今日のお題はパスタ・リピエーナの地方料理です。
参考にしたのは
スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ・シリーズの『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』
イタリアのパスタ・セッカは家庭料理としては不動の位置を確立しましたが、その値段の安さからくるイメージのためか、アルタ・クチーナでは、未だに市民権を得ていない、というのは、グラン・シェフたちが度々語っていること。
その一方で、パスタ・フレスカは、ルネサンスの時代から、貴族の料理として受け入れられて来ました。
詰め物入りパスタの歴史を見ると、貴族の料理人が考え出した料理が地方料理として広まる例がほとんどです。
パスタ・リピエーナの一番シンプルなものは四角いラビオリやトルテッリです。
中でもピエモンテのモンフェッラートのアニョロッティ↓は有名です。
ちなみにこの料理はモンフェッラート公の料理人、アンジェリーノ通称アンジェロットが考え出したと言い伝えられています。
料理の語源もpiatt'angelot(アンジェロットの料理)がanolottoに変化したと言われています。
ピエモンテはフランスとゆかりの深いサボイア家の領地。
ピエモンテとリグーリアは山脈によって区切られてはいても、食文化の結びつきは強く、ピエモンテの食文化のルーツとも考えられている地方です。
さらにサボイア家はサルデーニャも手に入れたので、その料理の影響はサルデーニャにも及びました。
リグーリアのパスタ・リピエーナ、パン・ソーティ↓
という訳で、イタリアのパスタ・リピエーナの発祥地は、有史以前から軟質小麦が生えていたポー河沿岸の平野という説が有力。
北イタリアの気候が合った軟質小麦は硬質小麦と比べると、でんぷんの量が多く、グルテンを始めとするタンパク質、ミネラル、ビタミン、脂肪が少ない小麦です。パンにすると美味しくても、粘り気がありすぎて小麦粉と水を混ぜた乾麺には向きません。
そこで北イタリアの人たちは動物性タンパク質、卵を加えて腰のある生地にしました。
軟質小麦の麺はゆでても煮崩れないでアルデンテになり、チーズや肉のような動物性の食材ともよく合いました。やがてそれらの具を麺で包むようになったのは自然な流れでした。
パスタ・リピエーナの具はグラッソとマーグロがあると書きましたが、ある研究によると、ローマ時代に農業と羊飼いの文化が広まった地域ではリコッタなどのフレッシュチーズや野菜を具にしますが、ロンバルド族に支配された地域では牛と豚の飼育が義務付けられたため、パスタの詰め物にも牛肉や豚肉を使う、という説が発表れさているそうです。
マーグロの場合の味付けは、溶かしたバターとチーズであえるのが主流で、ルネサンス時代には甘味と辛味を混ぜた「ドルチェフォルテ」な調味が流行します。
軟質小麦の麺は薄く伸ばすことができたので具を詰めることができましたが、パスタ・リピエーナの麺にはもう1つ条件があります。具がはみださないようにしっかり閉じることができる、ということです。
具をしっかり閉じ込めるのは、パスタ・リピエーナの基本。
アニョロッティ・デル・プリンは閉じ込め方に工夫を凝らしたパスタ・リピエーナ。
つまむ(plin)という方法がこの料理のミソでした。
詰め物に触れないようにしながらしっかり強くつまむのがポイントですが、シェフごとにしっかり閉じるための小さな秘訣がある。
アニョロッティの女王ことリディア・アルチャーティシェフ↓
硬質小麦粉のサルデーニャのパスタ・リピエーナ。
硬質小麦粉のパスタ・リピエーナは閉じるのが大変。
クルルジョネス↓
「総合解説」
0 件のコメント:
コメントを投稿