2023年1月31日火曜日

毎朝お弁当を作ってくれる母親への感謝と、毎週日曜日に朝早くからラグーを煮てパスタを打つ母親への感謝は、似ているなあ。

昨日取り上げた鴨のラグーですが、
カルロ・クラッコシェフがイタリア料理を作る若手に向けてイタリア料理の基礎知識を語る本、『クールにしたいならエシャロットを使う』

に、“鴨のラグーのガルガネッリ”というのがありました。
この本は、イタリア料理の基礎的な知識を若者に伝えたい、という思いがにじみ出ている温かい本で、ラグーについては“ラグーのラザーニャ”の章で詳しく書かれています。
それによると、
「私のは母親は、毎週日曜日にラグーを作った。私は日曜にはいつもより遅く起きるのだが、目覚ましは母親のラグーの香りだった。ラグーのラザーニャは祝日の定番のご馳走で、しかも温めなおしやすく、翌日でも美味しい数少ない料理だ。私の母は、前日にラグーを作り、翌日は朝早く起きてパスタを作った。10時頃に料理をオーブンに入れ、ミサに行ってる間に休ませて夕食の時間には完璧に出来上がっていた。」
なんだか、この思い出からは、クラッコシェフだけでなく、大抵のイタリア人が抱いている日曜の様子や、日本人なら朝早く起きてお弁当を作ってくれる母親に抱くのと同じ感謝の思いが伝わってきます。

ラグーのラザーニャ。

クラッコシェフは、鴨のラグーは間違いでなければビゴリのためのソースで、“ラグー・イン・ビアンコragu in bianco”だと言っています。そして本では、あえてエミリア地方のパスタ、ガルガネッリと組み合わせ、そのアイデアは、このラグーがラグー・イン・ビアンコだったので思いついたと書いています。
昨日はまったく気が付かなかったのですが、鴨のラグーは、ラグー・イン・ビアンコでした。
鴨のラグー。

イン・ビアンコとは、もちろんトマトが入らないので白い、ということ。
ラグー・ボロニェーゼの次は、鴨のラグーをマスターすれば、ラグーはクリアですね。
パスタ料理の研究家でイタリア料理アカデミーの会長も務めたパオロ・ペトロー二の本、『スパゲッティ・アモーレ・ミオ

によると、ラグーはナポリの門番のラグーとボロニェーゼの他に、内臓のラグー、ラグー・ビアンコというのがあるようです。

イン・ビアンコで思い出しました。
実は、先月の(CIR12月号)にも、イン・ビアンコの料理が載っていたのです。
ナポリの名物料理、サルトゥ・ディ・リーゾがイン・ビアンコでした(P.39~)。
記事によると、この、ナポリで一番豪勢な料理、サルトゥは、もともと、イン・ビアンコな料理だったのでした。
この料理は米料理で、米料理が赤くないとは、イタリア人でなくても残念です。
そうです。よく考えてみると、このナポリ料理はパスタじゃなくて米料理なのです。

シチリアのアランチーニ。これもイン・ビアンコだ。ただしサフラン入りなので
赤より黄色で白くはない。

プーリアの代表的米料理、リーゾ・パターテ・コッツェのティエッラも赤くない。

そもそもイタリア料理を象徴する米料理、リゾット・ミラネーゼは黄色。
米料理は赤い、というのはチキンライスに馴染みすぎた勝手な思い込みでした。


という訳で、ラグーが赤い、というのも刷り込まれている思い込みかも。
そもそも、サルトゥ―はイン・ビアンコの料理でした。
サルトゥは、とにかくゴージャスなご馳走。
ところが、その複雑さがあだになって、今ではナポリのリストランではシェフに敬遠されて作らなくなりました。逆にトラットリアのほうが出会う可能性が高いという料理。
さらにトラットリアだとトマトソース入りが多いという不思議な料理。
とにかく、サルトゥを出している店は貴重、ということ。

サルトゥの一種、ナポリのボンバ・ディ・リーゾbomba di risoもラグーが合う米料理。

ボンバとは爆弾という意味。型から出すときテンション上がります。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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