カルロ・クラッコの最新本、『ディーレ・ファーレ・ブラザーレ』。
その内容は、彼の著作全3冊の中で、一番レベルが高いかもしれません。
彼の料理に対する思いがあふれていて、とにかく読め、という本なのですが、写真が少ないので最初はちょっととっつきにくいような印象です。
イタリアを代表するカリスマシェフの名声を手に入れて時代の寵児となった彼が、この本で何を伝えたかったのか、手っ取り早くわかる方法などないとは思いますが、そのへんのことがなんとなくでも分ればと、とりあえず「序文」を訳してみます。
「この本の根底には、シンプルなコンセプトがある。
料理の能力を高めるには、とにかくテクニックを学んで実践する必要がある、ということだ。
テクニックは調理場で知識と経験を積み重ねた結果身につくものだ。
しかし、料理を語る時、テクニックと言いう言葉は美しくない。
この言葉には、冷たくて、無菌で機械的なマニュアルのような響きがある。
ところが調理場には、無菌で機械的なものなど何もない。
人を興奮させる料理を作り出すために何時間もコンロの前に立ち続けるには情熱が必要だ。
テクニックはそのための基本的な道具の一つで、そのことを意識して使うものだ。
テレビのおかげで料理はファッションになり、コンロ1個と2、3の食材があれば、誰でもが(または多くの人が)料理をすることができる。
しかし、それだけではない。
料理は、文化で、発見で、情熱、芸術、共有なのだ。
料理は、知識や古い行いを伝えて、私たちの歴史を生きたものにいていくための機会であり、大地を耕す人とその果実を食べる人とを結ぶ貴重な糸なのだ。
ここで二つの世界は出会い、料理する人と耕す人は、どちらが上とは言えない大きな責任が課せられる。
料理に使う食材の価値は?
どこから来たのか?
一番重要な特徴は?
どうやったらその価値を高めることができるのか?
これらの問いかけに答えを見つけたら、あなは料理する価値を知っていることになる。
これこそが、能力を高めるための秘訣だ。
例えば、にんじんがあるとする。
生産者が多大な手間をかけて常識を覆すような品質のものにしたとして、あなたがそれを知らなかったら、その食材は虐げられて、生産者も消費者も裏切ってしまうことになる。
一方で、そのにんじんが注目に値してどのように調理するかを知っていたら、あなたの料理は完璧になる。
食材の背景には、大地からその食材の利点を引き出す人がいるということを自覚することは、あなたの料理も最高にしてくれる。
この考えを、私は常に意識している。
1冊目の『Se vuoi fare il figo usa lo scalogno』でも、2冊めの『A qualcuno piace Cracco』でも、強調してきた。
私はテクニックを説明して、実践するためのリチェッタを書いた。
今年もいつものように、この本のための料理を考えだした時に、クラッコというレストランの歴史と
人のことが頭に浮かんだ。
開業当初とメンバーは少し変わったが、みんな経験を積み、偉大な情熱を持ったパスティッチェーレの若者がスーシェフになるなど、成長していった。」
この後、もう少し序文は続きますが、大体こんな内容です。
さらにこの後、念には念を入れたのか、「この本の使い方」という章があります。
これは次回に。
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