを煮汁ごと盛り付ける。






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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
“イカ、タコ”の記事の日本語解説は、「総合解説」08&09年3月号に載っています。

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2011年9月20日火曜日

モスカルディーニ

イカの次はタコの話。

タコ(マダコ)は、イタリア語ではpolpo(ポルポ)。
piovra(ピオーヴラ)と呼ぶこともあります。


Polpo (octopus) and latte di pesce (soft roe / milt)
ヴェネチアのリアルト市場のタコ


最近のイタリアでは、イカの消費量は増えて、タコの消費量は減る傾向にあるようです。
ISMEAの統計によると、イタリアのマダコの漁獲高は年々減り続け、2007年は約3,700tでした。
ちなみに、日本のタコの漁獲高は約5万t。

逆に冷凍品の輸入は増えて、2008年は50,900t。
これは日本(44,700t)より多く、EU諸国の中では1位。
2位はスペインで42,600t。

イタリアへの輸出量が多いのは、モロッコ、スペイン、ベトナム、インドネシア、セネガル、タイ、メキシコ、モーリタニア、チュニジアの順。
中国の名前がないことを除けば、日本とだいたい同じです。
冷凍品に関しては、日本もイタリアも、同じようなタコを食べているようですね。

日本人は世界で獲れるタコの半分以上を食べているそうですが、イタリアではポピュラーなのに日本ではお目にかかれないタコもあります。

それは、モスカルディーノmoscardinoというタコ。
地中海固有の種です。
学名はEledone moschata
日本では、英名のmusky octopusを訳してジャコウダコと呼ばれたりするようです。
小型のものはイイダコにそっくりですが、イイダコは東アジア固有のタコ。


モスカルディーニは主に泥地に棲み、マダコより小型。
見分けるコツは吸盤で、マダコは2列なのに対してモスカルディーニは1列です。
イイダコも太い部分は2列。


↓モスカルディーニは根元も吸盤は1列。






↓これも吸盤が1列なのでモスカルディーニ。
新鮮なタコやイカの見分け方は、指でつついた時にその部分の色合いが変わるものはとても新鮮、と説明しています。







Moscardini e patate

↑足の切れ端しか見えなくても、吸盤が1列なので、これはモスカルディーニだと分かりますね。

トマト煮にすることが多いモスカルディーニ。
次回はリチェッタです。



↓おまけのビデオ。
イカの見分け方。
イカの話の時に説明しましたが、動画があったのでどうぞ。
コウイカとスルメイカの見分け方は、ヒレの大きさと位置。
seppie/セッピエ=コウイカ、calamari/カラマーリ=ヤリイカ、totani/トータニ=スルメイカ







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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
“イカ、タコ”の記事の日本語解説は、「総合解説」08&09年3月号に載っています。

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2011年9月15日木曜日

イカ墨のスパゲッティ

イカ墨の話の続きです。

イカ墨の美味しさを世界中に広めたのは、何と言ってもイタリア人の功績。
しかも、イタリアの代名詞でもあるスパゲッティとの組み合わせは鉄板。

イカ墨料理と言えばヴェネト州が有名ですが、ヴェネトの代表的なイカ墨料理は、イカ墨のリゾットイカの墨煮

Risoto al Nero di Sepia
ヴェネチアのRistorante Da Ivoのイカ墨のリソット


イカの墨煮



パスタの種類をスパゲッティに限定すれば、スパゲッティは歴史的には南イタリアの伝統食材なので、イカ墨のスパゲッティも南部の伝統料理。
中でもシチリアは、イカ墨スパゲッティの元祖、と主張する声が多いようです。
もちろん例によって確たる証拠は何もありませんが、例えば・・・

「昔からシチリア人は、何も無駄にしないでどんなものでもうまく料理に使った。
イカ墨だって例外ではない。
イカ墨がシチリア人の豊かな想像力によって生まれ変わったのが、イカ墨のスパゲッティだ」


でも、イカ墨スパゲッティの伝統料理は、サルデーニャやカラプリアにもあります。
リチェッタの基本はほぼ同じです。


↓シチリアのジョイオーザ・マリーナという海辺の町で、町一番のイカ墨パスタ名人が教えるリチェッタ。




 
実は上の動画は、45分番組(こちら)の一部。
番組は料理名人を探すところから始まっています。
そして選ばれた料理名人の家(テラスから海が見える素敵な家)に泊めてもらって、数日滞在しながら調理過程を撮影。

長いですが、温かいシチリア人のもてなし方がよーくわかる動画です。
コウイカは、魚屋さんで墨袋を外してもらうんですね。

材料と作り方の説明は26:30から。


それでは、南イタリア各地のイカ墨スパゲッティのリチェッタをどうぞ。

イル・ディアマンテ・デッラ・グランデ・クチーナ・ディ・シチリア』のカターニア(シチリア)風イカ墨のパスタ。

カターニア風イカ墨のスパゲッティーニ Pasta col nero delle seppie (Catania)
材料:
 スパゲッティーニ・・600g
 墨袋付きコウイカ・・500g
 玉ねぎ・・1個
 トマト・・300g
 ローリエ・・1枚
 イタリアンパセリ
 ペコリーノ・スタジョナート・・100g
 オリーブオイル
 塩、こしょう

・イカは墨袋を外して細く切る。
・玉ねぎの薄切りとイタリアンパセリをオリーブオイルで炒め、皮をむいて小さく切ったトマト、イカを加えて煮る。
・ソースが煮詰まったらイカ墨を加える。
・パスタをゆでてソースであえ、おろしたペコリーノ・スタジョナートを散らす。





『La cucina calabrese di mare』(Alba Allotta著)より、カラプリア風イカ墨のパスタ。

イカ墨のスパゲッティ Spaghetti al nero di seppia
材料:4人分
 スパゲッティ・・400g
 コウイカ・・2杯
 トマトソース・・1カップ
 にんにく・・1かけ
 イタリアンパセリ・・1束
 EVオリーブオイル・・大さじ6
 塩、赤唐辛子

・イカは墨袋を外して細く切る。
・にんにくとイタリアンパセリをみじん切りにしてオリーブオイルと唐辛子少々で炒める。
・イカを加えて数分炒め、トマトソースと塩を加えて10分煮る。
・ソースが煮詰まったらイカ墨を加えてよく混ぜる。
・レードル1杯の水を加える。蓋をして、時々かき混ぜながら弱火で45~50分煮る。
・パスタをアルデンテにゆでてソースであえる。





『La cucina sarda di mare』(Laura Rangoni著)より、サルデーニャ風イカ墨のパスタ。

イカ墨のスパゲッティ Spaghetti con seppie, pomodoro e pecorino
材料:4人分
 スパゲッティ・・400g
 小コウイカ・・450g
 EVオリーブオイル・・大さじ4
 ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ・・1カップ
 ドライトマト・・8~10個
 玉ねぎ・・1個
 おろしたペコリーノ・・50g
 塩、こしょう

・イカは墨袋を外して細く切る。
・玉ねぎの薄切りをオリーブオイルで炒め、イカ、小さく切ったドライトマト、塩、こしょうを加える。
・蓋をして、時々かき混ぜながら弱火で40分煮る。途中でワインの3/4をかける。
・イカ墨と残りのワインを加えて煮詰める。
・パスタをアルデンテにゆでてソースであえる。皿に盛り付けておろしたペコリーノを散らす。



シチリアのイカ墨パスタは、シチリアのペコリーノ・スタジョナートを散らすのがポイントですかね。
動画ではフィノッキエット・セルヴァティコを加えていたので、これで文句なくシチリアの香りになります。

カラプリアのイカ墨パスタは、やはり唐辛子入り。

サルデーニャのイカ墨パスタは、地元の白ワイン、ヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ入り。

トマトは、パッサータ、トマトソース、生トマト、ドライトマト、トマトピューレと、様々なバリエーションがあります。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
“イカ、タコ”の記事の日本語解説は、「総合解説」08&09年3月号に載っています。

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2011年9月12日月曜日

イカ墨

今日はイカの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

イタリア語と比べると、日本語の“イカ”というのはとても便利な言葉です。
ヤリイカもスルメイカもコウイカも、全部イカですもんね。

でも、英語やイタリア語には、“イカ”という言葉がありません。
ヤリイカ類とコウイカ類では、まったく別の名前がついています。


cuttlefish squid

上の2種類のイカ、日本語では左はコウイカ、右はヤリイカ
英語では、左はcuttlfish、右はsquid。
イタリア語では、左はseppia/セッピア、右はcalamaro/カラマーロ

この他に、スルメイカはイタリア語では、totano/トータノ

日本ではおなじみのスルメイカですが、イタリアではヤリイカの方が一般的。
イカを総称する時は、カラマーリと呼ぶケースが多いようです。
イタリアでヤリイカとスルメイカを見分ける時は、ヒレ(エンペラ)の位置と長さを見たりします。
ヒレが長くて頭の半分以上あるのがヤリイカ。
頭の先端部分にあるのがスルメイカ。

スルメイカ



イカの総称にはカラマーリが使われることが多くても、“イカ墨”と言う時だけは、「ネーロ・ディ・セッピアnero di seppia」と言います。
イカ墨のスパゲッティは、“スパゲッティ・アル・ネーロ・ディ・セッピアSpaghetti al nero di seppia”。

このとこからも分かるように、料理に使うイカ墨はコウイカのものが一番、というのがイタリアの定説です。


セッピアという言葉は、「セピア色」の語源。
つまり、セピア色とは、コウイカの墨から作った絵具で描いた色のこと。
黒みのある茶色です。

Piazetta San Marco
セピア色のサン・マルコ広場(ヴェネチア)



L1140309
ヴェネチアのイカ墨のスパゲッティ


“イカ墨色”だと真っ黒い色を想像しがちですが、セピア色は、イカ墨で描いたものが色あせた時の暗褐色のことなんだそうです。

ちなみに、墨汁などの墨は、イタリア語ではネーロ・ディ・セッピアとは言いません。
こちらは“インキオストロ・ディ・キーナinchiostro di china”(中国のインク)と言います。
英語では“チャイニーズ・インクchinese ink”です。


墨は、ヤリイカにもスルメイカにもあります。
英語では、イカ墨のことをsquid ink(ヤリイカのインク)と呼びます。
これはおそらく、コウイカが手に入りにくいため、イカ墨と言えばヤリイカの墨、ということなのでしょう。

もちろんイタリアにも、コウイカが手に入らない場所もあるし、ヤリイカの墨を使ったスパゲッティだってあります。
では、ヤリイカの墨を使ったイカ墨のスパゲッティ、と言いたい時は、なんと呼ぶのでしょうか。

答えは、“スパゲッティ・アル・ネーロ・ディ・カラマーリSpaghetti al nero di calamari"。
でも、実際にレストランでこういう名前の料理を見ることはまずありません。
ということは、イカ墨のスパゲッティは、全てコウイカの墨を使っているということなのか・・・。
それとも、ヤリイカやスルメイカの墨を使っていても、習慣的にネーロ・ディ・セッピアと呼んでいるのか・・・。
おそらく後者ですね。


とにかく、日本ではあまりなじみのないコウイカやコウイカの墨。
イタリアに行ったら食べてみるに越したことはありません。


↓コウイカの墨袋の外し方






イカ墨の話、次回に続きます。




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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
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2011年9月8日木曜日

サルデ・ア・ベッカフィーコ、リチェッタ編

シチリアのもどき料理の話の続きです。

同じ島の中でも、西のパレルモと東のカターニアでは少し違う料理、サルデ・ア・ベッカフィーコ。

パレルモ風


カターニア風


それぞれのタイプの動画は前回のブログでどうぞ。


この料理、バリエーションがたくさんあるのでリチェッタをあれこれ集めてみました。

まずはおなじみ、『イル・ディアマンテ・デッラ・グランデ・クチーナ・ディ・シチリア』から、伝統的なリチェッタ。

カターニア風サルデ・ア・ベッカフィーコ(フリット) Sarde a beccafico fritte alla catanese
材料:
 小さすぎないイワシ・・1kg
 パン粉・・100g
 こしょう入りペコリーノ(おろす)・・100g
 にんにくとイタリアンパセリのみじん切り
 溶き卵・・3個分
 衣用溶き卵・・2個分
 小麦粉・・100g
 強いビネガー
 オリーブオイル
 塩、こしょう

・イワシは開いて骨を取り、ビネガーでマリネする。
・パン粉、ペコリーノ、にんにくとイタリアンパセリのみじん切り、溶き卵を混ぜて塩、こしょうで調味する。
・混ぜた材料を少量ずつまとめて平らにし、イワシ2枚ではさむ。
・溶き卵、小麦粉の順でつけてオリーブオイルで揚げる。
・熱いうちに、または冷めてからサーブする。



メッシーナ風サルデ・ア・ベッカフィーコ(トマトソース煮) Sarde a beccafico al sugo

・カターニア風と同様に下ごしらえして揚げる。
・玉ねぎの薄切り、イタリアンパセリ、ホールトマトをオリーブオイルで炒めて塩、こしょうで調味する。
・ここに揚げたイワシを入れ、水を加えてひたひたに覆う。
・蓋をして煮る。
・イワシを取り出してセコンド・ピアットにし、煮汁はスパゲッティのソースにする。




パレルモ風は、トラットリーアのリチェッタをどうぞ。

リチェッテ・ディ・オステリーア・ディ・イタリア”シリーズの『ペッシェ』から。

パレルモ近郊のトラットリーア・ドン・チッチョ(webページ)のリチェッタ。


サルデ・ア・ベッカフィーコ Sarde a beccafico
材料:6人分
 中型のイワシ・・1.2kg
 玉ねぎ・・大2個
 ローリエ
 サルタナレケーズン・・100g
 松の実・・50g
 パン粉・・100g
 レモン・・2個
 カチョカヴァッロ・・200g
 オリーブオイル
 砂糖
 塩、こしょう

・玉ねぎ1個はみじん切りにし、レーズン、松の実、おろしたカチョカヴァッロと混ぜてオリーブオイル、塩、こしょうで調味する。
・ここにパン粉を加え、均質の詰め物にする。
・イワシは掃除して開く。
・イワシに詰め物を少量ずつのせて巻く。
・ローリエと玉ねぎの薄切りを1枚ずつはさみながらイワシをオーブン皿に詰める。
・オリーブオイル、レモン汁、砂糖をホイップしてイワシにかける。
・200度のオーブンで10~15分焼く。




最後はパレルモ風の現代版家庭料理。

“Gli illustrati”シリーズ『ラ・クチーナ・シチリアーナ』から。


サルデ・ア・ベッカフィーコ Sarde a beccafico
材料:4人分
 中型のイワシ・・500g
 パン粉・・約100g
 松の実・・大さじ2
 パッソリーナ(小粒で黒いシチリアの料理用レーズン)・・大さじ2
 にくにく・・1かけ
 レモン汁
 EVオリーブオイル
 塩、こしょう
 ローリエ

・イワシは開く。
・パン粉を焼き色がつくまで炒めてボールに移し、オリーブオイル(少しずつ)、にんにくのみじん切り、松の実、ぬるま湯で戻したレーズンを加える。
・イワシは皮目を下にし、詰め物を少量のせて巻く。
・オーブン皿に油を塗る。間にローリエをはさみながらイワシを詰める。焼いている間に開かないようにきつく詰める。
・レモン汁を搾って塩、こしょう、オリーブオイルを加える。これをイワシにかける。
・高温すぎないオーブンで10~15分焼く。冷めても美味しい。







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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
サルデ・ア・ベッカフィーコを含む“パレルモ”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年3月号に載っています。

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2011年9月5日月曜日

サルデ・ア・ベッカフィーコ

シチリア料理の話、続けます。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

モンズーによって独特の貴族料理が生まれたシチリア。
その料理は、モンズーの見習い料理人などを通してシチリアの庶民の間にも知られていきました。

モンズーが活躍した時代は、フランス革命やナポレオン戦争を経て、イタリアが統一に向かっていた時期です。
古い貴族社会には斜陽の兆しが漂い、平民からは裕福な新興ブルジョワジー層が誕生して、新しい時代の担い手となっていこうとしています。

庶民にはパワーがありました。
それが、シチリアならではの大らかさ、自由な発想、ユーモア、そして貴族への憧れと結びついて生まれたのが、シチリアの「もどき料理」です。

そんなもどき料理の代表的な一品が、サルデ・ア・ベッカフィーコSarde a beccafico。
今や、イタリアを代表するイワシ料理の1つです。

こんな料理

“ベッカフィーコ”とは、ニワムシクイという野鳥。
体長14cm、重さ16~22gというスズメ程度の小鳥です。

日本語では「庭の虫を食べる鳥」という意味ですが、イタリア語では、“ベッカ”は「ついばむ」、“フィーコ”はイチジク。
つまり、「イチジクを食べる鳥」という意味。
しかも、熟したイチジクだけを食べるグルメな鳥なんだそうです。


↓ベッカフィーコ






この小鳥を、シチリアの貴族は狩りでしとめて食べていたわけですが、なかなか美味しかったようで、その料理は貴族の間ではとても人気がありました。
そして庶民がその外見をコピーしたのが、サルデ・ア・ベッカフィーコです。
ただし、この料理にも諸説あって、たまたま外見が似ていたから、後付けで名付けたと言う説もあります。

いずれにしても、貴族しか食べることが出来ない高級料理を、よりによって超格安なイワシとパン粉で再現するとは、シチリアの庶民はなかなかユーモアの分かる人たちです。

貴族たちは、ベッカフィーコの尾をつまんで食べたのだそうです。
だから、オリジナルに忠実に作るなら、この料理はイワシの尾をつけて作るのが正統派。

ところが、この料理もアランチーニと同じで、パレルモ派とカターニア派に分かれているんですねえ。
パレルモ派とカターニア派では、同じサルデ・ア・ベッカフィーコという名前でも、見た目がまったく違います。
パレルモ派は1枚のイワシに詰め物をのせて巻き、カターニア派は2枚の平らな切り身で詰め物をはさみます。


↓カターニア派のサルデ・ア・ベッカフィーコ






↓パレルモ派(英語)







では、次回はサルデ・ア・ベッカフィーコのリチェッタです。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
サルデ・ア・ベッカフィーコを含む“パレルモ”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年3月号に載っています。

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2011年9月1日木曜日

モンズー

パレルモ料理の話、続けます。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

シチリアやパレルモの料理を語る時に忘れてはならないのが、“モンズー”。

モンズーmonsùとは、フランス語の“ムッシュmonsieur”の南イタリアなまり。
18世紀から20世紀初めにかけて、シチリアの貴族たちが、料理に箔をつけるためにフランスから呼び寄せた宮廷料理人がルーツです。

当時のシチリアは、主にスペイン=ブルボン家に支配されていた時代で、宮廷料理の主流は絶対的にフランス料理でした。
パレルモの貴族の館で、モンズーのいない家はなかったのだそうです。

でも、シチリアの面白いところはここからです。
貴族たちは公式の席ではフランス料理を食べていましたが、それはかなりお上品なものだったため、普段は地元の食材を使った、もっとシチリア的ながっつりした料理をモンズーに作らせていました。
そうして生まれたのが、シチリアの貴族料理です。

いうなれば、フランス料理の地中海化。
バターとオリーブオイル、ベシャメルとトマトソースが共存し、ギリシャ、北アフリカ、アラブ、スペインの食文化も溶け込んでいました。

その代表格が“ティンバッロtimballo”。

モンズーのティンバッロと言えば、小説と映画で知られる『山猫』に登場するティンバッロ・ディ・マッケローニtimballo di maccheroni。

こちらはヴィスコンティ監督の映画の『山猫』。
ドンナフガータの館の晩餐でティンバッロが登場するシーンは、0:59:43から。


この他、フェデリコ・デ・ロベルトの『副王たち』という小説にもモンズーの料理が登場します。
こちらは『副王家の一族』という映画になりました。

↓予告編







やがてモンズーは世襲になり、貴族の家の料理長、という存在になっていきました。
ポイントは、金持ちの家の料理人ではなく、貴族の家の料理人、ということ。
シチリアの食文化の継承者として、尊敬される存在でもあったわけです。

こちらは、元モンズーのフランチェスコ・パオロ・カッシーノ氏の没後に、町の通りに彼の名前がつけられたことを報じる記事。



モンズーが生み出した料理は、見習い料理人などを通して徐々に市民階級にも広まっていきました。
そこでまた、シチリアならではの化学反応が起こります。

貴族ほどお金はないけれど、貴族のようなものが食べたい。
そんな市民の願いと想像力が結びついて誕生したのが、“見せかけの料理”、いわゆるなんちゃって料理です。

次回はその話。


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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
モンズーを含む“パレルモ”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年3月号に載っています。

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