2019年10月30日水曜日

庭のオリーブの収穫

北イタリアで、庭にオリーブの木を植えたいと思ったら、まあだいたいこうなるなーという話。
まず、そのオリーブが生食用かオイル用かなんという品種かもは知らずに適当に買って植えたらしい。
でも一応は地中海性気候。15年かけてすくすく育った。
しかも数年前から実もつけた。
この地方特有の霧にも、幾多のトラブルにも耐えて実ったものだから、まるで戦友のような強い絆もできていました。
そしてここから先がイタリア人。
実を収穫しようと思い立ち、幹の周囲に布を張って、そこに落ちた実を集め、近所の搾油所に持ち込めばオイルにしてくれるだろう、なんて軽ーい気持ちで。毎年準備だけはしていたそうです。
オリーブの収穫
普段からこういう様子は見慣れていたんだろうなあ。

でも問題はこの先だった。
そう言えば、この先どうするのか見たことなかった。
ところが、すっかり忘れていたのが、オリーブは生では食べられない、ということ。フェノールという成分が苦味の元で、これを取り除く必要があったのです。
オリーブの苦味抜き
オリーブ1kgにつき水1Lにと苛性ソーダ20gを溶く。容器は金属ではなくプラスティックを使用する。溶けると熱が出るので冷めるまで待ち、オリーブを入れる。品種ごとにネットに入れると便利。オリーブが溶液に完全に浸るようにする。2、3時間ごととにかき混ぜながら約10~12時間浸す。水を換えて真水でよくすすぐ。日に3回水を換えながら3日間水に浸す。この下処理が終わったら塩水漬けなどにして瓶詰めにする。



この動画を見たイタリア人のコメントが、苛性ソーダってどこで売ってるの、とか、おじいちゃんも今までこんな面倒なこととやってたの、とかで、みんな知らなかったみたい。

もうこの段階でくたくただけど、頑張って瓶詰めにするか。オイルなんて夢のまた夢。


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“編集長のエッセイは”「総合解説」2017年11/12月号に載っています。
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2019年10月28日月曜日

オリーブの瓶詰め

庭に実ったオリーブの瓶詰めは、まー大変ですよ。緑色の実が紫がかって完全にしっかり十分熟したら、ヘタが枝から簡単に外れるようになるので、手摘みで収穫。それを3~4日間かけて苦味抜き。その先は、オイルを絞るか、塩水に漬けて瓶詰めにするか。


塩水漬け
オリーブ1kgにつき塩70gを加えて水で覆う。混ぜて塩を溶かし、浮かび上がらないように落とし蓋をし、蓋をして40日漬ける。
おや、苦味抜きに比べたら、気が抜けるくらい簡単。
でも、ここまで1ヶ月半かかてっます。
カラブリア風塩水漬け



グリーンオリーブ2kgに水道水1L、塩70g、唐辛子、にんにく、フェンネルシード各適量を加えて容器に入れ、毎日水を換えて8~10オリーブが苦い時は15日間水道水にさらします。
次はサラモイアに漬けます。
水280ml(オリーブを完全に覆う量)と塩水1Lにつき70g(動画では約19g)を沸騰させて冷まします。唐辛子、にんにく、フェンネルシード、ローリエ、コリアンダーなどを加えてサラモイアをかけ密閉して数ヶ月漬けます。数ヶ月~数年保存できます。

グリーン・オリーブ・スキアッチャータの塩水漬け

食品用ビニール袋でつ包んだ肉叩きでオリーブを1個ずつ潰して水に入れ、落し蓋をし、毎晩水を換えながら2~3日水にらします。次に水1Lにつき塩100gのサラモイアに8日間漬けます。どうやら基本は水につけてから塩水に漬ける、ということのようですが、コメントを読むと、動画のとおりやっても苦かった、など、かなり大変で難しことのよう。せっかちな私には、まず絶対無理なので。おとなしく市販品を買います。




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2019年10月27日日曜日

アスコラーナはすごいオリーブでした

まずは業務連絡。メールが届かないトラブルが発生しています。
電話で連絡させていただきますので、よろしくお願いします。最近、日に日にローテク、アナログ化しております。あしからず。
さて、きょうは『サーレ・エ・ペペ』の記事から最近お気に入りのものをご紹介です。
それは巻頭にある編集長のエッセイ。北イタリアの都会に住む料理雑誌の編集長というキャリアウーマンの暮らしぶりが垣間みれる面白くて楽しいエッセイです。最新号は、オリーブを巡る話。
なんでも編集長、15年ほど前にふと庭にオリーブの木が欲しくなって、どんな品種かよく知らずに小さな鉢植えを買って植えてみたのだそうです。まったく同じ体験をした人、日本にもいそう。
でもさすがにイタリア。バッサ・パダナ地方というところだそうですが、よく育って、数年前から実もつけるようになったのだそうです。
バッサ・パダナ地方はポー河流域の粘土質と砂の水はけの悪い土壌。気候は温暖でも夏は暑くて冬は寒く、霧が出るのが名物。地図はこちら
時々耳にする地名なので、どんなところか、ちょっと見てみますか。豊かな農地と経済活動が盛んな都市が連なる地域。


ポー河流域の平野

もちろんグラナ・パダーノと生ハムの産地。



こんな土地で、編集長は15年前に庭に小さなオリーブの木を植えました。
オリーブはバッサ・パダナ地方でもよく育って、数年前から実もつけたのだそうです。なので、オイルを絞ってみようと思うのはごく自然な流れ。でも、ここからがすごかった。広大な庭園を所有する叔母さんが現れて、オリーブの膨大な下処理をしてくれたのだそうです。
これはあまりにもチートすぎる展開。イタリアで農園を経営する叔母さんがいない人は、どうすればいの。オリーブは収穫してからが大変。
オリーブの苦味を取るために、人類が何世紀もかけて学んできたことを素人がいきなりできるわけないし。
それにしても、人類がやったのは、何世紀もかけて苦味が少ない品種を探し出したというのです。確かに、それが一番手っ取り早い。その品種とは、アスコラーナです。
オリーブの苦味はフェノールの苦味なんだそうです。ポリフェノールと言えば、オリーブの優れた栄養価として大々的にアピールされてますが、人間はすごい手間ひまかけてわざわざポリフェノールを取り除いてていたんですね。そもそも、取り除かないと食べられない。オリーヴァ・アスコラーナ ってすごい品種だったんですね。
もちろん食べたくなる。




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“編集長のエッセイは「総合解説」2017年11/12月号に.p.11に載っています。”
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2019年10月23日水曜日

ポレンタ・タラーニャはタライという棒でかき混ぜるので、かき混ぜながら煮るのはタラルラるって言います。

今月の『クチーナ・イリアーナ』のリチェッタで、タピオカのキャビアの次に気になったのは、“アサリとポレンタ・タラーニャのズッパ。
ポレンタ・タラーニャは、ヴァルテッリーナ地方のそば粉の料理のこと。典型的な北の山の料理をアサリのズッパとと組み合わせるってどういうこと?夏の間は南伊の海の料理が主役のイタリア料理は、寒くなった途端に北の山の料理がどんどん出てきます。
気持ちの切り替えが必要です。
と言うか。暑いときに食べるより。暖まるもんが食べたいなあという季節に食べるのにぴったりの料理。
そば粉にバターとチーズを加えるこの料理を見るたびに、食べてみたいなあとちらっと考えて、いやーないない、ヴァッレ・ダオスタ料理が得意なシェフに出会うまで、封印しとこと思い直します。そもそもこの料理には、ハイジのおじいさんとペーターが作るみたいなチーズが欠かせないしね。
そもそも『1001スペチャリタ

によると、ポレンタ・タラーニャpolenta taragnaという名前はポレンタをかき混ぜるのに使うタライtaraiという木の棒』が語源。ポレンタは銅鍋にそば粉と水を入れて暖炉の火にかけ、タライで鍋底に焦げさかないようにかき混ぜながら作るので、ポレンタを作ることをタラルラtararlaと呼んだんだって。qo女子高生みたい。
初めてポレンタ作りを見た時は、何十分もかき混ぜてる姿を、隣でずーっと飽きもせずに眺めていました。不思議と目が離せないんですよね。薪の暖かい火の上でこんなにかき混ぜ続けると、何か特別なものができるような気分になってました。
ヴァルテッリーナ
「総合解説」の料理は、ポレンタ・タラーニャを小角切りにしてフライパンでにんにくと油で焼いて、クルトンのようにしてアサリのズッパに散らします。

ミラノのオステリア・タヴェルナのポレンタ・タラーニャ。
そば粉と当モロコの粉をミックスしたポレンタ・タラーニャの粉1kgにあら塩10gを加えて180℃の湯1Lに粉をホイッパーで混ぜながら振り入れ、で蓋をして1時間30分~45分かき混ぜながら煮ます。仕上げに余分な水分を飛ばします。ポレンタ500gにフォンティーナ250gの薄切りとバター100gを加えて混ぜ込みます。

ヴァルテッリーナ料理
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ポレンタ・タラーニャのリチェッタの日本語訳は「総合解説2017年11/12月号p.4に載っています。」
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2019年10月21日月曜日

タピオカからキャビアを作るイタリア人のDNA

総合解説」2017年11/12月号発売しました。

毎年、年末年始号の11/12月号を訳すたびに感じるのは、年々、伝統料理への関心が薄れてきているなあ、ということ。
年末年始に今時のイタリア人の若者が食べるのは、そこそこ伝統的だけど、あまり伝統的すぎない料理、でも、おもしろいのが、こてこての伝統料理はいやだけど、幸運になるとか儲かるという縁起ものにはあしっかりあやかりたい、という点。まあ、イタリアも日本も、若者の考えてることは一緒だなあ、と毎年感じてます。伝統料理が消えかけていく中で、普段の料理の食材を豪華にして、縁起物を取り入れるのが昨今のイタリアのクリスマス料理の傾向のようです。それと、今月号は、初めてタピオが登場しました。イタリアもタピオカブームなのか。それはないな・・・でも、
まあ、まずは若者が飛びついたみたい。
だし、タピオカの粒をペルレ(真珠と呼んで、さらにこの粒にイカ墨を加えて真っ黒にしてキャビアに見立てるなんて。イタリア人の一流品志向と底なしの想像力のDNAを感じますねー(P.7)。 
そもそも粉を捏ねて作るものにイタリア人のDNAがときめかないわけがない。
もう1品、ポレンタ・タラーニャのズッパというのもありました。





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総合解説」クリスマスのプランゾのリトチェッタの日本語訳は「総合解説」)2017年11/12月号P.7に載っています。
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2019年10月18日金曜日

ざっくりしたパスタの歴史

ベルガモの名物パスタ、カゾンチェッリの話からの流れで、パスタ・リピエーナについて。

スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズの『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』と

目から鱗の考察が満載の『パスタ・レボリューション


を参照しました。


パスタ・リピエーナについて話す前に、まず、パスタについて。

パスタは、パスタ・フレスカpasta fresca(生麺)とパスタ・セッカpasta secca(乾麺)に分かれます。
さらに、パスタ・リッシャpasta liscia(詰め物なし)とパスタ・リピエーナpasta ripiena(詰め物あり)があります。
これが必須の基本情報。

次に、パスタの歴史をざっと見てみます。
まず最初にニョッキがありました。
パスタのルーツはニョッキです。
ただし、現在一般的なじゃがいものニョッキではなく、穀物の粉と水のニョッキです。
現在ではイタリア北部や山岳部に広まっています。
次にパスタ・リッシャが生まれ、さらにパスタ・リピエーナが生まれます。
まだゆでるのではなく、オーブンで焼いたり、揚げるのが一般的だった時代です。
ゆでる調理方法は、干した食べ物を戻して食べる、という考えとともに広まりました。
こうして保存に適して大量生産ができるパスタ・セッカが世界中に広まっていきます。
詳しくは、以前のブログをどうぞ。こちら

初期のパスタ・リッシャは、手だけで成形していました。
ニョッキを指や手のひらで押しつぶして平にし、煮汁やチーズがよくからむようにしたのはおそらく自然の成り行き。
こうして、ソースとパスタの関係も現在のものに近づいていきました。
成形方法も、押しつぶす、引っ張る、ねじる、棒に巻きつける、型でくぼみをつけるなど、無数の方法が考えだされます。
それと同時にソースも進化しました。
北イタリアで普及した軟質小麦粉と卵黄のパスタは薄く伸ばすことを可能にし、ラザーニャやタリアテッレへと進化していきます。
対して硬質小麦粉と水のパスタは、薄く伸ばすのに適さず、パスタ・リピエーナも作られませんでした。
このように栽培する小麦の種類によって作られるパスタも違ってきました。

パスタ・リピエーナの包みは卵入りパスタ、具は、ディ・カルネdi carne(肉の具)と、ディ・マーグロdi magro(肉以外の具;チーズ、じゃがいも、豆、野菜、卵、パン粉など)に大別できます。
形は四角、三角、半円などのラビオリravioliやトルテッリtortelliタイプ
帽子形のカッペッロcappelloやトルテッリーニtortelliniタイプ
キャラメル形や麦の穂形などの特殊タイプなどがあります。
パスタ・リピエーナは儀式や祝い事などのために作られました。
また、軟質小麦粉と薄く伸ばす技術が必要だったので、南伊ではほとんど広まらず、北伊のパスタでした。

かなり大雑把な話でしたが、パスタ・リピエーナの成り立ちのイメージ、つかめたでしょうか。

トルテッリ

アニョロッティ・デル・プリン

クルッジョーネ






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2019年10月16日水曜日

ベルガモが街を上げて観光の目玉にしたパスタ、カゾンチェッリ

前回のブログで取り上げたパスタ・リピエーナ/詰め物入りパスタのカゾンチェッリcasoncelliですが、これ、カゾンセイcasonseiという呼び方もありました。
あれこれ疑問点も出てきたので、もう少し詳しく見てみます。

1001スペチャリタ』によると、

カゾンセイはミラノの北東にある街、ベルガモの名物パスタとして知られていますが、名前の語源は謎。

ベルガモ

形がショートパンツ(calzonciniカルゾンチーニ)に似ているから、とか、昔は詰め物はチーズ(カーゾcaso)が一般的だったから、などの説があります。
昔は日曜やお祭りの日に食べる料理でしたが、今では一年中作られているそうです。

パスタの具は、挽いたサラミ、パン粉かグリーッシーニ、挽いたローストビーフ、グラナ・パダーノ、卵、サルタナレーズン、アマレッティ、スパイス(こしょう、ナツメグ、シナモン)、レモンの皮、にんにく、イタリアンパセリ。
パスタは00番の軟質小麦粉、セモリナ粉、卵、水。

味はマイルドでレーズン、洋梨、アマレッティの軽い甘味があります。
形は半月形で、一般的にはたっぷりのグラナ・パダーノとバター、パンチェッタ、セージのソースをかけます。
フルーツやジャムを加えたドルチェ版もあります。


ベルガモでは、3年前の5月に地域産業振興協会と商業会議所が、ベルガモのパスタ・リピエーノ誕生650周年を祝うイベントを開催。
5月13日(イベントの日)をカゾンチェッロの日と定めたそうです。
カゾンチェッロはメイド・イン・ベルガモのパスタだから、
カゾンチェッロで観光客を呼び込もうと、めちゃマジ。
でも、スローフードのスクオラ・ディ・クチーナシリーズの『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』によると、

カゾンセイはベルガモ以外にもブレッシャ、ヴァルカモニカ、ベッルーノなど、各地にオリジナルのカゾンセイがあって、個性を競っているようです。
なので、ベルガモも、カゾンチェッロ祭りを開いて観光客を集め、歴史的根拠を学者の先生が紹介する、という大イベントを開いたようです。

ベルガモ風カゾンチェッリ

イベントでは、カゾンチェッロの語源についても新説が発表されたようです。
すごく回りくどくて学術的な話を要約すると、殆どのパスタはその形が名前の由来になっているので、カゾンチェッロの場合もそうだと考えられる。
古い文書にはCassoncellumと書かれているものがあるが、これは小箱という意味だ。
という訳で、小箱が語源ではないか・・・。
どう思います?
ちなみに肉が入るのがベルガモのカゾンチェッリの大きな特徴です。

こんな話を読んでいたら、パスタ・リピエーナの歴史を確認したくなりました。
次回に続きます。



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2019年10月14日月曜日

高級ワインの産地で湖と森の産物に恵まれたフランチャコルタは観光地としても面白そう


 さて、今日の話題は、フランチャコルタです。「総合解説」P.48。

フランチャコルタは、高級なスパークリングワインというイメージがありますが、
ロンバルディアのイゼオ湖に面したブレッシャ近郊にある地域の名前です。

フランチャコルタ地域とイゼオ湖の美味しいものを味わいながら巡るグルメ列車。
Treno dei Saporiのwebページはこちら
メチャクチャ楽しそう。



フランチャコルタという地名の由来はちょっと独特。
中世にこの、湖周囲の丘陵地帯にあった修道院が、領主に税金を払っていなかった、つまり、免税地区だったのです。
免税地区はfrancae curtesと呼ばれました。
これが時と共に変化してしてfranciacortaになったのでした。
丘から湖へと続く土壌は、モレーンと呼ばれる氷河が削られて堆積した土壌で、この地帯はかつて沼地でした。
現在はトルビエーレ自然公園になっています。


ここではベネチアやミラノの貴族のためのワインが造られていました。
なるほど、元々高級志向だったのですね。
しかも免税地。
日常のワインではなく、贅を尽くした高級ワインが生まれる環境は整っていました。
高山の森林地帯、オリーブとブドウ畑、漁師の村が混在するという、マーレ・エ・モンティの変形版、ラーゴ・エ・モンティ。
海のない北イタリアにできた南イタリアの豊かな自然と田舎の環境を感じさせる場所だったのですね。

ロンバルディア州はこの地域の観光にも力を入れていています。
フランチャコルタワインのwebページはこちら

フランチャコルタの食材


フランチャコルタがミラノとベネチアの貴族のためのワインだったのは、その2つの都市の間にある、という地理的な特徴があったからかも。
ミラノからフランゃコルタ経由でベネチアに行く、というセレブ気分を味わえる旅はいかがでしょう。
お薦めレストランの情報は「総合解説」にあります。

「総合解説」にもリチェッタは載っていますが、ロンバルディアの代表的料理の一つ、カゾンチェッリ

ブレッシャ風カゾンチェッリの材料は、
パスタ;000番の小麦粉、卵、卵黄、塩、水
詰め物;パン粉、グラナ・パダーノ、バター、にんにく、イタリアンパセリ、ブロード・ディ・カルネ
ソース;バター、セージ

・潰した皮付きにんにくとバターを熱する。
・イタリアンパセリをみじん切りにしてバターに加える。
・パン粉とグラナ・パダーノを混ぜてバターを加える。
・にんにくの皮を取り除き、こししょうとナツメグを加える。
・ブロード・ディ・カルネを加えて柔かくて締まった詰め物にし、数分休ませてしっとりさせる。
・生地を厚さ1mmに伸ばし、四角く切って詰め物を絞り出す。
・生地の上辺に水を塗り、三角形に折って閉じる。底辺から巻き、両端をキャラメル形にとめる。
・カゾンチェッリを3~4分ゆでる。
・バターとちぎったセージを熱する。カゾンチェッリを加えてなじませる。
・皿に盛り付けてグラナ・パダーノを散らし、残ったバターをかける。

「総合解説」のリチェッタは挽肉やモルタデッラ入りですが、ブレッシャ風は、パン粉とチーズのシンプルなタイプのよう。




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“グルメガイド~フランチャコルタ”の記事の日本語訳は「総合解説」2017年9/10月号P.48~に載っています。
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2019年10月11日金曜日

ナポリのピッツァのアンダー30

今日のお題は『ピッツェリエ・ディ・イタリア2018』。
総合解説」はP.47です。


ガンベロ・ロッソのあれこれある格付け本の中の1冊で、ピッツェリアのガイドブックです。

月刊誌の『ガンベロ・ロッソ』でも、特集記事が組まれていました。
冒頭、いきなり、イタリア人のサッカー脳が炸裂。
なにしろ、ナポリのピッツァをサッカーに例えるとブラジルだ、
と、迷いなく言い切ります。
つまり世界一の名門だということですね。
そしてアンダー30(そんなのあるんかい)には、イタリアの北から南から、信じられないくらい大勢が招集されてやってくる、と胸を張るのです。
日本からナポリのピッツェリアを目指すアンダー30候補も、ガンバレー。

ピッツァイオーロという職業をイタリアの20歳を少し過ぎた若者が選ぶ理由は、家業を継ぐためとか、子供の頃からの夢だったなどだそうで。
さて、どんなアンダー30がいるのでしょうか。

まずはポッツオーリの10のディエゴ・ヴィタリアーノ。店のwebページはこちら

ピッツェリアの家庭に育った叩き上げで、
彼の店はナポリの人にとても愛されているようです。

次はピッツァフリッタの女王、イザベラ・デシャム。

ピッツァ・フリッタは、エンツォ・コッチャやジーロ・ソルビッロなどの大御所たちで知られていますが、娘のような若者たちに、見事に受け継がれていたのですね。

次はシーロ・オリヴァ。
家族のピッツェリアを継ぎ、さらに自らの店を開いて革新的ピッツァを作るという、根っからの改革者。

さらに、ナポリからトスカーナにやってきたのはマルコ・マンズィ。

みんな迷いのない真っ直ぐな目をしてピッツァのことを語りますね。
おばちゃん感心しました。



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“ピッツェリア・ディ・イタリア2018”の生地の日本語訳は「総合解説」2017年9/10月号に載っています。
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2019年10月9日水曜日

カフェの中のカフェ、ナポリのガンブリヌス

新入荷の本のご案内です。

本のタイトルは『ガンブリヌス』。

ナポリの歴史的カフェです。

ただ、料理書ではないのでカフェのリチェッタ等はありません。
ガンブリヌスの現オーナーが監修した、この歴史的カフェの歴史と、ナポリのコーヒー文化の頂点を歴史的写真で記録した本です。

この素晴らしいカフェに訪れたことのある人なら、その時の記憶がよみがえり、ナポリで過ごした幸せな時間に浸れるでしょう。

私がガンブリヌスを知ったのは、多分、有名ガイドブックにナポリで一番歴史的で有名なカフェだと書いてあったからだと思います。

そして、そのゴージャスな世界に魅せられて、ナポリに行く度に訪れるようになりました。

ある時、私は友人のピアノの先生と、その仕事仲間と3人でナポリを訪れました。
つまり、ピアノの先生2人が一緒でした。
バックパッカーで貧乏学生の一人旅しかしたことのなかった私は、高級な場所で場違いな思いにかられて、悔しい思いをしたことが何度もありましたが、この二人がいればクラシック音楽の素養がまったくない私でも、ヨーロッパのハイソな場所も全然臆することなく、足を踏み入れることができました。
無敵の旅仲間だったのです。

その日、ガンブリヌスに入ると、何やら店の奥からピアノの音が聞こえてきました。
その音に惹きつけられるかのように、なんのためらいもなく、私たちはそれまで足を踏み入れたことがない奥の部屋に入っていきました。

大通りに面した表の部屋と違って、ほとんど人気のない、静かな部屋の奥に、グランドピアノがあり、それを正装した見目麗しい一人の青年が弾いていました。

ピアノの正面の奥まったテーブルに座って、彼がかなでる音楽を堪能している私たちは、ベルエポックの世界にどっぷり浸っていました。
やがて演奏は終わり、夢から覚めました。
少なくとも私は。
ところが、ピアノの先生Bは、覚めるどころか、「あの人と話がしたい」と乙女の目で私に懇願するのです。
お嬢様のピアノの先生は、ナポリの美しいカフェでピアノを奏でる王子様にすっかり心をときめかせてしまったのでした。
でも言葉ができないので、私に代わりに話しかけろというのです。
お嬢様、ごめん。ナポリで逆ナンなんてそんなハードルの高いこと、できるわけないじゃないですか。
おかげで私までドギマギしちゃいましたよ。

それ以来、私のガンブリヌスの思い出は、イケメンピアニスト一色でした。

奥の部屋のグランドピアノ!!!

この本は、ガンブリヌスがカフェの中のカフェと呼ばれる場所だったことを思い出させてくれました。

ナポリの社交の場だっただけでなく、カメリエーレたちも素晴らしいし、コーヒーも美味しそう。


ナポリのカフェ文化を研究したい人にお薦めの本です。




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2019年10月7日月曜日

シチリアのマーレ・エ・モンティな料理

グリバウド・クチーナ・レジョナーレシリーズの『シチリア』によると、

シチリア内陸の農業は主に、大農場による穀物栽培、沿岸部は柑橘果実、果実、ぶどう、オリーブ、野菜など、様々な作物に特化して発展しました。

ニュートン・クチーナ・レジョナーレシリーズの『ディ・マーレ』によると、

 シチリアの魚料理はギリシャの植民地時代から知られていて、シンプルなのに素材の味を活かすことに長けていました。
調味料が、ビネガーと香草がベースで必要最低限なところがとても洗練されている、と考えられていたようです。
メカジキやマグロなどの伝統漁は姿を消しつつありますが、シチリア料理に強い影響を残しました。
ギリシャ、オリエント、スペイン、アラブ、フランスからも影響を受けています。

シチリアがアラブに支配されていたのは9世紀始めから1000年頃まで。
この間に、アグロドルチェな味付けが広まりました。
クスクスはアラブ・ベルベル人の食文化のシンボルで、トラパニやメッシーナではズッパ・ディ・ペッシェを添えて広まりました。
シチリア沿岸部では、魚を生で食べる習慣が広まり、さらに干したり塩漬けにして保存する方法も各地で生まれました。

海に囲まれたイタリアでも、ニュートンのディ・マーレシリーズに取り上げられているのは、シチリア、ナポリ、リグーリア、サルデーニャ、ヴェネト、カラブリアと数州です。
イタリアの地方料理の担い手は、農民で漁師でシェフな人々。

それでは、ニュートン・クチーナ・レジョナーレシリーズの『ディ・マーレ』の膨大なマーレ・エ・モンティなリチェッタから、カポナータをどうぞ。
シチリア料理の代表的アンティパストを魚料理に変身させた1品です。

小ダコ入りカポナータCaponata con i polpetti(カポナータ・コン・イ・ポルペッティ)

材料/4人分
なす・・2本
ゆでた小ダコ・・600g
葉つきセロリの芯・・1株
種抜きグリーンオリーブ・・100g
ケッパー・・大さじ1
松の実・・大さじ1
レーズン・・大さじ1
トマトソース・・1カップ
ビネガー・・1/2カップ
砂糖・・大さじ1
バジリコ・・1枝
玉ねぎ・・1個
トーストしたアーモンド(好みで)・・100g
EVオリーブオイル
塩、こしょう

・なすを小角切りにしてザルに入れ、塩をして1時間置いてアクを出す。
・洗って水気をシートでしっかり切り、たっぷりの油で揚げる。黄金色になったらシートに取る。
・セロリを小さく切って玉ねぎの薄切りと一緒に油大さじ5でソッフリットにする。玉ねぎに色がつく前にトマトソース、バジリコ、オリーブ、ケッパー、松の実、ぬるま湯で戻して絞ったレーズン、塩、こしょうを加えて弱火で10分煮る。
・ビネガーと砂糖を加えて混ぜ、軽く水気を飛ばす。なすと小ダコを加えてさっとなじませる。
・冷めたら刻んだアーモンドを散らしてサーブする。

ベースのカポナータ


ニュートンのクチーナ・レジョナーレシリーズのシチリアのお薦めは、ディー・マーレとドルチェ。

マーレ・エ・モンティな料理とドルチェはシチリア料理の重大な柱。


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2019年10月4日金曜日

寿司が流行るずっと前から魚は生で食べていたと胸を張るマザーラ・デル・ヴァッロの漁師さん

シチリアの話が続きますが、今月のシェフもシチリアの人。
『ガンベロ・ロッソ』の記事です。

タオルミーナのベルモンド・グランド・ホテル・ティメオのシェフ、ロベルト・トロ。

セレブ御用達の高級ホテル、ベルモンド・グランド・ホテル・ティメオ

テラスからの眺めが素晴らしい。
は~行きたいなあ。
小さな国際リゾート、タオルミーナは、なぜか家庭的な雰囲気がする町です。

シチリアの農家出身のシェフは、シチリアのマーレ・エ・モンティの伝統、つまり海の幸と畑の作物を組み合わせる料理からインスピレーションを受けた料理を作っています。

訳したリチェッタの1品めは帆立貝と豆の組み合わせ、“帆立貝のチェーチのクリームと青りんごのピューレ、ボッタルガ添え”。

シチリア料理の主役の一つは、海。
10月のシチリアを象徴するものとして記事で揚げているマザーラのエビとは、こんなエビ。
ガンベロ・ロッソ・ディ・マザーラの漁

水深700mから最新の技術で引き上げられたエビは、慎重に丁寧に選別、冷凍されます。
生で食べるのが一番美味しいので、タルタルや寿司がお薦め。
シチリアの漁師さんなら寿司職人が求めるネタが完璧に理解できそう。

マザーラとは、トラーパニ県のマザーラ・デル・ヴァッロMazara del Valloのこと。
シチリアの西の端の町です。
トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ2』によると(P.88)

「チュニジアの海岸からわずか200kmの、アラブのカスバを連想させる町、マザーラ・デル・ヴァッロでは、食事が始まる時間になると奇跡が起こる。
海辺の漁師町の運河に沿った魚屋が、魔法のようにレストランになるのだ・・・
町のシェフは、ここではいつでも魚は生で食べていたよ。
寿司が流行するずっと前からね、と強調する・・・」


あらやだ、シチリアの漁師さん、カッコイイ。
ここでは、生魚の調味は、オリーブオイル、挽き立てのこしょう、そしてレモン汁。
レストランでは生魚は急速冷凍して、氷を作らないように冷やしながら細菌を無害にしているので青魚も安心。


トラディツィオーネ・グスト・パッシオーネ2』で、マザーラのシェフとして紹介されているのは、上の動画にも登場したヴィート・マルモレオさん。
魚の話が止まらない。

Ristorante Marmoreoは人気のレストランのようです。



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“ロベルト・トロシェフ”のリチェッタは、「総合解説」2017年9/10月号P.41~に載っています。
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2019年10月2日水曜日

カルタジローネの陶器と珍妙なトリナクリナはシチリアのシンボル

新着本です。

パスティッチェリーア・シチリアーナ

ブランカートという初登場の出版社の、クチーナ・シチリアーナシリーズの1冊です。
クレアパッソで販売している他の本と比べると、とても小さくて薄くて、かなりお手軽サイズです。
当然お値段もお手頃。
パスティッチェリーアの他に、ルスティケリーア、ターヴォラ、ペッシェの3冊があります。

このシリーズ、表紙のデザインも象徴的です。
まず、左側のタイルのデザインは、アラブから伝わったマヨルカ焼きのもの。

シチリアの陶器の町と言えばカルタジローネ。




カルタジローネと言えば、サンタ・マリア・デル・モンテの大階段。

ルミナーリアは町の守護聖人の日(7月24、25日と8月14、15日)のイベント。

さらに、本の表紙の右上の、頭に足が3本ついている珍妙なデザインは、最近では大河ドラマのopで見ますよね。
その度に、あれなんて言うんだっけ、シチリアのマークだよね、なんて思っていたのですが・・・。
シチリアでは、トリナクリナと呼びますが、フランスのブルターニュのシンボルでもあるのか・・・(by wiki)。


どうやらこれはゴルゴーンという見ると石になるギリシャ神話の登場人物の3姉妹をデザインしたもので、メデューサはその末娘。
シチリアの三角形の島の形が、昔の人にはよほど珍しかったのか、それがちょうど当時広まっていたギリシャ神話の3姉妹の話と結びいて、この三脚巴がシチリアのシンボルとして定着したとかしないとか。
他にももっともらしい説には事欠かないようですが。

実はこの2つは、シチリア料理の本にはかなりの確率で登場するんです。
きっとシチリアの人も誇りに思っているものなんですね。

最後にカルタジローネのレストランを1軒。
ミシュラン1つ星のリストランテ・コーリアです。


シェフは2人。
上の動画に登場したのはカルタジローネ出身のフランチェスコ。
チッチョ・スルターノのリトランテ・ドゥオモで共にセコンド・シェフとして働いた二人が、2008年に独立してカルタジローネに店を持ちました。
シチリア料理のバイブル、ジュゼッペ・コーリアの『プロフーミ・ディ・シチリア』という料理書からインスピレーションを受けた料理を出しているそうです。
店にも彼の名前をつけています。



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