ピエモンテの人にとってはクリスマスや重要な席には欠かすことの出来ない料理。
でも、思い入れの全くないよそ者は、アニョロッティ・デル・プリンのことをぼんやりと思い浮かべる程度。
多分、プリンという響きが何やら可愛い、という理由で。
アニョロッティはラビオリのこと。
だからラビオリ・デル・プリンと言う人もいます。
『サーレ・エ・ペペ』誌によると、ピエモンテでラビオリのことをアニョロッティと呼び始めたのは紀元1000年頃。
現在は、アペニン山脈の麓ではラビオリ、モンフェッリーナの丘ではアニョロッティと、地区によって呼び方も変わります。
地区ごとに、詰め物やソースも微妙に違います。
今月の「総合解説」では、アレッサンドリア風やカザーレ風のアニョロッティのリチェッタを紹介しています。
確かに、詰め物は地区によって違います。
カルロ・カンビの『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ(伊・英版)』
によると、伝統的なアニョロッティは3種類の肉の詰め物で作る家庭料理のご馳走だが、肉の詰め物のパスタの一般的な呼び方、“トルテッリ”とは別の物、とのことです。
ラビオリ、アニョロッティ、トルテッリと、すでに似たようなパスタが3種類登場しました。
詰め物入りパスタは、パスタの大量生産化に伴って種類が増えたパスタです。
スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ”シリーズ
『パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ』によると、詰め物入りパスタは、詰め物のタイプによって大きく2つに分けることができます。
肉(ロースト、煮込み、ボッリート、1種類、数種類、内臓入り、サルシッチャ入り、サルーミ入り)と、ディ・マーグロ(フレッシュチーズ、じゃがいも、野草、葉野菜)の2種類です。
さらに、形でも分けることができます。
正方形、長方形、三角形、円形、半円形のラビオリ、トルテッリ。
カッペッレッティ、カッペッラッチ、アニョロッティ、トルテッリーニ、トルテッローニの帽子型。
そしてカッターなどで特殊な形に切り分けるカルツォンチーノ、ファゴット、クレスタ・ア・ガッロ、カラメッラ、コーダ、コルドンチーノ、スピゲッタ、トレッチャ、ピッツィコット。
以上は伝統的なパスタに限った話です。
形や詰め物が作る人の感性次第で自由自在のパスタなだけに、現在は数多くのシェフが独自の詰め物入りパスタを創り出しています。
魚の詰め物はその代表例。
詰め物入りパスタの生地は、軟質小麦粉と卵の薄くて丈夫な生地が基本。
セモリナ粉は滅多に使わないので主に北イタリアに広まりました。
詰め物を閉じ込めやすいように、タリアテッレやタリオリーニより柔らかくて薄い生地です。
アニョロッティは詰め物入りパスタの中でもシンプルな長方形をした基本のパスタです。
トリノの四角い詰め物入りパスタはアスティ県のモンフェッラートから伝わり、そのルーツは同じ形のパスタがあるリグーリアとの境の山間部と考えられています。
1720年にサルデーニャがサルデーニャ王国となってトリノのサヴォイア家の支配下に入ると、サルデーニャの“クルルジョネス”という詰め物パスタが“アンジョロットゥス”と呼ばれてピエモンテにも広まったそうです。
半月型は、正しいかどうかは別としておおむねイスラムの影響というのが一般的な意見です。
ヨーロッパは度々オスマン帝国と戦いますが、その度に、オスマン帝国の旗に描かれた三日月がヨーロッパに広まったようです。
1453年、東ローマ帝国の首都で現在のイスタンブールの前身、コンスタンティノープル陥落。
1683年の第2次ウイーン包囲は、オスマン軍にウイーンが包囲されると言う歴史的な戦い。
この包囲戦、結局はヨーロッパが勝ったのですが、この時のオスマン帝国の旗、三日月がよほど衝撃的だったらしく、この時生まれたのがクロワッサンだと言い伝えられています。
詰め物パスタには、ドッピア・キウズーラと呼ばれるものもあります。
長方形や三角形に閉じた後に、角を合わせて再び閉じるものです。
ゆでている間に開かないように念には念を入れた閉じ方ですが、これがヴィーナスのおへそと呼ばれるほど美しかったのでした。
カッペッレッティやトルテッリーニなどがあります。
トルテッリーニ
↓
カラメッレ
↓
トンルテッリ・コン・ラ・コーダ
↓
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“アニョロッティ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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スペルト小麦の生パスタやお菓子の作り方を解説した書籍がイタリアにないか探しています。その他、イタリアの小麦アレルギーの方向けのレシピ集があれば教えていただきたく思います。お願いいたします。
返信削除ファッロとグルテンフリーのリチェッタの本を探せばよろしいでしょうか。
返信削除取りあえず、mail@creapasso.comまで
メールでご連絡いただけると助かります。
木村