2009年8月6日木曜日

マタロッコ

マルサーラの話、その2です。

今日はマルサーラ料理の話。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。

記事の中で、マルサーラの名物料理として紹介しているものの一つが、“マタロッコ”。
記事によると、「塩田で働く人たちが暑い夏の朝に食べていた一品で、いわばシチリア版のガスパチョ」。

シチリアは、長くスペインの支配を受けていました。
たとえば、ババの話の時にも出てきたスペイン・ブルボン家は、1861年にイタリアが統一されるまでシチリアを支配していました。
そのため、料理にもスペインの影響が見られます。

マルサーラ市にはマタロッコという名前の町があるんですが、この町に縁のある料理なんですかねえ。

マタロッコは、一般的にはトマト入りの“ペースト”として知られています。
スパゲッティのサルサにしたり、田舎パンにのせてクロスティーニにするのが代表的な食べ方。

『Grandi Enciclopedia Illustrata della Gastronomia』(Mondadori)によると、
「“マタロック Mataroccu ”はマルサーラ地方で作られているシチリア風ペーストのこと。
一部の材料はリグーリアのペーストと同じ。
“ファヴィニャーニのペースト”とも呼ばれる」
(ファヴィニャーナはモツィアの西にあるマグロ漁で有名な島)

『Grandi Enciclopedia』で紹介しているリチェッタ(4~6人分)は、

バジリコ1杷、にんにく3片、松の実60g、プレッツェーモロ少々、セロリの葉数枚、刻んだトマト数個分、シチリア産の風味の強いEVオリーブオイル、塩、こしょうを乳鉢ですり潰す。


火を使わない夏向きのサルサですね。
唐辛子入りやペコリーノ入りのリチェッタもあります。
ミキサーを使う時は攪拌し過ぎないのがポイントとか。


これを冷たいスープにしたリチェッタは、こちらのサイトのものを訳してみます。

・にんにく6片、バジリコ、塩少々をすり潰し、皮と種を取った完熟トマト6個、オリーブオイル少々、こしょうを加えてさらにすり潰す。
・別の容器に移し、水で薄めてスープ状にする。
・サラダ用のトマト2個を小さく切って加え、スープ皿に注ぐ。
・乾燥した(またはトーストした)硬質小麦粉のパンを浸しながら食べる。


ガスパチョとはちょっと違うスープですが、真夏に炎天下の塩田で働く人にはピッタリな一品ですねー。
おそらく、海運国だったジェノヴァの人たちがシチリアにペーストを伝えて、そこでスぺインの食文化がミックスされて生まれた料理なんじゃないか、と想像できます。

実はこの料理、トラーパニでは“アッギア・ピスタータ Agghia pistata ”と呼ばれています。
「潰したにんにく」という意味。
にんにくをたっぷり利かせるのもスペインの影響と言われています。
トラーパニ近郊のヌービアは、赤にんにくの産地として有名なんですが、このにんにく、普通のものより香りが強いのが特徴。
そのにんにくをたっぷり使います。


こちらの写真はちょっと分かりにくいですが、
「マタロッコとエビのブジアーテ」。

マタロッコとブジアーテが何か知らない人には、まったく意味不明の料理名ですねー。
でも、もしマルサーラでこんな料理に出会ったら、とりあえず食べておくべきかも。

ブジアーテとは、生地を編み棒(ブーザ)に巻きつけて作ったところからこの名がついたパスタ。
伝統的には硬質小麦粉で作ります。

細く伸ばした生地を棒に巻きつけてカールさせるブジアーテ作りの作業

ブジアーテで一番有名な料理は、「トラーパニ風ペーストのブジアーテ」。
トラーパニ風ペーストはアーモンドが入ります。

スローフード出版の『Ricette di Osterie e Genti di Sicilia』より、
トラーパニのカンティーナ・シチリアーナ(hp)のリチェッタをどうぞ。

ブジアーテ・アル・ペースト・トラパネーゼ Busiate al pesto trapanease
材料:4人分
 生麺のブジアーテ・・600g
 ソース用の完熟トマト・・500g
 バジリコ・・8枚
 にんにく・・6片
 皮むきアーモンド・・40g
 おろしたペコリーノ・・100g
 EVオリーブオイル
 塩、こしょう

・にんにく、バジリコ、アーモンドをすり潰しながらオリーブオイルを加える。ガラスの器に移してペコリーノ少々を加える。
・トマトの皮を湯むきして種を取り、刻んで乳鉢ですり潰す。これをペーストに加え、塩、こしょう、オイルで調味する。
・パスタをアルデンテにゆでてペーストで和える。




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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年2月号
“マルサーラ”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年2月号、P.33に載っています。


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