2022年5月1日日曜日

アルトゥージが広めてイタリアの定番ドルチェになった松の実のケーキは、トスカーナとロンバルディア両方のPAT製品。

(今月のCIR/2020年7月号)、リチェッタはドルチェに移りました。
この記事は、イタリア料理の定番を紹介するもので、中でも家庭で手作りされてイタリア人が子供のころにお母さんが作ってくれたお菓子として温かい思い出に包まれている幸せなドルチェです。

それをペレグリーノ・アルトゥージが『La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene』(1891)にまとめたリチェッタです。
アルトゥージは1820年8月4日エミリア=ロマーニャのフォルリンポポリ生まれ。各地の地方料理をイタリア料理として1冊に集めたこの本は、統一イタリアの初めての料理書という評価を得て、アルトゥージは統一イタリア家庭料理の父と呼ばれるようになりました。
各料理に彼独特の考え方のユニークなコメントが加えられていることも人気になりました。
本に取り上げられた料理は多くの人が作ってイタリア中に広まりました。
彼の本の影響は莫大でした。
このドルチェの記事はそろそろ生誕200周年というタイミングで取り上げられた記事です。
アルトゥージとイタリア料理の研究機関、カーザ・アルトゥージも生誕200周年を祝いました↓。

松の実のケーキ/torta coi pinoliに彼が加えたコメントは、“一部のパスティッチェリーアでは大人気になったケーキだが、あまりの人気に、これはソルボンヌ大学の教授が発明したもの、と言い出す者もいた”

ソルボンヌ大学をノーベル賞に替えれば現代でも十分通じるようなコピー。

アルトゥージのリチェッタがイタリア中に広まり、今では定番として定着していますが、そのルーツはトルタ・マントバーナというマントヴァ(ロンバルディア)のケーキのようです。

トルタ・マントバーナ/Torta mantovana

材料/直径22~24㎝のトルタ1台分
00番の小麦粉・・170g
砂糖・・170g
溶かしバター・・150g
卵・・1個
卵黄・・4個
塩・・少々
ノーワックスレモンの皮
皮むきアーモンド・・60g
松の実・・30g
バニラシュガー

・バターを弱火の湯煎にかけて溶かし、冷ます。
・アーモンドを親指と人差し指で固定して厚く3~4枚スライスする。
スライスしたアーモンドと松の実を混ぜる。
・室温の卵と卵黄、塩少々、砂糖、レモンの皮のすりおろしを白くなるまで5~6分ホイップする。
・ふるった小麦粉とバターを少量ずつ加える。
・直径22~24㎝の浅い型にバターを塗って小麦粉をまぶし、生地を入れて平らにする。
・表面にアーモンドと松の実を散らす。
・180℃のオーブンで30分焼く。冷めたら方から出してバニラシュガーを振りかける。
朝食としてサーブしてもよい。

1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ

には、トルタ・マントバーナについてこう書いてありました。
トルタマントバーナはマントバ生まれのドルチェだが、トスカーナのプラートのドルチェとして知られている。プラートはロンゴバルド族に支配されていたことがあり、彼らによってリチェッタがマントバに伝えられたと考えられている。ロンゴバルド族はロンバルディアの語源にもなったゲルマン民族。
1490年にリチェッタをトスカーナに伝えたのはゴンザーガ家のフランチェスコの妻、イザベラ・デステだと伝えられている。
彼女はルネサンス期のイタリアの政治、社交界、芸術をリードする女性として知られるスーパーな女性。
イザベラは、フィレンツェに滞在するローマ教皇レオ1世を度々訪れていて、その際、メディチ家を訪れていた。その時にイザベラがメディチ家にこのドルチェのリチェッタを教えた、というもの。実際、現在このドルチェは、トスカーナとロンバルディア両方のPAT(prodotti agroalimentari tradizioneli italiani 地方に根付いた典型的な製品)に認定されている。
torta di pinoli のリチェッタは(CIR/P.12)。
アルトゥージがマントバの修道女に教えたとか、トスカーナの友人のパティシエに開店祝いに教えた、という説もあります。



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イタリアの料理月刊誌の日本語解説『(CIRクチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ)
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