2010年4月30日金曜日

マリア・カラスと料理

今日はマリア・カラスの話。
『サーレ・エ・ペペ』の解説です。


Maria Callas, photo by r9M


オペラに詳しい人なら、マリア・カラスのことはもうよーくご存じですよね。
そちら方面の知識が全くない私でも、20世紀に一世を風靡したオペラ歌手で、オナシスの愛人だった人、ということは知っています。

アメリカのギリシャ系移民で、目鼻立ちのはっきりしたインパクトの強い顔立ちは、一度見たら忘れられない個性的な美しさ。

ベッリーニやドニゼッティといったイタリアオペラの復活に大きく貢献した人で、悲劇的でドラマチックな歌唱が得意。
イタリアに深い縁があったので、今でも多くのイタリア人から愛されています。


イタリアでのデビューは1947年。
その年カラスは、イタリア人実業家でオペラの大ファンだったジョヴァンニ・バッティスタ・メネギーニと知り合います。
彼はヴェネトの裕福なレンガ製造業者で、カラスより27歳年上でした。
カラスに一目ぼれしたメネギーニは2年間アタックし続け、1949年にめでたく結婚。
それ以降メネギーニは家業を親戚に譲り、カラスのエージェント業に専念して世界中を一緒に回るようになりました。

これだけ尽くしていたのに、10年後に破局が訪れます。
カラスがオナシスと出会ったのです。
離婚後のメネギーニは家業に戻ることもなく、失意のまま、カラスと暮らしたガルダ湖畔の家で残りの人生を過ごしました。
亡くなったのはカラスより4年あと。

マリア・カラスとメネギーニ



マリア・カラスの没後30年を記念して制作されたドキュメンタリー映画のPV







マリア・カラスがダイエットに苦労していたのは有名な話ですが、料理を作ることが大好きだったというのも通の間ではよく知られた話のようですね。
リチェッタも深く研究していて、家の本棚にはアルトゥージの本があったというから本格的です。

『サーレ・エ・ぺぺ』で取り上げているのは、マリア・カラスがお気に入りだった料理を集めた本、『La Divina in Cucina』です。
マリア・カラスの最初の夫、メネギーニの姑さんがカラスに教えたヴェネト料理や、付き人のイタリア人が考案したデザートなど、目の付けどころがかなり個性的な料理ばかり。



次の動画はマリア・カラスの料理への情熱をつづったドキュメンタリー。
ヴェネチアのハリーズ・バーなど、カラスの行きつけだったリストランテの人たちが、彼女のことを語っています。
若い頃はかなり豊満だったんですねえ。
10代を過ごしたギリシャでは戦争のためにひもじい思いをしていたそうで、その反動だったのでしょうか。
マリア・カラス・アソシエーションの会長は、イタリアにやってきた時は100㎏あった、と言ってます。
カラスは、料理をすることは人生の喜びの一つ、と語っていたそうです。
食事の時、コーヒーが出るまで常にパンを一切れテーブルの上に置いていた、というエピソードも語られています。








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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年6月号
『La Divina in Cucina』のリチェッタを紹介した記事「マリア・カラスのディナー」は「総合解説」'07&'08年6月号に載っています。

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2010年4月27日火曜日

サリーナ島のケッパー

今日はサリーナ島のケッパーの話。
『ア・ターヴォラ』の解説です。

ケッパーは、オリーブ、アンチョビーと並んで、「これさえ入れれば地中海料理」の三種の神器。
地中海料理だけでなく、どんな料理にも手軽にアクセントを与えることができる万能食材ですよね。


サリーナ島のあるエオリエ諸島では、かつてはケッパーとマルヴァジーアの栽培が島の経済の2大柱でした。
でも、1980年代に観光地として注目されるようになると、きつい農業をやめる人が続出。
さらに北アフリカ産の安いケッパーも入ってくるようになって、島のケッパーの生産量は激減します。
現在はスローフードも後援食材に指定して保護に加わっていますが、小さな島で手作りされているものだけに、生産量を増やすのはそう簡単なことではないようです。

火と風の島、と呼ばれるエオリエ諸島は、火山性の土壌と強い風の吹く乾いた空気が特徴。
そんな環境で造られるサリーナ島のケッパーは、粒が均一で締まっていて、香りが良いと言われています。
化学肥料や除草剤などは一切使っていません。
しっかり塩漬けしたものは2~3年は保存できるそうなので、見かけたら買っておいて損はないですよね。


ケッパーを買う時の注意点を1つ。
ケッパーは小粒のものほど上質です。
最も上質なのは、直径7mm以下の極小粒。

大粒のものは、つぼみが開きかかっている状態です。
ケッパーのつぼみが閉じているのは約10日間。
天日で干している間に開いてしまう可能性もあるので、収穫した後も温度管理をして花が開かないようにしています。


6月のサリーナ島とケッパーの動画。
ケッパーを摘み取る手の早いこと!
収穫は5月末から8月末の間行われます。
塩漬けは約1ヶ月。








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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年5月号
「サリーナ島のケッパー」の解説は「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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2010年4月22日木曜日

エオリエ諸島

イタリアに3つある活火山の1つ、ストロンボリ。
この火山があるのは、シチリアの右上あたり。
ティレニア海に浮かぶエオリエ諸島にあります。

エオリエ諸島は、行政的にはシチリアのメッシーナ県の一部で、その火山活動から世界遺産に登録されています。

主に7つの島があります。

 アリクーディ島
 フィリクーディ島
 リーパリ島
 パナレーア島
 サリーナ島
 ストロンボリ島
 ヴルカーノ島


エオリエという名前の由来は、この島々に住むというギリシャ神話の風の神、アイオロス(イタリア語ではエーオロ)。
彼は、ストロンボリの火山活動によって変化する雲の形をリーパリ島から見て、天気を予想していたのだそうです。



上空から見たエオリエ諸島, photo by Foto_di_Signorina


オデュッセウスが漂流してエオリエ諸島に流れつき、アイオロスにもてなされたという伝説もあります。


さて、そんなエオリエ諸島、イタリア料理の世界では、マルヴァジーア・デッレ・リーパリあたりが有名ですよね。
7つの島の中で一番大きいのはリーパリ島で、約1万人が暮らしています。
2番目はサリーナ島。
人口は2,300人。
諸島の中で一番高い山(961m)もあります。



サリーナの海, photo by Ghost.in.the.Shell



サリーナの山, photo by Ghost.in.the.Shell



このサリーナ島は農業が盛んで、特産品はマルヴァジーアとケッパー。
マルヴァジーア・デッレ・リーパリは、リーパリ島だけでなく、エオリエ諸島全体が産地。


マルヴァジーア・デッレ・リーパリを解説した動画。
訳は時間があったら後でつけるかも・・・(汗)







サリーナ島のもう1つの特産品、ケッパーの話は次回に。



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2010年4月20日火曜日

イタリアの活火山

ヨーロッパの北で噴火した火山で、あちこちに影響が出ていますねえ。
火山と言えば、イタリアにもありますよね、活火山。
3つあります。

まず、シチリアのエトナ山。
標高3,340mと、ヨーロッパで最も高い活火山。
直径も45kmと広大で、全容を見るのはなかなか大変。
常に何かしらの火山活動が観測されていて、ちょこちょこ動いているという感じ。
山麓には、ピスタチオで有名なブロンテの町があります。



エトナ山, photo by Ondablv

2008年の噴火



そしてヴェスヴィオ山。
ポンペイを灰にうずめた山。
標高は1,281m。
ナポリやポンペイの背景を美しく飾っています。
この火山は、長い活動停止期間と激しい噴火が交互に来るタイプで、今は1944年以来、沈黙しています。



ナポリとヴェスヴィオ山, photo by Zingaro. I am a gipsy too.



3つ目は、ストロンボリ島。
シチリアの右上にあるエオリエ諸島の中の火山の島。
標高926m。
小さいながらも常に真っ赤な溶岩を吹き上げている迫力の火山。



ストロンボリ島, photo by bartolomeo perrotta


火口


こんなのどかそうな島に、溶岩を吹き上げる火口があるんですねえ。


噴火見学ツアー






ストロンボリと天の川







次回はストロンボリ島のあるエオリエ諸島のもう1つの島、サリーナ島の話です。



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2010年4月15日木曜日

シーザーサラダ

今日はシーザーサラダの話。
『ガンベロ・ロッソ』の解説です。



シーザーサラダ, photo by WordRidden


シーザーサラダは、もちろんイタリア料理ではないですよね。
でも、そのルーツを思えばイタリア系料理であることは間違いなし。

何しろ、考え出したのがサンディエゴのイタリア系移民、チェーザレ・カルディーニさんですから。

この人

wikiによると、彼は、1896年イタリアのマッジョーレ湖地方の生まれ。
ヨーロッパで飲食業に従事した後、20代でアメリカに渡り、レストランを開きます。
当時のアメリカは禁酒法の時代だったため、法律の影響を受けないメキシコのティフアナにも出店。
きっと、元々やり手のレストラン経営者だったんですね。

シーザーサラダの誕生にはいくつか説があるようですが、一番有名なのが、チェーザレさんの娘が語った話。

ティフアナはアメリカ人、特にハリウッドのセレブがやって来る場所でした。
彼の店、シーザーズ・プレイスは、1924年の7月4日(アメリカの独立記念日)も大繁盛。
厨房では食材をあらかた使いつくしてしまいました。
そこでチェーザレさんが考え出したのが、材料はあり合わせだけれど、それを客の前でサラダにしてみせるワゴンサービススタイル。
これがあっという間にアメリカ人観光客の間に広まって、一躍名物料理となったのでした。


そのあり合わせの材料というのが、見る人が見ればまさにイタリアン。

まず何と言っても、ロメインレタス、イタリア語でいえばラットゥーガ・ロマーナ。
そしてパルメザンチーズ、というかパルミジャーノ。
さらにはクルトン、イタリア語ならクロスティーニ。
調味はオリーブオイル、レモン汁、にんにく、ビネガー、卵、アンチョビー(オリジナルレシピには入っていない)、塩、こしょうに、ウスターソースを加える所だけアメリカン。


シーザーサラダはチェーザレさんが作ったサラダだから、イタリア語で言うなら“インサラータ・チェーザレ”。
でも、イタリアでもこの料理はやっぱりシーザーサラダと言うんですねえ。
イタリアで食べるシーザーサラダは、いわば逆輸入サラダ?


現在のティフアナのホテル・シーザーズのシーザーサラダ。







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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2008年5月号
シーザーサラダの話は、「総合解説」07&08年5月号、「定番のサラダ」に登場します。

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2010年4月12日月曜日

グラナ・パダーノとパルミジャーノの違い

グラナ・パダーノの話、その2です。

イタリアで流通しているハードチーズの50%近くを占めるグラナ・パダーノ(AC Nielsen調べ)。
2008年の生産量は、435万5347個でした。
平均的な販売価格は11.05ユーロ/㎏。
イタリアの硬質チーズの平均価格は12.70ユーロなので、少しお手頃。

パルミジャーノは2009年の生産量が294万7292個。


同じルーツを持ち、基本的な製法も一緒のグラナ・パダーノとパルミジャーノ・レッジャーノ。
この2つのチーズには、どんな違いがあるのでしょうか。

管理組合のHPに表示されている平均的な栄養価の主なものを比べてみると・・・

チーズ100g中;グラナ・パダーノ/パルミジャーノ・レッジャーノ
・タンパク質   33g/33g
・脂肪      28g/28.4g
・カロリー    384kcal/392kcal
・塩化ナトリウム 1.6g/1.39g
・カルシウム   1165mg/1160mg


うーん、たいした違いはないですねえ。

実際にはそれほど違わなくても、一応世間では、グラナ・パダーノとパルミジャーノ・レッジャーノはここが違う、という定説があります。


■まずその1つは脂肪分。

パルミジャーノは、一晩置いて脂肪分の一部を分離させた牛乳と、搾りたての脂肪分を分離させていない牛乳を混ぜて作ります。
一方グラナ・パダーノは、1回または2回の搾乳の、脂肪分の一部を分離させた牛乳から作ります。
(ただし、法律上はパルミジャーノと同様にどちらか一方を全乳にすることも認められています)

その結果グラナ・パダーノの方が脂肪分が少ない、という訳ですが、上の数値を見る限りでは、大きな違いでもないようですね。


■もう1つは牛の飼料。

グラナ・パダーノ用の牛の餌は、牧草、干し草、わら、サイレージ(サイロで保存した干し草やとうもろこしの粉)、その他の穀物や植物がベース。

一方、パルミジャーノも大体のところは一緒なのですが、一つ大きく違うのがサイレージを禁止しているという点。
サイレージとはサイロで保存した飼料で、保存中に微生物が発生するためチーズの風味に影響を与えます。


■そして最も分かりやすい違いは、熟成期間。
グラナ・パダーノは最低9ヶ月で、スタンダードタイプは9~16ヶ月。
パルミジャーノは最低12ヶ月で、平均20~24ヶ月。
当然、味や香りや歯ごたえに違いが出てきます。


グラナ・パダーノの味は、
9~16ヶ月;甘さが強く、塩気は控えめ。ミルクや生クリームの香り。シンプルな香り。
16~20ヶ月;甘さはまだ残っていて、心地よい塩気もある。ミルクや生クリームの香りにバターや干し草の香りが加わる。サイレージのとうもろこしの香り(花の香りやオリーブの漬け汁の香り)、ブロード・ディ・カルネの香り。
20ヶ月以上;甘さは弱く、はっきりした塩気。バターや干し草の香り、トースト香を含むドライフルーツの香り。ブロード・ディ・カルネの香りは一段と強くなる。


管理組合では、チーズの味わい方をこう勧めています。

・食前酒に添えたり食後に食べる時は1時間前に冷蔵庫から出して包みを開いておき、乾かないように食べる直前に小さくカットする。
・一緒に食べるパンは、薪で焼いた天然酵母のプレーンなものが最適。
・16ヶ月以内の若いグラナ・パダーノには、あんずと紅茶がよく合う。
・16ヶ月~20ヶ月はいちご、赤ワイン、こしょうと相性が良い。
・20ヶ月以上(リゼルヴァ)は洋梨、マダガスカル産バニラ。

16ヶ月以内
・オーブンで焼いて仕上げにグラティナーレする料理に最適。
・溶けやすいのでソースやクリームにも向く。
・主張しすぎない味なので、肉のカルパッチョ、魚料理、サラダ、ピンツィモーニオに合う。

16ヶ月~20ヶ月
・クロッケッテ、フリッタータ、ピッツァ、フォカッチャ、クロスティーニ、トルタ・サラータ、チャルダに。

リゼルヴァ
・おろして、またはチーズだけを味わう。
・リゾット、パスタ、スープに。
・バルサミコ酢をかけた料理と。


上記の内容の動画です。
最後の一品は、マグロの薄焼きグラナ・パダーノとモスタルダ添え。





グラナ・パダーノのカット。







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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年5月号
「グラナ・パダーノDOP」の解説は「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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2010年4月8日木曜日

グラナ・パダーノのルーツ

今日はグラナ・パダーノの話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

同じイタリア産ハードチーズでも、知名度的にはパルミジャーノ・レッジャーノには負けるグラナ・パダーノ。
でも、輸出額はパルミジャーノの2倍近くあります。

面白いことに、グラナ・パダーノのEU向けの輸出額はパルミジャーノの3倍に上るのですが(2006年の輸出額はグラナ・バターノ21,300万ユーロ、パルミジャーノ7,300万ユーロ)、それ以外の国への輸出は、逆にパルミジャーノのほうが2倍近く多くなっています(グラナ・パダーノ3,000万ユーロ、パルミジャーノ5,600万ユーロ)。
(データ;Qualivita)

パルミジャーノは“パルメザン”などの類似品も大量に出回っていますが、グラナ・パダーノの類似品というのは聞いたことがないですよねえ。
言いかえれば、物は大量に出回っていても、名前がそれほど一般的でない、ということでしょうか。



ブラジルはサンパウロの中央市場で売られているグラナ・パダーノ, photo by de Paula FJ



パルミジャーノ・レッジャーノ, photo by DiKol



グラナ・パダーノのルーツは、1135年にキアラヴァッレの修道院で、余った牛乳の保存方法として考え出されたチーズ、というのが定説です。
当時、ポー河流域が開拓されて牧畜が盛んになり、牛乳が豊富にあったのがその背景。
キアラヴァッレの修道院は、ミラノの郊外にあります。
hpはこちら

こちらの動画は、キアラヴァッレの修道院のすぐ近くを移動する羊の群れ。
ミラノ近郊でもこんな光景を見ることができるんですねえ。
ロバやヤギもいます。


それにしても、余った牛乳を保存するために修道士が考え出したチーズ、という話、どこかで聞いたことありませんか。
そう、パルミジャーノ・レッジャーノのルーツも、これにとてもよく似ています。

パルミジャーノの管理組合のHPによると、パルミジャーノは12世紀頃、パルマの修道院とレッジョ・エミーリアの修道院で誕生したとされています。
この地方は水が豊かで牧草地帯も広く、牛乳がたっぷりあったのがその背景、という話まで一緒。
どうやらこの2つのチーズ、ルーツは同じなんじゃないかと思うのが自然な流れ。
でも、パルミジャーノ管理組合のチーズの歴史を紹介するページには、グラナ・パダーノという文字は一度も出てきませんねえ。


グラナ・パダーノの産地は、東はヴェネチアやトレヴィーゾ、西はトリノやクーネオ、北はトレントやソンドリオ、南はボローニャやリミニという、北イタリアの33の県にまたがる広大な地域。
一方、パルミジャーノ・レッジャーノの産地は、上記の県以外のパルマ、レッジョ・エミーリア、モデナ、ボローニャ、マントヴァの5つの県。
ボローニャとマントヴァはグラナ・パダーノとパルミジャーノ・レッジャーノの両方を造っていますが、ボローニャの場合はレーノ川の右岸はグラナ、左岸はパルミジャーノ、マントヴァはポー河の左岸がグラナ、右岸がパルミジャーノと、きっちりとすみ分けられています。

よく似たチーズでありながら、産地は厳格に別。
永遠のライバル、といったところでしょうか。

グラナ・パダーノは直径35~45㎝、高さは18~25㎝、重さは24~40㎏。
パルミジャーノの重さは33~40㎏。

熟成は、グラナ・パダーノの場合は
・グラナ・パダーノDOP(9~16ヶ月)
・グラナ・パダーノDOP“オルトレ16メージ”(16~20ヶ月)
・グラナ・パダーノDOP“リゼルヴァ”(20ヶ月~)
の3種類。
側面に押された焼印を見れば、どのタイプか分かるようになっています。

ちなみにパルミジャーノは、18ヶ月以上、22ヶ月以上、30ヶ月以上、という区切りをつけています。

グラナ・パダーノがどの県で造られたかは、側面の四つ葉のクローバーマークの中のイニシャルで分かります。

これはMNだからマントヴァですね。
その下の数字は製造所の登録番号。

クローバーマークの右下には、製造年と月が記されています。



グラナ・パダーノの歴史を詳しく解説した動画をどうぞ。
内容は・・・
グラナ・パダーノは、1134年に建てられたキアラヴァッレの修道院で誕生したチーズ。
最初は“カゼウス・ヴェートゥス(カーチョ・ヴェッキオ)”と呼ばれていたが、後に、その生地の特徴から、ラテン語で「粒」という意味の“グラーナ”と呼ばれるようになる。
誕生のきっかけは偶然だった。
いつものように牛乳にレンネットを加えて柔らかいフレッシュチーズを造っていた時に、なぜかこれを再び温めてしまった。
チーズのホエイを切ると硬くなり、それまでのチーズより何日も日持ちがした。
これなら余った牛乳を無駄なく使うことができる。
すぐにこのチーズはロンバルディアやその近隣に知れ渡った。
その製法は修道院の間で何世紀もの間門外不出とされ、やがて修道士の指導のもとでグラナを造る専門の農民が誕生した。
そして北イタリア中に広まっていく。
パルミジャーノもその一つ。
12世紀になると、修道院だけでなく北イタリア中の市場でも売られるようになっていた。







これによると、グラナ・パダーノは余った牛乳を有効利用するために考え出されたと言うより、偶然出来たチーズが、たまたま余った牛乳を有効利用できるものだった、ということになりますね。
それに、パルミジャーノは元々はグラナ・パダーノの一種だった、と言う訳ですね。


グラナ・パダーノの話、次回に続きます。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年5月号
「グラナ・パダーノDOP」の解説は「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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2010年4月6日火曜日

子牛の胸肉

チーマは子牛の胸肉のことですが、同時に、それを袋状にして、中にたっぷり詰め物をしてゆでたリグーリア料理でもあります。
ペスト・ジェノヴェーゼを筆頭にした、有名なリグーリア料理ベスト5にも入る一品。

よく、リグーリア人は倹約家、と言われますが、率直に言ってしまうとケチということ。
フォローするなら、質素な食材を工夫して美味しい料理にするのが得意な人たち。
チーマも元々は、胸肉というあまり上等でない部位に、あり合わせの材料を詰めた料理でした。
だから詰め物は季節によって変わります。


下の動画は牛の胸肉を2つの部位に切り分けているところ。
「プンタ・ディ・ペット」と「フィオッコ」という部位に分けます。
どちらも主に袋状にして詰め物をして、ボッリートやローストにします。






日本なら、牛の胸肉は煮込みやポトフなどにしますかねえ。
イタリアでは、まずボッリート、次がロースト、といったところ。
詰め物料理にすることが多いかも。




ボッリート・ミスト, photo by oliopepesale

このボッリート・ミストは、左からコテキーノcothechino、子牛の頭肉testa di vitello、舌lingua、胸肉punta di petto、うちばらbiancostato、ひね鶏gallinaが並んでいます。



下はピエモンテ風ボッリートが名物のオステリーア・デル・ボルゴという店のボッリート。
店のhpはこちら
胸肉もあります。







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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2007年5月号
「チーマ・リピエーナ」のリチェッタは「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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2010年4月2日金曜日

チーマ・アッラ・ジェノヴェーゼ

今日は“チーマ”の話。

『サーレ・エ・ぺぺ』の解説です。


代表的なリグーリア料理の一つ、チーマ・リピエーナ。



出荷を待つ市販品のチーマ・リピエーナ, photo by edera



チーマ・アッラ・ジェノヴェーゼとも言いますが、略してチーマでも通じます。

チーマとは、子牛の胸肉のこと。
標準語ではプンタ・ディ・ペットと呼ばれる部位で、ボッリートには最適です。

ここ

そもそもイタリアでは、子牛の胸肉を肉屋で売っているし、チーマ用にして欲しいと頼めば袋状にしてくれるので、チーマを家庭で作る人も少なくないよう。
日本で子牛の胸肉料理を家庭で作るというのは、まずあり得ないですよねえ。
今ひとつなじみが薄い料理ですが、イタリア料理に関心のある人なら、リグーリアの代表的な郷土料理として聞いたことはあるはず。

リチェッタは人によって少なからず違いますが、とりあえずイメージがつかめるような動画を2つどうぞ。


1つ目は本格的な伝統的チーマ・ジェノヴェーゼ。
無口で頑固な母としっかり者の娘風の親子シェフが作ります。

ジェノヴァの都市部では卵がたっぷり入った黄色い詰め物で、郊外の内陸部ではビエトラなどの野菜が入るので緑色の詰め物なんだそうです。
今回は卵が12個入った都会風。
詰め物は、バターとローリエで炒めた子牛肉・ゆでた子牛の胸肉・バターで軽く焼き色がつくまで弱火で炒めたリードヴォー(全部粗く刻む)、生のグリーンピース、ピスタチオ、にんじんとズッキーニの小角切り、マジョラム・にんにく・きのこのみじん切り、おろしたパルミジャーノ、ブロード・ディ・カルネに浸して絞ったパン、卵、塩、こしょう。
袋にする肉にはヴィテッローネの胸肉を使っていますが、これが圧巻。
ゆでる湯に塩は加えません。





チーマは冷製料理。
冷まして詰め物に含まれているブロードをしっかり出してからスライスします。


2つ目はもう少しお手軽なリチェッタ。
エルベッテ入りの緑の詰め物のバージョンです。
詰め物は、解凍して刻んだエルベッテ、卵、おろしたチーズ、パン、小角切りにしてゆでた香味野菜とグリーンピース、塩、こしょう、マジョラム。
これを肉に詰めたらオーブンシートでキャラメル形に包み、ブロードで30~40分ゆでます。






チーマの話、次回に続きます。



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関連誌;『チーレ・エ・ペペ』2007年5月号
「チーマ・リピエーナ」のリチェッタは「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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