去勢鶏の話をしていたのに、最後は去勢鶏のオレンジ風味というフランスの宮廷料理の話で終わっている。
またやっちゃいました。
これ、トスカーナ料理の話をしている時に陥りがちな現象なんです。
トスカーナ料理ならではの現象で、その理由はフィレンツェの存在です。
トスカーナ料理は、都市(フィレンツェ)と、その周囲の田舎(キアンティなど)に大別されます。
そしてフィレンツェには、メディチ家の宮廷がありました。
その力は強大で、フランスの宮廷とも密接なつながりがあったのです。
トスカナーナ料理の話をしていて、いつの間にかフランス料理の話になっていても、不思議はありません。
そう言えば、トスカーナの名物料理ビステッカ・フィオレンティーナですが、ビステッカは英語のビーフステーキがイタリア語風になまったものでした。かつてフィレンツェはイギリスの裕福な若者たちの人気の旅行先でした。
というわけで、ヨーロッパの貴族たちと深い結び付きがあったのがこのトスカーナの美しい街の特徴です。
去勢鶏に話を戻すと、この鶏は、現在では飼育数は激減しています。今は、去勢鶏の代わりとなっているのが七面鳥。小規模ながら去勢鶏の生産が今も続いている街の一つが、ピエモンテのモロッツォ・ディ・クーネオ↓
そもそも去勢鶏は、この地方の珍しい土着品種の鶏を去勢して、クリスマスのために太らせた(約3kg)もので、昔は、地元の農家は去勢鶏を売ってクリスマスのプレゼントを用意していたそうです。
広い畑で平飼いにして大事に育てられています。
足につけられた金属の輪は、本物のモロッツォの去勢鶏の証。調理されてテーブルにのせられても外しません。
ちなみに去勢は、古代ギリシャではひなの精巣に焼きごてを当て、さらに蹴爪やトサカ、睾丸も取り除きました。
今では局所麻酔をかけて去勢して、放し飼いで自然に太らせます。
去勢鶏はおいしいブロードがとれることでも知られています。これはクリスマスの名物パスタ、トルテッリーニをゆでるのに最適です。
去勢鶏のブロードbrodo di cappone。
材料/去勢鶏・・1羽、3kg
にんじん・・1本
玉ねぎ・・1個
セロリ・・2本
塩、こしょう
粗塩・・2つかみ
水・・3㍑
・鶏の腹に塩、こしょうして形が崩れないように縛る。
・大鍋に鶏と粗く切った香味野菜(玉ねぎは底をつなげて切込みを入れる)を入れて水で覆い、蓋をして強火にかける。沸騰前に一度アクを取り、再び蓋をして沸騰させる。沸騰したらとろ火にして蓋をして3時間ゆでる。ゆでる間は常に軽く沸騰させ、裏返さない。
・ゆで上がる30分前に粗塩を加え、蓋をしてさらにコトコトゆでる。
・鶏を取り出し、サルサ・ヴェルデを添えてセコンド・ピアットにする。
・ブロードは細かい目で濾して室温に冷まし、冷蔵庫で24時間休ませる。
・翌日、表面の固まった脂を取り除く。
鶏のブロードは、鶏のタンパク質が溶け出たただのゆで汁ではなく、パスタの大切な一部。
肉が入らない“マーグロ”なゆで汁にする場合は、エキストラバージンオイル入りの熱湯でゆでて水気を切り、溶かたバターとチーズであえる。
ヴィチェンツァには、去勢鶏と香草を牛の膀胱に詰めてゆでてゆで汁も集めるcappone alla canevera↓という名物料理があります。これも今では、牛の膀胱ではなく、テーブルにのせても見栄えが悪くない調理用の透明の袋を用いて作ります。
斬新な出汁のとり方。
明日は、クリスマスのパスタの話。
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