2012年1月23日月曜日

イセエビのカタラーナ;リチェッタ

イセエビのカタルーニャ風の話の続きです。

今日はリチェッタ編。

前回は、イセエビのカタルーニャ風は、スペインのカタルーニャ風という名前でも、れっきとしたサルデーニャ料理、という話をしました。

サルデーニャのアルゲーロいう町は、リトルバルセロナ(バルセロナはカタルーニャの州都)とも呼ばれるほどカタルーニャとの結びつきが強い場所。
そんな訳で、サルデーニャでは、“カタルーニャ風”という名前は、実は“アルゲーロ風”、という意味でもあるわけです。

“アルゲーロ風”をイタリア語で言うと、「アッラルゲレーゼall'algherese」。
“カタルーニャ風”は、「アッラ・カタラーナalla catalana」。

同じ料理でも、アッラルゲレーゼよりアッラ・カタラーナのほうが言いやすいし、親しみが持てます。

イセエビのカタルーニャ風は、イセエビのアルゲーロ風という名前もあるのですが、イタリア国内はもとより世界中で受け入れられたのは、「アラゴスタ・アッラ・カタラーナ」、つまり「イセエビのカタルーニャ風」という名前でした。
料理もネーミングが大事なんですねえ。

そしてこの名前を定着させたのが、アルゲーロの有名レストランのシェフ、モレーノ・チェッキーニ氏、という訳です。

カタルーニャの料理ではなくアルゲーロの料理、という意味では、日本語では、“イセエビのカタルーニャ風”ではなく、“イセエビのカタラーナ”と呼ぶほうがより的確ですね。


イセエビのカタラーナには、大きく分けて2つのリチェッタがあります。
1つはチェッキーニ氏のものとして知られ、オリジナル版とも呼ばれるもの。
そしてもう1つは、トマトと玉ねぎ入り。


チェッキーニ版イセエビのカタラーナ
ARAGOSTA ALLA CATALANA di Moreno Cecchini - Ristorante La Lepanto, Alghero
こちらを訳しました。
材料:4人分
 メスのイセエビ・・1kg
 オスのイセエビ・・1kg
 レモン・・3個
 ピーナッツ油・・100g
 ビネガー・・大さじ2
 塩、こしょう

・イセエビをゆでて身を取出し、角切りにする。
・オスのミソとメスの卵をボールに入れる。卵をフォークで潰し、塩、こしょう、レモン汁、油で調味してホイッパーでよく混ぜる。
・ソースをイセエビにかけ、さらにビネガーを加えてよく混ぜる。





トマトと玉ねぎ入りのイセエビのカタラーナ
“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズ:『ペッシェ』より、
Trattoria da Riccardo, Magomadas(Nuoro)のリチェッタです。
材料:2人分
 イセエビ・・約500gのもの1尾
 完熟トマト・・4個
 白玉ねぎ・・1個
 レモン汁・・1/2個分
 ビネガー・・大さじ2
 EVオリーブオイル
 塩、こしょう

・イセエビを熱湯で20分ゆでる。
・その間に野菜を用意する。玉ねぎを薄切りにしてビネガーを加えた水にさらし、辛みを抜く。
・トマトは種と水を取り除いて小さく切る。
・イセエビがゆで上がったら縦に半分に切り、身を取り出して小さく切る。
・イセエビ、玉ねぎ、トマトを混ぜる。
・油、レモン汁、塩をホイップしてイセエビにかけ、よくあえる。30分冷やしてサーブする。




チェッキーニ氏は、トマト入りのほうはアッラ・カタラーナとは呼ばずに、「イセエビのトマトと玉ねぎ入り aragosta con pomodori e cipolle」と呼んで区別していたそうです。

今はどちらかというと、トマトと玉ねぎ入りのほうが一般的でしょうか。
その結果、シーフードにトマトと玉ねぎを加え、ヴィネグレットやシトロネットで和えた料理を「カタラーナ」と呼ぶバリエーションも生まれました。
“オマールエビのカタラーナ”や、『サーレ・エ・ペペ』で紹介している“ムール貝のカタルーニャ風”もその一例。
ムール貝のカタラーナは、一見シンプルなムール貝のサラダですが、元をたどれは、こんなに長い物語があるのでした!


↓たっぷりの野菜入りバージョンのイセエビのカタラーナ






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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』2008年7月号
“ムール貝のカタルーニャ風”のリチェッタは、「総合解説」'08&'09年7月号に載っています。

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