2024年1月30日火曜日

標高3000mでも栽培できるじゃがいもは、山の上で最も普及した野菜。ニョッキのバリエーションは今も昔も南や中部イタリアでも盛んに作られている。片栗粉や抹茶入りニョッキも登場しています。

(CIR11月号)の山の食事dieta alpinaの記事(P.31)の解説をしています。
まずは山の料理の象徴、とうもこしの粉のポレンタの話でした。
次は、とうもろこし(18世紀後半)よりさらに後の18世紀から19世紀にかけて、新大陸からヨーロッパの山の上(標高3000m)に届いた食材、じゃがいもが主役の料理、ニョッキです(P.23)。
ちなみに、富士山より高いこれだけの高地で栽培できたものは少ししかありませんが、高地でもっとも普及した野菜はじゃがいも、もっとも普及した穀物はライムギでした。
ニョッキは粉と水をこねた生地をちぎって熱湯でゆでた料理です。
次第に様々な形になり、材料も、小麦、とうもろこし、そば、パン、リコッタなど、様々なものが使われました。ピエモンテ、ヴェネト、フリウリ、エミリア地方などが発祥地と考えせれていますが、名前は地方によって違い、トレンティーノではカネデルリ、サルデ―ニャはマッロレッドゥス、中部イタリアではストロッツァプレーティ、リコッタのニョッキ、セモリーノのニョッキなどが普及します。
味付けも地方によって違い、ピエモンテではフォンティーナとバターや肉の煮込みの煮汁ヴェネトでは肉のラグー、フリウリではカンディート、シナモン、ココアパウダー、溶かしバターとパルミジャーノ、トマトソース、きのこのラグー、トリエステではドライプラム、マルケではラグーやサルシッチャ、シチリアのエリチェでは硬質小麦粉入りのニョッキにアーモンドとバジリコのソースをかけるなど、地方色豊かに様々なバリエーションが誕生しました。

ちなみに、『木曜はニョッキ

という本のローマ在住の作者は、「私にニョッキを教えてくれたピーナおばあちゃんは、毎週ニョッキを作ったが、木曜日ではなく、たいてい日曜日だった。
日曜日は家族全員が集まってご馳走を食べる日で、一番簡単なメニューがニョッキだったのだ」と書いています。
ちなみにこの言い回しはローマの伝統で、木曜はニョッキ、金曜は魚、土曜はトリッパと続きます。家族全員のためにおばあちゃんが考え出した木曜の料理は、簡単であると同時に経済的であることが条件。金曜はキリスト教徒が肉食を禁じられた日。トリッパは経済的だけどボリューミーな食材、内臓。日曜日は家族そろってご馳走を食べる日。
つまりニョッキはどう考えてもご馳走じゃなくて、むしろ経済的な1品。戦後の食糧難の時代に生まれた、なんともスマートなスローガンでした。

定番のニョッキはじゃがいものニョッキ。記事ではさらに、“卵入り”、“マッシュポテトのニョッキ”、“片栗粉入りニョッキ”といった、とても今時のニョッキも紹介しています。


地方料理の代表的ニョッキ、“トレンティーノ地方のカネデルリ”。残り物で作る素朴なニョッキ。ブロードをかけるのが一般的だが、セージバターをかけてもよい。



トスカーナのニョッキ、ニューディGnudiは皮のないラビオリのようなリコッタとほうれん草のニョッキ。


カボチャが名物のマントバでは、カボチャのニョッキが名物。


ニョッキ・アッラ・ロマーナはセモリーノのニョッキ。

ニョッキ・アッラ・パリジーナは、ビニェと同じ材料、同じ製法で作るニョッキ。パリ風という名前からして何かを期待させるおしゃれ感。

ニョッキ・アッラ・ソレンティーナは、南イタリア版ニョッキ。


動画は見つからなかったけど、上の本『ジョヴェディ・ニョッキ』で紹介していたマッチャのニョッキは、かなりモダンで美しい1品でした。

片栗粉入りニョッキ。

なんだかニョッキも進化してるんですね。

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(CIR)は『クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』という2冊のイタリア料理の月刊誌のリチェッタと記事を日本語に翻訳した約50ページの小冊子です。
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