2019年4月19日金曜日

イタリア料理のベース、『スーゴとサルサ』

新着書籍『スーゴとソース』の紹介です。


イタリア料理アカデミーAccademia Italiana della Cucinaの、食文化ライブラリーBIBLIOTECA DI CULTURA GASTRONOMICAシリーズの第1冊目の本です。

この本について語るイタリア料理アカデミーのパオロ・ペトローニ会長。



彼の代表的な著書、大作の『イル・グランデ・リーブロ・デッラ・ヴェーラ・クチーナ・トスカーナ

パスタのお手軽な本、『スパゲッティ・アモーレ・ミオ











最大の疑問は、スーゴって何?サルサとどう違うの?てことですよね。

ペトローニ会長による本の前書きによると、
サルサ(ソース)と言えばフランス料理、フランス料理はソースをたっぷり使う。
この分野ではフランス人シェフが第一人者であることは否定しない。
しかし、70年代のヌーヴェルキュイジーヌ、さらに最近の新世代のシェフたちによる、シンプルな料理はフランス料理からソースを減らす傾向にある。
とは言え、イタリアにも豊かなソースがあり、古典的なフランスのソースとは全く違う使われ方をしている。

パスタや米料理の味付けをするスーゴは、イタリア料理の独特で典型的なもので、イタリアの食文化の伝統を象徴するもの。
シンプルなものから複雑なものまで、地方料理に大量に見られる。
イタリア料理の調味のベースはバターやオリーブオイルといった油脂の他に、ハーブや香味野菜、スパイスといった各地の産物やビネガーなどと実に幅広く、ソースやスーゴを研究することは、イタリアの地方料理の豊かな食文化のベースを知ることにほかならない。

これがこの本のテーマです。
前書きの後は各州ごとのソースやスーゴの話になるのですが、
さすがは料理アカデミーだけあって、リチェッタよりウンチクの方が多いです。
ウンチクが膨大なので、じっくり読み込んでください。
全部訳すとかなりな量なので、抄訳でどうぞ。

ピエモンテの章は、1854年にサヴァイア家の宮廷の料理人が書いた料理本の引用から始まります。
ピエモンテには「美味しいソースは、魚より高い」という格言があるそうです。
フランス料理はバターを調味料としてたっぷり使うことで有名ですが、ピエモンテ料理はフランスの影響を強く受けています。
19世紀のピエモンテ料理の本では1章に渡ってバターについて書かれています。
ピエモンテでは、家庭料理だけでなく、高級レストランでもバターをたっぷり使います。
バターは豊かさの象徴でもありました。
農民の伝統に基づいたバターがベースのリチェッタとして紹介しているのは、“バーニャ・デル・インフェルノbanga dl'inferno”。
バターで塩漬けニシンと卵をソッフリットにした熱いソースです。

一方で、ラルドlardoとラードstruttoは貧しい料理の象徴でした。
現代では動物性油脂は植物性油脂に姿を替えました。
しかし、刻んだラルドを加えたミネストローネの美味しさや肉の柔らかさは、誰も否定できません。
ピエモンテではオリーブの木は14世紀までは広く栽培されていましたが、気候の変動によって姿を消しました。
しかし、隣のリグーリアとの交易でオリーブオイルとその料理は生き残りました。
気候も穏やかになり、現在ではピエモンテにオリーブオイルが戻ってきています。
そしてピエモンテの農民料理の王様、バーニャ・カウダでは、オリーブオイルは主役になりました。

オリーブの栽培が難しかったピエモンでは、たっぷりあったくるみから油を取りました。
くるみ油は風味の特徴もオリーブオイルに似ていたました。
さらに、動物性油脂の代用品でもありました。

くるみ油

オリーブオイルが大量生産されるようになると、家庭で少量作っていたくるみ油に取って代わります。
第二次大戦の食糧難の時代には、ピエモンテにたっぷりあったもう一つの木の実、ヘーゼルナッツからも油を取るようになりました。
今では珍しい油として知られてきています。

ヘーゼルナッッ油

と、こんな調子で続きます。
さすがは料理アカデミー。
詳細にとことん調べ上げています。
あくまでも研究が中心でリェッタや写真が少ないのが残念。


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