2021年3月31日水曜日

グラニャーノのパスタはシェフの発想力を引き出し、イタリア料理がフランス料理を超える革命のきっかけとなった。

ボンゴレ名人の1位と2位が同じパスタを使っているのを知って、気が付きました。
おいしいアサリを手に入れるのも大事だけど、パスタも大事だ、と。

ちなみに二人共、使っていたのはグラニャーノのパスタ。

値段が高くても、世界的に強力に支持されているグラニャーノのパスタ。
グラニャーノのパスタは他のパスタとは明らかに大きく違う、アルティジャナーレなパスタの傑作。
グラニャーノのパスタはなぜこんなに特別なのでしょうか。

プーリアのダウニアDauniaの丘陵地がグラニャーノGragnanoのパスタになる小麦の産地。
小麦は自分と息子や家族に流れる血だと語る小麦農家。

グラニャーノGragnanoの語源は小麦grano。
グラニャーノはアマルフィ海岸の始まる場所。
澄んだ水と涼しい海風に恵まれていました。
グラニャーノには600年以上のパスタの大量生産の歴史がありますが、
パスタの天日干しをするようになったのは紀元1000年以降のこと。
総生産量の約半量が世界中に輸出され、クリエイティブなシェフの元で最高のイタリア料理に生まれ変わっています。
シェフたちが新しく生み出した料理は、フランス料理を越えようと試行錯誤していた80、90年代のイタリア料理界に革命を引き起こます。

グラニャーノのパスタのスーパースターの一人は、ドン・アルフォンソ。
彼のリチェッタもたっぷり載っている南伊のパスタ名人のリチェッタを集めた本、パスタ ; サポーリ・エ・プロフーミ・ダル・スッド
を久しぶりに読んでみたら、こんな文章がありました。
「ナポリ近くの海辺の街、トッレ・アンヌンツィアータTorre AnnunziataとグラニャーノGragnanoは、パスタの歴史の最初から、パスタ・アルティジャナーレという小さな世界の重要な街だった。
なぜ重要なのか。
まず、乾燥のために必要な気候に恵まれてた。
現在でも、ナポリスタイルの天日干しには3段階ある。
1.表面に薄い層を作る“incartamento”、これがしっかりできるとゆでても崩れない。
2.湿度のある部屋で休ませて微発酵を起こさせる“rinvenimento”、これによって風味が強くなる、ナポリ人に取って、パスタは生き物なのだ。
3.そして最後は最終乾燥。ゆっくり乾燥させることによって、パスタはますますゆでても崩れなくなる。ナポリのパスタの腰と弾力がこれによって生み出される。

パスタの発酵については、他の本にも書かれていたけど、ここまで簡潔ではなく、小難しそうだったので、省略してきました。
そして19世紀にフランスの美食文化の教祖、アントンナン・カレームがマカロニのティンバロに崩れにくいこのパスタを使うことを勧めたことによって、グラニャーノのパスタは国際的な名声を得ます。

アントナン・カレームはイタリア料理にも多大な影響を与えたていたのですね。
パスタの製造過程について詳しく知りたいなら、お薦めの本はパスタ・フォルメ・デル・グラノ

パスタでイタリア料理に革命を起こしたシェフの本なら、パスタの本の傑作の1つ、パスタ・レボリューション

グラニャーノのパスタメーカーの本ならジェンティーレ/ストーリア・ディ・ファブリカンティ・ディ・マッケローニ


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2021年3月30日火曜日

イタリアのボンゴレ名人は優しい漁師の知的なシェフだった。RIP・・・

過去の「総合解説」を調べていたら、『ガンベロ・ロッソ』がアサリのパスタ、ベスト10というのを発表していたのを見つけました。07/08年6月号に載っています。
かつてはカルボナーラのナンバー1店に選ばれたローマのロッショーリ(店のwebページはこちら)が大ブレイクするなど、何かと影響力の大きな記事です。

カルボナーラを始めとする様々なリチェッタを公開した本、『ロッショーリ


ボンゴレの1位に選ばれたのは、リヴォルノ(トスカーナ)の“ラ・ピネータ”という店でした。


ナポリでもベネチアでもないトスカーナの店ということは、シェフの腕で選ばれたんだろうなあ。
シェフのルチアーノ・ザッゼリは漁師でもあるけれど、一般的なイメージとは逆の物静かな人物。魚料理の知識が豊富なシェフと慕われています。
ミシュラン1つ星の彼の店を有名にした料理はボンゴレでした。
リボルノはイタリアの西海岸で3番めに大きな貿易港。運河が張り巡らされた景観はどことなくベネチアのよう。↓


ここまで調べてきて、いきなり、先月シェフが自殺したという記事に遭遇しました。
長い間、イタリアのナンバー・ワン、ボンゴレのシェフと言われていたと知ったばかりなのに・・・。

ピネータの料理。

ボンゴレの動画は残念ながら見つからず。
ガンベロ・ロッソによると、オリーブオイル、にんにく、唐辛子で熱したアサリをマンテカーレするときに、生のまま開けたアサリを加えるんだそうです。

ラ・ピネータに次ぐ2位はアンコーナのマウロ・ウリアッシシェフのウリアッシ。
これは動画がありました。


1位と2位のシェフの両方が使っていたのはパスタ。
グラニャーノのジェラルド・ディ・ノーラというブランドでした。
メーカーのwebページはこちら
ジェラルド・ディ・ノーラのスパゲットーニのボンゴレ。
ボンゴレのBGMにパバロッティはぴったりだねー。




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ロッショーリ

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2021年3月29日月曜日

ベネチアのスカンピのパスタ

アサリのパスタの話が出たときに、ベネチアの魚市場の話をしましたが、ベネチアならこの店、『ハリーズ・バー』。
この本は、哲学的でプライドが高そうなワインメーカーの本と比べると、驚くほど読みやすくて、世界中の人に向けたシンプルなメッセージが明確に伝わる優しい本。


魚の章には、こう書かれている。
「毎日魚市場に行ってその日の料理のための魚を仕入れるレストランは多い。
私(ジュゼッペの息子、アリーゴ・チプリアーニ)もそうだった。
普通は仕事が終わって朝の1時頃に店を閉め、5時に市場に出かけるまで立っているのはスーパーマンでないと無理だ。
ハリーズ・バーには魚の仕入れ担当と野菜担当が1人ずついた。
前の晩に必要な食材のリストを作ったら一眠りして、翌朝早く新鮮で最上の魚を仕入れに出かける。
小魚や青魚は新鮮さが命。
一定の大きさ以上の魚は2日程度の熟成が必要だ。」
ベネチアの市場のスカンピとスパゲッティ・アッラ・ブーザラ。↓


スパゲッティ・アッラ・ブーザラSpaghettti alla busaraはフリウリ・ベネチア・ジューリアのスカンピの伝統的パスタ。
ブザラというのは、嘘(ブジア)、という意味で、トマトでスカンピが隠れるので実は入っていないかも、という意味と、料理に使った鍋の名前、という説などがありますが詳しくは不明。

スカンピ・アッラ・ブザラScampi alla busara

材料/4人分
スカンピ・・1kg
にんにく・・1かけ
生唐辛子・・1本
ホールトマト・・300g
白ワイン・・50ml
パン粉・・20g
イタリアンパセリのみじん切り・・大さじ2
EVオリーブオイル、塩

・スカンピの背か腹に包丁目を入れる、またははさみで切る。
・大きなフライパンに油、にんにく、唐辛子を入れて炒める。焼き色がついたらパン粉(トマトソースのつなぎになる)を加えてさっと炒める。
・スカンピを重ねないように入れる。パン粉は焦がさないようにする。
・ワインをかけてアルコール分を飛ばす。
・小さく切ったトマト、塩少々を加えて蓋をし、15分熱する。
・にんにくと唐辛子を取り除いてイタリアンパセリを散らす。

パスタはスパゲッティやタリアテッレが合います。

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ハリーズ・バー
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2021年3月28日日曜日

注目度上昇中の地中海のブランドエビ、ガンベロ・ロッソ・ディ・マザーラ。

シーフード・パスタは、貝、タコと軟体動物molluschiのパスタから入って、次は甲殻類crostaceiのパスタへと続きます。
軟体動物は背骨がない生き物。貝、タコ、イカなどです。甲殻類は節足動物、エビやカニなど。
シーフードパスタの華ですね~。
エビ、gamberiは7~10cmの小さなものはgamberetti/ガンベレッイ、15cmほどの大きなものはgameroniはガンベローニと呼びます。
イタリアの有名なブランドエビと言えば、シチリアのマザーラ・デル・バッロのガンベロ・ロッソ・ディ・マザーラgambero rosso di Mazara。
年々注目度が上がっている地中海の高級エビです。

ガンベロ・ロッソ・ディ・マザーラの漁↓

鮮やかな紅色だけでなく、味の良さでも知られるこのエビの最高の食べ方は生で。
パスタにしても、グリルやフリットにしてもいいが、加熱する時は片側45~50秒以内。
飲みっぷりのいいガンベロ・ロッソ・ディ・マザーラのいだき方。豪快な食レポ。↓

対岸のチュニジアからわずか200kmのマザーラ・デル・バッロ。
マザーラ・デル・バッロの港と市場



ガンベリ・ロッシのスパゲッテイSpaghetti con Gamberi Rossi
材料/3人分
ガンベリ・ロッシ、または他のエビ・・300g
ミニトマト・・200g
スパゲッティ・・1人80g
白ワイン・・1/2カップ
EVオリーブオイル
イタリアンパセリ、塩
にんにく

・エビは殻をむいて小角切りにする。頭は取っておく。ミニトマトは半分に切る。
・フライパンに油とにんにく1/2かけを熱し、にんにくに焼き色がついたらエビの一番美味しい部位、頭を加えて数分炒め、スーゴに風味を加える。
・エビを加えてさっと炒め、ワインをかけて塩をする。アルコール分を飛ばし、エビと頭を取り出す。
・ミニトマトを加える。必要なら水を加えながら15分熱する。塩とイタリアンパセリを散らす。
・スパゲッティをゆでる。
・スーゴにエビとトマトを加えて10分なじませる。
・水気を切ったスパゲッティを加えて2~3分なじませ、皿に盛り付けてイタリアンパセリを散らす。


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2021年3月27日土曜日

タコの頭を持って湯に足を3回浸してカールさせ、コルクを入れてゆでるのがナポリ流。理由は謎。

シーフード・パスタの話題、アサリの次はタコです。
タコは、ナポリのサンタ・ルチア地区の名物です。

タコのサンタ・ルチア風は、サンタ・ルチアの漁師たちの伝統的なタコの調理方法。
タコとトマトの水分だけで煮て、煮ている感に出たタコの汁がソースになります。ジューシーなので、パスタのソースにもなります。パンに乗せてクロスタータにしたり、ポレンタにも合います。

タコはポルポ・ベラーチェpolpo veraceと呼ばれるものが美味しいと言っていますね。
吸盤が2列あるとも言ってるので、輸入品のモロッコ産ではなく、国産のメスのタコということなのでしょうか。

タコのルチア風Polpo alla luciana

材料/4人分
国産タコ・・1kg
EVオリーブオイル・・1カップ
イタリアンパセリ
唐辛子・・1本、塩
白ワイン・・1/2カップ
ホールトマト・・3個

・全部の材料を冷たい鍋に入れて蓋をし、濡らしたオーブンシートを巻きつけて糸で縛り、隙間を塞いで弱火にかける。途中で蓋を取らずに時々鍋をゆすりながら2時間煮る。

これで完成です。
途中で一切手を加えない料理。
タコから出る汁の美味しさを発見したナポリでは、タコの汁そのもののタコのブロードが、ストリートフードとして人気になりました。
他に何もなくても、タコさえあればできる究極の貧しい料理でした。バリエーションは無数にあります。


クチーナ・ディ・ナポリ』から、たこのブロードBrodo di purpoのリチェッタをどうぞ。

材料/4人分
タコ・・小1杯、600g
ローリエ・・数枚
粒こしょう、塩

・大鍋にたっぷりの水を張、香料、塩を入れて沸騰させる。
・タコの頭を持ち、足を3回浸して鍋に入れ、約45分ゆでる。
・ブロードをカップに注ぎ入れ、塩、こしょうで調味する。好みで油を回しかけたりレモンの輪切りを入れてもよい。足はカップに1本ずつ入れる。


下の動画では5kのタコでも頭を持って足をカールさせています。コルクを入れる理由は謎。ナポリの伝統だから、ナポリ人なら守らないわけにはいかないのでしょうか。
湯で時間はタコ1kgにつき25~30分。



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クチーナ・ディ・ナポリ
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2021年3月26日金曜日

家族のパスタ、シャラティエッリでコンクールに挑んだシェフは、今やカプリの高級ホテルの総料理長。イタリアンドリームの具現者。

シーフードパスタの原点、アサリのスパゲッティはカンパーニアの名物料理ですが、カンパーニアにはもう1品、有名なシーフードのパスタがありました。
スローフードのパスタの地方料理の本、パスタ・フォルメ・デル・グラノ
には、こうあります。
「有名なパスタは考え出した人が不明なものが多いが、シャラティエッリscialatielliは違う。1978年と最近の発明だが、カンパーニアの伝統食品に登録されている。
考案者は、アマルフィ出身でソレント料理を熟知するエンリコ・コゼンティーノシェフだ。
彼は国際料理コンクールで審査員をあっと言わせるような料理を作ろうとしていた。
そこで、家族の伝統のパスタの記憶を呼び覚まして卵入り生麺のパスタ、シャラティエッリを再現した。
棒に巻きけて作るフジッリタイプのパスタで、長さは約10cm、タリアテッレのような平らな麺のパスタだ。貝のソースを組み合わせたが、オーソドックスなトマト入りのソースではなく、仕上げにチーズを散らした。(シーフードパスタにチーズは異色の組み合わせ)
昔は棒に巻きつけて作るパスタだったが、次第に細く、厚いパスタになっていった。
30年間ホテル学校で教師を務めた気さくな人柄のコゼンティーノシェフの元には多くの若者が料理を学びに訪れ、ホテル学校も開いた。イタリア料理アカデミーのカンパーニア支部の会長も務めている。
現在はカプリのセレブ御用達の高級ホテル、グランド・ホテル・クイジサナの総料理長。

シャラティエッリはカンパーニアのパスタなのに乾麺じゃなく手打ち麺。
考案者のエンリコ・コゼンティーノ自らが作るシャラティエッリ。

パスタ・フォルメ・デル・グラノ』にはリチェッタがあったので訳してみます。
Scialatielli ai frutti di mare ammolliati/貝のシャラティエッリ
材料/4人分
《パスタ》
セモリナ粉・・200g
0番の小麦粉・・200g
卵・・1個
山羊のカチョリコッタ・・40g
EVオリーブオイル、塩
《ソース》
貝(国産アサリ、ルピーニ、アサリ、ムール貝、シャコ)・・計900g
にんにく・・2かけ
イタリアンパセリ・・1房
固くなったパン・・200g
EVオリーブオイル、塩

・貝を別々に砂抜きする。
・2種類の粉を混ぜてフォンタナに盛り、中央に卵、おろしたカチョリコッタ、油、塩少々を入れる。水を少量ずつ加えながら最低15分こねる。まとめて布巾をかぶせて30分休ませる。
・その間に貝を洗って下ごしらえする。
・パンを粗く砕いてオーブンでトーストする。
・崩したパン、たっぷりのイタリアンパセリとにんにく1かけのみじん切り、塩、油を混ぜる。
・生地を麺棒で厚さ3mmに伸ばして10分乾かす。巻いて幅3~4mm、長さ約10cmに切る。
・フライパンに油大さじ2を入れてにんにく1かけのみじん切りを炒める。貝を加えて強火で開ける。
・パスタをゆでて貝のフライパンに入れ、仕上げに香草パン粉を加える。

シーフードのシャラティエッリ。


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パスタ・フォルメ・デル・グラノ
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2021年3月25日木曜日

シーフードパスタのベースはアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ→ボンゴレ→ペスカトーラ。

シーフードパスタのテーマに移っていますが、スパゲッティ・アッラ・ペスカトーラspaghetti alla pescatora、パスタ・コン・イ・フルッティ・ディ・マーレpasta con i frutti di mare、コン・イ・モッルスキpasta con i molluschi , アッロ・スコッリオallo scoglio、マリナーラmarinaraなど、いろんな呼び方があることを今更ながら、再認識。
どの名前で呼ぶかは、シェフのインスピレーション次第。
貝のスパゲッティ。
材料/
にんにく
唐辛子
イタリアンパセリのみじん切り
アルゼッレ(小型の二枚貝)・・200g
国産アサリ・・500g
ムール貝・・1kg
太いスパゲッティ・・400g
EVオリーブオイル

・貝は砂抜きして下ごしらえする。
この人もアサリを台に叩きつけてますね。
・フライパンに油大さじ5~6と潰した皮つきにんにく1かけ、唐辛子1片を熱し、全部の貝を加える。蓋をして強火で熱し、開いたら火を止めて汁を漉す。
・パスタをゆでる。
・フライパンに油大さじ4、にんにく、唐辛子を熱して貝の汁を加える。
・貝の殻を一部取り除く。
・パスタを3~4分短くゆでて貝の汁のフライパンに加え、にんにくを取り除く。パスタが汁を吸ったら貝を加えてなじませる。火を止めて油を回しかける。
・皿に盛り付けてイタリアンパセリのみじん切りを散らし、油少々をかける。

イタリアを象徴するシーフードパスタ、アサリのスパゲッティは、ナポリ名物として広く知られていますが、イタリアの海辺の街なら、どこでも名物。
代表的イタリアの伝統料理であると同時に、イタリア料理店のスペチャリタ。
ベースはフルッティ・ディ・マーレ=貝(アサリ、ムール貝)の“スパゲッティ・spaghetti con i frutti di mare”。

これに甲殻類(エビ、スカンピ)が加わると、カンパーニアではアッロ・スコッリオallo scoglioと呼ばれる料理に。

つまりその日の漁の成果次第で具が変わる漁師風アッラ・ペスカトーラalla pescatora。

スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ”シリーズの『パスタ・エ・スーゴ』によると、
Spaghetti alla pesscatoraスパゲッティ・アッラ・ペスカトーラのリチェッタは、
・フライパンにEVオリーブオイル、とにんにく1かけを熱し、ムール貝300gとアサリ250gを加える。
・汁を濾し、貝は一部を除いて殻から出す。
・別のフライパンでにんにくと唐辛子を油でソッフリットにし、トマトのパッサータ250gを加える。
・エビの頭8個を加えて潰して中身を出す。貝の汁を少しずつ加える。
・20分煮たらエビの頭、にんにく、唐辛子を取り除く。
・スパゲッティに合わせて細く切ったヤリイカ小2杯、エビの身、ムール貝とアサリを加えて数分なじませる。これでパスタをあえてイタリアンパセリとバジリコを散らす。

リチェッタのバリエーションは無数にあり、これが正解というのはなさそうです。

こちらのページによると、ペスカトーラはイタリア中に広まった歴史の古いパスタで、ルーツはナポリなどカンパーニア。
別名、アッロ・スコッリオallo scoglio。
スコッリオ(岩礁)はこんな地形。サルデーニャのスコッリオ・ディ・ペッピーノ↓

ちなみにアサリは岩礁とは対象的に砂地にいる貝。

まとめると、アッラ・ペスカトーラalla pescatoraは別名アッロ・スコッリオallo scoglio。
漁師風か岩礁風か、これも決めるのはシェフ次第。

カンパーニアには、スコッリオのパスタとして世界的に広まった有名なパスタがあります。
作った人の名前も年代までわかっている珍しいパスタ。
しかも、カンパーニアのパスタには珍しく、手打ちパスタ。

アマルフィ風シャラティエッリSciltielli all'amalfitanaです。
詳しくは次回に。

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パスタ・エ・スーゴ
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2021年3月24日水曜日

リアルトはベネチアの文化で歴史。ただの観光名所じゃない。ナポリのアサリ抜きのボンゴレ。

スパゲッティ・ボンゴレのベネチアvsナポリは、世界的観光都市の魚市場という、上質の魚が集まるベネチアの特徴を活かしたアサリの品質にこだわったベネチア風と、ピエンノロ・トマトというナポリならではの他にはないトマトを組み合わせたナポリ風の対決でした。

ベネチアの魚市場は観光客向けなんて思っていましたが、ベネチア料理のベースを支えている存在だったんですね。

リアルトは文化であり歴史でした。
下の動画はリアルトで国産アサリを仕入れる様子。

観光客目線でないと、リアルトはまったく違う場所になります。
どこでも優秀な仲卸がたよりなんですね。アサリのことなら見極め方から料理まで、なんでも知ってます。
ここでもやってます。ベネチアの人は貝を1個ずつ叩きつけて空かどうか確認するんですね。
ベネチアではアサリをボンゴレじゃなくてカパロッソリと呼んで国産品を区別しているので、ベネチアで食べるなら、カパロッソリのスパゲッティsgaghetti di caparossoli。

次はナポリ。
ボンゴレ・ビアンコが一般的なナポリで、トマト入りにする時、加えるトマトはピエンノロのミニトマトでした。

ピエンノロはトマトの産地で生のトマトが手に入らない冬の間のトマト。
ナポリのフレッシュのトマトが手に入らない地区や季節
でも手に入れることができますが、ある意味、カパロッソリより入手困難な食材。

ナポリ料理のお勧め本、『クチーナ・ディ・ナポリ』には、

ちょっとおもしろいボンゴレのリチェッタが載っていました。
スパゲッティ・アッレ・ボンコレ・フユーテSpaghetti alle vongole fujuteです。
フユーテとはスカッパーテscppate(逃げた)という意味。
つまりアサリ抜きのボンゴレです。

例によって、アサリは買えなくてもおいしいボンゴレを食べたいと考えたナポリ人が考え出しました。
アサリの代わりにピエンノロのミニトマトを使ったパスタです。

本のリチェッタを訳してみます。
スパゲッティ・アッレ・ボンコレ・フユーテSpaghetti alle vongole fujute
材料/4人分
スパゲッティ・・400g
生のミニトマト、冬はピエンノロのミニトマト・・数個
にんにく・・3かけ
EVオリーブオイル・・大さじ5
イタリアンパセリのみじん切り・・たっぷり、塩

・パスタ用の湯を沸かす。
・その間にフライパンに油とにんにくを入れて炒める。色がつきだしたら取り除き、ミニトマトを加える。火を弱めて数分熱し、火を止める。
・パスタをアルデンテにゆでる。ゆで汁は少量取っておく。
・フライパンにパスタ、ゆで汁少々、イタリアンパセリを加えて強火でマンテカーレする。
すぐにサーブする。

アサリをミニトマトで代用するなんて、ナポリ人の発想は、斜め上をいっちゃってますね。
まあ、トマトがそれだけ美味しいてことなんでしょう。

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2021年3月23日火曜日

パスタ入門編シーフードのパスタ、ベネチアとナポリのスパゲッテイ・ボンゴレ

スローフードの

スクオラ・ディ・クチーナ”シリーズ

『パスタ・エ・スーゴ』
は、読み込んでみると、乾麺のパスタの教科書としてとても良くできた本であることがわかります。

まず、スパゲッティ。
美味しいパスタの条件など基本を知ったら、次はソースです。
スパゲッティのソースは、チーズ(カーチョ)がベースのものが最初の一歩。
次はこれにグアンチャーレやパンチェッタなどが加わります(アッラ・グリーチャ、カルボナーラなど)。
さらにトマトが加わります(アマトリチャーナ)。

次は、いよいよパスタソースの世界が展開します。
ベースの食材は、歴史や地理の知識をつけつつ、野菜、魚、貝、豚肉の加工品へと拡大していきます。
最初は野菜がベースのソース。
どんな野菜もスパゲッティとは相性が良いのですが、その代表はトマト。
アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノに野菜を1つ加えるだけでも新しいソースが誕生します(パスタ・アッラ・ノルマ)。
野菜のゆで汁にオリーブオイルを加えて乳化してとろみをつけ、ソースにするテクニックも身につけます。
野菜とオリーブオイルの組み合わせは地中海の風味でもあります。

そして次は魚のソースです。
魚はオイル漬けや塩漬け(アンチョビ、ツナ、ボッタルガ、コラトゥーラ)、または生魚の2つのタイプがあります。
魚はカタクチイワシなどの大衆魚や切り落とし、粗を使います。
イワシのパスタはシチリアの名物料理。

ピーノ・クッタイアシェフのカタクチイワシのパスタPasta con le sarde
材料/4人分
パスタ・・400g
フィノッキエット・セルバティコ・・500g
トマトペースト・・25g
松の実・・50g
レーズン・・20g
パン粉・・50g
カタクチイワシ
アンチョビ・・4枚
玉ねぎ・・2個
サフラン(ホール)・・0.5g

・フィノッキエットは硬い部分を取り除いてみじん切りにする。
・玉ねぎをみじん切りにする。
・フィノッキエット、松の実、サフラン、レーズンを油でソッフリットにする。
トマトペーストを加えて色付けする。
・スパゲッティのゆで湯にてもサフランを加える。
・イワシの頭、内蔵、骨を取り除いてソッフリットに加える。
・サフランとフィノッキエットの茎を加えた湯でパスタ(スパゲットーネ)をゆでる。
・パン粉を油で炒める。
・皿をサフラン、レーズン、松の実で飾る。
・その上にパスタを倒したニード型に盛り付けてソースをかけ、パン粉を散らす。

かなりこてこてでくせの強いシチリア料理ですが、シェフのセンスでモダンで洗練されたパスタになっています。

次は、いよいよ今回のテーマ。
貝や甲殻類のパスタです。
貝には一枚貝と、ムール貝やアサリのような二枚貝があります。
二枚貝は汁に包まれていて、これが美味しいスーゴになります。
タコやイカなどの軟体動物、カニ、エビ、オマールなどの甲殻類も美味しい食材です。
これらの魚の汁を引き出したスーゴがアッラ・ペスカトーラalla pescatoraです。

結局スーゴの主役は二枚貝。
というわけで、このタイプのパスタをfrutti di mareのパスタ、パスタ・アイ・フルッティ・ディ・マーレと呼びます。

 二枚貝のパスタと言えば、アサリのパスタ。
アサリのパスタはナポリの名物として知られていますが、ベネチアも負けていないみたい。
ナポリ(フィーリア・ド・マレナロwebページ)対ベネチア(オステリア・ダ・フィオーレwebページ)のアサリのパスタという動画↓

ベネチアのシェフが最初に説明しているのは、アサリは国産品種のヴォンゴレ・ベラーチェvolgole veraceと呼ばれるものを使っているということ。国産アサリが減った際にアジア産のアサリが導入されて広まった結果、輸入アサリと国産アサリを区別する呼び方がイタリアではすっかり定着しました。
ちなみに輸入品種は水管が2本にはっきり別れているそう。
このことを知って以来アサリの水管をいつも注目しているけど、このタイプには滅多に出会わない。
味が違うと言ってイタリアではみんな国産アサリにこだわる。
でも入手は大変。

ベネチアのボンゴレの材料は、
スパゲッティ・・400g
国産アサリ(ベネチアでの呼び方はカパロッソリcaparossoli)・・500g
にんにく・・2かけ
EVオリーブオイル・・100ml
白ワイン(プロセッコ)・・50ml
ミニトマト(ダッテリーニ)・・200g
イタリアンパセリ・・大さじ2
唐辛子

・アサリを砂抜きする(ボールに叩きつけるように入れているのはこうするとよく砂を吐くから、だって)。
ダッテリーニ(大型なので数が少なくてもOK)を半分に切る。唐辛子を薄切りにする。皮付きにんにくを潰す。イタリアンパセリの葉を外し(みじん切りにしない)、茎は取っておく。
・ソテーパンに油と水を熱し、水が沸騰したらにんにくと唐辛子を加えて水気がなくなるまで熱する。こうするとにんにくが焦げずに香りが出る。
・イタリアンパセリの茎、トマトと塩少々を加えてとろ火で2分熱して香りをトマトに移す。
・アサリを加えて蓋をし、火を強める。ワインをかけ、火を弱めて蓋をする。アサリが全部開いたらにんにくとイタリアンパセリの茎を取り除き、2分短くゆでたパスタ(ソテーパンで2分熱する)とイタリアンパセリの葉を加えてなじませる。
・皿に横長のニード型に盛り付けてアサリをのせる。

ナポリのボンゴレの材料は
スパゲッティ・・400g
アサリ・・1kg
にんにく・・3かけ
EVオリーブオイル・・150ml
ピエンノロのミニトマト・・250g
イタリアンパセリ

・アサリは海水程度の塩分で5~6時間砂抜きする。
・にんにくを薄切りにして油でソッフリットにする。
・にんにくに焼き色がついたら取り除き、アサリ、水少々、ピエンノロトマトを加える
・アサリが開いたらパスタをゆでる。
・アサリの汁を別の鍋に入れ、ここにパスタを入れてよくなじませる。
・皿に横長に盛り付けてアサリをのせ、イタリアンパセリで飾る。

ベネチアのアサリの砂抜きや、ナポリのシェフの癖が強すぎて、面白くて先に進まない~。

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スクオラ・ディ・クチーナ”シリーズ

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2021年3月22日月曜日

複雑な手間のかかるシーフードパスタを、手抜き料理の代表、フードジャーで作るなんて発想、なかったなあ。

「今月の総合解説」で気になったリチェッタは、(P.25)のジャースチーム・シーフードのコンキリエConchiglie allo scoglio in baratoloです。    
ジャースチームというのは、メイソンジャーに入れて湯煎で熱する調理のようです。
メイソンジャーというのは一時ブームになった、おしゃれな密閉ビンで調理しながら作る持ち運びできる保存食のようなもの・・・だったような。
スクールランチ用パスタサラダ/Pasta salads in a jar。

パスタサラダなら温める必要がないから、ジャーに入れても大丈夫ですね。
で、温かくしたい時は、魔法瓶(サーモス)に入れます。今どきだとフードジャーと呼ぶのですね。




フード・ジャー・パスタ・プリマベーラPasta Primavera Using a Thermos
材料/
パスタソース
シュレッドチーズ
全粒粉マカロニ
冷凍のミックスベジタブル

・フードジャーにマロニ1/2カップ、ミクスベジダブル1/2カップを入れて熱湯で満たし、蓋で密閉して2回揺する。
・15分置く。
・湯を切ってパスタと野菜をボールにあける。パスタソース1/2カップであえる。
・チーズ大さじ2を加える。

パスタ専用のフードジャーはパスタ・クッカーか・・・。使ったことないけど、こういうものもあるんですね。
とりあえず、超ベーシックなフードジャーパスタは上の動画の要領で包丁もフライパンも使わずにできるのですが、イタリアの料理雑誌では、流石に冷凍野菜と市販品のソースを使うリチェッタは紹介しません。
フードジャーというのは、手抜き調理の代表のようなイメージですよね。
ところが、今回取り上げたリチェッタは、手抜きどころか、食材ごとの下調理が大変そうな、シーフードのパスタです。
アサリ、エビ、ヒメジ、モスカルディーニ入りです。
かなりハードル上げてるなあ。
パスタは貝の形のコンキリエなので、フードジャーに入れてもとてもきれい。

シーフードのパスタは、アイ・フルッティ・ディ・マーレpasta ai frutti di mareとか、アッロ・スコッリオallo scoglioとか、アッラ・ペスカトーラalla pescatoraなどと、様々な呼び方があります。

フートドジャーの対局にある手間のかかるシーフードのパスタ↓

イタリア料理の傑作の一つ、シーフードのパスタについて、次回はもう少し詳しく見ていきます。

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総合解説
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2021年3月21日日曜日

ブロンテではビスコッティに刻みピスタチオじゃなくて丸ごとのピスタチオをびっちりまぶす。

ピスタチオからどんどん離れているのは承知ですが、今日はカンノーリのリチェタでも探してみるか、と軽い持ちで始めました。
でも、速攻で折れました。
カンノーリのリチェッタって、普通は極秘にされていて、ネットで公開している店なんかないんですね。
最初からそうすればよかったと後悔しながら、今日は、シチリア料理の小型シリーズなのにやたらこだわってる、


のリチェッタを訳します。
まずはカンノーリ。
この本のカンノーリは、両端に緑色が鮮やかなピスタチオがびっちりまぶしてあります。しかもリコッタクリームははみ出しそうなほどたっぷり。つまり、シチリア東部の田舎タイプのカンノーリです。
Cannoli di ricottaリコッタのカンノーリ
材料/6人分
《皮scorze》
小麦粉・・300g
ラード・・50g
砂糖・・30g
蜂蜜・・大さじ2
ビネガー・・大さじ2  
シナモン
揚げ油
《詰め物ripieno》
リコッタクリーム※・・1kg
《飾り》
粉糖、刻みピスタチオ

・小麦粉、ラード、砂糖、シナモン少々を混ぜ、水少々、ビネガー、蜂蜜を加えてこねて腰のある生地にする。
・麺棒で厚さ数mm、幅12cmの厚い四角い生地に伸ばし、バターを塗った筒型に斜めに巻きつける。重なった両角を押して閉じる。
・たっぷりの熱したラードで狐色になるまで揚げ、シートに取って冷ます。
・筒型から抜き取り、リコッタクリームを詰める。粉糖を振りかけて刻みピスタチオで飾る。

リコッタクリームcrema di ricotta
材料/6人分
リコッタ・フレスカ・・500g
砂糖・・300g
バニラビーンズ・・1/2本
フルーツのカンディート・・50g
ズッカータ・・50g
ビターチョコレート・・100g

・リコッタを裏漉しして砂糖とバニラを加える。
・クリームが硬すぎる時は牛乳大さじ数杯を加える。
・よく混ざったら刻んだチョコレート、小片にしたカンディートとズッカータを加えてよく混ぜる。
・器に盛り付けてサーブする。

カターニアのパスティッチェリア・サヴィアのカンノーリ。

シチリアのカンノーリの3大流派の一つ、カターニアの有名店。
カターニアのカンノーリはパレルモのものより砂糖が少なく、もっと小型で、両端にピスタチオをまぶす。

次はエトナ山の麓、ピスタチオの産地ブロンテの近くでワインを作っているプラネタの本、

シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ』から、


刻みピスタチオじゃなくて丸ごとのピスタチオをごろんごろんまぶしたド迫力のピスタチオのビスコッティBiscotti di pistacchi
材料/6人分
ピスタチオ・・500g
皮むきアーモンド・・200g
グラニュー糖・・400g
卵白・・4個
卵黄・・6個、塩

・ピスタチオを殻から出す。200gを別にし、残りは熱湯に5分浸す。
・水気を切って布巾で薄皮をむく。シートに広げて乾かす。
a.冷めたら乳鉢で刻む。または300gをアーモンド、砂糖と一緒にミキサーにかける。
・卵黄をホイップしてaを加える。卵白と塩一つまみを固く泡立ててピスタチオの生地に加え、さっくり混ぜる。
・生地を丸めて別にした皮付きピスタチオをまぶす。
・オーブンシートを敷いた天板に並べ、150℃のオーブンで25分焼く。

ブロンテのピスタチオ60%のピスタチオのビスコッティ↓
産地ならではの贅沢。


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シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ

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2021年3月20日土曜日

村丸ごとがカンノーリの聖地、ピアーナ・デッリ・アルバネージ。

ブロンテのピスタチオの生産量は年間2000トン。
世界のピスタチオのわずか0.4%。
隔年収穫と数が少ないブロンテのピスタチオは、主にドルチェ、ジェラート、サラミに加工される。
そう言えば豚肉で知られるネブロディも、エトナの麓にある。
ネブロディとエトナ

いまさら言うまでもないが、シチリアで一番人気のあるドルチェ、(というか世界中で一番人気があるイタリアのドルチェかも)カンノーリには、トラーパニ、パレルモ、カターニアという3大流派がある。
材料や作り方はほとんど一緒だが、詰め物には2つの流派がある。
両端にオレンジのカンディートかチェリーを詰めるのはパレルモ派で、ピスタチオかアーモンドの粒を散らすのはカターニアなどシチリア東部の習慣。

さらには、都市部のカンノーリはよく練ったなめらかなクリームを詰め、農村部では濃くてきめの粗いクリームを詰める。

トラーパニ郊外のダッティロにある朝から晩までカンノーリを買う人がひっきりなしに訪れる店、エウロバールEurobar。

この店は、30年ほど前に目の粗いこしきでリコッタを裏漉ししてきめの粗い存在感のあるクリームを詰めるようにした。
親から子へと代々受け継がれてきた皮は口の中で溶けるよう。
大量生産品とは味が違い、電動の機械を一切使っていないというのが店の自慢。

さらに、パレルモの南にはカンノーリのメッカとなっている村がある。
15世紀に移民してきたアルバニア人が作ったピアーナ・デッリ・アルバネージPiana degli Albanesiという村で、村の周囲の牧草地で作られたリコッタの美味しさが魅力の一つ。ピアーナ・デッリ・アルバネージのエクストラバールExtrabar。
店のwebページはこちら。↓
店ではリコッタを数時間休ませてから絹地で裏漉しする。詰め物は注文が入ってから詰める。重さ3kgの特大サイズや150gのミニカンノーリも作っている。

ピスタチオの話をするつもりが、いつの間にかカンノーリの話になってました。
続きは明日。

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総合解説
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2021年3月19日金曜日

エトナの火山性の土壌は、ぶどうが栽培できない標高でのぶどう栽培を可能にした。さらにピスタチオやアーモンドなどナッツの栽培にも適していた。


噴火するとおっかないエトナ山ですが、カターニアからエトナの周りを巡る周遊鉄道ではエトナワインツアーなんかもやっている↓

エトナを世界的に有名にした産物は、エトナワインとピスタチオ。
イタリア随一のピスタチオの産地として知られるブロンテには、周遊鉄道も止まる。
上の動画はブロンテ付近を通過する周遊鉄道。ここからバスと徒歩で山頂へも行ける。もちろん噴火していない時は。
ブロンテはエトナ山の西側にある。

エトナが噴火するたびに麓は灰で覆われる。
被害は甚大だが、恵も大きい。
ブロンテのピスタチオは緑の金と呼ばれている。

ブロンテのピスタチオは2年に1度、奇数の年だけ、9月末から10月にかけて村中総出で収穫する。
偶数の年は余分な芽を摘み取る摘心を行う。

ピスタチオはシチリアをアラブ人が支配していた時代に、アラブから伝わった。
アラブ人は菓子作りの技術も伝えたので、ピスタチオは様々なシチリアのドルチェに使われている。

2018年のブロンテのピスタチオの収穫祭。

ブロンテのピスタチオはエメラルドグリーンで香りが強く、油分が多い。

エトナの火山性の土壌はぶどうが栽培できない標高でもぶどうの栽培を可能にした。
酸度が高く、石灰岩からなる土壌は、アーモンドの栽培にも適している。
エトナはナッツ類の栽培にも適していた。
エトナとタオルミーナのアーモンドの花。

リチェッタは次回に。
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2021年3月18日木曜日

シチリアの中でも独特の個性があるエトナのワイン。

エトナ山を取り上げた日に噴火していたなんて、知らなかった・・・。
2021年3月17日の噴火。


標高3000m級の山が噴火するなんて、怖すぎる。
そう言えば、エトナ山は別名、“モンジベッロ”と呼ばれます。
イタリア語の山、“モンテ”と、アラビア語の山、“ジェベル”を組み合わせた言葉だそうです。
2回も山と繰り返すほど特別な山、というわけです。
山の麓でワインを作っているこの地区のトップワイナリー、ベナンティのエノロゴによると、彼の祖父は毎朝窓を開けてエトナ山を眺めては、「モンジベッロが今日はいい天気だと言ってるぞ」とか、「モンジベッロが今日は天気が悪くなるって」と言うのが習慣だったそうです。

ベナンティ↓

エトナはシチリアや世界中のワインメーカーたちの注目の地。大量生産より個性の確立を目指す野心的なワインメーカーが集まっています。
ベナンティのエノロゴによると、エトナワインは、一般的なシチリアワインとは違い、他の州の山のワインに似ているそうです。

豊かで標高の高い火山性土壌と海風の中で育つエトナのぶどう↓

エトナは標高3000m級の山だから、当然山のワインの特徴があるのですね。
ぶどうはシチリアとひとくくりにできないほど特別な環境で熟します。
代表的なぶどう品種はネレッロ・マスカレーゼ。

シチリア/クチーナ・ディ・カーザ・プラネタ』によると、

プラネタのエトナ・ロッソはネレッロ・マスカレーゼ100%。
バニラやアマレーナチェリー、野いちご、花の香りのあるワインで、
きりっとした味の飲みやすい赤。
毎日飲めるワインで、トマトのパスタや肉料理、イカのリピエーノやマグロのインボルティーニなどの魚料理に合うそうです。

エトナと言えばカターニア。英語のかなり専門的な動画が溢れているので、アメリカでエトナワインの一大ブームが置きたことは想像できます。
ベナンティのエトナ・ロッソのテイスティング↓



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2021年3月17日水曜日

シチリアのてっぺんのエトナは今も活発に噴火中

ルフィーノのトスカーナ』は、一つの地方を代表するワインメーカーが、そのプライドをかけて作る料理書の素晴らしさを認識するような、お金と手間をかけて作られた素晴らしい本でした。

この本に出会って以来、ワインメーカーの本への期待度は大幅にアップしました。
クレアパッソでは、もう1冊、シチリアのワイナリー、プラネタの本も販売しています。
これもいい本です。
対象はシチリア全島と広いので、
この時期のシチリアはどこがいいかなあ・・・、と探してみたら、「総合解説」2016年4月号に、

春のエトナ山麓は、白い斜面をアーモンドの木や花のついたオレンジの木が彩る。ピスタチオの赤、ジュニパーの金色、オリーブの銀、トキワガシや乳香樹、松の実の香り、そして整然と並ぶぶどうの木が、火山を囲む町や村の間を埋めている。シチリアの大きな太陽の熱は、シチリアに豊かな実りとエネルギーをもたらす、・・・

というエトナ山を形容する魅力的な文章が。
そう言えば、エトナのワインはヨーロッパで最もトレンディーと言われたこともありました。
エトナ山はヨーロッパで最も高い活火山で、マスコミは頻繁な噴火のたびに不安を煽りますが、地元の人にとってこの山は優しい巨人、というか女性名詞なので、豊かな恵をもたらしてくれる偉大な母として親しまれています。


エトナ山は標高3350m。
富士山級の山が噴火なんて、怖すぎる・・・。
2021年2月中旬から噴火が続くエトナ山。

3月12日の動画です。やっぱり噴火は怖い。
満開のアーモンドの花を見たかったのに、街中火山灰で真っ黒になってます。

エトナの麓の最大の街は、カターニア。
街のシンボルのドゥオモ広場の像は、エトナ山の溶岩でできています。
シチリアで小型の像の骨が見つかったことから、20万年前のシチリアには像がいたと考えられている。

今年もエトナの麓に春が来た。

プラネタのワイン畑はシチリアの5箇所にあります。
そのうちの一つはエトナ山麓にもあります。土壌はミネラルが豊富で火山性の黒い砂地。
エトナワインはシチリアで最初にDOCになったワインの一つですが、ぶどう品種は知名度の低い古い土着品種が主体。


エトナのワインについては次回に。

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2021年3月16日火曜日

ほろ苦い味が特徴のチコーリアの中で一番甘いのがプンタレッレ。

春が終わる前に、と思って急いで初めた春野菜の話題ですが、夏が猛烈な勢いで近づいていて、追い越されそうです。
イタリアの春野菜は、北はアスパラガス、南はソラマメに代表されるということがわかったのですが、中部を忘れていました。
中部イタリアを代表する春野菜は、何だと思います?
サーレ・エ・ペペ』誌によると、「プンタレッレ」だそうです。詳細は「総合解説」06/07年4月号をご覧ください。

プンタレッレは主にイタリア中部で栽培されているカタローニャの一種から根本と緑の部分を取り除いた若芽の部分で、しゃきっとした歯ごたえとほろ苦さが特徴。


「総合解説」07/08年3月号によると、チコーリア・スピガータcicoria spigataという品種のカタローニャがプンタレッレと呼ばれてラツィオの名物になっているカタローニャだそうです。
カタローニャは別名チコーリア・アスパラゴと呼ばれるチコリの一種でキク科の植物です。
チコーリアには、ラディッキオやベルギーチコリなどの種類がありますが、その全てがほろ苦い味という特徴を持ちます。
プンタレッレはチコーリアの中でも最も甘い品種なので、生で定番のアンチョビソースを絡めて食べるのがお勧め。
チコーリアの苦味が生きるのは、ミスティカンツァ(野草のミックスサラダ)や甘みのあるいんげん豆やじゃがいも料理に入れたり、子羊肉や牛肉など肉料理の付け合せ。
ニューヨークのカジュアルローマ料理の店のミスティカンツァ↓
ルーコラ、スイスチャード、ほうれん草、フェンネル、バジリコ、ラディッシュ、オゼイユ、プンタレッレ、トレビーゾ、パセリ、ミント、シブレット、ベビーレタス、タラゴン、ベビーキャロット、セロリの葉入りミスティカンツァ。
調味はオリーブオイル、レモン汁、塩、こしょう。


ほろ苦い野菜に合うアンチョビのソースの
ローマ風プンタレッレPUNTARELLE ALLA ROMANA

・外側の葉を取る(捨てずにチコーリア・リパッサータにする)。
・プンタレッレを洗って縦に薄切りにし、1時間氷水に晒してカールさせる。水気を切って流水で洗う。
・その間にソースを作る。
・にんにくのみじん切り、油、アンチョビ数枚、ビネガー少々を混ぜてアンチョビを溶かす。
・プンタレッレをアンチョビのソースであえて15分休ませる。

このサラダのポイントはプンタレッレをカールさせること。
カールしていないプンタレッレはプンタレッレじゃないそうです。

ほろ苦い葉野菜用のこのソースをかければ野菜があっという間にローマ風に・・・。

から、チコーリア・リパッサータCicoria ripassata
のリチェッタを訳してみます。
材料/4人分
チコーリア・・1kg
EVオリーブオイル・・大さじ6
にんにく・・2かけ
塩、唐辛子(好みで)

・チコーリアを塩ゆでして水気を絞り、油、潰したにんにく、塩、唐辛子少々で炒める。

※チコーリアはローマで一番人気がある野菜。ほろ苦さがローマの伝統の肉料理の脂によく合う。


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2021年3月15日月曜日

トスカーナのカウボーイの食事、アクアコッタ。

イギリス人が憧れたトスカーナは、ダ・ヴィンチの絵に出てくるような、長年人の手によって改良が加えられた、糸杉の丘と美味しいワインがある美しい自然に囲まれた地方だった。
今日のお題は、そんなイメージを否定するようなマレンマ地方の料理
マレンマ地方はトスカーナのティレニア海沿いの地方で、19世紀半ばに干拓事業が始まるまでは、住みにくい沼地や荒れ地だった。

人を寄せ付けないワイルドな地中海の姿。

こんなワイルドな地に住む人間もワイルド。ブッテリと呼ばれるカーボーイだ。


マレンマ種の牛・馬・水牛を飼育する牧童たち。
かっこいいけど、今は観光客相手の仕事が中心になっているらしい。
そんなブッテリたちの食事として知られるのが、アックアコッタ。
家畜の群れを追う仕事の最中に食べる食事は、その名の通り、持ち運びできる僅かな材料と水で作る。
欠かせないのは玉ねぎ、セロリ、乾燥したパン。
運が良ければこれに、たんぽぽ、ミント、野生のチコーリアなど、放牧地で摘んだ香草が加わる。
卵を分けてもらったときには新鮮な卵が入る。
仕上げはオリーブオイル。
貴重なので牧童頭が持っていて、旅の途中でなくならないように量を管理していた。

マレンマ地方のシェフとして有名なのは、イタリアを代表する女性シェフ、ダ・カイーノのヴァレリア・ピッチーニ。

彼女が作るのは一口食べれば伝統の味が蘇るような料理。
野菜は父親が3つの畑で栽培したもの。
得意なのは大衆肉料理。
店にはエノテーカも併設されていて、ヴァレリアのリチェッタのソース、オイル漬け、ジャムなども販売している。
webページはこちら

アックアコッタのリチェッタは地方ごとに様々あり、バリエーションも豊富。
ヴァレリア・ピッチーニシェフのアクアコッタAcquacotta


材料/
玉ねぎ・・700g
セロリ・・200g
EVオリーブオイル・・120g
水・・200ml
ホールトマト・・800g
野菜のブロード・・500g
バジリコ
卵・・4個
乾燥したパーネ・トスカーノの薄切り・・4枚
おろしたペコリーノ・・40g


・玉ねぎを薄切りにする。セロリ(煮込むので筋を取る必要はない)を小口切りにする。
・フライパンに油を熱して野菜をソッフリットにし、水、塩、唐辛子(好みで)を加える。
野菜の水分が全部出たらホールトマトを加える。旬の季節には皮むき生トマトを加える。野菜のブロードを加えて油が表面に浮かぶまで約40分煮る。
・バジリコで香りをつけ、卵を割り入れる。
・塩をして蓋をし、数分熱する。
・器にパンを入れてペコリーノをかけ、ミネストラと卵をかける。油を回しかけてバジリコで飾る。

ダ・カイーノはルレ・エ・シャトーグループのホテルレストラン。

マルケージが設立した高級レストランのグループ、レ・ソステのメンバーでもある。

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2021年3月14日日曜日

イギリス人が大勢移り住んだトスカーナ。トスカーナのローストビーフは本場イギリスのローストビーフがルーツ。

ワインメーカーの目で見たトスカーナ料理の本の傑作、『ルフィーノのトスカーナ

から、野菜の話が続いたので、今日は肉料理の話。“ロスビフrosbif”です。
これはペッレグリーノ・アルトゥージが名付けたイギリスがルーツの料理、ローストビーフのことです。
ローストビーフは、フィレンツェ郊外に大勢住んでいたイギリス人の家庭の料理人が学んで19世紀にトスカーナに伝わったと言われています。
その後徐々に、オリーブオイル、地元のハーブ、キアンティワインなど、イタリアの食材が組み込まれるようになりました。
肉は上質の赤身の部位、《コントロフィレットcontrofilettoサーロイン》を使います。
そうそう、これは日曜日のプランゾのセコンドピアットでした。つまりご馳走。

イタリアの庶民の家庭料理の本、『マンマ・ミーア』のローストビーフのページには、こんなことが書いてありました。

「マンマは貧しい家庭の生まれで、パパは8人兄弟の末っ子だった。
そのため家族全員に行き渡る食事はわずかだったが、母はいつも父のためには一番美味しいところを取っておいた。
今でも記憶に残っているのはローストビーフに添えるポレンタの香りだ・・・。」
な、涙が・・・。


こんな家庭にとっては、きっとローストビーフはかなりのご馳走だったんですね。
イギリス風ローストビーフ↓
肉をタコ糸で縛ったらトスカーナのハーブ(ジュニパー、ローズマリー、ローリエ、セージ、にんにく)をまぶしてフライパンで焼きます。
この時、赤ワインもかけます。焼き具合はロザートですがレアではない状態。グレービーやじゃがいもを添えてサーブします。


ルフィーノのトスカーナではもう1品、肉料理が紹介されています。
串焼きローストL'arrosto infilatoです。

特にルールはないので、サルシッチャ、内蔵、豚肉、鶏肉、うさぎ、鳩、子羊などの肉にパンやハーブを挟んでなんでも串刺しにして回転させながら暖炉で焼き、したたる肉汁を集めてソースにします。
暖炉と回転焼きができる道具を備えた田舎屋の冬の定番料理。



貧しいんだかリッチなんだか・・・。

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2021年3月13日土曜日

おばあちゃんちのサーラ・ダ・プランゾは毎週日曜日にだけ開けた。


トスカーナの農民の普段着の暮らしを教えてくれる本、『ルフィーノのトスカーナ』は、読むたびにいい本だなあ、と思うので、菖蒲とフィレンツェの話の続きも、ちょっと訳してみます。
“日曜の夕食il pranzo della demenica”という章です。

「私は騒々しい祖母の夕食をまだ覚えている。
小さな家で、ダイニングルーム(サーラ・ダ・プランゾsala da pranzo)も小さかった。
この部屋は週に一度だけ使い、それ以外の時はいつも閉められていた。
直射日光が差し込まない、掃除が行き届いた部屋だった。
日曜日には部屋が広がるような神聖さが漂い、みんなが集まった。
近所に住んではいなかったが、みんなが集まって食事をするこの機会は、家族全員にとって特別だった。いまでもこの時の料理の香りや、儀式めいた気分を思い出す。
家の戸棚には村の市場で仕入れた食材が運び込まれ、料理は朝から準備されていた。
鍋ではソースがことこと煮えていて、ほうれん草と羊飼いから買ったリコッタのラビオリは手打ちだった。母と叔母は自慢のレバーのクロスティーニを作った。
肉料理は季節によって、“ロスビフrosbif”か“アッロストarrosto”だった。
パンは白いパーネ・ショッコでいつもたっぷりあった。
ドルチェとチーズを待つ間の口直しに、ソファーに熱いコーヒーとグラッパを運ぶ。
テーブルでは祖父の席は上座で、ワインの担当も祖父と決まっていた。
その脇には娘たち、つまり私の母と叔母の夫、そして子どもたちの順に座った。
食事はいつもたっぷり用意され、たっぷり食べた。
前菜はクロスティーニやアッフェッターティ、手打ちパスタのプリーモ、野菜のコントルノを添えた肉料理、そしてドルチェとコーヒー。
コーヒーの香りが部屋に満ちたら、食事の終了だ。
食事の間は何でも率直に、まじめに話した。食事が終わると腹ごなしに丘や街の中をおしゃべりしながら散歩した。
子供の頃からいつきはも日曜日にはおじいちゃんとおばあゃんの家で食事をした」


トスカーナの前菜の定番、クロスティーニ・ネリCrostini neriことレバーのクロスティーニは日曜のプランゾや重要な食事の前菜としてもお馴染み。
大皿に盛り付けて手づかみで、大勢で食べるパーティー料理。
ベースとなるのは鶏の内蔵のパテ。レバーが一般的ですが、脾臓や心臓を使うこともありました。

初心者向けにイタリア料理の基礎を教えてくれる本、『マンマミーア』には、クロスティーニ・ロッシのリチェッタがありました。
黒いクロスティーニがあるなら赤いクロスティーニもあるはず。真っ赤なトマトのクロスティーニです。
クロスティーニ・ロッシ・ピッカンティCrostini rossi piccanti
材料/
ホールトマト・・200g
固くなった田舎パン・・4枚
唐辛子・・1本
にんにく・・2かけ
EVオリーブオイル
オレガノ
塩、こしょう

・フライパンで油とにんにく、唐辛子を熱して香りをつけ、軽く刻んでフォークで潰したトマトとオレガノを加えて塩味を整える。
・時々かき混ぜながら煮詰める。
・パンをトーストして粗熱を取ったトマトソースを塗り、サーブする。

クロスティーニ・ロッシ・ピッカンティ

鶏レバーのクロスティーニCrosstini di fagatini di polloのリチェッタはダヴィデ・オルダーニシェフのメイド・イン・イタリー

から
材料/
鶏レバー・・400g
ビネガー・・1/2カップ
バター・・100g
玉ねぎ・・1/2個
ブロード・ディ・カルネ・・100ml
塩抜きしたケッパー・・40g
オイル漬けアンチョビ・・4枚
セージ
塩、こしょう
《仕上げ》
バゲット・・1/2本
EVオリーブオイル


・レバーを水とビネガーで10分マリネする。
・玉ねぎのみじん切りとセージをバターでソッフリットにする。
・レバーを加えて15分熱し、塩、こしょう、熱いブロードを加える。
・レバーをミキサーにかけ、ケッパー、アンチョビ、残りのバターを加える。
・パンを厚くスライスしてトーストし、レバーを塗ってオイルをかける。
※ケッパーとアンチョビ抜きでもっとレバーの味を強くするリチェッタもある。

クロスティーニ・ネリ












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2021年3月12日金曜日

ぶどう農家が畑で働いた後に畝で栽培した野菜で作る旬野菜のミックス、ヴィニャローラ。

さて、今日のお題はヴィニャローラvignarolaです。
トスカーナの国際的ワインメーカー、ルフィーノの、トスカーナへの愛が詰まった美しい本

ルフィーノのトスカーナ』で見つけた料理でした。


ヴィニャローラは歴史の古い、春の農民料理。
料理の名前は、ぶどう畑の土壌のこと、またはぶどうの畝の間に、土地を肥やしたり、きつい労働の後に摘み取って家で料理するために植えた野菜のことです。
料理は旬の新鮮な野菜のソテー(spadellata)で、チッチョリなどの豚の脂身やペコリーノを使います。野菜はバッチェッリ(さや入りソラマメ)、アーティチョーク、グリーンピース、玉ねぎ、ズッキーニ、ミントなど。

この料理のことを知った後で、“グイド・トンマージ”の地方料理シリーズの『ラ・クチーナ・ディ・ローマ・エ・デル・ラツィオ

を見たら、表紙の写真は、春野菜のミックスのまぎれもなくヴィニャローラでした。

ラツィオでも、農民は春から夏になる短い季節に、初物の野菜と冬の最後のアーティチョーク、ソラマメ、グリーンピース、ロメインレタス、が出揃うと、この料理を作るのだそうです。
コントルノとして、またはパンにのせたり、パスタのソースにもなります。リゾット
も美味しそう。
トスカーナとぶどう畑はすぐ結びつくのですが、ラツィオのぶどう畑は、カステッリ・ロマーニ地方のこと。
ヴィニャローラ・ロマーノVignarola romano


カステッリ・ロマーニ地方のワインの1つ、フラスカーティ管理組合のPV↓


それでは表紙の料理のリチェッタをどうぞ。

材料/4人分
さやむきグリーンピース・・200g
さやむきソラマメ・・200g
アーティチョーク・・4個
ロメインレタス・・1/2個
葉玉ねぎ・・3本
グアンチャーレ・・50g
EVオリーブオイル・・大さじ3
白ワイン・・1/2カップ
レモン汁
メントゥッチャ
塩、こしょう

・ソラマメととグリーンピースをさやから出す。さやの半量はブロード用に取っておく。
・アーティチョークは硬い部分、軸(ブロード用に取っておく)、外側の葉、先端を取り除き、4つに切ってさらに半分に切る。繊維を取り、レモン水にさらしておく。
・ロメインレタスをざっくり切る。
・葉玉ねぎは緑の部分はブロード用に別にし、残りは薄切りにする。
・ブロード用の野菜の切り落としと塩少々でブロードを取る。
・大きなフライパンで小さく切ったグアンチャーレを油で弱火で炒めて脂を溶かし、葉玉ねぎのみじん切りを加えてなじませる。ワインをかけてアルコール分を飛ばし、アーティチョーク、グリーンピース、ソラマメを順に加えてブロードで覆い、弱火で15分煮る。ロメインレタスとメントゥッチャを加えてブロードを足す。塩、こしょうで調味する。

ロメインレタスをこれだけたっぷり使う時点でローマ料理に認定。
アーティチョークもローマの名物でした。
逆にトスカーナ風ヴィニャローラは動画が見つからない・・・。
まあ、トスカーナとラツィオは陸続きだし、無理やり区別することもないか。
あえて違いを探すなら、トスカーナ風はロメインレタスが入らないことぐらい。
ラットゥーガ・ロマーナ↓



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2021年3月11日木曜日

フィレンツェの菖蒲の紋章はあの複雑な花をシンプルにデザインした傑作。

フィレンツェの紋章は、なんとなくユリだと思っていました。
正確には、花菖蒲Giggioli↓だったんですね。

ユリの紋章は12世紀にルイ7世が使ってフランスで流行したデザイン。当時は青地に金色が主流でした。
15世紀にフランス人が王のナポリ王国が誕生すると、このデザインがイタリアにも入ってきます。
ところがフィレンツェは野原に菖蒲が咲き乱れる地でした。
そこでユリではなく菖蒲の紋章が誕生します。
アヤメはイタリア語ではirisイリス、菖蒲はジッジョリと、名前は全然違いますが、見た目はそっくり。
美しい花だけど、複雑な形をしているので、これを紋章としてデザインするにはかなりのセンスと才能が要求されるのでは・・・。
しかもこのデザインはかなり人気になってフィレンツェ市民から愛され、12世紀には公式紋章として採用されます。
フィレンツェのあちこちに青字に金のユリの紋章が描かれているのは、フランスの影響の名残でしょうか。
元々は白地に赤のデザインでしたが、後に赤地に白に変わります。フィレンツェの2大勢力、グエルフィとギベルティの争いの結果だそうです。
フィレンツェの紋章。
花びらが上に3枚下に2枚という菖蒲の特徴を見事にデザイン化。


フィレンツェの菖蒲の庭↓

ぼーっと見てたときには、ポンテベッキオのてっぺんに菖蒲の紋章があったなんて気が付かなかったなあ。

フィレンツェでは菖蒲の香りがする鐘楼の下の草原(プラトーネpratone)で、ペコリーノと大きなパーネ・ショッコとワインを持ちこんでピクニックをして、
フリッタータのパニーノや、春野菜の“ヴィニャローラ”を食べる。


スカンパニャータscampagnata(ピクニック)の軽食の定番は、
ペコリーノトスカーノとさや入りソラマメ(バチェッリbaccelli)と洋梨。
さやも美味しく、昔の農民は、ソラマメを摘みながら食べていた。ソラマメは肥料代わりに育てて家畜の餌に していた。 
バチェッリのペーストのパスタgli spaghetti quadrati al pesto di baccelli
さや入りソラマメはトスカーナで育つマメ科植物の集大成。
ペーストはリグーリアのバジリコ、松の実、パルミジャーノがベースの定番ソースだが、さっとゆでて一部を潰したソラマメ、削ったペコリーノ・トスカーノ、粗挽き黒こしょうのペーストはトスカーナの発明だ。
パスタは自家製の断面が四角い手打ち麺。

バチェッリのペーストPeto di bacelli

材料/3人分
さや入りソラマメ・・300g
ペコリーノ・・150g
塩、EVオリーブオイル

・ソラマメをさやから出す。
・ペコリーノを小角切りにする。
・ペコリーノ、ソラマメ、塩少々、油適量をミキサーにかけてペーストにする。
・パンに塗ってサーブする。

この本はリチェッタが一切なく、美しい写真ですべてを語る上級者向けの本。

次はビニャローラのリチェッタを紹介したいのですが、これはラツィオの料理なので、別の本を調べないと・・・。
リチェッタは次回に。

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ルフィーノのトスカーナ

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2021年3月10日水曜日

トスカーナの人は、あのルネサンスの絵画のような風景の中で、目が痒くなってくしゃみが出だすと春を感じるんだって。


春の訪れを感じさせる本はないかなと探していたら、素晴らしい本がありました。

ルフィーノのトスカーナ

トスカーナの春、突然思い出しました。
その素晴らしさを・・・。

ルネサンスの名画のような風景が広がっています。

ところが、ルフィーノの春のトスカーナの感じ方は、ちょっと違う・・・。

「朝の空気に花粉が舞い、目が痒くなってくしゃみがでだすと、春の到来が告げられる。」

そう言えば、トスカーナの糸杉は名物だけど、アップで見ると花粉が舞ってるなんて考えたことなかった。

春になると、友人たちと村の広場で待ち合わせをして大人と子供の一団で、エトルリア時代から続く長い坂道を登る。目的地は遠くはない。何世紀もの間、谷に鐘の音を響かせていたスラリとした鐘楼のある小さなロマネスク様式の教会の脇にある、広くて日当たりの良い広場だ。

サン・ジョバンニ・バッティスタ教会

寒い日には草むらや日陰は朝露で濡れている。
一年で最初のピクニックの目的地は、“プラトーネpratone”と呼ばれる。

自転車でしか行けないような場所だ。
自転車のかごには前日に用意した料理を入れる。“ペコリーノ・エ・バチェッリpecorino e bacelli”、“パローネpallone”etc.。

教会まで続く細い坂道を登るのが最後の試練だ。
岩壁にはアヤメ(菖蒲)が満開だ。花の重さでひざまずいているように見えるこの紫色の花は、“カテリーナ・デ・メディチの花”、と呼ばれる。フィレンツェの紋章にも描かれ、フィレンツェのシンボルともされている。

サン・ポーロ・イン・キアンティでは毎年5月の最後の週末に菖蒲祭りが開かれている。


ちょうど今頃だなあ。
フィレンツェの紋章については次回に。


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ルフィーノのトスカーナ

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