今日はブラザートの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。
バローロのブラザート, photo by Silvio
記事によると、ブラザート brasato は、イタリア語で「炭」という意味の“ブラーチェ brace ”の古い呼び方、“ブラーザ brasa ”が語源だとか。
つまり、炭火でことこと煮込む料理をイメージすればいいわけですね。
暖炉で燃える炭の上に鍋をのせて、鍋の蓋にも炭を少量のせて、時間をかけて肉を煮込んでいく・・・、そんな料理。
ただし、煮る前に肉の表面を焼いてカラメッラーレするので、肉としての存在感もしっかり残っています。
イタリア語には、「煮込み」という意味でよく使われる言葉が他にもあります。
“ストゥファート stufato ”、“ストラコット stracotto ”、“ラグー ragù ”などですが、代表的なのはストゥファート。
ストゥファートの語源は、ストーブという意味の“ストゥーファ stufa ”。
ストゥファートとブラザートは、どこが違うんでしようか。
実は、この問題を考え出すと、あっという間に出口のない迷宮にはまりこんでします。
イタリアでも色んな意見があります。
ストゥファートは野菜を炒めないがブラザートは炒める、とか、ストゥファートには野菜を加えないがブラザートにはたっぷり加える、とか・・・。
「ストゥファートには野菜を加えない」、という説は意外と有力で、野菜を加えないためにストゥファートはブラザートより煮汁が濃く、色も黒い、という説明もよく目にします。
2つ星店アンバッシャータの“頬肉のストゥファート”, photo by Sara Maternini
確かに、上のバローロのブラザートと比べると、煮汁が濃いかも・・・。
煮込み料理というと、日本の場合はシチューのような料理をイメージしませんか?
英語の“シチュー stew ”は、イタリア語に訳すとストゥファートや“ウミド umido ”。
ウミドとは、ストゥファートもブラザートも全部含めて、「煮た料理」という意味です。
日本のシチューとストゥファートの大きな違いは、日本のシチューはルーでつなぐのに対して、ストゥファートは必ずしもつなぎを加えないということ。
日本のシチューは、イタリア語なら“スペッツァティーノ spezzatino ”ですかね。
一口大に切った肉を煮込むのがスペッツァティーノ, photo by Raphaela
ちなみにブラザートを英伊辞典で調べたら、英語では“ポットロースト pot roast ”と訳すのだそうです。
ブラザートとストゥファート、イタリアでもその違いは曖昧で、はっきりした答えはないようです。
野菜がたっぷり入っていてもストゥファートと名乗っている料理もあれば、キャベツのストゥファート、など野菜のストゥファートもあります。
ブラザートも、魚や野菜に「~のブラザート」と名付けた料理はよくあります。
要は、名前をつける人のセンス次第、ということでしょうか。
もちろん、バローロのブラザートはあくまでもブラザートで、バローロのストゥファートとは呼びたくない!
野菜のストゥファートやブラザートは、肉の場合とは調理方法が異なります。
その一例。
“アスパラガスのブラザート asparagi brasati ”という料理の動画です。
1.7kgのアスパラガスを隙間ができないサイズの鍋に入れ、水1カップ、塩少々でブラザーレしています。
煮汁にはオリーブオイル、塩、レモン汁を加えて混ぜ、これをアスパラガスにかけます。
次回はブラザートのリチェッタの話です。
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2006年10月号(クレアパッソで販売中)
“基本のチェッタシリーズ~ブラザート”の日本語訳は、「総合解説」'06&'07年10月号、P.9に載っています。
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