2019年6月13日木曜日

ガラパゴス化するリグーリアのフォカッチャの本

初めてジェノヴァを訪れた時、フォカッチャ天国ぶりに驚きました。
ナポリで初めてピッツァを食べた時、それまで食べていたピッツァは偽物だったんだ、ということに気がついて愕然としましたが、それと同じくらいの衝撃がありました。
そしてリグーリでは、食べ物のガラ系現象が起きる、ということにも気が付きました。
ピッツァがナポリ人と共に世界中に広まり、世界中からナポリに本場のピッツァを食べに人が集まる、という現象は、ある意味、奇跡なんですね。
フォカッチャは、確か世界中に広まりました。
でも、ピッツァ・ナポレターナのように、伝統を頑なに守る、という行動が綺麗サッパリ抜けていました。
その結果、フォカッチャて何?
という質問の答えがあやふやになり、フォカッチャの本場はジェノヴァだということも、ろくに知られていないという現状では。
ジェノヴァの産物に対するこだわりも少なく、世界中どこでも作れるパンとして広まりました。

でも、ジェノヴァや近隣の人にはめちゃくちゃこだわりがあります。




この、ジェノヴァ人があまり声高に主張しないこだわりを本にしたのが、新入荷の本、
『リグーリアの発酵生地』です。

本にもリグーリア人のアピール下手が現れているようで、ナポリ・ピッツァだったら立派な大型本にするような専門的な内容なのですが、ぎゅっとコンパクトにそっけなくまとめた本で、リグーリアの外に広める気、ないですねー。

本は、まずパンの大まかな説明から入っていきます。
この話、なかなか面白いですよ。
ヨーロッパにパンが広まる経緯が分かります。

「パンは小麦粉、水、塩、イーストをこねた生地をオーブンで焼いた食べ物で、香りと味が混ざり合い、過去の記憶や象徴としての価値、宗教的、地域的意味も含有した、栄養的、文化的側面も知らなくては語れない食べ物。
その歴史は人間が穀物の栽培を始めた時代にまで遡る。
約2万年前、人は穀物を水に浸して柔らかくして、または炙って食べていた。
粉にする技術が発明されると(最初はエジプトで、石臼で挽いた)粉を粥状にして食べた。
さらにこれを熱した石板で焼くようになる。
このガレットが、パンのルーツと考えられている。
おそらく忘れて放置された生地が偶然発酵し、それを焼いたところ、ふんわりして軽い味の良い食べ物になったのだった。
・・・
第二次大戦直後まで、パンは家で下ごしらえをして、村の共同かまどに運んで週に1回焼いていた。
60年代の好景気の後は、パンを直接パン屋で買うようになり、精製した白いパンが良い暮らしの象徴になった。
現代は情報が行き渡り、再び自家製パンや天然酵母の良さが知られるようになり、全粒粉パンや天然酵母パンが再評価されている。・・・」

イタリアの食文化は、第二次世界大戦とその後の好景気の時代を経て大きく変わります。

さて、次回はいよいよフォカッチャの話です。


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