もう12月になっちゃいましたが、「総合解説」13/14年10月号、発売しました。
最初の記事は地方料理。
“メスチュア”です。
ご存知ですか ?
イタリアの地方料理によくある、質素で素朴で、ボリューム満点の「豆のズッパ」です。
レストランの1品としては、見た目があまりにも地味ですが、豆のズッパというのは、一度はまると、その奥深さに魅了されます。
労働者の貧しい食事の代名詞のような豆のズッパですが、誕生したいきさつを知ると、より愛着が増します。
メスチュアは、トスカーナとリグーリアの州境の地方の料理で、トスカーナ料理とみなすか、リグーリア料理とみなすか、意見が分かれるところのようです。
今回の記事は『ア・ターヴォラ』誌の記事ですが、それによると、19世紀後半にラ・スペツィアで兵器工場が造られていた時に生まれた料理がルーツだというので、上の動画も、ラ・スペツィア版メスチュアのものを選びました。
記事によると、この工場建設の際に、一番きつい仕事を行っていた囚人たちのために作られた料理そうです。
それが、豆や小麦を栽培する農家の主婦の工夫が詰まった料理として生まれ変わったのが、この
メスチュア。
材料の豆は、チンクエテッレから運ばれてきた穀物を港の倉庫に運んだ時にこぼれ落ちた豆。
でも当時、港の労働者が落ちた穀物を拾うことは禁じられていたので、農家のおかみさんたちが、拾い集めていたそうです。
どんだけ生きるのが苦しい時代だったんでしょうねえ。
ヴィットリオ・デ・シーカが映画にしたら、ネオレアリズモの傑作が生まれて、カンヌでグランプリ獲るんじゃないかと期待しそうなシチュエーションですよ。
ネオレアリズモと言ったら、デ・シーカ監督の『自転車泥棒』。
↓
19世紀という時代背景は、メスチュアと一緒。
農家のおかみさんたちが落ちた豆を拾うのは許していたイタリア人の心意気も、似てるなあ。
熱くて濃厚なズッパの季節の始まりにふさわしい1品でした。
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“メスチュア”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年10月号に載っています。
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