2024年3月29日金曜日

キャビアはしばらく見ないうちにずいぶん種類が増えてました。

(CIR12月号)の話、今日はクリスマスにふさわしいゴージャスな食材、キャビアとトリュフの話です。
カスピ海のチョウザメの 卵を初めて塩漬けにしたのは、2千年前のペルシャ人だと言われています。それをロシアの皇帝が輸入して宮廷に取り入れたところ、キャビアは黒い金と呼ばれる高級品として貴族の間に広まりました。さらにボルシェビキの革命で国を追われたロシアの貴族がヨーロッパに亡命してパリを始めとするヨーロッパに広めました。その勢いで、キャビアはイタリアにも伝わりました。こうしてシャンパンとキャビアの甘い生活が始まります。
キャビアを語る時はロシアの革命のことを抜きには語れません。貴族の存在もみそです。
庶民はあまり気軽には語れないし、口にできない食材だったのでした。
ロンバルディアには、ダヴィンチがパヴィアの近くのティチーノ河で大きなチョウザメを目撃し、エステ家のベアトリーチェとルドヴィコ・イル・モーロの結婚披露宴で、小さなキャビアの首飾りを贈ったという伝説が伝わっています。
ただしイタリアのルネサンスの時代にポー河にいたのはアドリア海のチョウザメ。
キャビアは、料理に数粒トッピングされている黒くてしょっぱい魚卵、ぐらいのイメージですが、たくさんの種類があるようです。
ロシア流のキャビアは、“malassol”と呼ぶ塩気の少ないもの。
マラッソル


昔はキャビアを保存するために大量に塩を添加していましたが、現在は3~5%とだいぶ減り、味を壊さない程度の量になっているそうです。
しょっぱくないなら、ちょっと食べてみたいかも・・・。
最近のキャビアは黒くもない。アルビノのチョウザメの卵はゴールデン・スターレットと呼ばれています。

典型的なキャビアはオセトラ。ロシアチョウザメの卵です。



チョウザメが絶滅危惧種になって、キャビアの世界は持続可能を目指して大きく変化。
そもそもチョウザメは100年以上生きる。
イミテーションキャビアの歴史も面白そう。下の動画は海藻キャビア


チョウザメを絶滅から救う方法は、キャビアビジネスがらみで世界中で研究されている。

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2024年3月28日木曜日

バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11です。

バカラ・アッラ・ヴィチェンティーナ。主要な材料はバカラ(ストッカフィッソ)。
バッカラは塩漬けして天日で干したメルルーサ。ストッカフィッソは塩を使わず、強風で干して木のように硬くなったメルルーサ。バカラのヴィチェンツァ風は半分に開いて骨を取ったストッカフィッソにアンチョビ入り玉ねぎのオイル煮やグラナを詰めて、オイルやミルクでとろ火で3~4時間煮たもの。ストッカフィッソの産地、ノルウェーのロフォーテン諸島のリチェッタではなく、ヴィチェンツァのベテラン料理人のオリジナル。付け合わせは黄色いポレンタ。


バッカラ・マンテカート。戻して煮たバッカラにオイルを加えながらマンテカーレする。付け合わせは白いポレンタ。


マンテカトゥーラはリゾットに使われるテクニック。煮汁に脂分を加えて乳化させて米をつなぐ。パスタはアルデンテだけど、米の場合はこの状態をアッラオンダalla'ondaと呼ぶ。
リゾットのマンテカトゥーラやアッラオンダはプロたちの注目の技。マスターシェフでこの人はグランシェフたちにボロクソに言われてる。

バッカラとストッカフィッソ。


イタリアのストッカフィッソは、ノルウェーと強く結びついている魚。そういえば、きのう食べた塩サバはノルウェー産だったなあ。1431年にベネチアの貴族の商人、ピエトロ・クエリ―ニがロフォーテン諸島で難破して、バッカラをイタリアに伝えた、という伝説はあまりにも有名。彼の足跡も詳細に分かっています。彼はクレタ島からマルヴァジーアやスパイスをベルギーのブルージュに運んでいたのでした。


干物貿易なんて言葉初めて聞きました。しかも1450年製作の世界地図まで登場して、ノルウェーのメルルーサは、途方もない旅をしたんですね。
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2024年3月27日水曜日

バッカラ料理とパッラーディオの建築物で知られるベネトの街、ヴィチェンツァ


(CIR12月号)のリチェッタ解説、今日はベネトのクリスマスの定番料理です。
ベネトのクリスマス料理と言えば、最近では、復活祭の前の断食の話の時に、詳しく説明しています。主役はバッカラでした。これまでにも,バッカラについてはかなり取り上げてきたので、もう新たに付け加えるともない、と思っていましたが、まだまだあったのでした。
そもそも、今まで主に取り上げていたのは、ベネチアのバーカロの名物料理、バッカラ・マンテカートでした。ベネチアに行ったら、バッカラ・マンテカートとイカ墨のリゾット、モレケは必ず食べておきたい名物。でも、今月のリチェッタの料理は、バッカラ・アッラ・ヴィチェンティーナbaccala alla vicentinaです。リチェッタはP.11。
ベネチアじゃなくてヴィチェンツァの料理です。

パッラーディオの街、ヴィチェンツァ

イタリアを代表する天才建築家、パッラディオが移り住んだ街で、彼の建築様式は、パッラーディオ主義と呼ばれ、街には彼の作品も多数残されています。もちろん世界遺産。


アメリカのホワイトハウスがパッラーディオスタイルを取り入れたことにより、彼の名声は不動のものになりました。ホワイトハウスが取り入れたと言われているパッラーディオの傑作、ヴィッラ・ロトンダ。

ヴィチェンツァの特産品

パッラーディオにはまって、バッカラの話までたどり着かなかった・・・。
次回に続きます。

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2024年3月26日火曜日

ウナギはフェラーラではコマッキオ地方の女王と呼ばれますが、名物料理はマリネ。瓶詰にして3~4ヵ月マリネします。

南イタリアではクリスマスの時期になると消費量が増えるウナギ。
中でもメスのウナギで長さ50㎝以上のものは一般に、カピトーネcapitoneと呼びます。
脂肪分がとても多い魚です。多いもので23%も脂質を含みます。
(CIR12月号P.10のリチェッタは)カピトーネのロースト。
南イタリアでは、ウナギをどんな料理にするのでしょうか。
 
ウナギのロースト。

ここまでは南イタリアのウナギを見てきましたが、イタリアでウナギと言えば、ベネトのポー河デルタのウナギです。コマッキオのウナギが知られています。

コマッキオのウナギ漁

コマッキオの谷の女王と言われているのがウナギです。ウナギは淡水魚ですが、産卵は海でします。確か、採った後も長い時間生きているので流通が難しい鮮魚でも、各地に広まったと言われています。ウナギを女王と呼んだのはフェラーラの人たち。ウナギはフェラーラの大切な食材で、ズッパ、串焼き、網焼きなど16種類の方法で調理できると言っていました。中世には一晩で1.5トンも獲れたウナギですが、今では絶滅危惧種。
でも、ウナギの典型的な料理、ウナギのマリナータは、まだ生き残っています。

コマッキオのウナギのマリナータ


ウナギのグリルは想像ついても、マリネはさすがに想像できない。しかも瓶詰て・・・。
3~4ヵ月後に出来上がり、出荷されます。
コマッキオのクリスマスイブの料理。


ウナギのウミド

ヨーロッパウナギの放流

コマッキオのウナギの収穫祭。パスタもありますね。

コマッキオのウナギのリゾット


歴史のあるコマッキオには伝統的なウナギ料理が各種あります。
ウナギのマリナータの博物館もあります。ウナギのマリネだけでなく、アンチョビの缶詰も作ってます。

そういえば今では想像もできないけど、昔はスペイン産のウナギの稚魚のオイル漬けなんかが売られていました。ワインのお供にパンに添えていただくと、超美味しくて、毎日食べていたような・・・。

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2024年3月25日月曜日

ミステリアスなヨーロッパウナギが好きだったフェデリコ2世


今日のクリスマス料理は“カピトーネのロースト”。プーリア料理です。
クリスマスのウナギと言えば、ナポリの伝統が有名ですが、(CIR12月号)によると、この習慣は、どうやらホーエンシュタウフェン家のフェデリコ2世がウナギ好きだったことに由来しているようです。

ナポリのクリスマスイブのカピトーネ。

プーリアに行くまで、正直言ってフェデリコ2世の名前なんて聞いたこともありませんでした。でも、プーリアではこの人のことを知らなければ、何も知らないに等しいというくらいの重要人物です。
でも、もっと正直に言うと、プーリア人に敬愛されるフェデリコ2世ですが、その歴史は複雑すぎてついていけない。唯一記憶に残ったのが、カステル・デル・モンテを作った人ということでしたが、この記事を読んで、ウナギが好きだった人、という情報が追加されました。

フェデリコ2世

シチリア王で神聖ローマ皇帝で、ミステリアスな世界遺産、カステル・デル・モンテを建築した人物。

ウナギは日本でも謎が多い生き物ですが、ヨーロッパのウナギと日本のウナギは、生まれる場所からして違うようです。日本のウナギはマリワナ海溝で生まれて日本までやってくることが知られていますが、ヨーロッパのウナギはサルガッソ海で生まれてメキシコ湾流にのって移動するようです。と書くと1行にも満たずに説明してしまいますが、この短い文章にたどり着くまでは大変でした。この文章の中には、大昔からの謎が詰まっています。

ウナギの渡り。

ウナギはどこから来たのか。

これほど複雑な生態のウナギが、イタリアではクリスマスイブや大晦日のご馳走として広まったのです。ウナギの生態はあまりにもミステリアスなので、ウナギの話は、いつもここから先に進まない。

プーリアの市場のウナギ。

プーリアのレシーナ湖のウナギは絶滅危惧種。

ウナギのことを話すには、その生態を知らないとなりません。カピトーネはメスのウナギですが、ウナギの雌雄が決まるシステムもよくわかっていない。
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2024年3月22日金曜日

リグーリアのサラダの女王、カッポン・マーグロは、船の上で何か月も過ごしてきた海軍の船員たちを出迎える歓迎のご馳走でした


(CIR2021年12月号のリチェッタは)各州のクリスマス料理。
今日はリグーリアの料理、カッポン・マーグロのテリーヌCappon magro in terrinaです(リチェッタはP.9)。
なかなかインパクトのある名前の料理ですよね。
リグーリアの歴史的スペチャリタで、サラダの女王。
クリスマスらしく、魚と野菜のサラダで肉類は入りません。
カッポンとはcappone/カサゴのこと。
カサゴを使う、またはカサゴが入るような豪華な、という意味です。
様々な食材を使うので、下ごしらえが大変な、手間のかかる、ある意味では日曜日の料理です。
カッポン・マーグロ

この料理には、リグーリアならではの背景があります。
つまり、海洋国家ジェノヴァを擁するリグーリアでは、一家の主が海軍の船員だったのは珍しくはなく、例えばこの料理にも乾パンが使われています。

実は昔、リグーリアまで行ってレストランの厨房でカッポン・マーグロを作るところを見学させてもらったことがありますが、実は、シェフもこの料理について歴史や背景をあまりよく知りませんでした。
海軍の船長の帰宅を祝う料理だそうですよ。そりゃ、今時の人は知らないですよねえ。海軍の船員たちは何ヵ月もの間、船の上で乾パンと干ダラを食べていたそうです。
そんなお父さんを歓迎するための精一杯のご馳走だったんですね。
ただ、ここにも時代の流れがあって、今ではカッポン・マーグロは豪華なパーティー料理じゃなくて、一人前サイズでサーブされる料理になったそうです。

例えば下の動画のアスピック。さらに(CIR)のリチェッタはテリーヌです。カラフルな食材を重ねるので、かなり華やかな料理。ポイントはスイスチャードの鮮やかで濃い緑の葉とサルサ・ヴェルデ。緑色とよく合う料理なんですね。

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2024年3月21日木曜日

日曜日とクリスマスのパスタ、トルテッリーニ・イン・ブロード。

詰め物入りパスタの話をしていますが、詰め物入りパスタは、エミリア・ロマーニャ地方の名物料理。この地方では、伝統的に、クリスマスや祝日の料理で、トルテッリ―ニを作る時は家族中の女性がキッチンに集まって、おしゃべりしながら協力し合って作ります。
そういえば、木曜はニョッキ、金曜は魚、土曜はトリッパ、というい言い回しがありますが、日曜日も特別な料理を作る日。日曜日の料理は、手間暇かけて作るご馳走です。時間がたっぷりあって、家族がみんな揃う日曜日や祝日は、女性陣の腕の見せ所。
エミリア地方の詰め物入りパスタは様々ありますが、例えば、エミリア地方の中心地、ボローニャのシンボルはトルテッリーニ。

トルテッリーニは1個2gにも満たなくて、その大部分が詰め物の重さ。生地は詰め物を包んでも破れないぎりぎりまで薄く伸ばします。さらに小さければ小さいほどよい、とされます。ヴィーナスのおへその形と言われるのですから、その小ささは、愛らしいと形容されます。小指の先より小さいとも言います。正確にはカステルフランコ・エミリアの宿屋の主人がのぞき見したヴィーナスのおへそがモデル。

カステルフランコ・エミリアにある衝撃のセクハラ満載の昭和館のある記念碑。

トルテッリーニ。

ボローニャのトルテッリーニ信者会のリチェッタ。

詰め物には肉類がたっぷり入っています。肉の詰め物のパスタは、ゆでると肉のたんぱく質が溶け出ます。そのゆで汁、つまりブロードをパスタにかけて食べるのがトルテッリーニとその仲間、パルマやピアチェンツァのアノリーニ、ロマーニャ地方のカッペッレッティもこの食べ方です。
肉が入らないマーグロの場合は塩と油を加えた湯でゆでて水気を切り、バターやチーズであえるのが定番。水気を切るのは美食の観点からは誤りともされます。
リッチな詰め物に合わせるソースはシンプルなものが中心。
エミリア地方は畜産業が盛んで、パルミジャーノのようなチーズや去勢鶏のブロードのような濃厚なブロードを造り出すことができました。
パスタに詰め物にブロードと、時間がある日曜日じゃないとできない料理です。

エミリア地方の詰め物入りパスタを食べ歩いて詰め物とブロードを食べ比べるのもおもしろそう。

牛と鶏のトルテッリーニのブロード。

そういえばもクリスマスのトルテッリーニがサーブされる時は、まずその香りが料理の到来を告げます。だからブロードの香りはこの地方の人々の子供の頃からの記憶に深く刻まれています。

鶏より1ランク上の去勢鶏(カッボーネ)のブロード。

去勢鶏かひね鶏のブロードが伝統的ですが、牛肉のブロードも人気があります。ブロードを取った牛肉はセコンド・ピアットのボッリートとしていただきます。

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2024年3月19日火曜日

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。
「マリア・ルイジアの小さな街、パルマで誕生したアノレンanolenは、バターとグラナの娘で、円筒形や半円形をしたエミリア地方の伝統的詰め物パスタ」
イタリア人の感性って素敵~なのは、よく知ってますが、パルマのことをマリア・ルイジアの小さな街、なんて言うか普通。私にとっては、パルマと言えばパルミジャーノの街でした・・・。ところでマリア・ルイジアって誰?
パルマの女公ですが、歴史的には神聖ローマ皇帝(後のオーストリア皇帝)の娘でナポレオンの妻として知られる人です。
イタリア語ではマリア・ルイジア。フランス語ではマリー・ルイーズと、どう呼ぶかで属する国も変わっちゃう人。

マリア・ルイジア

パルマ・フード・ツアー


パルマのアノリーニ・イン・ブロード

アノリーニは、円形の型で抜いたり、“bossoloボッソロ”と呼ばれる丸い型で抜きます。
エミリア地方の伝統パスタでクリスマス料理、バターとグラナの娘。本物のパルマのアノリーニは、牛や去勢鶏のブロードをかけてサーブします。(CIRP.5)のリチェッタも、牛と鶏のブロードを取ってゆでてます。

エミリア地方のブロードは、詰め物入りパスタをリッチなブロードでゆでます。長時間煮るのがポイントで、コクはあるけどギトギトじゃないブロード。“saporito ma non grasso”
パルマやピアチェンツァだけじゃなく、ロンバルディアのクレモナなどにも広まりました。

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2024年3月18日月曜日

クルルジョネスは芸術的な3Dの詰め物パスタだけど、パスタを麺棒で透き通るように薄く均一に伸ばす技も芸術的。詰め物入りパスタからは食文化が出来上がる過程が見えてきます。


サルデーニャのクルルジョネス(リチェッタはCIR2021年12月号P.4)は旅をするのに値する芸術的なパスタ。

形が芸術的なパスタですが、このパスタの詰め物は、ゆでたじゃがいも、ペコリーノ、ミントなど。
古代ローマの羊飼いによってイタリア中に広まったフレッシュチーズを使うリチェッタも。
ちなみに豚や牛の飼育はロンバルディアから広まりました。
詰め物入りパスタは、閉じ方がポイント。クルルジョネスはかなり複雑で伝統的なパスタ。
イタリアには閉じ方で有名な詰め物入りパスタがたくさんあります。
まず、このタイプのパスタは北イタリアの食べ物で、南ではあまり見かけません。そういう意味からもクルルジョネスは特別なパスタ。
ローマ時代に羊飼いの文化が広まった地方では、リコッタなどのフレッシュチーズや野菜を具にし、その後、ロンバルド族に支配された地方では牛と豚の飼育が義務付けられたため、パスタの詰め物にも牛肉や豚肉を使うようになったという説もあります。

このパスタは薄く平らに伸ばすことに特化した北伊で栽培される軟質小麦粉を使うからです。硬質小麦粉は3Dの立体的な造形には向いていますが、細かい細工には適しません。
北イタリアには有史以前から軟質小麦が生えていました。一方、イタリア南部や地中海全的では、硬質小麦が栽培されています。北部の気候は硬質小麦には適さないのです。
軟質小麦はパンにするとおいしいですが、粘り気がありすぎて小麦粉と水を混ぜた乾麺には向きません。軟質小麦は硬質小麦と比べると、でんぷんの量が多く、グルテンを始めとするたんぱく質、ミネラル、ビタミン、脂肪が少ないからです。そこで北イタリアの人は動物性たんぱく質を加えることによって腰のある生地を作りだしました。軟質小麦にない性質を補う動物性たんぱく質、それは卵白でした。
北伊の詰め物入りパスタの傑作は、トルテッリーニです。


クルルジョネスによく似た詰め物入りパスタ、ピアチェンツァのトルテッリ・コン・ラ・コーダ。
色んな形の詰め物入りパスタがありますが、基本は薄~く伸ばしたパスタ・テーザ。これをカットするとタリアテッレになります。
パスタを薄く均一に伸ばす技も芸術的。ボローニャの女性はこの技を母親から受け継いでお嫁に行きます。


トルテッリーニの仲間、パルマやピアチェンツァのアノリーニは道具で成形するブキッチョの味方。トルテッリーニ、アノリーニ、カッペッレッティなどは同じ生地から造られる詰め物入りパスタですが、トルテッリーニは生地が一番薄い。

詰め物入パスタからはイタリアの食文化が形成される過程が見えてきます。

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(CIR)は『クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』という2冊のイタリア料理の月刊誌のリチェッタと記事を日本語に翻訳した約50ページの小冊子です。
価格は1冊\900(税・送料込)、1年12冊の定期購読だと15%引きの\9200(税・送料込)になります。紙版と、ネット上にupするPDF版があります。PDF版の価格は\800/号、定期購読は\7700/1年12冊です。料理雑誌も販売しています。

現在、2021年の号を販売中です。それ以前の号と、旧総合解説はシステムの変更のため販売を終了しました。
現在販売している(CIR/クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)のバックナンバーは、2021年1~12月号です。
定期購読は2021年からできます。
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