2024年6月24日月曜日

イタリア人にとってカテリーナ・ディ・メディチは“幸せな美食家”、ところが、フランスでは早すぎる未亡人として黒い女王なんで呼ばれてました。

さて、今日はロレンツォ・デ・メディチの曾孫、カテリーナの話です。
(CIR3月号P.15~)
ロレンツォ・デ・メディチは、フィレンツェとルネサンスの話をする時には欠かせない人物ということは、昨日のブログでお判りいただけたと思いますが、ロレンツォは、フィレンツェの中だけでも権謀術策うずまく、おどろおどろしい政治の世界の中心にいた人でした。その14歳の娘が、隣国の、経済的にも宗教的にも困難な時期を迎えていたフランス王と結婚するというのは、もちろんザ・政略結婚。
今回の記事は、偶然コロンブスが何かと話題に上る昨今の状況から、私の中でコロンブスの評価がガラッと変わった記事を思い出させました。コロンブスはジェノヴァ人。ジェノヴァには彼の家も残されています。私にとってはコロンブスは、アメリカを発見した歴史的探検家。
ちょっと昔、確か1995年は、彼のアメリカ到達500周年だとかで、彼の故郷、ジェノヴァでは盛り上がていました。ところが、記事を訳すために、彼のことを調べていると、なんだか奴隷とか、疫病とか、彼がやったひどいことが、かなり拡散しているのです。各地で彼の銅像が倒される事態になっていると知りました。冒険家としてのコロンブスの姿が、奥をたてて崩れていく・・・。
それ以来、彼は次第に日陰の身になっていきました。
コロンブスの生誕500周年を祝うジェノヴァ、1989年。

その時と多少似たようなことが、カテリーナ・ディ・メディチにも置きました。記事を訳す前と後では、人物像がかなり大幅に変わったのです。

カテリーナ・ディ・メディチ

彼女はグルメなことでも知られていました。そのため、イタリア料理の世界では、イタリアの食文化をフランスの宮廷に伝えた人、という重要人物です。イタリア人にとって、カテリーナは幸せな美食家。ところがフランスから見ると、“黒い女王レジーナ・ネラ”ですよ。
そもそも。彼女は迷信深いとか、権力欲が強いとか、あらゆる悪徳の持ち主と思われていて、ちっちゃくてメディチ家特有の目が出っ張った容貌をカエルみたいとからかわれていたのです。世界のリーダーたるフランス王家からすると、カテリーナは隣国からきた田舎娘、その価値は、父親のお金と王子を産むことだけ。それなのに、結婚後10年間は子供にも恵まれず、夫には美人な愛人がいました。フランスでの彼女の立場は、周り中みんな敵で小姑。
ところがカテリーナが10人の子供、つまり後の王を産むと、すごい手のひら返しで、今度は“ママ女王、レジーナ・マードレ”と呼ばれるようになります。
ヨーロッパの歴史って、誰の立場で見るかによって全然違います。
それにしても、外国から来た若いイタリア人に対する偏見と冷たくて厳しい隣国の目にさらされたカエル目の少女には、すごい武器がありました。それは知性です。メディチ家の頭脳を持つカテリーナは、当時のインフルエンサーでした。フィレンツェやシチリアから料理人とパティシエを連れてきて料理を教えさせました。料理はお腹を満たすだけのものではない、という確固とした考えを持ち、フランス人にフォークの使い方を教え、料理と料理の間に皿を換え、ドルチェとサラートのサービスを分けるという習慣を導入しました。
宮廷料理にたくさんの野菜を使った家庭の味を取り入れたのもカテリーナの功績です。
ソルベットやクレープもフランスに伝えました。

次回は料理の話。

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(CIR)は『クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』という2冊のイタリア料理の月刊誌のリチェッタと記事を日本語に翻訳した約50ページの小冊子です。
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