2011年4月28日木曜日

フォルマッジョ・ディ・フォッサ

チーズの話、その3。
『ア・ターヴォラ』の解説です。

最初に説明するのを忘れていましたが、今回取り上げているチーズは、「イタリア人がクリスマスなど特別な時に食べたいと思うチーズ」です。

シチリアの山羊のタレッジョ、ピエモンテの牛乳のベッテルマットの次は、エミリア・ロマーニャからマルケ、ウンブリアにまたがる地方で作られている羊のチーズ、
フォルマッジョ・ディ・フォッサformaggio di fossa、別名ペコリーノ・ディ・フォッサpecorino di fossa。

こんなチーズ


フォッサとは、穴とか堀という意味。
ペコリーノをやや熟成させてから地下に掘った穴に詰め、封印して3ヶ月寝かせたチーズです。

夏に新鮮な草を食べた羊がたっぷり出したミルクを、冬まで保存しておくために考え出されたのが、この穴で寝かせるという製法。
山羊乳や牛乳を加える場合もあります。

穴は家の地下にあって、中世には主に麦を略奪から守るための隠し穴として使われていました。
秋の間の3ヶ月だけ、穴の所有者がチーズを作りたい人に場所を貸す、というシステムでこのチーズは作られていました。

穴の壁は凝灰岩。
チーズを入れる前に壁を焼いて水気を飛ばし、殺菌します。
次に壁の内側を藁や葦で覆って水はけをよくします。
底には板を敷きます。
チーズは数個ずつ袋に詰め、レンガを積み重ねるように穴に入れていきます。

↓チーズを詰める作業






伝統的には、チーズを詰めるのは8月末から9月にかけて。
入れたら木の蓋をして石膏で封印し、約20度に保たれた穴の中で90日寝かせます。
そして蓋を開けるのは、11月25日の聖カテリーナの日。

穴に詰める前は均等な筒形をしていたチーズも、取り出す時は不規則な形に変形しています。
穴のどの位置にあったかによって形が違います。


↓チーズを取り出す作業






フォルマッジョ・ディ・フォッサの味は、まず最初に甘みを感じ、次第に辛さとほろ苦さが強くくなってきます。
さらに、地下で寝かせているために独特の強い香りがあります。
木、コケ、トリュフ、森の香りなどがアロマの一例。

食べ方は、食事の最後にチーズだけで、またはポティーのあるサンジョヴェーゼやパッシートやを添えて、というのが一般的。


↓子羊肉とペコリーノ・ディ・フォッサのフォンドゥータ、白トリュフがけ





↓アサリ、ポルチーニ、ペコリーノ・ディ・フォッサの手打ちフジッリ





フォルマッジョ・ディ・フォッサは作り手によって出来が大きく違うチーズ。
『ア・ターヴォラ』お薦めの作り手はヴィットーリオ・ペルトラーミ。
webページはこちらです。



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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年12月号
ペコリーノ・ディ・フォッサを含む“ディナーにお薦めのチーズ”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月25日月曜日

ベッテルマット

チーズの話、その2です。
『ア・ターヴォラ』の解説です。

今日のチーズはピエモンテのベッテルマットBettelmatt。

ピエモンテの一番北の角のようにとんがった部分、少し北に行けばスイス、という地方で作られている有名なチーズです。

産地は、ベッテルマット高地を中心とする標高1800~2400mの放牧地。
7月から9月前半の間だけ作られます。
熟成期間は最低2ヶ月~数年。


↓こんなチーズ





le mucche del formaggio bettelmatt
放牧風景


ベッテルマットの“マット”はドイツ語。
マッターホルンの“マッター”と同じ言葉で、牧草地と言う意味。

ベッテルとは、こちらのwebページによると、「寄進」というような意味があるそうで、つまり「寄進の牧草地」というニュアンスなのだそうです。

なんでも、以前はフォンティーナと呼ばれていたのですが、ヴァッレ・ダオスタのフォンティーナがDOPになったために、ベッテルマットという名前が付けられたんだとか。

このチーズ、生産地と製造期間が限られているために貴重品感があり、とにかく高評価。
イタリアのチーズのフェラーリだ、とも言われています。
ほとんどが外国に輸出されているため、逆にイタリアの方が手に入りにくい模様。

味の特徴は、放牧地の草の香り。
若いうちは甘みがあって料理に使うこともできますが、熟成が進むとほろ苦さが出てくるので、食後に蜂蜜などをかけて味わうのに向いています。


↓ベッテルマット、じゃがいも、ベーコンのパスタ




パタスとじゃがいもを一緒にゆでます。
ベッテルマットは小角切りに。
玉ねぎとベーコンをバターでソッフリットにし、ゆで上がったパスタとじゃがいもを入れます。
そこにベッテルマットを加えて溶かし、仕上げにこしょうを。



↓ベッテルマットのリゾット






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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年12月号
ベッテルマットを含む“ディナーにお薦めのチーズ”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月21日木曜日

山羊のタレッジョ

今日はチーズの話。
『ア・ターヴォラ』の解説です。

まずは、山羊のミルク100%のシチリアのウオッシュチーズ、タレー・ディ・カープラ・ジルジェンターナTalè di capra girgentana。

こんなチーズ

ウオッシュに赤ワインのネロ・ダーヴォラを使っているので、皮がほんのりスミレ色をしています。
2008年にはイタリア産の山羊のチーズのコンクールで入賞もしています。

このチーズは、数が激減して絶滅しかかったジルジェンターナ種の山羊のミルクが原料。

ジルジェンターナとは、アグリジェントの、という意味。
アグリジェントはシチリアなまりだと“ジルジェンティ”と言います。


↓グルグル巻いた大きな角が特徴のジルジェンターナ種の山羊





↓カラプリアのジルジェンターナ山羊





この山羊の特徴的な角はオスメス両方にあり、オスの場合は長いもので約70㎝になります。
きれいなスパイラル型にするために、鉄製の筒に巻きつけて手入れをしたりするのだそうです。

ジルジェンターナ種の山羊は、昔は約3万頭飼育されていましたが、1993年には純血種の数は524頭にまで減りました。
生活スタイルの変化やチーズ作りの衛生上の問題から、シチリアでは山羊の飼育自体が激減したそうです。

タレーは、このジルジェンターナ山羊の飼育を行っている農場の一つ、モンタルボで作られているチーズです。
ちなみに、現在はタレーではなく、普通にタレッジョと呼んでいるようです。


この農場では、ジルジェンターナ山羊のミルクから様々なチーズを作っています。

農場のwebページはこちら

こちらのページではタレッジョの食べ方も紹介しています。
それによると、お薦めはタレッジョとトマトのピアディーナ。
ピアディーナにマヨネーズを塗り、スライスした山羊のタレッジョ、トマト、サラミをのせて半分に折ります。
これを200度のオーブンで焼いてチーズをとろけさせ、熱々を食べます。


実は、2年前にモンタルボを悲劇が襲いました。
農場の跡取り息子が、24歳の若さで亡くなってしまったのです。
農場で感電死するという痛ましい事故でした。
モンタルボのホームページで、羊の群れを見守って立っている青年がおそらく彼です。
ご家族は、そんな悲劇を乗り越えて、今もジルジェンターナ種の山羊の復活に取り組んでいることと思います。
日本にも入っているようなので、機会があったらぜひ味わってみたいもの。
その時は、ワインはネロ・ダーヴォラですね。


チーズの話、次回に続きます。


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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年12月号
タレーを含む“ディナーにお薦めのチーズ”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月18日月曜日

パオロ・パリージの卵

今日はパオロ・パリージ氏の話。
『ガンベロ・ロッソ』の解説です。

ガンベロ・ロッソでは、毎年トレフォルケッテに選ばれたシェフたちが一堂に会して料理を披露するイベントが行われます。
2009年版の時に、ヴィッラ・クレスピVilla Crespiのシェフ、アントニーノ・カンナヴァッチュオーロ氏が披露したのは、エビとキャビアに卵黄のクリームと葉玉ねぎのサラダを添えた一品。

こんな料理です。

シチリア産の薄紅色の生エビも、小さな黒真珠のようなキャビアも、プックリしていて美しいですねえ。
さらに、その下に張られた卵黄のクリームは、なんとも濃厚な色をしています。

この料理、シェフが付けた名前は、
「生エビとキャビア、パオロ・パリージの卵の黄身のクリーム、葉玉ねぎのインサラティーナ」。

なんだか、エビやキャビアより「パオロ・パリージ」の方が目立ってませんか。
そもそも、パオロ・パリージって誰?

率直な話、この料理はあまり手はかかっていません。
エビは油、塩、レモン汁でマリネしただけだし、葉玉ねぎは千切りにして氷水にさらしただけ。
もちろんキャビアはのせただけ。
クリームは、卵黄10~12個(4人前)に生クリーム80gと塩を加えて軽くホイップし、ロート型ムーランを使って裏漉ししながら皿に注いでいます。

イタリア人でも生卵を食べるんですねえ。


さて、そこでパオロ・パリージです。

この人、チンタ・セネーゼ豚復活の立役者として知られる畜産業者。
ところが、チンタ・セネーゼの方がパオロ・パリージという名前より有名になってしまったことが、彼のチャレンジ精神に火をつけました。

自分の名前で一流シェフたちを唸らせるものを作りたい!
その一心で取り組んだのが、卵。
そして今や、「パオロ・パリージ」はイタリアの料理業界御用達の一流ブランドとなったのです。
イタリアでは彼は「ミスター卵」としても知られています。

鶏はガッリーナ・ビアンカ・リヴォルネーゼという品種なのですが、今回はこの名前の方が有名になる可能性は低そうです。
なんと鶏には搾りたての山羊のミルクを大量に与えているのだそうです。
鶏を飼うために山羊を飼い、山羊のミルクが減る時期に備えてジャージー牛も飼っているという徹底ぶり。
こんな方法、誰にも真似できないだろうと、本人も言い切っています。


パオロ・パリージのwebページはこちら

その卵については、

フレッシュな味で、特に卵黄はソフトでコクがあり、軽く、泡立てた時に含む空気の量が一般的な卵の3倍にもなる。
軽いアーモンド風味もあり、生で食べても美味しい。
ザバイオーネ、マヨネーズ、クリームなどに使うとその軽さが発揮される。
生パスタももっと軽くなる。

と説明しています。
値段はイタリアでも最高クラスの1個1ユーロ程度(2011年4月現在は約120円)らしいです。

※写真を追加しました。

パオロ・パリージの卵。
Italiamamaさんの写真です(Grazie!)。
コメントもいただきました。

「彼の経営するアグリトゥーリズモに泊まり、生卵飲んできました。
彼の農場やチンタセネーゼを飼っている所に連れて行ってもらったり、ガンベロロッソ(レストラン)へ一緒に食べに行ったりしました。
彼の奥様がフランスで学んできたシェフでお料理を教えてくださり、その後夕食を作ってくれました。
イタリア人で生卵を食べる(というか飲む)のは非常に珍しく、ほとんどの人が嫌がりますが、この卵、日本ではオレンジ色が好まれるのに黄色の色が濃く、あっさり味でした」




↓パオロ・パリージはこんな人。





↓卵について熱く語っています。






とにかく売れているようで、自身のブログでも、世界一美味しいスーパー卵だと語っています。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2008年12月号
“エビとキャビア、卵黄のクリーム、葉玉ねぎのサラダ”を含むトレフォルケッテのチェーナのリチェッタは、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月14日木曜日

カフェ・コレットとヴィン・ブルレ

なんでもイタリアじゃ、まだ4月だと言うのに気温が30度にもなったそうですねえ。
・・・・・、えーと、今日は体が温まるアルコール入りホットドリンクの話です(汗)。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。
相変わらず季節ガン無視ですみません。

まずはカフェ・コレット(caffè corretto/カッフェ・コッレット)。

エスプレッソにグラッパ、または他のアルコール飲料(サンブーカ、ウイスキー、ブランデーetc.)を加えたもの。
グラッパは、カップに直接入れる場合とグラッパ用グラスに入れて添える場合があります。

こちらによると、カフェ・コレットの場合、グラッパの香りがコーヒーの強い香りに取りこまれてしまうので、単品種から作った個性を味わうタイプのグラッパより、複数の品種のぶどうから作ったものが適しているそうです。
また、地方によってはコーヒーに加えるのではなく、コーヒーを飲んだ後のカップに入れて飲むこともあるんだとか。


Do-it-yourself caffé corretto kit
フリウリのレストランの光景。
ビンに入っているのはグラッパ。


Caffe corretto
こっちはボトルごと。


こちらもフリウリのカフェ・コレット。
グラッパ用グラスで。


caffè corretto
こちらはトリノ。
なんだかお洒落。


このカフェ・コレット、デミカップでクピッと一杯を、仕事に行く前に飲む人も多いようです。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』では、ホットチョコレート少々とエスプレッソにカルーアを大さじ1杯入れて、ホイップクリームを浮かべたホイップクリーム入りカフェ・コレットを紹介しています。


↓おまけの動画。
ピカチューという名のニャンコがカフェ・コレットをなめて・・・。





次はヴィン・ブルレvin brulé。
砂糖やシナモン入りホットワインですね。

イタリアでは、ブリュレではなくブルレと言います。
ヴはv、ブはb、ルはr、レはl。
日本人には発音するのが難しい言葉ですねえ。


↓ヴィン・ブルレの作り方




材料は、砂糖、ナツメグ、シナモン、クローブ、ノーワックスのレモンとオレンジの皮(色つきの部分)、ボディーのある赤ワイン。
これを鍋に入れて沸騰させ、砂糖が溶けたら念のために火でアルコールを飛ばします。
これを漉して出来上がり。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年12月号
ホイップクリーム入りカフェ・コレットとヴィン・ブルレを含む“冬の伝統料理”のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月11日月曜日

ガンベロ・ロッソのベストパネットーネ

ミラノのパスティッチェリーアのパネットーネの話に続いて、今回は恒例、『ガンベロ・ロッソ』が選ぶ“パネットーネ・ベスト10”から。

ガンベロ・ロッソが1位に選んだのは、パスティッチェリーア・ヴェネト。
ヴェネトという名前でもブレッシャ(ロンバルディア)にある店です。

店のwebページはこちら

この店の経営者は、イジーニオ・マッサーリ氏。
イタリアのパスティッチェリーア業界の大御所です。
ガンベロ・ロッソによると、「イタリアでも最高クラスの発酵技術を持つ人」。

1997年のクープ・ド・モンド・ド・ラ・パティスリーでイタリアが優勝した時のチーム監督。
ルレ・デセール会員で顧問。
1993年にアッカデーミア・マエストリ・パスティッチェーリ・イタリアーニAccademia Maestri Pasticceri Italiani(イタリア・マエストロ・パスティッチェーリ・アカデミー)を設立、現在名誉会長。
共同経営するブレッシャ県のリストランテ・カルロ・マーニョではドルチェをプロデュースしていて、2010年にはベストウエディングケーキというのに選ばれたんだそうです。

彼のパネットーネは、パネットーネ・ブレッシャーノ、つまりブレッシャ風パネットーネ。
表面がアマレットのグラッサ(アイシング)、アーモンド、ワッフルシュガーで覆われています。

パスティッチェリーア・ヴェネトのパネットーネ



↓ブレッシャ風パネットーネを説明するマッサーリ氏。




話している主な内容は・・・

・材料はリエヴィト・マードレ(小麦粉、水、酵母を8時間発酵させた中種)、小麦粉、水、砂糖、卵黄、(発酵)バター、蜂蜜(昔は加えなかった)、フレッシュオレンジのカンディート、ディアマンテ(カラブリア)産チェードロのカンディート、サルタナレーズン、バニラビーンズ、レモンとオレンジの皮、アーモンド、グラッサのアマレット。

・少量の砂糖(水1リットルにつき2g)を加えた水にリエヴィト・マードレを25分漬けて酸味を取ります。
・水気を絞り、小麦粉と一緒にこねて4時間発酵。

・MC「私、パネットーネは大好きだけど、カンディートとレーズンがたくさん入ってるのは好きじゃないのよねー」
・マエストロ「あ~、これはフレッシュのオレンジとチェードロを使っているからね。
瓶詰めじゃないんだよ。
(心の声;君が食べたパネットーネはまずいカンディートを使ってたんだよ)」

・ミラノ風の場合は記事の表面に十文字の切り込みを入れてバターをのせます。

・アマレットを塗るブレッシャ風は比較的最近のバリエーションの1つ。

・175度で50分焼きます。

・焼き上がったら裏返して吊るし、蒸気を行きわたらせてしっとりしたパネットーネにします。

・2日置いて味をなじませます。


出来上がるまでに2日半かかるそうです。

実は、パネットーネのカンディートやレーズンは、子供や若い人にはあまり人気がなく、中にはこれらを入れないものもあります。
でも、カンディートやレーズンにも厳選した素材をそろえている店にとっては、これはかなり悔しいこと。
前回紹介したミラノのパスティッチェリーア・クッキのパスティッチェーレさんも、この傾向は残念無念、と語っています。


パネットーネ・ベスト10の第2位は、意外なことにカンパーニアのパスティッチェリーアが作る伝統的なパネットーネ。
2位のパスティッチェリーア・ペーペのパネットーネ

3位もカンパーニアのパスクアーレ・マリッリアーノ。
店のwebページはこちら

なんと、ベスト10にミラノの店が入っていない!
ミラノに行かなくてもおいしいパネットーネを食べることができるもんなんですねえ。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2008年12月号
“パネットーネ、ベスト10”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月7日木曜日

ミラノのパスティッチェリーアのパネットーネ

ミラノの話、その3です。

ミラノで食べておきたいものの一つが、本場のパネットーネ。

RE Panettone
ミラノのパスティッチェリーア・ジャコモのショーウインドーのパネットーネ。


『ラ・クチーナ・イタリアーナ』ではお薦めのパスティッチェリーアをいくつか紹介していますが、その一軒がパスティッチェリーア・クッキPasticceria Cucchi。

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1936年開業の老舗で、現在の店主は3代目。
開業当時はカフェとして繁盛していましたが、第二次大戦時に空襲を受けて、家も仕事場も失ってしまいます。
しかし、彼らはすぐに店の再建に取りかかりました。
まだ戦争中にです。
毎晩、空襲警報が鳴り響く度に地下のカンティーナへと逃げ込む恐怖の日々だったそうです。
その地下室は、現在は店の作業場となっています。
パスティッチェリーアとして再出発したクッキは、今やミラノを代表する有名店の一つとなったのでした。


↓店のPV。





クッキのパネットーネは伝統を守った正統派。


↓ミラノで毎年11月末に開催されているドルチェのイベント、“レ・パネットーネ”で、クッキのパネットーネを紹介する同店のカーポ・パスティッチェーレ。





このレ・パネットーネというイベントでは、イタリア各地から腕に自慢のパスティッチェーレが集まって、オリジナルのパネットーネを披露しています。
2011年は11月26、27日の両日開催されます。


↓2009年のレ・パネットーネ。






パスティッチェリーアのパネットーネ作りはとにかく時間がかかって複雑。
リエヴィト・マードレlievito madreと呼ばれる中種作りと発酵作業がポイントです。

↓ミラノのパスティッチェリーア・ブズネッリのパネットーネ。
ブズネッリ氏はパスティッチェリーアのマニュアル本も書いています。
店のwebページはこちら
彼のリエヴィト・マードレは27年もの。
毎日小麦粉と水を加えて再生させています。




動画で最初に行っているのがリエヴィト・マードレの再生作業。
出来上がったリエヴィト・マードレは、パネットーネに使う分と明日の分に分けます。
次に、小麦粉、砂糖、バター、卵黄、水、リエヴィト・マードレをこねて20時間発酵させます。
ドライフルーツを加え、バターを塗った台で1個ずつに分けて30分休ませ、紙の型に入れて6時間発酵させます。
表面に十文字の切り込みを入れてバターをのせ、183度のオーブンで1時間焼きます。
焼き上がったら裏返して乾かないようにしながら冷まして出来上がり。
2ヶ月もつそうです。


↓リエヴィト・マードレの代わりに生イーストとモルトエキスを使った家庭で作るパネットーネ。






パネットーネの話、次回に続きます。


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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年12月号
“グルメ紀行~ミラノ”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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2011年4月4日月曜日

コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ

ミラノの話、その2です。

今日のお題は、ミラノの名物料理の一つ、コトレッタ・アッラ・ミラネーゼcotoletta alla milanese、またはコストレッタ・アッラ・ミラネーゼcostoletta alla milanese。


Cotoletta alla milanese
サヴィーニのコトレッタ・アッラ・ミラネーゼ。
店のwebページはこちら


Fabbrica- Naviglio Grande
料理も出すピッツェリーア“ファッブリカ”の、ピッツァと同じ大きさのコトレッタ・アッラ・ミラネーゼ。
店のwebページはこちら


この料理は何かと流派が分かれています。
まずはその名前。

コトレッタか、コストレッタか。

コストレッタは“リブロース”を指すイタリアの標準語。

コトレッタはコストレッタの北イタリアなまりで、フランス語のコトレットが語源と言われています。
主に、子牛のリブロースの切り身に溶き卵とパン粉をつけて揚げた料理を意味しますが、単なるカツレツという意味ではなく、リブロースでなくもも肉などを使うと、コトレッタとは言いません。

他に、コストレッタは骨付きで、コトレッタは骨なし、という説もあります。

ちなみにミラノ市では、市公認のご当地料理を“デコ料理”と名付けています。
デノミナツィオーネ・コムナーレの略で、デコ(De.Co)です。
現在10点ほど選ばれていて、その中にこの料理もあります。
ミラノ市公認の名称は、コストレッタ・アッラ・ミラネーゼ。


そしてもう一つの流派の違いは、肉を叩くか、叩かないか。

上の二つの写真のうち、下のコトレッタは、肉を叩く派。

いわゆる“象の耳”ですね。

店によっては、メニューにコトレッタと書かずに“オレッキア・デレファンテorecchia d'elefante(象の耳)”と書いてあることもあるので、外国人観光客ならビックリするかも。

3Dの子牛肉を薄く広げて巨大な2Dに変身させたこの料理は、庶民的な店では名物になっていることも多い人気の品。
ただし、パン粉に火を通すために一定の時間加熱しなくてはならず、その間に薄く伸ばした肉に火が入りすぎてしまう可能性もあります。
肉本来の味を生かすという点では、正統派ではなく、サブカルチャー的な位置づけ。

逆に、肉を叩かない派は分厚い肉を使うので、肉にどれだけ火を通すかがポイント。
衣はカリッと、そして中はピンク色、というのが理想的。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』で叩かない派の代表として紹介されているのは、トラットリーア・デル・ヌオヴォ・マチェッロTrattoria del nuovo macello。
店のwebページはこちら

そしてこちらがコトレッタ。
肉が厚いから立ってます。
叩かない派はこういう盛り付けが流行りのよう。

かつてはミラノの人も、中までしっかり焼けていないコトレッタには慣れていませんでした。
その昔、コトレッタ・ミラネーゼに革命をもたらしたのが、グアルティエロ・マルケージ氏です。

彼は、コトレッタは中はロゼに仕上げなければならない、という信念の持ち主でした。
だから当然、分厚いリブロースを使ったのですが、彼のコトレッタはかなり風変わりで個性的した。
なんと、分厚いリブロースを四角くカットしてから揚げて、それをパズルのように元の形に組み合わせて盛り付けたのです。
肉の中央部分でも衣と肉が同じバランスで、一切れが小さいのでかなり分厚い肉でも火が通ります。
この料理は“コトレッタ・パズル”という名前で彼の名物料理の一つになりました。

その後コトレッタ・パズルはマルケージの弟子のマルケージ・チルドレンたちによって受け継がれて、現在ではコトレッタの3つ目の流派を形成しています。

やや変形版のマルケージのコトレッタ・パズル


リストランテ・イル・ヴィーコロのコトレッタ
店のwebページはこちら


↓象の耳でもなく、星付きレストランの分厚いコトレッタでもない一般的なコトレッタ・アッラ・ミラネーゼ。






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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年12月号
“グルメ紀行~ミラノ”の解説は、「総合解説」'07&'08年12月号に載っています。

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