2023年11月10日金曜日

貴族料理のサーロインの代わりにナスを使ったシチリアの庶民版ドルチェッティ。とは言えモディカのチョコレート入り。

今日からは(CIR/9月号)のリチェッタのビジュアル解説です。


9月号のリチェッタのテーマは“各地の特産物を使った料理”。
1品目は“なすとモッツァレラのモディカのチョコレート風味”。
トマトとモッツァレラじゃなくて、なすとモッツァレラです。
これは間違いなくシチリア料理ですね。

モディカのチョコレートは、ご存じイタリアで一番有名なチョコレート。
溶けないチョコレートだし、シチリアでも有名な観光地なら必ず売っている手に入りやすいもの。お土産に最適の品です。チョコレートの概念をことごとくひっくり返すチョコレート。
モディカのチョコレート。

とても歴史の古いチョコレートです。このチョコレートの歴史には、スペイン、修道院、パティシエと、イタリアの食文化を作った主な顔ぶれがすべて登場します。
モディカはVal di noto(ヴァル・ディ・ノート)と呼ばれる地方のバロックの街。大地震で破壊された後に見事に再建された世界遺産です。

ヴァル・ディ・ノート。


チョコレートの原料はもちろんカカオ。古代アステカの、すり潰して粒状のペーストにする製法は、当時シチリアを支配していたスペインからモディカの伯爵領の修道院に伝わり、そこにドルチェリーアでブラウンシュガー、バニラ、シナモンなどが加えられて、現在慣れ親しんでいるチョコレートとはまったく違う、モディカのチョコレートが誕生します。
熱によってチョコレートを滑らかにするコンチングの作業を行わないので、砂糖が溶けずに粒状のままなのが特徴。

モディカには、ドルチェリーアでカカオのペーストを冷ます時に使った紙を胸に載せると、カカオの粕が溶けて風邪や咳に効く効果がある成分が発散されるらしい、と信じられていた。
ねぎみたいな扱いですね。
あらゆるパスティッチェリーアに使うことができますが、サラートとの組み合わせも面白いです。代表的な組み合わせは挽肉、ドライフルーツ、シナモン、チョコレートを詰めた“mpanatigghi”

モディカのチョコレートとなすのインパナティッギ'Mpanatigghi with melanzante

ミートパイの一種で、肉を詰める貴族バージョンの代わりになすを詰めた有産階級バージョン。

のリチェッタを訳してみます。

'MPANATIGGHI(インパナティッギ/チョコレートと肉のドルチェッティ)
材料/6~8人分
《パスタ》
00番の小麦粉・・800g
砂糖・・200g
ラードかバター・・200g
卵黄・・160g
全卵・・60g
水・・80ml
《詰め物》
牛サーロインの挽肉・・320g
シナモン風味のモディカのチョコレート・・1個
殻むきアーモンド・・500g
砂糖・・900g
ビターココアパウダー・・150g
シナモン・・10g
蜂蜜・・小さじ1
クローブ・・1個
卵白・・140g
全卵・・3個

・小麦粉、砂糖、ラード、卵黄、全卵、水をこねて滑らかな均質の生地にし、冷蔵庫で約2時間休ませる。
・大きなソテーパンで挽肉を炒め、水気が全部飛んだらチョコレートを加えてよく混ぜる。
・アーモンドをミキサーで刻み、砂糖、ココア、シナモン、蜂蜜、クローブ、卵白、全卵を加える。均質に混ざったら冷蔵庫で12時間休ませる。
・生地を伸ばし、詰め物を詰めて半月形の小さなラビオリにする。表面に小さな穴をあけ、
・220℃のオーブンで約10分焼く。


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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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