クアトロ・ポモトーリのスパゲッティの動画を見ていて思い出しました。
先月の「総合解説」(2011年8月号)で、目を引いたリチッタ、“ミニトマトのトマトソース煮”。
ミニトマトをトマトソースで煮るのもありですねえ。
さてそれでは、ドライトマトに最適と考えられて、実際、多くのメーカーが使用しているトマト、サン・マルツァーノについて。
今月の総合解説(2011年9月号)によると、20世紀初めにカンバーニア北部のサルネーゼ-ノチェリーノ平野で栽培されていた品種を交配させて作り出した品種だそうです。
フランチェスコ・チリオによって缶詰産業が発展するにつれ、種が少なく、皮が薄くてむきやすいサン・マルツァーノは、最高のソース用ホールトマトになる品種として世界中に知られるようになります。
1970年代に他の安い交配品種に押されて消えかけましたが、旧チリオ研究所とカンパーニア州によって救われました。
チリオのホールトマトのお得意さんだったと思われるナポリのピッツァ業界は、『ファリーナ・アクア・リエビト・サーレ・パッシオーネ』の中で、トマトについて、こう語っています。
「ヴェーラ・ピッツァ・ナポレターナ協会の規定では、ホールトマトかフレツシュトマトを使うことを勧めている。
ホールトマトの中では、カンパーニアの伝統的な農作物であるサン・マルツァーノ・デッル・アグロ・サルネーゼ-ノチェリーノDOP、またはローマタイプの長い品種のトマトを勧める。
フレッシュトマトでは、サン・マルツァーノ、ピエンノーロ・デル・ヴェズヴィオDOPのミニトマトとコルバーラのミニトマトを勧める」
だそうです。
協会一押しのサン・マルツァーノ・デッル・アグロ・サルネーゼ-ノチェリーノDOPの歴史は、一説によると、なんと1770年までさかのぼれるそうで、この年にペルーのインカ帝国からナポリ王国にトマトの種が贈られたそうで、それがサン・マルツァーノだったという、夢のある言い伝えです。
サン・マルツァーノの特徴は楕円形、鮮やかで均一な赤い色、甘酸っぱい味、種の少なさ、筋が少ないので熟すと皮がむけやすくなる。
さらに果肉は崩れにくくて缶の中でも形を保つ。
と、缶詰にするための利点をすべて兼ね備えているようなトマトです。
サン・マルツァーノの伝統的な栽培方法
↓
パルマのトマト
↓
サン・マルツァーノは支柱を使っていることに気が付きましたか?
全然栽培方法が違うんですね。
さらに土壌は火山性。
ナポリピッツァ協会の本には、ホールトマトの品質の見分け方についても書かれています。
その方法とは、トマトを丸ごと1個、流水にさらしながら潰してみて、トマトが美しい赤い色を保っていたら完熟状態で収穫された上質のホールトマトなんだそうです。
色が薄くなるトマトは熟す前に収穫してソースに浸して赤くしている低級品だそうです。
さらに、ピッツァにホールトマトを使う時は、トマトを手で潰すこと、ともアドバイスしています。
金属に触れて酸化するのを防ぐためと、水分を保つためです。
ピッツァにのせる前に塩をします。
量はホールトマト1kgつき平均10g、
角切りトマトやパッサートはのせません。
パッサートはトマトの欠点を隠してしまうので品質のチェックがしにくく、高温で焼くと煮詰まりすぎるからです。
フレッシュトマトは繊維に沿って縦にくし切りにしてのせます。
ほんとにこの本は、懇切丁寧に、とても詳細にピッツァについて説明していますよ。
ローマやピエンノーロについても解説があります。
そうそう、ドライトマトをのせたピッツァのリチェッタもありました。
スカルパリエッロscarparielloです。
この料理は、カンバーニアのシンプルなトマトソースのパスタとして知られていますが、ピッツァに応用すると、トマトの鮮やかな赤色とバジリコの緑が食欲をそそる一品です。
ピッツァの生地に手で潰したホールトマトをのせてにんにくの薄切り、こしょう、ペコリーノ・ロマーノとペコリーノ・サルドを散らし、オリーブオイルをかけてバジリコをのせます。
これを焼いて、半ばで細く切ったドライトマトを加えます。
ドライトマトが味のポイントですね。
ちなみに、“オステリーエ・ディ・イタリア”の『クチーナ・レジョナーレ』には、パッケリのスカルパリエッロのリチェッタが載っています。
こちらはにんにく、唐辛子、バジリコのソッフリットにミニトマトを加えて煮て、ゆでたパスタを加えたら仕上げにパルミジャーノでマンテカーレします。
どちらも簡単ですぐにできそうですね。
皿に残ったソースをパンでぬぐうこを、“ファーレ・スカルペッタfare scarpetta”と言いますが、それがこの料理の語源です。
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“サン・マルツァーノ・トマト”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年9月号に載っています。
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