フィレンツェのフレスコバルティの次は、ルフィーノのトスカーナの話。
ナポリやシチリアなど南イタリアの移民はアメリカ大陸を目指して大量に移民しました。ニューヨークのリトルイタリーやマフィアの映画やドラマで、その後の拡大の様子はすっかりおなじみです。
一方、トスカーナや、エミリア・ロマーニャなど中部~北部のイタリア人はイギリスを目指しました。
スパゲッティやピッツァが世界中に広まってイタリアの食文化の象徴になったのと同じくらい、キアンティのワインもイタリアの象徴として広まりました。
その背後にはワインメーカーたちのビジネスマンとしての知的な戦略と素晴らしい力があることを感じます。マルサラを初めてしてイタリアのワインを世界中に売るのは、イギリスのおはこ。
素朴で質素な家庭料理から生まれた南伊の料理とは明らかに違うステイタスが、トスカーナのワインにはありました。
常に上質のものを探求するワインの世界は、トスカーナの歴史と貴族社会を背景に発展してきました。
トスカーナのぶどう畑は世界中の人が憧れるイタリアの姿。
私も始めてイタリアを訪れた時は、トスカーナの田園地方に糸杉が立ち並ぶ姿を見て、ダ・ビンチの絵と同じだと感動したものです。
『ルフィーノのトスカーナ』は、
リチェッタより、その背景にあるものの説明に熱が入りがちな傾向はあるものの、トスカーナの食文化ならルフィーノにおまかせを、というプライドと覚悟はひしひしと感じます。
トスカーナ料理は、やはりまず、パーネ・ショッコの話からはじまります。
小麦はメソポタミアで人間が最初に栽培した穀物で、パンは古代文明の基本の食物、という有名な話から、キリスト教の教えでは、パンは神の愛や奇跡のシンボルと、フィレンツェピサの戦争で塩の物流を止められたことから塩が入らないパン、パーネ・ショッコが生まれた、だいたいここまでがセットでパーネ・ショッコのフリ。
パーネ・トスカーノDOP。
北イタリアで、豚肉を塩漬けにして保存する生ハムなどは、北伊の山の中では塩が高価で手に入らなかったことから、スモークして保存するスペックのような豚肉の保存食が考え出されたことを思い出すエピソードです。
無名の天才農民がピンチの時に考え出した食べ物でした。
フィレンツェ料理との相性もバッチリで、フィレンツェの食卓には常にこのパンが上るようになりました。
倹約家のフィレンツェの人たちは、古くなって固くなったパンも、すべて無駄なく食べました。その結果、フィレンツェ料理には、古くなったパーネ・ショッコを使う料理が多数出現したのです。
きょうの料理は、そんなパーネ・ショッコを使ったトスカーナの農民の純粋な伝統料理、パンツァネッラですpanzanella。トスカーナでは夏にだけ作る料理。火は使いません。
材料/4人分
固くなったパーネ・トスカーノ・・400g
熟したトマト・・500g
赤玉ねぎ・・1個
バジリコ・・15枚
ワインビネガー
・パンを幅1cmにスライスして耐熱皿に敷き込む。
・水250mlをかけて40~45分休ませる。
・玉ねぎをスライスして頻繁に混ぜながら水70ml、ビネガー70mlに15~20分浸す。
・きゅうりの皮をむき、縦に半分に切って輪切りにする。トマトは小角切りにする。
・パンを崩し、水気を切ったトマトと玉ねぎに加える。きゅうりとちぎったバジリコを加えて混ぜ、1時間休ませる。油40gとビネガー15g、塩、こしょうを加えて混ぜる。
「総合解説」
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