2017年11月30日木曜日

ピエモンテのフランス系イタリア料理


クレアパッソのホームページと連動して、ピエモンテ料理の話題が続いていますが、一番最初に感じたのは、塩漬けアンチョビの重要さ。
ピエモンテへのアンチョビの供給源はリグーリアとフランスのプロヴァンス地方でした。
ピエモンテの商人は昔から財力があったようで、外国の食材も豊富に入ってきていたのですね。
ちなみに、本によっては、スぺイン産のある品種のアンチョビが一番、とか書いてあります。
ピエモンテの人、アンチョビにはかなりこだわりがありそう。

リグーリアの昔ながらの手作り塩漬けアンチョビ
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アンチョビを使う代表的ピエモンテ料理、バーニャ・カウダ。
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この料理の名前は熱いソースと言う意味(諸説あり)のフランス語で、ピエモンテ料理がフランスの影響を受けたフランス系イタリア料理ということを感じさせます。
さらに、1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』によれば、

この料理は、畑の野菜を手づかみでにんにくたっぷりのソースに浸して大勢で食べる農民料理で、サヴォイア家の宮殿の貴族たちには敬遠されたんだそうです。
名前はフランス語でも魂は強烈なイタリア料理。
それにしてもピエモンテ料理はフランス料理の影響が強いですね。

そんな料理の一つがフラン。
代表的なのはズッキーニのフラン。




どこから見ても貴族様が好きそうな上品な1品。
フランの調理方法はイタリアの農民も大好きで、ピエモンテ中に広まりました。


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2017年11月27日月曜日

アンチョビ・アル・ヴェルデ

今、「総合解説」のためにピエモンテ料理のリチェッタを訳しています。
そのために、ピエモンテ料理の本を何冊か読みました。
そしてあることに気が付きました。
だいたい料理書に載る料理は、アルファベット順で、分類は前菜からです。
なので、どの本もaから始まるある前菜が最初の1品となります。
この料理が、見事に、面白いくらいどの本も一緒なんです。
もしピエモンテ料理の本がお手元にあったら、ちょっと見てみてください。
それは多分、acciughe al verdeですよ。
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Acciughe al Verde

ピエモンテと言えば、山のふもとという言葉がその名の由来になっているわけで、アルプスとアペニン山脈に囲まれています。南はポー河流域の平野、北にはマッジョーレ湖があります。
ランゲ地方など、ワインの産地として有名なのは丘陵地、州都のトリノはイタリアとフランスの結びつきの中心となった国際都市。米の栽培量はヨーロッパ一。
とまあ、なんでもある州なんです。
ところが、そんなピエモンテにも唯一、ないものがありました。
海です。
そうなんです。
ピエモンテには海がないんです。
そんなピエモンテの料理の本が、アンチョビのヴェルデソースから始まる、というのは意味深ですね。
このアンチョビは生ではなく塩漬けです。
山を挟んでお隣のリグーリアから届きます。
リグーリアのアンチョビで思い出すのが、チンクエテッレのモンテロッソ。
チンクエテッレは海が荒れやすく、海への道路も不便で、皮肉なことに、魚は地元の町にはあまり行き渡っていないのでした。
そんな中で、モンテロッソのアンチョビだけは、産卵のために海面下に群れを成して現れるので採りやすく、塩漬けアンチョビは地元の名物として知られるようになったのでした。
リグーリアからの行商人が売り歩いたりや南ピエモンテの商人がフランスの沿岸地方から仕入れたアンチョビは、ピモンテの名物前菜になるほど広まりました。
海のないピエモンテでアンチョビを食べたいと思う観光客はあまりいないかもしれませんが、この料理のもう一つのポイントはヴァニェット・ヴェルデと呼ばれるグリーンソース。
イタリアンパセリのソースですが、ピエモンテ名物の肉料理、ボッリート・ミストに欠かせない肉用のソースにもなります。







このアンチョビ料理に合うワインはガヴィかグリニョリーノだそうです。



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2017年11月23日木曜日

『カッチャジョーネ』

寒くなってきました。
ジビエの季節になると思い出すのが、『cacciagione』という本。



イグレス・コレッリシェフなどが料理を作った力作です。

イグレス・コレッリシェフ
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ちょっと専門的すぎるかなと思って、問い合わせがあった時にだけ案内していたのですが、出版元で品切れになっているのに気が付きました。
今あるのが数少ない貴重な在庫です。

この本の料理は貴重なジビエを使った高貴な料理ばかり。
硬いものを噛まなくなり、甘くて弱い味を好むようになった現代人の食卓から、ジビエは姿を消しつつあります。
イタリアも例外ではありません。
入手方法も処理も難しいジビエは、料理人も敬遠しがち。
でも、だからこそなのか、この本の料理はどれも本物に見えます。
一流の料理人の究極の料理は、ジビエなのかもしれません。

池、草原、森、丘陵、山と、生息地ごとに種類の豊富なジビエを最適な食材との組み合わせで料理した本です。

ジビエの一般的で伝統的な調理方法は、
・ブラザート(まず肉を焼いてからブロードやワインなど少量の水分を加えて蓋をしてじっくり煮る)
・ストゥファート(水分を加えないかごく少量しか加えないブラザート。食材を自らの水分で煮る)
・ウミドまたはストラコット(最初に焼かないプラザ―ト)
・シヴェ(仕上げに動物の血を加えるブラザート)
・サルミ(仕上げに煮汁を裏漉しして濃いソースにいる)
・フリカッセア(卵とレモン汁を攪拌して仕上げに加えたブラザートかスゥファート)
・アッロスト(フライパンやオーブン、炭火で焼く。中はジューシーに、表面はこんがり焼き色をつけてカリッと焼く。経験だけでなく針を使ったりして内部の温度を測る。“アル・ブルーal blu”は、肉の中央部分の温度は65℃以下。肉は柔らかい。“アル・サングエal ssangue” は68~70℃。肉は押すと柔らかい。78℃前後だと中はピンク色。押すと弾力がある。85℃以上はベン・コッタben cotta。触ると固い。)

と説明されています。

ホームページにリチェッタの翻訳のページを新しく作りました。
なるべく多くの本のリチェッタを訳していくつもりです。
リクエストもお待ちしてます。


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カッチャジョーネ
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2017年11月20日月曜日

ローマでイタリア中のストリートフードを食べ歩くガイドブックに最適の本

新着書籍『パオロ・リッツォのSTREET FOOD』の紹介です。


『STREET FOOD』の本は、『STREET FOOD all'italiana』というなかなかいい本が既にありますが、


同じタイトルでもかなり違う本です。
まず、何と言っても、著者のパオロ・リッツォ氏は、新聞などで活躍するカメラマンです。
なので、料理のうんちくなどには興味なし、すべては写真で語っています。
プロのカメラマンというのは、写真から言いたいことが伝わるような写真を撮るのですね。
バッカラのフライなんて、どこの事件現場かと思うような臨場感。
中でも一番食べてみたい!!と思ったのは、“ピッツァのパストラミ・ホットサンド”。
こんなホットサンドです。

ピッツァビアンカを鉄板でカリッと焼いて2段に切り、片側に自家製マヨネーズ、もう一方に自家製マスタードを塗ります。
マヨネーズの上にレタスと薄く切ったトマト、きゅうりのピクルスをのせます。
その上に厚めにスライスしたパストラミをのせます。
ピッツァをかぶせて出来上がり。

ニューヨークのデリのメニューかとも思いますが、ローマのバール・デル・カップッチーノ・ディ・サントロ(via arenula,50 Roma)の1品です。

 

ピッツァ・ビアンカはローマのソウルフード。
ピッツァ・ビアンカでパストラミをサンドするという発想。
思いついた人、素晴らしい!!

本の表紙になっているパンにパンを挟んだみたいなサンドイッチは、シチリア名物のパーネ・エ・パネッレ。



具はチェーチの粉の生地を揚げたもの。
表紙の1品を作ったのは、ローマにあるモンド・アランチーナというシチリア料理の惣菜店。
webページはこちら



著者はローマ生まれなのでした。
取材した店もほぼ全てローマ。

ローマで美味しいストリートフードの食べ歩きをしたい人必携のガイドブックと言える1冊です。


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パオロ・リッツォのストリートフード
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2017年11月16日木曜日

カンピダーノ風マッロレッドゥス

クレアパッソのホームページで、このところ2005年11月号の「総合解説」の記事を紹介しています。
12年前の記事ですが、11月号は豚肉料理のオンパレードでした。
その中で、サルシッチャのラグーのパスタのリチェッタには、こんな解説文が。

「簡単にできるサルシッチャのラグーはマッロレッドゥスの定番サルサ。
オリスターノでは炒ったフェンネルシード入りのサルシッチャで独特の香りのラグーを作る。」

まず、簡単だと言うサルシッチャのラグーのパスタの作り方。

作り方は、
1.トマトは皮と種を取って刻む。サルシッチャは皮をむいて小さく切る。
2.玉ねぎのみじん切りを油でソッフリットにし、サルシッチャを加えて崩しながら炒める。トマト、サフラン、塩、こしょうを加え、湯少々をかけながら40分煮る。火から下ろしてちぎったバジリコを加える。
3.パスタをアルデンテにゆでてラグーとたっぷりのペコリーノであえる。

確かに、手間と時間のかかるラグーにしては簡単。

マッロレッドゥス・アッラ・カンピダネーゼ
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マッロレッドゥスについては、以前のブログをご覧ください。
カンピダーノの方言で子牛はmalloru。
malloreddusは、小さな子牛という意味の、硬質小麦粉とサフランの筋付きニョッケッティ。

このパスタは、サルシッチャのラグーの典型的な料理。

カンピダーノの羊飼い
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20匹の羊を飼って生活している。

サフランの収穫



サルデーニャにサフランが伝わったのはフェニキア人の時代。
古くから栽培されてきた。
現在では島の農民と羊飼い文化の伝統の象徴となっている。
収穫と加工はても難しく、素人が簡単にできるものではない。
イタリア産サフランの66%はサルデーニャ産。
そのうち86%がメディオ・カンピダーノ産。

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2017年11月13日月曜日

イタリアの輸出を牽引するのは食品とワイン

総合解説」7月号を発売しました。
今月紹介しているシェフは、アントニア・クルグマンシェフです。




女性シェフが少ない創作料理の道をただ一人で突き進む、知的で勇敢なシェフ、と評判のようですが、訳す方は超大変でした。
食材のこだわりが凄いというか、聞いたこともない食材ばかり使う人です。
頭の良さはストレートに伝わってきましたよ。
ただ、知らない食材の組み合わせなので味のイメージがつかみにくく、どんな味なのか、食べた人に感想を聞きたくなります。

もう一つ、興味深かった記事は、ガンベロ・ロッソがミラノ万博をきっかけに、外国のインポーターを意識して作ったガイドブック『トップ・イタリアンフード&ビバレッジ』。



日本でもプロモーション活動をやっているようですが、イタリア食材の一番の得意先はドイツなんですね。
でも、インパクトが大きかったのは、2014年、フランスやイタリアを抜いて世界一のワイン消費国になったアメリカへのワインの輸出量が1位の国は、イタリアという事実。ちなみに2位はオ―ストラリア。
アメリカ人に人気なのは、キアンティとブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、バローロ、ピノ・ビアンコ、プロセッコなんだそうです。
アメリカへの輸出は着実に増えていますが、食品とワインの輸出量全体も増えているようです。
ちなみに、輸出量の伸びが一番多いのは断トツでやっぱり中国でした。

これは2015年の記事なので、アメリカの新しい大統領やイギリスのEU離脱など、反グローバリゼーションの動きはどう影響してくるのか、今後も気になります。


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“アントニア・クルグマン”、“イタリア産食品の輸出事情”の記事は「総合解説」2015年7月号に載っています。
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2017年11月9日木曜日

冬のイタリア料理


立冬を過ぎて、北風が枯葉を飛ばして落ち葉掃除が大変な季節になりました。
季節の変わり目に必ず読みたくなる本が、カルロ・カンビの本、『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』です。

地方料理を季節ごとにまとめた面白い本。
さて、冬はどんな料理があるかな~。

まず最初に、イタリアの冬の料理についてまとめているのですが、それを読んで感じるのは、イタリアも日本も同じだね、ということ。
まず、冬のメインイベントはクリスマスと新年。
それと冬の間は不足しがちな栄養、カロリーやビタミンCをしっかり摂れる料理が大切。
暖かいスープ。
イタリアならではだなあと思うのは、トルテッリーニへのこだわり。
旬の野菜はラディッキオ、ビエトラ、キャベツ、トリュフ、ヘーゼルナッツやクルミ、オレンジやミカンなどの柑橘類など。
チーズは高原の草を食べた牛の最後のミルクから作って熟成させた香り高いもの
肉は一年中あるサルミとは違ってこの時期に出回るフレッシュな豚肉やサルシッチャ。
魚はバッカラ、ストッカフィッソ、ウナギ。

そんなことをふまえて、
前菜はレバーのクロスティーニ、オレンジのサラダ(シチリア)、野ウサギのパテ(黒トリュフ入り)、ファッロのケーキ(ファッロは鉄分を多く含む)、
プリーモは、カッペッレッティ・イン・ブロード(代表的クリスマス料理)、パッサテッリ・イン・ブロード(ロマーニャ地方の冬の料理)、サルシッチャと黒キャベツのピチ、ポレンタ、リボッリータ、リゾット・アッラ・ミラネーゼ、タリアテッレ・アッラ・ボロニェーゼ、
セコンドは鴨のオレンジ風味、バーニャ・カウダ、ボッリート・ミスト、赤ワインのブラザート、ピエモンテ風フリット・ミスト、
ドルチェはボネ、カッサータ、
取りあえず、ごく一部ですが、こんなところです。

オレンジのサラダ



パッサテッリ・イン・ブロード



ブラザート



ボネ




ピエモンテ料理の季節が到来です。



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2017年11月6日月曜日

アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ


このところ、シチリア料理を訳していました。
そこで改めて認識したのが、シチリアには肉がベースの伝統料理が少ない、ということ。
特に、土地は耕して畑にすることが多かったシチリアでは、牧草地にして牛や羊を放牧する、ということをしなかったため羊飼いの文化が育たなかったのでした。
羊飼いの飼育方法は、夏は山の高地に移動して、秋になると、平野に下りてくる移牧。
戻ってくる時期は地方によってさまざまなようですが、11月半ばという地方もあります。
そろそろですかね。



こんなに可愛い羊や牛や牧羊犬が行列してたら、見物しに行きたくなるなー。

この時期の料理の一つが、ローマのアッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ。
アッバッキオは2か月齢以下の羊で、体重は8~10㎏。
たった2ヶ月で、悲しい運命ですね、くすん。
時間が経つと臭みが出るので、旬の時期だけ作る料理でした。
今ではローマの名物料理として広まっています。
アッバッキオのローマ風とも言います。
いつものにんにくとローズマリーにアンチョビを加えて、別物のように美味しくした1品。



アッバッキオ・ロマーノのPV
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アッバッキオの数が減っている現状では、普通の子羊肉を使ったアニェッロ・アッラ・ロマーナのほうが一般的かも。


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2017年11月2日木曜日

ヴォギエーラのにんにく

今日はにんにくの話。
 近所のスーパーではスペイン産にんにくを山のように売っていますが、 イタリアにも、外国で知名度の高いにんにくがありました。
まだ日本でお目にかかったことはないですが。
ヴォギエーラのにんにくです。

aglio e peperoncini


見た目は、普通のにんにくとなんの変わりもないように見えますが、特徴はその、甘くてデリケートな味なんだそうです。
管理組合ではジェンティーレなにんにくと表現しています。
直訳すれば、優しいにんにく。

産地はフェッラーラの近くのヴォギエーラという町。
粘土質の土壌、穏やかで乾燥した気候のパダナ平野で栽培されるこのにんにくの収穫は、
6月初めから7月末。
収穫したら葉鞘を三つ編みにします。
収穫祭も行われます。
この直後はフレスコのにんにくが出回ります。
それ以降はセミ・セッコかセッコ。



このにんにくを浸して香りをつけたワインやスパイスを使った地元の名物サラミは、ツィーア・フェッラレーゼ。
アーリオ・オーリオにもこのにんにくが欠かせません。

ツィーア・フェッラレーゼ
 ↓


分厚い腸に詰めるんですね。
通は、この脂が好きなんです。




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“ヴォギエーラのにんにく”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年6月号に載っています。
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