前回にもちらっと出てきましたが、『サーレ・エ・ペペ』編集長の記事に登場した名言です。
「私たちは食べたものでできている。
つまりイタリア人はトマトソースのパスタでできているのだ」
こう言い切れるには、どれだけトマトソースのパスタを食べてきたんだろうなあ。
多分、ほぼ毎日でしょうねえ。
編集長のエッセイは、あるイタリア人の作家が、トマトソースのスパゲッティを
“バロックだ”と語ったというエピソードも紹介しています。
黒川記章が奥様の若尾文子の美しさを、「バロックのような人だ」と例えたというのは有名な話。
バロックとは何かというのはとてもむずかしい話ですが、この話を知って以来、私は、バロックというのは癖のある美を言い表す言葉だと、単純に信じ切っていました。
トマトソースのスパゲッティはバロックだ。by ピエロ・キアラ。
残念ながらピエロ・キアラさんのことは何も知りませんが、トマトソースのスパゲッティがバロックだという発想の裏を考えた時、美しさ、いびつさという表面的なこと以上の意味がこの言葉には込められているのかも、ということに初めて気が付きましたよ~。
料理雑誌の編集長にイタリア人はトマトソースのパスタでできている、と言わせ、言葉のプロの作家にバロックだと言わせるトマトソースのパスタ、もちろん、シェフたちも様々なトマトソースを考え出してきました。
編集長は、様々なシェフの料理を引用していますが、最初に揚げているのがカルロ・クラッコシェフがその本『クールにしたいならエシャロットを使う』で赤裸々に語ったトマトソース。
昔、このブログでも紹介ししていました。こちら。
考えてみると、イタリア人にとってトマトソースのパスタを語るということは、母親や子供時代を語ることにほかならないようで、それぞれが、最大限の評価と愛情を捧げているのがひしひしと伝わってきます。
さらに、常に新しいリチェッタを考えているシェフたちの間で、最近ではあこちで見かけるのが“acuqa di pomodoro”。
ハインツ・ベックシェフはトマトをミキサーにかけて漉して取った水、トマト水でパスタをゆでるんだそうです。
トマト水の作り方は人それぞれですが、トマトをミキサーにかけて漉すのが一般的。
編集長にとってのトマトソースのパスタは、母親が作る家庭の味だそうです。
クラッコシェフを始めとする多くのイタリア人に共通のイメージなんでしょうね。
「総合解説」にリチェッタが載っている“スパゲッティ・ピッツァ・マルゲリータ”は、コンバル・プント・ゼロのダヴィデ・スカヴィンシェフの1品。
革命的なリチェッタを集めた本、『パスタ・レボリューション』にも載っています。
かなりクセのありそうなシェフですが、
最近ではスパゲッティ・ピッツァ・マルゲリータの名前を目にすることも増えてきました。
夏の“編集長のメニュー”は、
“トマトソースのパスタ”、
“進化系パンツァネッラ”、
“チェリーモッツァレッラのマリネ”、
“ミニレモンスフレ”、
と続く、暑い季節の、家庭の思い出も感じられる都会向きのメニューでした。
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“編集長のメニュー”の日本語訳は、「総合解説」2017年7/8月号P.3に載っています。
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